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ラピスラズリ
ラピスラズリ
山尾悠子/筑摩書房
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総合評価

67件)
3.6
11
16
16
5
1
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    途中までは確かに面白かった 竈門の秋の後半からなんだかよく分からなくなっちゃった 世界の崩壊を描くのはいつものことなんだけど、ゾンビみたいなのが出てくるからかな、崩壊が美しくない… 読み取りきれない私の読書レベルの足らなさなのかもしれない

    0
    投稿日: 2025.08.21
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    ごく正直に言えば内容より文体を楽しむ作品かなと思った、丁寧に織られた様な文章は確かに魅力的だけど作者にそこまで何かを伝えようという意図は感じません。ただページをめくる度に光の乱反射みたいに読者に訴えかける作品は、ちょっと他には見ません。最初から最後まで通して読むのではなく、気が向いたときに好きなページを眺めるくらいが丁度いいのではと思う。

    1
    投稿日: 2025.02.26
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    短編集。でもどの話も時間や場所を超えて複雑に連なっているようだ。冬眠者。不老不死でないけれど冬を眠って過ごす彼等はなかなか老いない。使用人。幽霊。人形。食事。枯葉。雪。「閑日」と「竈の秋」を読むとその細部まで書き込まれた文章のために実際に古い洋館で冬眠の準備をする人達が異国にでも存在したように感じる。私は当然に冬眠者でないけれど時に彼等のような気持で眠ってみたい。

    1
    投稿日: 2025.02.25
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    冬眠する貴族たちと、館の使用人たちの物語。 眠りのための棟を取り巻く「死」の要素がゴシック的で恐ろしくも美しい。 冬眠者たちは「春」の概念そのものを表す寓話的な存在なのかなぁと、最後の章のきらきらとした終わり方を見て思った。

    2
    投稿日: 2024.11.13
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    綺麗な作品だとは思うのですが、内容が難解。 登場人物が次々に変わるので、読んでいるうちに「今誰の話をやってるの?」となりました。 冬眠者、使用人、人形、ゴースト、春の目覚め。 寒々しいイメージが重なりあい、絡み合い、幻想的な美しさを醸し出しています。

    0
    投稿日: 2024.07.05
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    『歪み真珠』から読んでしまったのだけど、『ラピスラズリ』から読めばよかったかな…と思いつつ、でもそれほど違和感なく読めたから、これでよかったのだと思う。難解です。一度読んだくらいではちょっと分からない。特に3つ目の「竈の秋」は人物が多く出てくるし、視点がころころ変わるので日本古典文学のようだと思った。私は「閑日」が好きだった。時間を置いてからまた読みたい。ただ、冬眠者たちの物語を冬から春にかけて読めたことは、ベストだったかもしれない。

    1
    投稿日: 2024.03.20
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    千野帽子さんの解説を読むまで迷路に迷い込んだような気持ちでいた。中世の冬眠者が存在するディストピア小説だと感じていたが、自分の集中力が欠如して、誰の言葉なのか?どこにいるのか?場面が違うのか?と自問して迷子になることが頻繁に起こった。 不思議な世界観。読者を迷路に導く構成。独特な言葉選び。闇へ、冬へ、死へと誘う小説から聖フランチェスコの再生へと。記憶に残る不思議な小説だった。

    62
    投稿日: 2024.03.01
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    Boschの絵画のような人の群れにズームインしり俯瞰したり。非常にビジュアルを喚起させる作品だった。時間軸もも同時に存在していて、文字から喚起される場面があふれかえりそうになりながらも収束するさまは、風で舞い上がる枯葉の只中にいる様だった。

    0
    投稿日: 2023.12.23
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    最初に3枚の銅版画の話が出てきますが、読んで行くとその絵を連想させる部分が他の各章で出てきます。あれはこういう意味やったのか、と腑に落ちる。何回読んでも飽きない作品。

    0
    投稿日: 2023.10.15
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    美しい文章で綴られる幻想的なお話。冒頭の「銅版」の話がいい。深夜営業している画廊という時点で現実離れしている。冬寝室と名付けられた銅版の絵のルーツを推測していく件に魅せられる。 その後のエピソードはぼんやりと読んでしまったので、ぼんやりとした印象しかない。

    1
    投稿日: 2023.08.20
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    循環する物語。冬は生き物が静まる季節。しかし、やがて春が来る。夜になると、人は眠る。しかし、やがて朝を迎える。人も犬も、生きて死ぬ。しかし、やがて新たな生命が産まれる。死も夜も冬も永遠ではなく、いつか明けていく。眠りについた者たちの思いとともに、明日を生きよう。

    1
    投稿日: 2023.04.20
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    山尾悠子が2003年に発表した2作目の書き下ろし長編小説の文庫版。旅の途中、深夜に訪れた画廊で見かけた銅版画から始まる物語です。極限までそぎ落とした文章で、おいそれと簡単には物語に近づくことのできません。じっくりと考えながら咀嚼して味わうことを要求されます。日本にも、こんなに素晴らしい幻想文学が存在するのかと驚きました。

    3
    投稿日: 2022.12.05
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    ディストピアみのある幻想文学連作集。 日本が舞台らしき部分をもうちょっとくわしく!って感じに惹かれました。

    0
    投稿日: 2022.08.05
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    幻想小説の大家、山尾悠子の連作長編。 山奥の館に住む冬眠者と使用人の破滅と再生を描く。 時系列や空間が絶えず移り変わり、「意識の流れ」のような物語の流動性を感じさせる美しい文章。 この作品を簡潔明瞭に批評できる語彙と論理的思考を身につけたい。

    0
    投稿日: 2022.05.04
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     2003年刊。  初めて読む作家の、連作短編集だが、とても不思議な作家・不思議な作品だった。非常に寡作な作家であるらしく、知る人ぞ知る作家、といった存在なのであろうか。3つの賞を同時に受賞した『飛ぶ孔雀』なる2018年の作品があるようだ。本作自体、20年の沈黙を破って、と書いてあり、本当にもの凄く寡作だ。それにしても本書は評価が難しい。  幻想小説ということで、ファンタジックな設定に基づいているのだが、一般的なファンタジー小説のような、当たり前のわかりやすさは全然無い。全改行を乱発しカギ括弧の会話でストーリーを進めていくこんにちのエンタメ小説の流儀とは真逆のやり方で、8割ほどは地の文だし、会話らしいと思ったカギ括弧の連続の部分もよく読めば一人の人物が延々と喋っているだけだったりする。  地の文は驚くほど文学的である。影響を受けているかどうかは知らないが、何と、古井由吉氏の文体を想起させる箇所もあった。文学的に高度な表現で詩的イメージを喚起させてゆくスタイルで、恐らくその面がこの作者の真骨頂であり、作品の価値を高めていると思われる。が、一応ストーリーは進行していく。特に長い「竈の秋」ではどんどん物語が進むのだが、これが非常に読みにくく、次々に視点となる人物が移り変わってゆく書き方も、妙に混乱させられる。この長い一編では登場人物が次々にたくさん登場するのだが、人物の大体の年齢に関して記述が無いため、イメージが掴めない。  ストーリーテリングに関して、この作家はちょっと能力が低いのか、いや、そもそも、そのストーリー自体も、あまり意味のあるものでもないかもしれない。要するにこの作品が目指しているのはドビュッシー風なイメージの連鎖なのだろう。その意味では、巧みな部分が見られるものの、それならこんなに長く書く必要は無いような気がする。  およそエンタメ界隈の読者には全く受けなさそうな小説で、むしろ芸術として理解するべきものと思うが、それにしてはメルヘンチックな設定が邪魔をしてそっち系の読者の注意を惹かなそうだ。ジャンルの面でのこうした曖昧さは、まるで私のワガママな音楽創作のようで、どっちつかずの領域にくすぶって結局ごく一部の受け手にしか評価されない、孤独な創作として閉じこもってしまうのである。  この作品の評価は、私には難しく、読み始めて間もなく「これは凄くいいかも」と思ったものの、「竈の秋」の長さや分かりづらいストーリーテリングなどに接して、やはりどうもつまらないような気もした。

    1
    投稿日: 2022.01.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    目次 ・銅版 ・閑日 ・竈の秋 ・トビアス ・青金石 私が読んだのは国書刊行会版なのですが、図書館から借りるときに「こんな古い本であってますか?」って驚かれたくらい表紙の色も色褪せ布製の表紙もところどころ傷んでいました。 しかしこの本、2003年に出版された、まだ現役の作家の小説です。 この古色蒼然としたたたずまいが、実にこの本にふさわしいと感心したのでした。 連作長編小説と聞いていましたが、強く繋がっている作品もあれば、雰囲気をかすめる程度の作品もあります。 最後に収録されている『青金石』というのがラピスラズリのことですが、ラピスラズリそのものを冠した作品は収録されていません。 全てが絡まっているようなほぐれているような、複雑な距離感でそこにあります。 冬になると冬眠する人たちの、冬眠前の慌ただしい日を描いた『竈の秋』が一番長く、一番難解でした。 多分論理で理解するのではなく、感覚で理解する話なのだと思いますが。 そして多くの人形たち。 それは痘瘡症(感染症)からの身守りも兼ねているらしい、膨大なコレクション。 現在進行形で語られながら、全てが古ぼけて見える。 ゴーストと亡霊は別物で、それらは時に生きている人間とも普通に交流できる。 母と子、姉妹、親戚の女たち。 時系列も空間情報もあやふやになっていき、頭に浮かぶのはただ、青い闇。 光を反射する青ではなく、光をのみ込む青。 フェルメールの青が、ラピスラズリの青だったような…。 だけどそれは多分、一度終焉を迎えたのちに復活するのである。 秋の枯れ葉に始まる春の目覚めのものがたり。 美しく、儚く、たくましい。 今年最初に読むにふさわしい一冊でした。

    0
    投稿日: 2022.01.02
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    銅版・画廊にあった3枚組の銅版画。閑日・冬の館の大台所の少年とゴースト。竃の秋・冬眠する主人たちと準備に忙しい使用人たち。トビアス・冬眠から目覚めたら。青金石・聖人フランチェスコ。 シュールでもありリアルでもあり。最初の銅版画の情景とタイトルの短編、ひととおり読み終わってから見直すと、ああそうか、と思えます。

    0
    投稿日: 2021.05.22
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    作者という幻視者にしか見えない幻想が、読者の想像力をもって読者だけの姿で浮かび上がるという読書の快感。現実を喪失させる嬉しさを存分に味わうことができる。 それこそ小説という媒体、映像のような実像ではない、文章が導く言語化できない幻想の世界がこの本にはある。 極端に言えばそれを味わうことができれば満足できて、考察とか解説とか、この本には必要ないとすら思っている。

    4
    投稿日: 2020.06.21
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    冬に読みたい本でお勧めされて読んだ。 短編集なのですぐ読み終わるだろうと言う考えは甘く、短編とは思えない重厚感。 2週間位読んでたけど、感覚的には凄い長い期間読んでいた気がする。 同じ文を2度読み直し、数ページ戻り、自分の中で物語を何度も噛み砕いて解釈するのにとても時間がかかる。 でも、その分読むのは全身全霊をかけて読まないといけないけれども、噛めば噛むほど味が出る本だった。

    0
    投稿日: 2019.12.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    断片的な語りが、まるで悪い夢でも見ているかのようなループに迷い込ませる。 ‪その全貌が見える頃には虜になっていた。‬ ‪閉ざされた冬から喜びの春への移り変わりが美しく、繰り返す四季のように何度も読み返したい一冊。‬

    0
    投稿日: 2019.08.21
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    幻想のような小説。 言葉の奔流にもがきながらもしがみついて辿り着いたラスト。冬眠者が長い冬を越え、鳥のさえずりを合図に目を覚ましたような、透き通った静寂、淡い光、吹き抜ける春の風を感覚した。

    0
    投稿日: 2019.04.14
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    冬の間に読もうと思っていたけれど、読了は冬の終わりになってしまいました。 でもそれでも、秋に蓄え冬に眠り春に目覚める〈冬眠者〉の物語を読むのには良い季節だったのかもしれません。 寒いのが苦手なので、冬は冬眠したいと毎年思っているのですが、この物語の冬眠者と召し使いたちの不穏な空気はひゅっとなりました。 お話は、世界が終末に向かっているような「トビアス」が好きです。 外国の絵画を見ているような、懐かしい風景をみているような…幻想的なひとときでした。

    0
    投稿日: 2019.02.26
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    『 #危険な読書 』からお初の山尾悠子さん❃ こ、これは…何て作品なの!? 独自の世界観!しかも一筋縄でいかないのよ! 五つの短編が収められていて 一話目はふと眺めていた銅版画に纏わる物語。 続いて二、三目話は銅版画に描かれていた冬眠者の世界が描かれる。 冬眠する一族、その屋敷に仕える使用人達、ゴースト… いいっ!ワクワクする世界観 しっかし、そこまでは分かるんだよ! だけどその後冬眠者という共通点はあるものの 全く違う物語が綴られる。 3度読み返したけど、その理由が理解出来ないぃ! これは時間をおいて再読必須です!

    0
    投稿日: 2019.02.05
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    冬になると鍵をかけた部屋で人形と共に眠る貴族の「睡眠者」と、その屋敷に仕える者たちの物語。 冒頭の版画の世界へ飛び込んだようだった。 繊細で優美で不思議な言葉で敷き詰められていて、ちょっと毒と寂しさがある。 特に79、80ページの料理の描写が最高。

    0
    投稿日: 2018.10.02
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    夜の画廊から、人々が冬眠する館の中へ。 作中のゴーストのごとく、読んでいる私の意識が彷徨った作品。 冬の寂しさ、過酷さが妙に肌に残る小説だった。

    0
    投稿日: 2018.08.14
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    ボルヘス好きと言うとだいたいおすすめされる本じゃないでしょうか。 ...ボルヘスは好きなんだけどなぁ。なんでだろう。

    0
    投稿日: 2018.06.11
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    絵画の中の残酷な御伽噺かと思えば時代も場所も越えてしまう。正直、一読しただけでは追いつけないです。 でも物語の中に流れる空気はすごく好き。すっと匂いや色彩、温度なんかが伝わってくる気がします。 明快な物語を求める方には絶対に向きません。 あと、解説に書かれてるように寒い冬の午後に絶対読まなきゃ駄目だと思います。 秋、冬を巡って春へ続く物語だと思うので、このクソ暑い時期に読んでしまったのは最大の失敗でした… もう一回寝かせて、冬に再読します。

    0
    投稿日: 2017.07.09
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    稀少石のきらめきを思わせる硬質な文章。薔薇窓のように装飾的な舞台装置。山尾悠子の小説を読むのは、ゴシック様式の大聖堂の内部を探索するのに似ている。緻密で入り組んだ構造は、一度で全体像を把握するのを困難にしている。暗がりには冷気が漂い、陰気な亡霊の棲まう気配まで感じるようだ。それだけに、天窓から太陽の光が降りそそぐ時、来訪者は天上の光を仰ぎ見るような感覚にうち震えることになる。 『ラピスラズリ』は、冬になると眠りにつく習性を持つ〈冬眠者〉をめぐる5つの物語である。物語の舞台は、深夜の画廊、中世西欧のシャトー、未来の日本の片田舎、13世紀のイタリアなど、場所も時代もまちまちだ。それぞれの話は微妙につながっているが、説明が極端に少なく、しかも不意に途切れてしまったりするので、読者は想像力をフルに働かせて行間を補わなければならない。そういう作業が苦にならない人しか読破できないが、一度読破したら麻薬のように中毒になる、そういうタイプの作品だ。 *「銅版」/深夜の画廊を訪れた〈私〉は3枚の銅版画に見入っている。絵のタイトルは〈人形狂いの奥方への使い〉〈冬寝室〉〈使用人の反乱〉という。店主の説明を聞きながら、〈私〉は幼いころ母と訪れた画廊で見た別の銅版画のことを思い出す。そのタイトルは〈痘瘡神〉〈冬の花火〉〈幼いラウダーテと姉〉というのだった。 *「閑日」/――これがおまえたちが知ろうとしない〈冬〉なんだよ。大晦日の雪の日、主人の〈冬眠者〉一族が眠るシャトーに向って少年は叫んだ。一方、冬眠の途中で目覚めた少女ラウダーテは夜を彷徨う一人の亡霊と出会う。 *「竈の秋」/シャトーでは冬の棟開きが目前に控えていたが、今年は例年になく不穏な気配があった。何百体ものビスクドール、痘瘡の予兆、シャトー差し押さえのための使者。そんな中、成長したラウダーテは別の亡霊と出会う。ラウダーテの弟トビアは病弱な体に倦み疲れ、輪廻転生を夢見ながら眠りにつく。 *「トビアス」/文明が衰退して数世紀たった日本で、冬眠者の少女は自分の来し方を回想する。いなくなった母、春を待たずに死んでしまった犬のことなど…。 *「青金石」/1224年、アッシジ近郊。死期の近づいた聖フランチェスコのもとに一人の青年が訪れる。冬になると眠ってしまう体質のせいで結婚できず、家族を持つことを望めない青年は、懺悔の後で不思議な体験談を語る。瑠璃色の光に包まれて、春の天使が降臨してきた奇蹟のことを。 「閑日」と「竈の秋」の2篇が物語としてまとまっており、分量からいってもこの2つが本書の中核であることは疑いない。しかし最後の「青金石」を読んで私ははっとした。筋らしい筋はなく、純粋なイメージと言葉だけで紡がれた物語。眠りの底から這い出る際の不快感と、その苦痛を打ち消して余りある目覚めの朝の素晴らしさ。〈冬眠者〉の長い物語が必要だった理由に、ここにきて初めて思い到る。冬眠だけではなく、そのあとに続く〈春の目覚め〉までが主題だったのだ、と。『ラピスラズリ』は、限りなく死に近い仮死のあとに訪れる復活の恩寵を描いた作品ではないだろうか。 そしてそれは、20年の休眠期間を経て執筆活動を再開した、作者自身の心境にも重なるところがあるのかもしれない。

    37
    投稿日: 2017.05.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    不思議な世界観でファンタジー的というか、フィクションでしかありえない雰囲気がよかった。 後書きにもあった、まさに言葉で作られた世界という感じ。 いつもと違う読書体験ができてよかった。

    0
    投稿日: 2017.02.15
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    読み進めるほど、意味不明。視点切替についていけない。終わりまで読むのは諦めた。いずれ、気が向いたら再挑戦しよう。 読書状況に「降参」or「パス」を追加して欲しいな。

    0
    投稿日: 2016.07.13
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    冬眠する人々の物語。ヨーロッパの古典文学のようで、設定や風景の描写はとても美しいのだか、内容が難解で頭の中で理解し、咀嚼していくのが難しかった。

    0
    投稿日: 2016.03.02
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    あらすじを書くのが難しい作品。ストーリーを追うと言うより、物語が1つの絵のように広がっていて、その絵の細部を順々に見ているような感覚を受けました。 舞台となる洋館と広大な庭は、まるでフレスコ画のような古びた美しい景色を思い起こさせます。 一転、登場人物たちはどことなく醜い。優美なドレスに身を包み、美酒美食にふけってぶくぶくと太る館の住人たち。高慢な女主人。優雅な生活の影で仕事に押し潰され、苛立ちを募らせていくめしつかいたち。彼らの姿はとても生々しく人間らしい。宗教画の人物のような、よく見るとぞっとする表情に似ていました。 冬の花火、人形の部屋、そしてラピスラズリと、雰囲気あるモチーフが次々と登場して世界観にのめり込みました。読了後もぼおっと物語の世界にふけってしまう、そんな精密な言葉で構築された作品です。

    0
    投稿日: 2015.08.19
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    http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?amode=11&bibid=TB10070875

    0
    投稿日: 2015.04.14
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    「冬」と「眠り」に引きずられるような幻想小説短編集。 それぞれの話には関わりがあるようでないようで。 片手間で読んでいたのであんまりよくわからなかった。 けど、緻密な文章と薄暗い雰囲気ははよかった。 今度ちゃんと読む。

    1
    投稿日: 2014.12.30
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    ああ・・・ なんて幻想的・・・ いや、幻惑的? 5篇の中短篇の物語からなるこのラピスラズリ・・・ 読み終えた後も、何度かチョコチョコと読み返してみても、この本の全体像がボヤけてしか見えない・・・ 物語のピースをこういうことだろうか?と組み立てていっても・・・ ハッキリした形にならない・・・ 『正解』に近づこうとも近づけない・・・ ああ・・・ でもでも、それはそれで良い気がする・・・ そして、そのせいなのか?読み終えた後のこの余韻たるや・・・ こんな不思議な余韻はなかなか感じられない・・・ 何だか美しいモノを見た(読んだ)ような・・・ ああ・・・ こ・と・ば・に・で・き・な・い! 眠い眠いとなりながら、列車の到着を待つ時間つぶしに深夜営業の画廊に入ると・・・ 三枚組の小さな古い銅版画に目が留まった・・・ タイトルは左から順に、<人形狂いの奥方への使い>、<冬寝室>、<使用人の反乱>となっております・・・ そう言う画廊の店主とその三枚の銅版画について話していると・・・ それにしても眠い・・・ それに、何だか遠い昔にもこんな話をしたような・・・ 右から順に、<痘瘡神>、<冬の花火>、<幼いラウダーテと姉>というのですよ・・・ と物語が始まる・・・ この導入の、最初の1篇に続く2篇3篇の物語はどうやら、その銅版画の物語・・・ 冬になると眠り続けて春を待つ、『冬眠者』の物語・・・ 同じ登場人物と思われる人も現われたりするので、ああ、繋がっているんだな、となる・・・ 銅版画が語っている物語と、銅版画には語られていない物語を楽しめる・・・ さて、次の篇は当然、この続きと思いきや・・・ いきなりぶっ飛ぶ・・・ いつの時代か・・・ おそらく未来の物語・・・ 輝かしい未来ではなく・・・ 薄暗く、廃れた未来・・・ 日本のどこかの廃市での物語・・・ この篇で気づく・・・ ああ、この本は・・・ 銅版画に描かれている物語の本ではなく・・・ この本を通して脈々と連なる『冬眠者』たちの物語なんだ、と・・・ 最後の篇は・・・ 一気に遡って1226年になり・・・ ほのかな温かさを感じさせて終わる・・・ いや、終わるのではなく、始まるのか・・・ いくつかの夢を見て、まどろみから目が覚めたような感じになる・・・ こんな貴重な読書体験を味わえるなんて・・・ この本はオススメ・・・ 冬にこそ・・・

    1
    投稿日: 2014.12.06
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    「ラピスラズリ」山尾悠子◆冬眠する『 冬眠者』、ゴースト、春の目覚めー。導入部分は引き込まれるのですが、それ以降はなんだかふわふわつらつらとした詩を読まされるようで、冬眠者たちと一緒に何度も寝てしまった。絶賛するレビューも多く見られるので、たぶん自分に合わなかったのだろうと思う。

    1
    投稿日: 2014.12.05
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    芸術作品としての小説とはこういうものなのだ、と思いました。わたしの浅い読み方では内容を理解するところまで至っていないのだけれど、美しく、複雑な模様の織物を見せていただいた気持ちになりました。

    0
    投稿日: 2014.11.16
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    繊細かつ緻密な幻想世界という印象だった。しかし、文章があまりに独特なので読みづらく、完全には理解できなかった。機会があったら腰を据えてゆっくり読み直してみたい。

    1
    投稿日: 2014.09.10
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    初読。初山尾作品。タイトルだけで買ったけど、思っていたよりきらいじゃない。でも苦手かもしれない。全部は理解していない。「トビアス」と「青金石」が特に。漠然と、完全な異世界の物語と思ってたら違ったのが意外だった。繰り返し読むと、あの一言はこう言う意味だったのかって分かる瞬間がある。繰り返し読まないと自分にはあらすじすらなかなか追えなかったし、今でもよく分からないんだけど。個人的には「閑日」がすきかな。

    0
    投稿日: 2014.06.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    難しいというより、不思議な本だった。 好き嫌いははっきりと分かれるので、好きという人だけ読めばいいと思う。 「銅板」 画廊で3枚の銅板を見ているというシーン。 絵の画題は右から<人形狂いの奥方への使い><冬寝室><使用人の反乱> そのうち昔、母とここに来たことに気付く。 その時も3枚の絵を見た。 教えられた画題は右から<痘瘡神><冬の花火><幼いラウダーテと姉> 覚えているのは<痘瘡神>の絵のみ。 「閑日」(かんじつ) 屋敷の使用人の少年の話と屋敷の主一家の少女とゴーストの話。 本来、冬は眠っているはずの少女が目を覚まし、現れたゴーストに助けを借りて塔から逃げ出す。 逃げるための助言とともに少女はメダイを手に入れる。 『雪は真白に降り積もる(中略)満開の雪の花火は。』 「竈の秋」 主一家が眠るため準備を進める使用人たちとそれらが崩壊していく話。 「トビアス」 日本らしき場所で一人残された少女の話。 祖母が亡くなり、葬儀のために親族が祖母の持ち家に集まる。従姉妹はみなメダイを持っている。家には祖母のものであった人形が大量に飾られている。古本屋から手に入れた版画を<冬の花火>と名付けたのは「たまきさん」。トビアスは飼っていた犬の名前。 「青金石」 聖フランチェスコの話。 ラピスラズリの青はキリスト教では「聖なる色」とされており、宗教画ではキリストや聖母マリアの衣服が青で彩色されている・・のはたぶん有名ですね。 「銅板」で出てくる絵の物語が「閑日」と「竈の秋」であり、屋敷の主一族の末裔が「トビアス」に出てくる子たちかな?と。 もう一度読み直して、人物相関と時系列を整理したい。

    0
    投稿日: 2014.04.13
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    寒々しい雰囲気に冬の夜に読むのがいいかと。 ただ、独特の世界観のせいか、集中するのに時間がかかってしまった。

    0
    投稿日: 2014.03.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    幻想文学というカテゴリ。画廊に飾られた絵画の話から、世界は一転し、冬眠する謎の一族の興亡へ。軽く重く、緩く早く、つかみどころがなくて随分読むのに苦労した。 解説で千野帽子氏が絶賛しているのを読んで、こういう風に感動すればよいのか、と思うのも変な話だが。浅薄な読み手としては、冬のイメージではイタロ=カルヴィーノの「冬の夜ひとりの旅人が」、冬眠のイメージではムーミンの一族を参考に、こういうのを書く才能にドキドキした。

    0
    投稿日: 2014.01.23
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    好きなタイプの話かと思ったけど、読みづらくて話も入ってこなかった。 残念ながら合わなかったみたいだ・・・。

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    投稿日: 2014.01.06
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    難しかった。 一文一文は美しいのだけどなにを言っているのか、どこに話が向かっているのかわかりにくかった。 解説の、「でもね、小説らしい小説とは、物語の安易な説明や世界観の自動化にまったをかける小説のことではないかと思うのです。」という言葉が印象に残った。

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    投稿日: 2013.10.27
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    本屋さんで偶然に見つけて、タイトルに魅かれて購入。 この作家独自の空間もそうだが、何よりも時間感覚が難解。小説全体の構造把握もまた難渋。初めて読んだ作品だが、よほどじっくりと向きあわないと作品世界には入っていくのは困難。

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    投稿日: 2013.09.23
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    文章は美しくうっとりとするものなのだが、読み物としてのスムーズさ、というか親切さに欠けているので、こういった散文的小説に慣れていない向きには多少つらさが感じられる。

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    投稿日: 2013.06.12
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    あるサイトで「幻想小説おすすめ第1位」だったので読んだが、文章がわかりづらくて挫折。この手の構成に慣れていれば読めるのかもしれない。そして「幻想小説」で澁澤龍彦の著作(『うつろ舟』など)のようなものを期待していたが、これはどっちかというとファンタジー。

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    投稿日: 2013.06.02
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    なんかすごいものを読んでしまった。 連作短編のようなそうでないような。一貫しているのは「冬眠者」がキーになっているということ。 だけど話がきちんとつながっているかというとそうでもない。だけどやっぱりつながっている、そんな不思議な一冊。 なんというか、豪奢で、なのにどこか腐臭が漂っているような、読みながら胸の中がざわざわして落ち着かないような幻想小説。 味わいはまったく違うのにブラッドベリを思い出したのは、ブラッドベリが私の幻想小説の原体験だからかな。 私にとっての幻想小説ど真ん中なお話。 それにしても、すごいものを読んでしまった。

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    投稿日: 2013.05.28
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    文章や雰囲気は素晴らしいしとても好みである。 しかし状況を理解することが難しい場面が多々あり、苦労した。 各連作を貫くテーマも見えているようで今ひとつピンとこないという感じ。 Amazonのレビューなどにあるように、ラストの昇華具合が神がかっている、というようには受け取れなかった。 もう一度読もう。

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    投稿日: 2013.05.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    みなさん高く評価されていてびっくりした。ま、人それぞれだしな。 ゴシックホラー小説ととらえればいいのか。 じつはとても大きな期待とともに読み始めた。 本書ではなく初期自薦傑作選みたいなのをパラ見、文庫売り場に平積みされていた比較的新しい本書なら、入門編としてうってつけだろうと思った。読了後の感想は「うーん………」 残念ながら私には、この作家の表現や描写がことさら美しいとは思えなかった。 この連作集の中で唯一楽しめたのは『トビアス』くらいで、それもあえて上げるならでしかない。 そして、自分的に『竈の秋』がもっともつまらなかったと言わざるを得ない。 舞台設定も投入アイテムもありがち:ゴーストが住む館、冬眠はまぁ置いておいて、“彼”と接触する娘は雇い主側で感受性が鋭い(?)、凍てつく冬、冬眠するものたちが住む閉じられた世界=館の敷地、鉄門、腐葉土、外にはゾンビまで用意されている。 おびただしい数の人形(顔面に細かいひびが入っているビスクドールもまたありがち)、ウォッチャー的立ち位置の召使い、実は悪事を働いていた美形の召使い、病に冒されて変質する召使い、庭師と子ども、双子の老婆、重々しいカーテン、渡り廊下、地震、そしてこれらはすべて竈が見せた…… 盛り過ぎじゃね?(笑) 登場人物にしろ投入アイテムにしろ、描きたい物語のために用意されたに過ぎないため、基本的に「動いていない」。何のためにそこに在るのかまったく伝わってこない。これに尽きる。 この一冊で決めてしまうのは早計かもしれないが、ほかの作品へ食指が動くかどうかは今のところ微妙。

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    投稿日: 2013.04.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    甘美でいてその自然さに思わずため息が出てしまうような文章。何度も読み返したくなる魔力が確かに存在する。 最近の小説はストーリー性ばかりを重視させ、その作品が本である必要性を感じないものが多い。それはそれで良いのだが、こういった活字の素晴らしさで表現されている作品は非常に減ってきているように感じ、同時に少し寂しくもある。間違いなく私の人生の本ベストテンに入る。

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    投稿日: 2013.03.22
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    「画題をお知りになりたくはありませんか」 <冬眠者>のお話。読んでいてそのシーン一つ一つが、頭に浮かんできた。 ただ、場面が細かく移っていくため、一読で理解は難しい。導入部は不思議な世界観で、サクサク読める分少し残念。 また期間をあけて、読み返してみようと思う。

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    投稿日: 2013.03.18
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    世界観にまったく入り込めなかった。 話が理解出来なかった。 もう少し時間が経ったら、もう一度読んでみようと思う。

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    投稿日: 2013.01.04
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    冬眠する人達を巡る、不思議な物語。秋までに食いだめをして、塔に篭り、鍵を掛けて春まで眠りにつく。目覚めてからしばらくは人の手を借りないと動けないほど弱っているし、食べるものも柔らかいものから徐々に通常食に戻さなければならない。他人に依存しなければ生きていけない危うさ、贅沢さ。 余白の多い物語で、想像力が掻き立てられる。崩壊を予感させる、暗く、美しい物語で、私は萩尾望都の世界を思い起こした。が、最後の短編で作者が書きたかったのは実は再生だったことがわかった。

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    投稿日: 2012.11.23
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    幻想小説?初挑戦。世界観とか、わかりにくくて時間かかるけど読み始めると一気に中に引き込まれる。たのしい。 また、真冬読んでみたい。

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    投稿日: 2012.11.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    申し訳ないが、読めなかった。最後まで読みはしましたが、何書いているのか読み取れませんでした。 冬眠者とゴースト、なんていう設定に興味引かれて読んでみましたが、登場人物の設定が全然わからなくて・・・書き方も、前触れも変化もなく立ち位置が変わる(Aの描写なのに、いつの間にかBの描写にすり替わっている)ので何度も読み返し、でも結局よくわからず、でした。あと、先に「この時はまだわからなかった」的なネタばらしというか伏線が繰り返し出てくるのも個人的にはなじめなかったです。 短文というかパーツを切り出せば、表現はすごく綺麗というか硬質で怜悧な文章や、眩惑的な言葉が良いな、と思うところはありましたけど。 書評を見ると、すごく評価高いですね。じぶんにはまだまだ読解力がないのか。

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    投稿日: 2012.11.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    眠っている間、年をとらないという設定は、眠れる森の美女を彷彿とさせた。人間ではないみたい。 「トビアス」で、主人公が生を繋げるために食べたのが苺ジャム、というのも気になった。 何故、苺ジャム? そして、それぞれの物語に出てきた人形の意味とは? 冬になったらもう一度読み直したい。

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    投稿日: 2012.10.20
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    「画題をお知りになりたくはありませんか」。深夜営業の画廊で私が出会ったのは三枚の銅版画だった……。 ”冬眠者”をめぐる連作短篇集。文章の美しさもさることながら、そのイメージ喚起力がハンパない。静謐で儚げで美しいイメージの奔流にただ圧倒され理解が追いつかない。それがもどかしくもあり、心地良くもあり。"Don't think.FEEL! " ってことなのかね。 お気に入りは「トビアス」と「青金石」かな。

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    投稿日: 2012.09.01
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    感覚で読む本だと思う。理解しようとするとけっこうわかり辛い 。私は今まで推理小説読んでも人物がごっちゃになることは滅多に無かったのに、「竃の秋」あたりで人物相関図が必要だと切実に思った。 寒い日、お布団の中で読みたい一冊。

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    投稿日: 2012.08.07
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    「冬眠者」達の話。 ゆるやかに死に向かいそしてそこからまた生まれてくる。生と死のサイクル。 鉱物のように硬くて、どこかはぐらかされるような抽象的な文章。 しかしだからこそ何とも言えない位美しい。 時系列や人物関係が入り組んで迷路のようになった『竈の秋』よりもむしろ『トビアス』『青金石』が好きだった。

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    投稿日: 2012.08.03
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    冬の間眠り続ける冬眠者たちを描いた連作幻想小説。 “静謐”という言葉がピッタリきそうな世界観。 分類はよくわからないけれど、ゴシック小説っていうのはこういう感じなのかなぁ? 読み始めてすぐに、これは萩尾望都『ポーの一族』の世界だ、って思ってからはすっかりそのイメージで読んでしまいました。

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    投稿日: 2012.07.03
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    幻想小説。 「冬眠者」が登場する連作短編集。 第一編では連作の銅版画が登場する。タイトルは分かっているものの、順序や描かれている詳細・背景についてはもはや本来の文脈を離れてしまっていて想像するほかない。 その謎解きともいえるのが第二、第三編。 ここまでは独特の世界観に、一応の流れに乗って読んでいたが、案外場面と時間が交錯し、しかも登場人物が今一つずば抜けた個性の持ち主がいないとあって、案外読むのに力がいる。 さて、先を進むと第四編、第五編は、日本・そして明確な時代設定を持った中世ヨーロッパへと飛ぶ。 落ち葉・枯葉の時期に始まり、冬を耐え、そして春を待つ。 そんな一連の流れはぼんやり掴めたものの、著者の意図している効果を完全にくみ取れたとはとても言えない。 久々に読む小説にしては、少し骨がありすぎた。 通勤電車で読むには勿体ない、静かにじっくり集中して読む繊細な本だったようだ。

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    投稿日: 2012.06.17
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    深夜に見るような、取りとめのない悪夢を人の言葉に落とし込んで昼間にもうとうとできるような、ひたすらぼんやりと時間のあるときに静かな場所で読みたい小説

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    投稿日: 2012.03.30
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    物語は古びた3枚の銅版画から始まります。 冬の間ながい眠りにつく冬眠者と、その世話をする数多くの召使や庭師たち、そして冬のある日、人形の傍らでひとり目覚めてしまった少女に語りかけるゴーストなどなど、尖塔のある大きな館で繰り広げられる、めくるめく物語。 あるいはまた、従姉妹たちの首に掛けられたメダイ、お気に入りのラバー人形を抱きかかえるようにして冷たくなっていた犬のトビ。アッシジの聖フランチェスコと人形職人などが、時も場所も判然としないまま、曖昧な繋がりを見せ始めます。 耽美で退廃的、甘くて儚げ、滅びゆくものの醸しだす官能と寂しさ。この独特の世界観を持つ連作を読みすすむうちに、何度も迷子になってしまいました。まるで、微熱にうなされながら見ている夢のような物語でした。

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    投稿日: 2012.03.22
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    格別敬遠していたわけではないが、 この年になってやっと山尾悠子を読む気になった。 が、遅すぎはしなかった――というより、 人それぞれ、物事には適切なタイミングがあって、 自分にもやっと、そのときが巡ってきたのだと思った。 冒頭の語り手が深夜営業の画廊で銅版画の連作を目にし、 イメージを膨らませていると、店主がそれらの絵解きをする。 後の物語で、 その銅版画のモチーフになったと思しい事件が叙述されるが、 それらの物語が連続・連結しているとは限らない。 ただ、某かの関連を持つことは窺えて、 連屏風を眺めるような印象を受ける。 もしくは物語同士が少し遠い血縁でもあるかのような。 広大な屋敷には、 冬眠する貴族と、彼らを世話する使用人たちの他に、 亡くなって幽霊となった 「ゴースト」と呼ばれる者が徘徊している。 建物内の人間に招かれなければ入室できないというゴーストは、 ひょっとして吸血鬼なのかと、チラと思ったが、 読み進めると、 長い眠りを貪って若さと美しさを維持する住人たちの方が よほど吸血鬼じみていると思えてくる。 使用人たちが季節ごとのルーティン・ワークをこなして 屋敷の秩序を維持する様は、 まさに「種まきと刈り入れのメタファー」【※】であり 「新年を迎えるための通過(パッサージュ)」【※】 なのではあるまいか。 【※】高山宏『殺す・集める・読む』   「テクストの勝利~吸血鬼ドラキュラの世紀末」より引用。

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    投稿日: 2012.02.27
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    千野帽子氏絶賛。上手だとは思うが好きではない絵、という印象。 二つの点で不思議な読書体験だった。 ひとつはビジュアルなイメージ。読んでいると、閉じていない瞼の裏に絵が浮かんでしょうがない。次から次へと、文庫本にプロジェクターがつながっているのか?と思うほど。ただし、明るく楽しい話しよりは暗くて寒い話しが多いので、一緒に体温が下がるような気がして滅入る。 ほんのり暖かさや希望をほのめかす切片もあるけど、雪、冬眠、湿気、滅び、幽霊、転落、曇天、湿気が横溢して戸惑う。 もうひとつは逃げる「意味」。私たちは、ポップ音楽を聞いているとき別に意味を求めたりはしない。歌詞がわからなくてもリズムやメロディが好きならそれで充分だ。なのに、小説を読むとなるとストーリーが全体として持つ意味を求めてしまう。例え悲惨な事件が起きる物語であっても、人間の宿命的な弱さあるいは強さが描かれていたり、主人公がその体験を通して成長したりすると納得する、といった形で。 だけど『ラピスラズリ』に収録されている短編中編はそこからするりとにげていく。 「で?それに意味は?ないの?なかったの?ないのに、単に○○しただけ?」 夢を見たときのあの感じ、といえば伝わるだろうか。 合う人は合う。私には合わなかっただけで。

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    投稿日: 2012.02.16
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    高田馬場芳林堂で人と待ち合わせていて、 平積みになっているのを見つけました。 思わず、購入。 レジ前で、待ち合わせの相手と遭遇。 (2012年1月24日)

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    投稿日: 2012.01.24