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クロイツェル・ソナタ 悪魔(新潮文庫)
クロイツェル・ソナタ 悪魔(新潮文庫)
トルストイ、原卓也/新潮社
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総合評価

42件)
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    このレビューはネタバレを含みます。

    望ましいのは絶対の純潔を続けることであり、徹底的に一夫一婦の原則を守り通すことがいいと考えているトルストイ。道楽は絶対許してはならないというメッセージ性が強い。 「クロイツェル・ソナタ」嫉妬や思い込みが激しく、勢いで妻を殺してしまう。ベートーヴェンの作品だが何度か出てくる。 「悪魔」すざまじい話…性欲っておそろしい。最後の結末はもうひとつ別のパターンもあって、エヴゲーニイはステパニーダを射殺したものがあるとのこと。どっちの結末も救いがない。だめだ。。トルストイ自身の実話も絡んでいるようだ。面白かった!

    0
    投稿日: 2025.10.14
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    この作品は嫉妬に狂った夫が不倫疑惑の妻を殺してしまうという筋書きなのですが、これがとにかくやりきれない小説なんです・・・ この悲劇的な作品は、いかにして生まれてきたのか それには、実はトルストイ自身の家庭崩壊や理想と現実との乖離が大いに関係していたのでありました。

    0
    投稿日: 2024.08.19
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    教育の現場において「政治」「宗教」「性」はどれもいまだにタブーだ。中でも「性」は語りにくい。古文の授業で、恋愛の場面を十代の人に詳しく説明するのはやはり憚られる。しかし、芸術や文学において、それは、避けて通れないどころか、むしろ主題とも言うべきものだ。そしてそれが人間にとって普遍的根元的である以上、「性」を抑圧し封印していてはかえって危ない。「性」を自分の中でどのように位置づけるか、常に誰もが問われている。◆トルストイは、十九世紀から二〇世紀はじめを生きたロシアの作家。代表作は、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など。キリスト教的な人間愛と道徳的自己完成を説いた大作家として知られる。若いころの放蕩を経て、「世界三大悪妻」の一人ソフィアとの間に多くの子供を残し、人生の終盤は、自殺願望を抱えつつ創作したが、一時は作家生活を捨て、最後には列車で移動途中の小さな駅でひっそりと亡くなった。◆『クロイツェル・ソナタ』は、実は、ベートーヴェン作曲のヴァイオリン・ソナタ第九番の通称。彼の全十曲のソナタ中でも最も激しい曲。主人公の妻が音楽家との演奏を楽しむこの曲の第一楽章は、「魂を苛立たせ」「自分自身を、自分の真の状態を忘れさせ、自分のではない何か別の状態へと運び去ってくれる」ものとして語られる。そして、それは妻の浮気心を高め、主人公を激しい嫉妬へと駆りたてる。妻に貞節を求めるあまり、主人公は、悲劇的な結末へと突き進んで行く。実際の事件を下敷きにした『悪魔』も、同じく性と倫理の葛藤を描く作品。◆語りにくいからこそ読むべきテーマに、この作品を通じて向き合ってみてほしい。(K) 紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2014年2月号掲載

    1
    投稿日: 2024.04.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読み終えてきてから時間が経っているのでうろ覚えです。 クロイツェルソナタ  列車で居合わせた、浮気をした妻を惨殺し実刑を受けた紳士が男女間において愛の存在を証明することはできないと主張を挟みながら凶行に至る経緯を赤裸々に告白する。  紳士が語ったことはほとんど覚えてないが彼の主張は一見して女性への偏向として受け取れ実際その通りだが、しかし安易に一蹴するのが躊躇われる一般的な見方を内包しており嫌悪感が湧かない。  妻の浮気相手は若くハンサムで積極性があって人受けも良く妻と共通の話題も持ち出会って早々に紳士は不貞の予感をもったわけだが、そうであるにも関わらずそのことに苦悩しつつも嫉妬や見栄か、彼らを隔離させるどころか我が家に招待し親睦を育むきっかけを与えているのは興味深い。 悪魔  若き領主が独身時代に性欲を抑えきれず領地で逢瀬を重ね結婚を機に自然と関係が消滅した豊満な肢体を持つ既婚女性への性的な欲望が祭りの日に一瞥してから再来し理性では抗しがたく、事あるごとに既婚女性との接触を図ろうとし偶然も手伝って未遂に終わる日々が続き彼に献身的な妻への裏切りに対する苦悩と性欲との狭間で遂には欲望の成就を予感しそれから逃れるために自殺に至るまでの軌跡。  この誘惑は男性からの一方的なものではなく女性からのアプローチや領民の間での既成の事実、それが許される彼の地位といったものもそれを深く根付かせている点が興味深い。あるいは彼を慮って余りある妻の存在が罪の意識の源泉なのかもしれない。

    1
    投稿日: 2023.12.09
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    肉欲への軽蔑の意味が込められているのかもしれないが、殊更に描かれているのは、それへの憧憬も入り混じっているとも思う。 クロイツェルソナタが悲劇を加速させるファンファーレのように作品を生々しく躍動させる。

    0
    投稿日: 2022.09.12
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    クロイツェルソナタとは、ベートーベン作曲のバイオリンソナタ第9番イ長調作品47のこと。私は聞いたことがなかったが、動画を検索して聞いてみると、バイオリン1台とピアノ1台が互いに調和しながら進行していく優雅な曲だった。そう、まるで仲睦まじい男女が目配せながら言葉を交わし合うかのように。 ところで収録2作品のうち「クロイツェル~」のほうは文庫本で173ページ。だが、ある男が列車に乗り合わせた初対面の男性に対し、性欲はすべてに勝るという主張を自分の半生を織り交ぜて語る文体は、サスペンスの要素濃い内容とあいまって、長さを感じさせない。 内容を見ると、ある男の妻の前に若くて気障なバイオリニストが現れ、妻もピアノでその男と合奏するのが楽しみになっていく。一方で性欲の絶対的存在感を信じる夫は、妻と男との間に音楽の結びつき以上の“何か”を感じるようになり、2人に対する嫉妬が徐々に高まっていく…という話。 ある日、夫は長期出張しなければならなくなったので、妻と男とに自分が不在の間は絶対に会うなと念押ししたものの、不穏なものを感じて予定を切り上げ帰宅する。列車が遅れて深夜に家に着いた夫が目にしたものは、夜遅くにもかかわらず仲良さげに演奏する2人だった―― ここで私は、この場面が妻の不貞を夫が証拠としてつかんだ瞬間という一般的評価(と思われる)とは少し違った読後感をもった。 私にも妻がいるし、女性を聖人化するつもりはまったくないのだけれど、妻と男の2人は、夫が不在の深夜という時間であっても、本当に性的関係を最終目的に逢引していたのだろうか?例えば、夫の想像に反し、実は2人は月が美しい夜だったので純粋に演奏を楽しみたかったのだとは考えられないだろうか? トルストイの履歴に照らし、意識的にも無意識にも性欲に支配される男と女が必然的に陥らざるをえない悲劇が描かれたと読むのは簡単。だが、大阪弁でゲスく言うと「愛だの芸術だのって言いながら、結局はアレしかないんかい!」みたいな結末を文豪があえて書いたとは思えない。 だから私は「クロイツェル~」を、性欲の絶対性とそれに結局負けてしまう人間の悲劇を描きながら、性欲に芸術的欲求が打ち勝つ可能性も微量に含ませていたのでは、と考えるのである。 でもそんな読み方では三島由紀夫なんて読めないし。私が浅いだけなのだろうか。

    5
    投稿日: 2022.02.10
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    トルストイは本当に人を殺したことがあるんじゃ無いかと思うような殺しのシーン。 万人が直視するのを避けがちな性の魔力について生真面目に問いただした純潔の文学。

    0
    投稿日: 2021.04.11
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    パウロ・コエーリョの11分間の次に読了。 重たい。そして、ドス黒い。 人間は、性欲に支配されている。 と認めるしかないのか? 綺麗な女性を見れば、姦淫してしまうのが、 男性という生き物ではないだろうか? ただ、女性も男性にモテたいから、 綺麗でいたいのではないだろうか? 毎日、出会う人全てが、ドス黒い性欲に、 支配されている。

    0
    投稿日: 2020.05.07
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    「お前の彼女超ブスじゃん。なんで付き合ってんの?」本人は至って幸せで不安を感じていないので、心ない雑音は全く気にならない。そういう感じの本。毎年決まった月に殺人事件が起こるので、連続殺人記念のお祭りを毎年町で行う。絶叫コンテストで選ばれたクイーンがパレードの主役なので、主人公の女子は今年の最後のチャンスと奮闘する、つもり。してる、つもり。町の外に出たことなく、ゴールを決めてそこを目指してきたが、自我が目覚めてきて、町をあとにするという成長物語。紛れもなくB 級作品であり、素敵な本。

    0
    投稿日: 2018.12.07
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    「悪魔」の方は、田山花袋の「布団」の元祖みたいなお話。文豪も人の子、遺伝子プログラムに打ち勝てたら、それはそれで、プログラムエラーなのかもしれない。実際そういう終わり方。。

    0
    投稿日: 2018.09.24
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    ここで語られる倫理観について、興味も共感も持ちにくいのが正直なところ。小説の内容よりも、小説誕生のエピソードの方が興味深い。 「クロイツェル・ソナタ」は不倫テーマが仇となり発禁となったが、作者の奥方が皇帝に掛け合って出版の許しを得たと。「悪魔」は、作者自身が雇い人の女性に手を付けた実体験を描いた関係上、奥方に気兼ねして生前は出版することがなかったと。 前前世紀の作。小説が世に及ぼす影響度は、現在の想像を超えるものがある。あるいは国民作家トルストイが世に与える影響と云うべきか。

    0
    投稿日: 2015.10.26
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    うーん。トルストイの言葉ってもっと宗教的な感じがしてたけど、これは具体的すぎて刺さるのでなんかきつい。

    0
    投稿日: 2015.10.21
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    トルストイが、性に対する持論を展開する中編2つを収める。 クロイツェル・ソナタは、トルストイが音楽に非常に造詣が深かったのだろうなと思わせる箇所が、随所に現れる。妻がヴァイオリニストと関係を持ったと思う場面、すでに音楽を一緒に演奏したことが、主人には決定的だった。 翻訳も素晴らしく、読みやすい。 (2015.5)

    0
    投稿日: 2015.05.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「愛」とはなにか。 それは一般に語られる愛とは大きく違う。 それが見える者に訪れる苦悩を描く。 愛し合うから、体を重ねる。そんなことは起こりえない。そこに因果関係は存在してはならない。し、するはずもない。ただただ、欲望でしかない。 言語ゲームか、それとも人間の本性か。 果たして回収しどころのない、永遠の苦悩、それを解決できずに、作者、トルストイは死んでいったのだろうか。 また我々もそのように死ぬしかないのだろうか。

    0
    投稿日: 2015.01.01
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    クロイツェルソナタ 電車で乗り合わせた男の話。 始めは『人生論』のような固い一般論から、次第に男の話は熱を帯びて、その一般論をかざすに至った自らの起こした事件について語り、その語りは読み手の感情を揺さぶり始める。妻の死前後辺り以降が秀逸。あー面白かった。 トルストイというと神の視点のイメージがあり、人間そのものの生をじわじわ太く書くのが良さだと思っていた、そして今回読んで実にそうだと思った。やはり一人の人物に語らせ、前半の一般論の証明のような作品のかたちは、テーマというか作者の意図が絞られるというか、どうしてもパンチは軽くなる、そのぶん切れ味は鋭いんだけどね。まぁ、前半の愛論はなくても、後半だけでもすごい読みごたえあるわ、繰り返すけど、やっぱり最後の妻殺すところ。男は妻を愛しているとかそうじゃないとか、まとめられないけど、小説の中には全ての感情が書かれているよ。全然陳腐じゃない。 女はいつの時代も性の対象でしかない、堕落するくらいなら人類滅びろ的な論もぶっ飛んでて新鮮だったし、納得できるものだった。妊娠した妻のために自慰で耐える旦那(おれ)はえらい。文庫の裏側に『性に関するきわめてストイックな考え』ってあって、性とストイックって考えてみると本当に面白い組合せで、やっぱり性に関しても妥協を知らないトルストイが好き。 悪魔 確かに、結婚前にすごくいい思いをさせてくれたセフレ的女と、結婚後に再開したら破滅する。結婚後ってのが大事。別にただ女と付き合ってるだけならそこまでは思わない。しかも嫁も暮らしてる同じ領地内で、毎日会わざるをえないとなると、うーん、想像しただけで掻き立てられるものがある。誰しも小さい悪魔を心のなかに飼ってるんだろう、大きくなっていかないだけで。 誰かの死を期待してしまうのも、改めて人が書いた文章で確認すると恐ろしさがわかる。文庫の収録の順番は逆の方がいいんじゃないだろうか。 伯父さんの『で、別嬪なのかね?』の一言でゲスい感じを表現できるのはさすが。トルストイにもっとコメディ書いてほしかった。

    0
    投稿日: 2014.05.16
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    ベートーヴェンのクロイツェル・ソナタを聞いてから気になって手にとった。 トルストイの作品の中でも”性”について扱う中編二作品を収録。どちらのタイトルも抗いがたい欲望の引き金を象徴している。 特に『クロイツェル・ソナタ』で行われる、列車の長旅の中で行われる人物たちの対話はとてもおもしろく感じた。 どちらの作品もazuki七さんが常日頃感じているように、愛というものをどんな形にするのか、よくわからなくてイライラしてしまう。人間の動物的欲求を克明に描き出していると共に、そんな中でも清くあれと叫んでいるような感じがそれでもしてしまう。 トルストイ自身も愛というものを探していたのかもしれない。

    0
    投稿日: 2013.09.11
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    도르스도이 씨 어떴게 됐나 봐요?ユーモア小説書いたり、ロシアを代表する世界的に有名な「戦争と平和」や「アンナカレーニナ」書いたり、信仰に耽り、禁欲に葛藤したり。。。満足な一生だったと、最期に彼は思えたのか?地位や名誉、お金があっても、果たして本当に幸せだったかは本人しかわからないが、フラクタル。そうでない人もいるだろう。

    0
    投稿日: 2013.05.22
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    純潔に夢見てるトルストイらしい真摯さというか真面目さの見えるお話。罪と信仰と性に関して、理想持つ立場から書き綴られています。 こんな風にキリスト教的な精神の葛藤を題材にした小説は多いけれども、仏教や神道では寡聞にしてあまりそういうのを見かけない気がする。

    0
    投稿日: 2013.05.14
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    クロイツェルソナタ 嫉妬と思い込みから妻を殺してしまった男の独白。 ここまで徹底した独白の小説を読んだのは初めて。物事の経緯やその時々の心情を事細かに描写している。 悪魔 クロイツェルソナタが男性上位な思想によるもの(に私には思える)としたら、こちらはその中にあって、妻に誠実であろうとする主人公の苦悩。 時代や文化やいろいろな背景があるけれど、私はこんなに道徳や嫉妬や宗教にがんじがらめになるのはつらいし、この男たちは面倒くさいと思った。そして、その面倒くさいことで出来上がっているこの小説はとてもおもしろかった。 翻訳もきれいで読みやすく、ところどころ面白い表現があって笑えた。40年も前の訳なのに日本語がちっとも古くない。

    0
    投稿日: 2013.03.31
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    『クロイツェル・ソナタ』の方は光文社文庫で読んだので、こちらは『悪魔』のみの感想をば。 エヴゲーニィという真面目な青年の悲劇。 人間なら誰もが抱くであろう感情に苦悩し敗北してしまった人。 こんなにも苦しんだのに誰一人彼の苦悩を理解しない結末。 もしかしたら、それは現代人にも通用することで、今現代で同じ悩みを持つ人間がいたなら、恐らくその人も誰にも理解されないのではないだろうか…。 エヴゲーニィはあの女性を“悪魔”と言っていたけど、悪魔は常にエヴゲーニィの中に居たんじゃないかな。それは誰の中にも居るだろうものだと思う。 エヴゲーニィとリーザは良い夫婦だと思う。身重のリーザをお姫様抱っこしたシーンが好きです。 表面的な描写しかないけど。 エヴゲーニィが終始かわいそうだった…。 真面目が故に苦しむ人。そして現代ではとても生きていけない人。

    0
    投稿日: 2013.01.12
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    私達夫婦はよく人に言われます「仲がいいですねぇ」なんて。お互い我慢しているだけなんですよ。 それが、良いのか悪いのか悲しいことなのか、なんて考えたり論じたりするのは「行為」が終わればお互い?満たされて、そんな思考は子育てや仕事や区の行事なんかで忙殺され、欺瞞と偽善の世を生き続けているのです。お互いの真の姿なんてとても言えませんよ。 でも、禁欲主義トルストイが、自身の懺悔と苦悩と後悔で綴る人間、男と女、真実の姿。を、見たいならどうぞお読みください。 恋愛中、婚約中、新婚さん、子育て中の方は読まないほうがいいかも。

    0
    投稿日: 2013.01.05
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    描写が見事。展開に引き込まれる。時間の流れ方が柔軟で、しかしそれが自然で効果的。 原卓也氏が強調する、キリスト教倫理から見た堕落の批判というのはあまり賛成できない。少なくとも、そこに作品の眼目は置けない。 いつの間にか陥ってしまっている視野狭窄、追い詰められた憎しみ、昂ぶり、抗せない黒い欲望、倫理との葛藤。その生々しさこそ味わうに足る。性欲を中心に、さまざまな欲望や虚栄心が絡み合いがんじがらめにして追い詰める様子をコンパクトに精緻に描き出した、すごく好きな小説。

    1
    投稿日: 2012.11.05
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    この小説は非常におすすめで5つ星ならぬ6つ星をつけたいくらいです。 なぜなら、あのトルストイの小説にも関わらず、薄い!短編集です。より詳しく言えば、短編が二つです。これは読みやすい。 そして、内容が面白い。男の嫉妬を描かせたら、トルストイか漱石かだと私は思います。 詳しくはこちら http://d.hatena.ne.jp/ha3kaijohon/20120322/1332389523

    1
    投稿日: 2012.03.22
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    裏表紙に書いてある通り、ストイックだった。 もう好きなようにしちゃいなよ。と、言いたくなるほどの苦悩。 トルストイの小説はなんていうか、すごくロマンチックな男が多いというか、女以上に純粋と言うか…でも不誠実。完璧な誠実寄りの不誠実。そこがすごく人間っぽくてたまらないです。

    1
    投稿日: 2012.03.06
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    嫉妬の構造という本で紹介されていたので。 展開的には、寝取られ好きな自分としては興奮した。 わたしは性に関してかなりオープンというか貞操を守らない人間だから真逆の考えっておもしろかった。すごい読みやすかったし好き。 他の作品も読みたいなー

    1
    投稿日: 2011.11.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    トルストイの本って長いから読みたくないと思ってたんだけどこちらはどっちも短編でお手頃。ものすごく恋愛とか性愛に否定的な考えを持っている筆者の自戒的でもある主張がありありと、伝わりすぎるくらい伝わってくる小説。この人本気で「みんなも姦淫だけは絶対に避けたほうが良いよ!人生狂わされるから!」って思ってたのかな。それはそれですごい事だ。あと小説としてはオチがしっかりしてて秀逸。「クロイツェル・ソナタ」のほうは序盤から中盤にかけてまったく場面が移動しないからつまらないけど「悪魔」の方は気にならない。

    0
    投稿日: 2011.08.21
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    評論家筋いわく、世界の文豪の中でトルストイの人物描写は一番完璧らしい。そんな中これらの話は、わりと軽くトルストイ的描写を味わえる作品。結局「悪魔」は人の創りだすものやぜ!

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    投稿日: 2011.05.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    トルストイの性に対するストイックな考えが描かれた「クロイツェル・ソナタ」「悪魔」を収録。 嫉妬に駆られ妻を殺した男の独白による「クロイツェル・ソナタ」。もう一方の「悪魔」は性に対して潔癖な男がもたらした悲劇を描く。

    0
    投稿日: 2010.12.12
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    肉欲が原因で心身を滅ぼした二人の男。一人は嫉妬心のため、もう一人は誠実さのために。この二つのストーリーを並べて読むことで、さらなる面白味が生まれる。

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    投稿日: 2010.09.26
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     トルストイの作品を初めて読んだ。『アンナ・カレーニナ』や『戦争と平和』等大作と呼ばれるものが多いが、かなり長い作品ばかりなので、トルストイの作品を読む気になれないでいたが、この作品は短いものだったので読んでみた。また、ロシアの作風がそうなのかもしれないが、作中人物が管を巻くように、自分の考えを述べると云うのが、ドストエフスキーの作品と似ていると感じた。  どちらの作品も性欲を否定的に捉えたもので、かなりストイックな思想である。  クロイツェル・ソナタでは主人公が、列車の中で自分の妻を殺した経緯を乗り合わせた乗客に語る。おそらくこの作品が書かれた時代は、縁組等によって結婚相手が決まってしまう様な封建的結婚観から、恋愛感情によって結婚相手を決めようとする自由な結婚観へと移っていた時代だったのだと思う。列車で結婚観について議論していたグループの女性が、結婚には愛情という感情がなければならないという考えを述べる。それを聞いていた老人(主人公)は、そのような考え方を否定した上で、人間が一人の人間を長い期間想い続けることはできないと主張する。議論は平行線のまま終わるが、その後にその老人の身の上話が始まる。老人の主張は諸悪の根源は性欲にあると云うものである。それについてはここではあまり触れない。面白いと思ったのは、もし人生に目的があるとしたら、その目的が達成された瞬間に人生が打ち切られなければならない、そしてその達成を妨げているものは様々な欲望であり、その中で最も根深く、悪質なのは性欲だという主張だ。  主人公の身の上話の要点は、結婚し、夫婦生活があまり上手く行かなくなった頃に、妻と音楽と云う共通の趣味を持つ男が現れ、老人は妻の貞操を疑い出すが、妙なプライドから、逆にその男を家に招き、2人を通じさせる様な行いまでしてしまう。猜疑心が募ったところで決定的な現場を押さえてしまい、妻を刺し殺してしまう。妻を刺し殺すところで、自分の行動を制御することはできなかったが、次の瞬間にどのような行動をとり、その結果どのような事態が生じるのかをはっきりと意識していた、そしてその時のことは、短剣を突き刺した時、コルセットを突き破り肉に刺さっていく感覚を覚えているほど、はっきりと記憶していると云う告白が印象的だ。このようなとんでもないことをしでかした時、よく頭が真っ白になって何も覚えていないということがあるが、それは大部分嘘であるように思う。そのようなときは確かに行動を制御することはできないが、逆に感覚や記憶はいやにはっきりとしているものだ。  よく分からなかったのは、老人が妻に刺した後、妻に対して「赦してくれ!」と云うことである。殺すのはやりすぎだとは思うが、その時代の常識は不貞を働いた妻は殺されてもしょうがないという考えだったらしいし、夫婦の不和にしても、老人のほうが全面的に悪いと云うものでも無かったと思う。それとも現場を押さえたと云っても食事をしていただけで、誤解だったかもしれないということか?  『悪魔』の方は割と単純な作品に思えた。結婚以前に肉体的な関係を持っていた女性がおり(と云うよりも肉体的な関係だけの女性)、結婚後は妻に対して誠実に潔白に生きようとするが、その女性に対する性欲が消えることはなく、むしろ募っていく。主人公はその性欲から逃れようと様々な努力をするが、その努力が報われることは無く、自分に信頼を寄せてくる妻に対する罪悪感、周囲の人間に対する羞恥心から、ついにはピストル自殺を遂げてしまうと云うものだ。  自分は結婚や愛と云う様な感情に神秘性や信頼を感じることができないので、このような純潔の思想を支持することができないが、「愛こそすべて」などと云う人はこのような思想を受け入れなければ矛盾していると思った。

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    投稿日: 2010.09.19
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    トルストイなんて読むのは高校生以来。そのときも思ったけどやっぱ真面目だよ。この人の物語は。キリスト教の神は人間に優しくないのではないかと思ってしまう。悪いことをしないためにどうすべきか、悪いことをしてしまったらどんな気持ちがするかはだいたいわかるけどしてしまうのだから、それでもどうして悪いことをするのか、悪いことをしたあとどうのりこえるのかが大事なのでは。

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    投稿日: 2010.01.05
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    伊坂先生の『重力ピエロ』の中で一節が引用されており 興味を覚えたので読んでみた。 男の語る回想で殆どが物語られるのに、読みづらさを感じず つい引き込まれてしまう。 個人的には、愛というものは存在すると思っているし 子孫を残す為の本能以外のことが確かに在ると思いたいのだが しかし人がこの世に存在していなければならないとは けして思わず 寧ろ世界の為には人間などいない方が良いのでは と思う私にとっては、なんとも断定しがたい事実だ。

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    投稿日: 2009.12.31
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    16冊目。 『クロイツェル・ソナタ』 結婚は悪であり、精神的愛の交流などありえず肉体的愛のみが結婚の残滓である。 仲違いと肉の愛情による一字凌ぎの休戦という結婚生活にありながら、妻の浮気に対する嫉妬と妄想に苦しめられた挙句、妻を刺殺した男の独りごち。 結婚前に読み直したい作品ですね。 『悪魔』 一方、結婚生活の素晴らしさを説く後作。 妻の愛を一身に受けながらも、独身時代に遊んだ領地の農婦に対する劣情が冷めず 彼の身体に宿った悪魔を自らと共に弾丸で葬ってしまう地主の顛末を綴る。 この作品にはロシア語のみバリアントが存在するらしいです。農婦ステパニーダという「悪魔」を葬り去り、発狂した主人公が裁判に掛けられるラスト。 個人的にはこっちの方に興味が惹かれるんですが、いつか読んでみたいー。 しかし深読みすると、色欲に苦悩した上自殺っていうこともあり得るんだから浮気も多めに見てくれよwとも読めなくもないんですが。 --- 二作に貫かれているのは徹底した性欲=悪説。ロシアって極端なのが好きなのかしら。 後者はトルストイの実体験を含んだテーマで、妻を慮り死後まで出版を許さなかった作品らしいです。それだけに臨場感もリアリティも横溢しており読み応え大。

    0
    投稿日: 2009.02.12
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    トルストイの中編小説。 これを読むと、いかに彼が潔癖だったかがわかる。 アンナ・カレーニナの結末が彼によって必然だったのもわかる。 でも、説教くさくてあまりすきじゃない。残念。 クロイツェル・ソナタ:狂人が理性的なのは、トルストイがいかに真面目かっていう証拠だと思うな。 悪魔:赤いプラトークの女の登場が鮮やか。そういう気分を捉えるのがトルストイはうまい。

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    投稿日: 2008.09.14
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    「悪魔」について 性欲に対する抗いがたい欲望と苦悩を自らの脳内からそのまま取り出され、皆がいる前でテーブルに広げられたかのような恐ろしい一冊。決して良心的な読後感ではない。男としては、非常に痛い。 エヴゲーニイ(主人公)とリンクしてしまう自分自身をここで告白したくはなかったけれど。 羞恥や懺悔の念を超え、破滅に至ってしまうのもわかる気がして末恐ろしい。 それに加え、妻リーザからの申し分ない愛情が拍車をかけて主人公を追いつめてしまう様がまたさらに痛ましい。

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    投稿日: 2008.09.01
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    クロイツェル・ソナタ 人によって性の捉え方は様々だがここまで 迫真に迫る性にまつわる悲劇の狂気を描いたトルストイはスゴいと思う

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    投稿日: 2008.08.26
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    基督教と言う背景ゆえに行き着いた結論なのか。 そのストイックさ、性に対する極端なまでの抑制は何を生むのか。 自分の内部での闘いはいつまで続くのか。 彼はその禁欲の果てに何があると見たのか。 08/5/27

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    投稿日: 2008.05.27
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    「クロイツェル・ソナタ」は妻を殺した男の自白、「悪魔」は過去の女性関係を断ち切れず苦悩のあまり自殺した男の話。どちらも性愛が破滅をもたらすという点で共通している。 著者の性愛に対するストイックな考えが表現されたこの作品は、やや極端なきらいはあるが、実によく観察された結果の論だと思う。真に迫った描写が実にいい。また、文章が非常に読みやすいのも素晴らしい。

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    投稿日: 2007.12.05
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    嫉妬のため妻を殺した男の告白を通して、惨劇の理由を迫真の筆に描き、性問題に対する社会の堕落を痛烈に批判した『クロイツェル・ソナタ』、実在の事件に自身の過去の苦い経験を交えて懺悔の気持をこめて書いた『悪魔』。性的欲望こそ人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源であるとして、性に関するきわめてストイックな考えと絶対的な純潔の理想とを披瀝した中編2作。

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    投稿日: 2007.05.21
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    人間の性によって身を滅ぼす2つのお話。 性的欲望こそが人間の諸悪の根源であるという考え方。 とても考えさせられる本でした。 「それじゃどうして…どうやって人類は存続してゆけるんでしょうね?」 「なぜ人類は存続しなけりゃならないんです?」 ここの掛け合いに、思わず人類の存続意義を考え直してしまいました。

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    投稿日: 2007.05.06
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    恋することは自然なことさ…そこまで考え込まなくても…とつっこみを入れたくなるようなThe思い込み2作品。いやいやまじめに愛と性についての彼の理想を描いてるんだよね。ちなみにこれは彼の実体験も背景にあるらしい。

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    投稿日: 2006.05.31
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    古本屋で購入したのですが、ISBNがない・・・。表紙と出版社が同じもので代用してます。悪魔が収録されてない版です。

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    投稿日: 2005.12.14