Reader Store
報いられたもの/働き手
報いられたもの/働き手
モーム、行方昭夫/講談社
作品詳細ページへ戻る

総合評価

1件)
3.0
0
0
1
0
0
  • powered by ブクログのアイコン
    powered by ブクログ

    再びモーム。「月と六ペンス」、「聖火」、「ジゴロとジゴレット」に続き四作品目。円熟期に、“自らの魂の満足のために”書いた四大問題劇のなかの二篇、という位置付けらしい。 原題はそれぞれ、「報いられたもの」=For the services rendered と、「働き手」=The breadwinner。 いずれの作品も、自己犠牲は幸せに通じていない、という点で共通している。前者は、戦争で国家に、三姉妹の長女が視力障害者となった兄に、後者では、父親が家族に、献身的に尽くすが、誰も幸せではない。 かといって、身勝手に生きることが推奨されているわけでもない。 寺地はるなさんの「架空の犬と嘘をつく猫」のなかのおばあちゃんの次のセリフを思い出した。 「自分の人生を生きなさい。」 わたしも雪乃もあんたよりずっとはやく死ぬ。 山吹、自分以外の人間のために生きたらいかん。 「誰かを助けるために、守るために、って言うたら、聞こえはよかよ。でも、人生に失敗した時、行き詰まった時。あんたは絶対、それをその誰かのせいにする。その誰かを憎むようになる。そんなのは、よくない」

    27
    投稿日: 2025.05.20