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まぶた(新潮文庫)
まぶた(新潮文庫)
小川洋子/新潮社
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総合評価

162件)
3.6
25
52
57
10
3
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    小川洋子さんならではの素敵な言葉選びと不穏な雰囲気が漂う短編集。。 バックストロークは強烈。まぶたは流浪の月みたいだと思った(まぶたが先です)。2001年にこの物語が存在したんだと思うと不思議な感覚。

    0
    投稿日: 2025.12.14
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    表題を含む短編集 この作者の小説を読むのが初めてのため、他の作品は分からないが、これらの短編の文体が、雨が降ったあとの薄暗い森の中のような湿度と温度を纏っている。 少し怖い話、不思議な話があるが嫌な感じがない。 作中の「不可能な愛が一番美しい」という台詞が心に残った。

    0
    投稿日: 2025.09.30
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    どの物語も、清々しく美しくて、清潔感が有る。前半は、その清潔感の裏に潜む、捉えようの無い不穏な空気や、どこまで深いか分からない闇、恐怖に似た冷たい感覚が際立って押し寄せてくる様な物語。 後半は逆に、その清潔感を使い古されたモノや老いた人間の中にも写し込み、決して新品や綺麗で皺一つないものからは醸し出せない奥行きを表現していて、温かみを感じる物語だった。

    0
    投稿日: 2025.05.30
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    死にたい夜のお供に、小川洋子さんの作品は 最適解な気がする。 パラレルワールドのようなファンタジーに浸かり、 純粋な人々の揺らぎに身を任せる心地よさ。 いつしか自身の心も落ち着いている。 個人的に、村上春樹先生のファンタジー感と似てる気がするんだが。 この発言は各方面のファンからぼこぼこにされそうだけど。

    1
    投稿日: 2025.04.27
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    不穏で美しい。例えるなら廃墟の遊園地みたいな本だと思います。 私は特に匂いの収集からのバックストロークの流れが大好きです。しん、とした閑けさと、現実ではありえないような情景がありありと浮かぶ繊細な描写は、ページを読まなくても思い浮かぶくらい何度も読みました。 私にとっては誰もいない夏休みの、湿っぽいでも冷ややかな図書室を想起させる本です。

    3
    投稿日: 2024.09.04
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    この不穏さが大好き。 どの話もどの人物も何にも自分に共通点が無いのに、なんでかわからないけど地続きで、逆に全部自分事みたい。 難しい表現は何一つない、スッと心に入ってくる書き方も好き。 しばらく小川さんにはお世話になりそうですり

    2
    投稿日: 2024.07.02
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    コスメ広告などに使われるレトロ調のイラストような雰囲気だった。(これで伝わるのか?) 小川洋子さんの小説は印象深い思い出を思い出しているような文章だ。 個人的でひっそりとした感情の動きが描かれているのだけれど、遠い感じがする。主観的なんだけど俯瞰しているような不思議な感じ。

    0
    投稿日: 2024.06.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    どの登場人物も、音もなく崩壊していくようだった。彼らが纏う空気には確実に死が感じられるのに、誰もそれを恐れてはいないように見える。 死とは息をひそめればいつでもそこにあり、生き物が必ず辿り着く終わりの時。でもきっと怖いものではないのだ。 それぞれに悲しい出来事や上手くいかなかった事を抱えながら、今多くを求めず穏やかに生きている人々を見ると、心が静けさに満ちてくる。手の届く範囲の、目の前のものを愛していくことの大切さを教えてくれる。 繋がりのない短編集なのに、全てにどこか共通したものがあった。 「お料理教室」だけは誰も話が通じない感じがして、フワフワして拠り所がない感覚になった。確かなものがいつもあるのに、この話にはそれが無い不安感があった。

    0
    投稿日: 2024.02.28
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    「飛行機で眠るのは難しい」「中国野菜の育て方」「まぶた」「お料理教室」「匂いの収集」「バックストローク」「詩人の卵巣」「リンデンバウム通りの双子」を収録した短編集。 いずれも滑らかで柔らかく丁寧な感触の中に一点、針で、あるいは指の先で突いたかのような闇を含んだ、小川洋子さんらしい作品。個人的に「匂いの収集」が1番わかりやすく好みであった。

    0
    投稿日: 2024.02.07
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    目次 ・飛行機で眠るのは難しい ・中国野菜の育て方 ・まぶた ・お料理教室 ・匂いの収集 ・バックストローク ・詩人の卵巣 ・リンデンバウム通りの双子 小川洋子の小説の体温は低い。 それはひんやりと湿ったものだったり、かさかさに乾いたものだったりするが、決して温かくはない。 たとえひとの命を救ったとしても。 そこに「ない」ものを書くのも上手い。 「ありえない」と言うほど強い「無」ではなく、気づくとそこには「ない」」ものの持つ気配。 この絶妙な塩梅が、心地よかったり不気味だったりと、作品に彩りを与える。 ストーリーを味わう作品集ではないと思うので、具体的なことを書いても意味わからんことになるだろう。 ただ、これらの作品は、現実だとか事実だとかのしがらみとは無縁なところで味わえばよいのだ。 私にとって小川洋子は、エンタメ小説から純文学への橋渡しをしてくれた作家の一人。 未だ純文学はちょっと苦手意識があるけれど、小川洋子を読んだら、また次の純文学を手に取ろうと思えてくる。

    5
    投稿日: 2023.12.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    多くのブグ友さんの本棚にあったのでお取り寄せ。 薄暗い中で物語が進んで、淡々とした中に結末が急にやってくる。寒気を催すような不安のまま置いてけぼりされるような感覚や、忘れていた心の隅の想い出に気づくような不思議な感覚。 「不可能な愛が一番美しいって、昔から言うじゃない?」(飛行機で眠るのは難しい) 朝と夜で野菜の雰囲気はずいぶん違っていた(中国野菜の育て方) わたしたちは宿題を忘れた子供のように立ちすくんでいた(まぶた) 先生は気づいたものを、いちいち口に出さないではいられない様子だった(お料理教室) 匂いに関して、彼女は容赦がない(匂いの収集) 「物事にすべて事情があるとは限らないものね」(詩人の卵巣)

    12
    投稿日: 2023.08.06
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    8話短編の小川ワールド!どの物語もラストはちょっと切なかったり悲しかったりするんだけど、決して悲劇ではない。この人たちの人生は、これからも続いていくんだって終わり方が素敵。「バックストローク」「リンデンバウム通りの双子」がお気に入り。

    1
    投稿日: 2023.03.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    不思議な世界観すぎて置いてけぼりになった 解説と最後の話でエモさあふれた . たとえ身体が居間とキッチンに分かれたとしても、影だけは離れず、二つぴったりと寄り添い合い、一続きの輪郭を成しているようだった。

    0
    投稿日: 2023.03.17
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    どこにでもあるふと立ち止まることのない人たちの瞼の裏にしかないような強烈な景色が、日常や普遍的な平凡さとミルフィーユみたいに重なって、なんともいえない感動を覚える。 「リンデンバウム通りの双子」は静けさで溢れていて、強い言葉も表現もないのに、まぶたの裏に焼きつきそうな衝撃と強さがあった。 著書を翻訳してくれている人であるにせよ、それだけだった人。でもその双子には、瞼を閉じるたびにきっと浮かぶ苦しみや地獄があって、平坦で本当はきっと1日1日が長い日々があって、戻らない幼い日々があって。 美味しいスープの香り、病院に差し込むあたたかい日、可愛い妹とのいたずら、父が大事にした顕微鏡。。。 まばたきするたびに、美しい風景が、悍ましい風景が、人からしたら大したことのない風景が、カメラのシャッターのように見え隠れする。 人生は一回しかなく、その日、その一瞬を、一本の道のように生きてるはずなのに、その人は1人しかいなくて、誰でもどこにでもいるはずなのに、その中には、そのまぶたの中に、さまざまな景色が、時間が、風景が重なって時は進み、苦しさと優しさと、暴力とあたたかさが、荒廃と永遠が、ぱちりぱちり、と層を重ねていて。 そういうミルフィーユの時の中で、複雑な時空の中で、私たちは生きている。 あの人もこの人も、わたしも、大したことがなくて、つまらないものに見えるけれど、本当はもつと複雑でやさしくて物語と心のミルフィーユがあって。 その人たちの生き方にも日々にも誰にも文句も手出しもできる筋合いなんてなくて。 どうして小川洋子さんは、どんな物語にもとりあげられないような片隅にいる人をこんなふうにそっと掬って、なぞることができるんだろう。 そこに愛が感じられるのはどうしてなんだろう。 どうしたら、こんなことができるんだろう? そんなことを感じました。 小川洋子さん、大好きだなぁ。

    1
    投稿日: 2023.02.19
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    「飛行機で眠るのは難しい」を初めて読んだのは高校の授業。教科書に載っていた。 静かな雰囲気、淡々と描かれる死、生々しい人間の見栄、人生、さみしいような、切ないような、 ずっと忘れられなくて、本を買った。 この話が小説の中で一番好きな私のたからもの。

    0
    投稿日: 2022.10.30
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    図書館で借りて読んだ。 短編集。物語の舞台は異国。そしてストーリーはどれもリアリティのない不思議系。レビューが良くて借りたと思うのだが、読み終わって、私の頭の中はクエスチョンマークだらけ。もっと深く読めば、何か意味が見つけられるのか?少なくとも1回読んだだけの私では無理。

    0
    投稿日: 2022.08.05
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    小川洋子 著 久しぶりに、小川洋子さんの本を読んだ。 (ブクログさんの本棚に見つけ、久々に読む  きっかけをもらって感謝してます!) この小説は8編の短編集として仕上がっている。 1編目の「飛行機で眠るのは難しい」まるでエッセイのようなタイトルで始まる、この物語…、、 ふぅ〜(´∀`*)最初から小川洋子さんの世界に引き込まれて、心持っていかれてしまいましたよ。 もう、やっぱり好きだなぁって思う⁎ˇ◡ˇ⁎ 抗うことの出来ない、小川洋子さんならではのこの空気感、ずっと、浸っていたいような気分になる。 最初、隣り合わせた飛行機の中で、見知らぬ男の人に話かけられ、わたしは嫌な予感がした…読み始めたこちらの方も胡散臭い感覚を覚えながら…、 なんと作品の中の彼女と同じような感覚で男のお喋りに対し、さほど不愉快に感じてないことに戸惑い、それどころか、だんだん興味が湧いて、思わず耳をそばだてて聞いてしまう。(主人公は飛行機の中で、私は本の中で。) なんと、一編目の物語の終わりから、すでに名残り惜しくて、もっとこの話しの中に留まり続けて読みたいのに…って気分になった。(短編集であるが故に短く、集中して物語の世界にいて、気づくとあっという間だった) 2編目 「中国野菜の育て方」 3編目 「まぶた」 4編目 「お料理教室」 5編目 「匂いの収集」 6編目 「バックストローク」 7編目 「詩人の卵巣」 8編目 「リンデンバウム通りの双子」 上記、この8編の短編作で構成される。 どの物語も、空気感というか喩える色合いは同じように伝わってくるのだけど、どれも違うお話で、何処かの外国を背景にしているよう…ドイツの国であったり、ウィーンだったりもする(何にせよ、私にとっては行ったこともない国や土地で頭の中の映像で、それを捉えてるわけだけど(^_^;) それでも、そこは見知らぬ土地で彷徨う感覚。 少し暗くて、時々陽が射す。 ホラーのような怖い感覚でもある、 不思議な場所に迷い込んだような不安な気持ちと何だか落ち着くような違和感。 一つ一つの物語のレビューをするのは難しいので、省きますが、どの物語も面白いです。 すべての物語がどこか共通点を持って現れる そして、物語の主人公は独りで何かと対峙しようとしている。 小川洋子さんの作品は、登場人物の顔ははっきりと見えないのだが、体躯と骨に至る繊細な部分まで、その表情を描くのが、とても上手だと思う。 こちらにその人物像というか一つ一つの表情が伝わってくるような気がする。  少し触れた瞬間にふと、体温を感じて、ビクッと驚いてしまうような感覚がある。 どの編の物語りも味わいがあり、どれも好きな作品集です。 この物語について表すなら、 解説の堀江敏幸さんの言葉が、ぴったり当てはまり、刺さったので記しておきます。 “まぶた。小川洋子は、この薄い膜の開閉ひとつですべてが決まり、すべてが終わってしまうはかない劇を見つづけてきた書き手だが、まぶた、という言葉を作品集全体に冠したことによって、一遍一遍の切なさのかたちがより明確になったと思われる。” ー小川洋子さんが語っておられたある記事を   思い出したのでそれも引用しますー 「“強固な殻の中で、自分とは何かを問いかけ、それを 表現し、自己を高めていったのです。一旦閉じこもるこ とによって、外の世界と適度な距離を取り、自分と一対 一で向き合うことによって、孤独を手に入れる。その孤 独が人を成長させるのだと思います”」 正反対で矛盾する概念を共存させるための、役割を持つ登場人物たちが、色んな場所に現れ、それぞれの事情を抱えているにも拘らず全ての人がある一点を通して紡がれているように感じてしまいます。 そして、この作品の中にも、何故か小川さんの創作活動に強い影響を与えているホロコーストと「アン ネの日記」を彷彿してしまう。 人間に極限の体験を強いたものから生まれでたもの、その行為とその結果…を感じるとることが僅かながら出来るような気がした。 特に「バックストローク」には…その強い思い入れを感じ心に響いた。 久しぶり開いた小川洋子さんの世界観溢れる作品に堪能しながら、短編集でもひとつひとつの話しはそこで終結しているのだけれど、 もっとながく浸っていたいので、次はまた、長編作品を読みたいなぁと思ってしまった。

    29
    投稿日: 2022.03.01
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    不思議な本だった 現実では有り得ないことなのに、読んでいるのは日常の1場面ですごい不思議な感じになった。 【バックストローク】って国語の教科書に載ってるのかな? この話が個人的には1番好き こちらの1冊を教えてくださったブクトモ様に感謝☆

    19
    投稿日: 2022.02.28
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    さて、なぞなぞです。顔の中で鏡を見ても見ることのできない部位はどこでしょうか? う〜ん、鏡に顔を映せば顔の中は全部見えるし、どこなんだろう…改めて考えるとすぐには思い浮かびません。とはいえ、こんな冒頭で時間を取っていたら長いレビューがさらに長くなってしまうので、とっとと答えにいきましょう(笑)。はい、それは『まぶた』です。この作品の書名でもあるので、ピンときた方も多いと思います。私たちが外の世界を見るのになくてはならない”目”。そんな”目”を守る『まぶた』は、その役割の大きさの割にはあまり注目されることはありません。顔の部位の話をしたとしても、”私は『まぶた』が魅力的なんです”とか、”私は『まぶた』があまり好きではないんです”なんて言い方をすることなどありませんし、そもそも話題に上がることさえないと思います。では、普段はそんな脇役中の脇役とも言える『まぶた』がこんな感じで登場したとしたらどうでしょうか? 『切り離されたまぶたは、銀色のトレイに載せられた。二つきちんと並んで。そう、病んで腐敗してゆく肉片には見えなかったよ』。 げっ、ホラーだ。すぐにそんな感情を抱いた人もいらっしゃるかもしれません。こんな文章の先に”キャー!”と言った悲鳴が聞こえる演出がなされれば間違いなくそれはホラーの世界です。しかし、そんな表現の次に出てくる会話が『来週は水着入れを買いに行こう』、『今日、郵便為替は来るかしら』だとしたらどうでしょう。ホラーだ、ホラーだ、と感情を昂らせた読者はなんだか肩透かしを食らわされた気分で、気まずい気持ちを落ち着かせる他ありません。 さて、この作品は、そんな不思議な気分に読者を誘う物語。どこか違和感のある表現が登場しても、登場人物たちはそのことをごく普通のこととして捉える様が描かれていく物語。そして、それはそんな不思議な世界観の描写を得意とされる小川洋子さんによるリアルとファンタジーが同居する物語です。 “現実と悪夢の間を揺れ動く不思議なリアリティで、読者の心をつかんで離さない8編”と、宣伝文句にうたわれるこの作品。表紙に大きく描かれた目を瞑る黒髪の少女のイラストが読む前から読者にどこか緊張感を強いる薄寒い印象をまず受けます。そんな八つの短編に繋がりは全くありませんが、ホラーの世界に少し足を突っ込んだような独特の世界観で物語は描かれていきます。そんな中から〈飛行機で眠るのは難しい〉の冒頭をいつもの さてさて流 でご紹介しましょう。 『飛行機で眠るのは難しい。そう思いませんか、お嬢さん?』と、『隣の男が話し掛けてきた時』嫌な予感がしたのは主人公の『わたし』。『今回の取材旅行に必要な資料をまとめ』ていたら、『結局徹夜になってしま』い、『ささいなことで喧嘩をし』、『二週間も連絡を取り合』えていない『恋人に電話をする暇もなく』機上の人となった『わたし』。そんな機中で『ウィーンへはご旅行で?』と隣の男に話しかけられ、冒頭の予感へと繋がっていきます。『飛行機の中では仕事をしない主義』だと続ける男は、『飛行機の中でうまく眠れた時』『たとえようのない幸福を感じる』と説明します。一方で『オペラ座の取材』の予定を考えると『どうしてもわたしはここで眠って』おかなければいけないと思うものの、『飛行機で気持ち良く眠れたためし』がないと返す『わたし』に、『とにかく目を閉じ』、『眠りへ導いてくれる物語を』その暗闇に映し出すようにと男は言います。そして、『怯えないで、緊張しないで、さあどうぞ、と言いながら』男は奇妙な話を始めました。『十五年近く前です』と始めた男は、仕事でウィーンへと赴く機内で隣り合わせになった老女のことを語ります。『漠然とした危うさを感じさせる、独特の雰囲気を漂わせてい』たという老女は、自分が『ひどい海老アレルギーなの』とその症状を説明します。そして次に『日本は素晴らしかったわ』と、『三十年も文通していた日本人のペンフレンドが亡くなった』ために墓参りが目的で日本を訪れたことを話します。『実際訪れてみると』、『部屋に飾ってあった写真は、私が送ってもらったのとは別人』であるなど、『半分以上は噓だっ』と語る老女。そんな老女は、『私は三十年間、手紙の送り主に恋をしていたの』とも語ります。そんな老女は『かなり小柄で』、『十二歳の骨格を老女の皮膚で覆ったかのよう』だと感じた男。そんな男は不思議なことを語り出しました。『老女が何かに触れると、その品物もまた小さく見えてしまう』というその現象。『ナイフとフォーク、紙ナプキン… 雑誌、櫛、鏡』と、『彼女にふさわしいサイズに縮小する』というその現象。『自分と彼女のナイフを見比べ』ると、『間違いなく同じナイフ』だというその不思議。そんな老女は、今度は男について知りたがり質問を次々と投げかけてきます。『自分が他人から求められている』と、『だんだん気持ち良くなって』きたというその男。そんな中、『うとうとしかけてすぐのこと』というタイミングで『異変が起』こります。老女は、男は、そして『わたし』は…というその後の物語が描かれていくこの短編。短い物語ながら、伏線をきれいに回収しつつも小気味よく展開する物語は、小川洋子さんらしさ満載の好編でした。 八つの短編から構成されたこの作品はとにかく不思議感の強い物語ばかりで構成されています。その中には上記したように少しホラーを感じさせるものもありますが決して怖い!というものではなく、不思議感が強く印象に残ります。その中から一編をご紹介しましたが、他に気に入った短編についてその概要を簡単にまとめておきたいと思います。 ・〈中国野菜の育て方〉: カレンダーの『十二日のところに黒いサインペンで丸がしてあ』るのに気づいた『わたし』は、『丸』をつけた記憶がどうしても思い出せません。そして、そんな日に『見覚えのない…小さなおばあさん』がやってきて『野菜を売りに歩いている』と言いました。そんな『おばあさん』からサービスでもらった『中国の珍しい野菜の種』を育てると、それは芽を出し、『クリーム色の光』を放ちはじめました。 ・〈お料理教室〉: 『キャセロール料理教室』『生徒募集』の広告を見て教室を訪れた『わたし』は、先生に案内され、生徒は『わたし』一人という中で指導が始まります。そんな時『排水管の清掃』業者がやってきて『六十年分の汚れ』を綺麗にすることを、先生の代わりに対応した『わたし』に強く進言します。そして『清掃作業はすぐに開始』されたという中、排水溝から『火山のマグマのように』さまざまななものが吹き出し始めました。 ・〈バックストローク〉: 『雑誌に連載する長編小説の取材で、東欧の小さな町を訪れた』『わたし』は、『ナチス・ドイツ時代の強制収容所』に『収容所の看守とその家族が』使っていたというプールを見つけます。そんな『わたし』は、『水泳の選手だった』弟のことを思い出します。『地元の新聞に写真が載』るなど活躍する弟。そんな弟はある日『僕はコウモリに襲われて死んだんだ』と前世を語り出しました。 といった感じでそれぞれの短編は、一見普通の日常の物語が描かれているようでいて、そこに何かしら違和感のある事柄が語られ、短編自体が不穏な空気を纏いながら展開していきます。この違和感がどう決着されるのか、そこにはこの短い物語の中でよくこれだけ上手くストーリーをまとめるものだと感心するほどに絶妙な物語が描かれていました。 そんな物語では、小川さんらしさを感じさせる演出がさまざまになされていきます。一つには、”モノ”の名前を淡々と列挙していく表現です。例えば〈飛行機で眠るのは難しい〉で登場する『張り裂けるほどに膨れた』老女のかばんの中身についてです。『虫除けスプレー、ハッカ入りのガム、足のむくみを取るクリーム、皺だらけのスカーフ、お土産に買った匂い袋と塗りの箸と扇子…懐紙にくるまれた羊羹の切れ端…』と次から次へと溢れるように記される”モノ”、”モノ”、”モノ”。自分のかばんの中にも入っているかも(汗)と、焦ってもしまいそうな”モノ”たちをあくまで淡々と列挙する小川さん。この作品では、複数の短編でこの表現が堪能できるのも魅力です。そして二つ目は”ある場所へ辿り着くまでの道筋”に関する表現です。〈お料理教室〉で主人公はその教室のある場所をこんな風に説明されます。『ポイントは皮膚科の病院とアコーディオンなんです』と始まり、『縦書きの看板が出ていますけど、皮膚科の膚の字が消えかけて、腐食の腐の字みたいになっている』、そして『アコーディオンの音色が聞こえる』ので、『そこを通り過ぎた突き当たりが、私の教室です』と説明される主人公。一癖も二癖も感じさせるその説明が目的の場所の不思議感をより醸し出させてもいきます。そして三つ目は、この作品を覆うホラー一歩手前の不思議感です。〈詩人の卵巣〉というタイトル自体が緊張感を醸し出すこの短編では、老婆が『お腹のあたりのボタンを』外してそこから『髪の毛を引っ張り出』すという光景が登場します。お腹にある傷跡から伸びる髪の毛。『蜘蛛が糸を吐くように、するすると切れ目なく髪が出てきた』と表現されるその光景は普通には、ホラーの世界です。しかし、小川さんはあくまで淡々と『彼女はそれを糸巻きに取り、機を織った。痛みはない様子だった』と記すのみならず、そこで語られる会話も『これが完成したら、あなたはどうなさるの?』『私の役目は終わりでございます』とその状況を当たり前の日常の光景の一つとして描いていきます。これに読者だけがホラーだ!と怖がったとしたら、その方が間が抜けているとも言えます。と言った感じで、他の作品にも見られる小川さん独自の世界観の物語がこの短編集ではいつも以上に、如何なく発揮されているのが何よりもの魅力だと思いました。 『切り離されたまぶたは、銀色のトレイに載せられた。二つきちんと並んで。そう、病んで腐敗してゆく肉片には見えなかったよ』。 私たちの身体の中で自分の目で見ることのないものが『まぶた』です。そんな普段、意識しない『まぶた』が、単独で目の前にあるという違和感のある光景が淡々と記されていると、それが自分のものでなくとも恐怖の感情が生まれます。このような表現がホラー小説の中にあっても違和感はないでしょう。しかし、それが淡々とあまりに当たり前に描写されていくとしたら私たち読者も心の中で違和感を感じつつもそれを当たり前のこととして捉えるしかありません。また、そんな『まぶた』は、私たちが”目”を使って見ようとする行為を遮る役割を果たすものでもあります。目の前に見えている世界を一瞬にして暗闇へと変える力を持つ『まぶた』。そんな暗闇の世界では目ではなく想像力が暗闇に世界を描いていきます。そう、『まぶた』とは、目で見るリアルな世界と、想像力が暗闇に描き出すファンタジーの世界を薄皮一枚で切り替える役割を果たしてもいるのです。この短編集では、そんな『まぶた』を閉じた暗闇の世界が見せてくれた、何かおかしい、何か不思議、そして何か違和感のある表現が当たり前のように語られる中で、心が不思議な揺さぶられ方をするのを体験できました。 同じ世界観を感じさせる八つの短編で構成されたこの作品。小川洋子さんの魅力をサクッと堪能できる短編集の傑作だと思いました。

    115
    投稿日: 2022.02.14
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    様々な視点からのまぶたの連想は、時として切なく影を感じながらも光に近づくような何処かそんな感覚を思わせるものがありました。 外国でのストーリーも幾つかあり、海外に夢を置く自身にとって一期一会の旅の中での出来事に、日常離れしたまた違ったワクワクもありました。

    1
    投稿日: 2022.01.29
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    不思議な空間。良かった。 堀江敏幸さんの解説が完璧なので、ほかに書くことがない。 どれも印象的だけど、『まぶた』『お料理教室』が特に。

    1
    投稿日: 2021.11.20
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    2021年11月9日読了。 ・ 8編の短編集。 『飛行機で眠るのは難しい』 『中国野菜の育て方』 『まぶた』 『お料理教室』 『匂いの収集』 『バックストローク』 『詩人の卵巣』 『リンデンバウム通りの双子』 『博士の愛した数式』で有名な小川洋子氏による短編集。 著者の作品は初めてだったが… 所謂、小川洋子ワールドと呼ばれるこの感性が自分には合わなかった…。 読後のモヤモヤを解消出来る程の、読解力と想像力の無さを痛感させられた。 ・ しかし 『お料理教室』のカオス具合 『匂いの収集』の狂気さ 『リンデンバウム通りの双子』のなんだか心温まる感じは好き。 ・ 折を見て、再読したらまた何か感じ方が変わるのかもしれない。

    4
    投稿日: 2021.11.09
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    3.5 博士の愛した数式の小川さんってこんな感じの作風なのか。。 少し世間ずれした不思議な人たちのお話たち。 でもどの人たちもありありと想像できる なぞの野菜売りのおばさんの話印象的だなぁ

    0
    投稿日: 2021.10.27
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    どの作品も良かったけど、私が特に気に入ったのは、「リンデンバウム通りの双子」と「匂い収集」です。「匂いの収集」は素敵な恋の話かと思って読んでいたら・・・・。 怖かったです。「リンデンバウム通りの双子」は最後の2行がいいですね。すごーく主人公の気持ちがわかりました。

    1
    投稿日: 2021.10.26
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    まぶた。 ひらがな3文字だと、なんか間抜けな感じ。 目蓋。目の蓋のような役割。 その目で見えているものも、蓋をすれば見れなくなる。 良いものも、悪いものも。 蓋をされた目でも、観えるものは人それぞれだろう。 闇をただ感じるのか、虚飾の世界に埋没するのか、過去失敗したオムレツのとんとんを思い返すのか、 未来に待ってる壁一面の本棚に囲まれた部屋を作りたい夢なんかを。 そう、考えると、目蓋って奥が深いな。

    0
    投稿日: 2021.09.21
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    小川洋子ワールドがなんとも言葉にできないけれど、心地よい。リンデンバウム通りの双子が個人的に大好きだった。

    2
    投稿日: 2021.07.12
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    8つの作品が収録された短篇集で、幻想的で奇妙な出来事を交えながらも、人間という愛らしい存在を感じられたのが、印象的でした。 また、奇妙な出来事を体験した後で、自らの人生を見つめ直すような展開が多いことに、人生とは、何をきっかけにして突然変わるか、分からないものだなとも思えました。しかし、不自然さは感じずに共感できたのは、小川さんの、上品でいて飾らない文体にあるのかもしれません。 こういった上品な奇妙さと、私の人生観には、精神的な距離を隔てているのを感じ、逆に、読んでいて気楽な心地良さがあって、何となく旅行時に持って行きたい本だなと思いました。

    9
    投稿日: 2021.03.26
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    2021年 4冊目 まぶたを巡る短編集 1 飛行機で眠るのは難しい 「飛行機は時間の迷路」 飛行機で居合わせた老婆の死。嘘にまみれた手紙であっても彼女は幸福であった。手紙のなかに、二人だけの真実があったから。 30ページ程度の付き合いだったが、私も彼女の最期に思いを馳せた。 2 中国野菜の育て方 光る野菜なんてあったら、すぐ手放すでしょう。夫婦はもうそれが食べられるかどうかなんてどうでもよく、捨てることができなくなった。 はぐくむ、という字に違和感をもった。夫婦が中国野菜に「飼育」されているような感じ。 3まぶた いつからか、少女はNの家から出なかったのだろうか。歪んだ関係がいいですね。 4お料理教室 軽快な感じと、若干の後ろめたさがあって結構好き。 5匂いの収集 「薬指の標本」と似た感じだけど一番気に入った。枇杷は人肉の味だと昔母から教わった気がする。小川洋子の分かりやすいメタファーが好き。センター試験に出てきそうだなぁなんて度々邪推する。 自分を「保管」したあとは、昔の恋人の欠片は捨ててほしいな。 6バックストローク 肩を手放したことで、弟は解放されたのだろう。家族の絆とは引き換えに。 7詩人の卵巣 8リンデンバウム通りの双子 二人の老人の、静寂とぬくもりを感じた作品。

    1
    投稿日: 2021.01.15
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    「まぶた」なのは表題作だけかとおもったら、収められている短編ぜんぶまぶただった、と解説を読んで気が付いた。すごい。 静かなヨーロッパを感じる話が多かったように思う。

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    投稿日: 2021.01.11
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    「えっ ここで終わるの?」と思ってしまった話がいくつかあった。雑踏の中である人物の後を頑張って追っていたら途中で見失ってしまって、追いかけるのに必死だったもんだからふと周りを見たら自分が今どこにいるのか分からなくなっていて、急に孤独を感じて戸惑う、みたいな。勝手についていって勝手に置いてけぼりになったくせに、「こんなところにひとりで置いていくなよ」と思ってる、みたいな。 『博士の愛した数式』のイメージでこの本を読むとちょっと難しいかもしれない。 「あれ?これ前の話にもあったような?」と思う箇所がいくつかあった。(野菜売り、身を小さくしていれば、ナチス、などなど)坂木司の『短劇』みたいだなと思った。 全部よかったけど、「飛行機で~」「まぶた」「匂いの収集」が特によかった。

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    投稿日: 2020.08.23
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    短編集です。 えっ?という終わり方や、怖い、怖い!という終わり方や、やっぱりそうなるよね。という話があります。

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    投稿日: 2020.03.08
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    不可解な事象を体験しながらも人は誰も不幸だと認識しなければ十分に幸せなのだと感じさせてくれた小川洋子さんの心奪われる8編の物語。『飛行機で眠るのは難しい』嘘は己の内面を着飾る服で愛とも言えるでしょうね。『中国野菜の育て方』光る野菜と謎のおばあさん。『まぶた』少女はハムスターの二の舞から救われたのかもね。『お料理教室』一刻も早く帰りなさい!『匂いの収集』五体満足な内に逃げなさい!『バックストローク』弟よ!あなたを捨てたわけじゃない。『詩人の卵巣』さあ、眠りなさい。『リンデンバウム通りの双子』家族を大切にね。

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    投稿日: 2019.04.30
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    意味不明と片付けてしまえばそれまで、とも言えるようなシュールな世界観。でもそこにはうっとりするような美しさとか、心に引っ掛かるイメージとか、温もりとかが確かにあって、これぞ芸術、文学的文章……という感じ。堀江さんの解説を読むとまたなるほどなあと思います。

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    投稿日: 2019.01.03
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    一見、日常的な風景なのに、いつのまにか非現実な世界に入っていることに気づいた。 小川洋子さんが描く静謐な雰囲気は変わらず。

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    投稿日: 2019.01.03
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    どんよりとした曇り空、じっとりと湿った空気、しんと静かな街、ひやりとした手触り。 ちょっとだけぞくりとするものが垣間見えるような。 ずっと気になっていた本を、物語の役割をきっかけに読む。 私の好きなテイストの小川さん。

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    投稿日: 2018.08.19
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    高校の国語の授業で「バックストローク 」 をやって面白いと思って読んでみた ちょっと難しい 本質には直に触れない感じ

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    投稿日: 2018.07.08
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    とてもするすると読んでしまうのですけれど、この短編集も確かに小川ワールドでした。 何度読んでも大好きな「詩人の卵巣」の眠りの描写が、心にひたひたと染み込みます。軽くはなりましたが、不眠症でもあるわたしの眠りの召し使いは何処に…。 どのお話も死の予感がするのですが、「匂いの収集」の猟奇的な感じも好きです。 「バックストローク」の、弟の片腕が体から離れていく描写も素敵。 お話たちの薄暗さが心地好いです。日常を離れられました。

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    投稿日: 2018.02.22
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    難しいですね。いかにも純文学。 最後の「リンデンバウム通りの双子」を除いては、何らかの不条理が存在します。例えば中国野菜が夜光性だったり、下水から過去の料理の残骸が出てきたり、元水泳選手の腕が取れたり。何かの寓意と言う訳ではなく、作者の何かに対するイメージなのだともいます。 イメージは見事に伝わってきます。そこらの筆力は素晴らしい。でもそのイメージをどう捉えるべきかで悩んでしまう感じです。 どちらも余り読んではいないのだけど、どこと無く倉橋由美子を思い出させる雰囲気です。

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    投稿日: 2017.10.30
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    8編の短編集。まぶたを閉じて現実と夢とが混ざりあっている時のような感覚になる。読後は「?」が並ぶ話ばかりであったし紐解きたいとも思わないけれど悪い心地もしなかったのは文章が読みやすいからだろう。特に「リンデンバウム通りの双子」は雨の憂鬱さと温もりとが感じられ、心も湿った気がした。

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    投稿日: 2016.08.25
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    【私がタイピストになった理由】 私が通う専門学校はもともとタイピスト養成学校だった。今でこそ、IT専門学校などと名乗っているが、昔この場所には女学生が溢れ、溢れ返っているのに皆無口でひらすらに細かい活字の海を飛び回っていたのだ。 小川洋子にタイプライターはとてもお似合いだった。それもとても古くそして、管理の行き届いた美しいタイプライターだ。適度に使い込まれ、それでも汚れてはいないタイプライター。小川洋子がタイプライターという七文字を打ち込む姿を想像しただけで、私は幸せな気持ちになるのだ。私にとってタイプライターは特別な存在になった。小川洋子の作品にはその描写がなくても、いつもどこかでカタカタとタイプライターの音が聞こえるように思える。新しく読む作品の中にその七文字を見つけた時は私は舞い上がってしまった。そして、この作品の中にも幸せな七文字はひっそりと紛れ込んでいる。 私は思う。今でも、タイピストという仕事があったなら、私はなにを置いてもタイピストを目指しただろう。無口で言葉を愛せる仕事にもしもつくことが出来たのなら、とても幸せなのにと夢想した。

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    投稿日: 2016.06.12
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    読友さんの感想を拝見し、小川洋子さんってこういう作風も書くのか?と気になり手に取ってみた。悪夢なのか?それとも現実なのか?そんな感覚を行き来する不思議で奇妙な話が連続する短編集である。フェチや執着心が狂気を誘い、かと思えば心温かくさせて独特の世界観を堪能した。妙な緊張感とモヤモヤ感を併せ持つこの幻想譚こそきっと小川ワールドなのだろう。

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    投稿日: 2016.05.11
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    新聞で紹介されていたのを機に再読、★3.5ですがおまけで★4。手元に過去読んだ本を置いておくとこういった好機に直ぐ読めるというのは捨て難いです。その逆に狭い家がどんどん乱雑になっていくという代償は払わねばなりませんが。 まぁさておき小川洋子の世界が全開。フェティシズム、収集癖等々全てが死に結節する独自の感覚と言って差し支えないんでしょう。そのほとんどが非現実的なお話であるのに、今まさに眼の前にあるような不思議な感じを受ける。 更にさらっと読めてしまうのもこの作家の力量がなせる技かと思われ。

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    投稿日: 2016.05.04
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    とても現実的なのに不思議な世界。だるい夢のような物語が続く短編だが、人物や物事や出来事が少しだけ繋がってるような気がした。女性的、生と死、人間の器官、年寄り、食べ物、クラッシック音楽など、各短編に共通項がある。描写がうまいのであろう、現実にはありえないことなのに頭にぱっと映像が流れる。 個人的には「飛行機で眠るのは難しい」、が好き。

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    投稿日: 2016.01.20
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    奇妙で、面白いという印象から、「バックストローク」から圧倒を抱き始めた。詩人の卵巣、リンデンバウム通りの双子も圧倒的。死に触れるからこそ生を感じる。喪失、欠損から、いま、ここがあることが分かる。だから文学は偉大だ。

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    投稿日: 2015.12.10
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    詩人の卵巣に、ぐっときました。 ひずみにひそむ世界を密やかに書き上げているように思いました。 小川洋子さんを凝縮した一冊です。

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    投稿日: 2015.10.24
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    小川洋子さん、何作か著書のタイトルは知ってたけど読むのは初めて。 静かで淡々とした文章がすっと馴染んで心地よかった。好みの作家さんかもしれない。他の作品も読んでみよう。 「飛行機で眠るのは難しい」と「詩人の卵巣」が好き。

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    投稿日: 2015.07.24
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    日は小川洋子の小説「まぶた」(新潮文庫、2004年)を紹介します。 たまに本棚を整理すると、「なんでこの本買ったんだっけ」という本が出てきませんか? 私にとっては、「まぶた」がまさにそんな一冊でした。本棚整理中に発見したのですが、そんなに小川洋子の小説を読んでるわけでもなく、いつ買ったのかも、なんで買ったのかも全く思い出せなかったのでとりあえず読み返してみました。そして思い出しました。 「まぶた」に収録されている、「バックストローク」という短編がとても良かったので買ったんだ…!と。 「バックストローク」は水泳選手だった弟の話です。読み終わった後、やるせないような、どうにもできないような、かなしいような気持ちになりますが、とても心に残ります。全くうまく説明できませんが、とても短くてすぐに読める本なので、気が向かれましたらぜひどうぞ。

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    投稿日: 2015.07.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    むしょうに読みたくなる小川洋子作品。 【薬指の標本】みたいな雰囲気。 ちょっと怖くて、 ちょっと気持ち悪くて、 ちょっとわくわくする感じ。

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    投稿日: 2015.06.25
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    現実と悪夢、生と死の間を行ったり来たり。まぶたの開閉がシャッターのように瞬きひとつで別世界になりそうな緊張感が心地良い。まぶたを閉じると無限の悪夢、開いたままだとそれは死を意味するのだろうか。色々なフェティシズムを含んでいて興味深い。特に強烈なインパクトのある話はないかも知れないが「まぶた」「匂いの収集」「飛行機で眠るのは難しい」がわりと好み。しかし全体を通しての統一感が凄いと思わされた。やっぱり小川ワールド好きだな。

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    投稿日: 2015.01.21
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    大好きな小川洋子さんの短編集。世界観は相変わらず独特で、らしさを発揮している。 このインパクトのある表紙の本を読んでいる私に「それってどんなお話?」と聞く娘にあらすじをうまく説明できなかった。そんな確固としたあらすじがあるようなないような話が並ぶ。大きな起伏やオチがあるわけではないが、なんとなくその世界にハマっていく感じ。 「バックストローク」が特に印象的。

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    投稿日: 2014.08.21
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    「現実と悪夢の間」という、裏表紙の解説がぴったりの短編集だった。 誰もが持っている眠るための物語、というフレーズが最初の一編「飛行機で眠るのは難しい」に出てきたが、この本に収録されている物語はどれも、それになり得そうだ。

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    投稿日: 2014.06.22
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    安定の小川洋子さん、何気ない描写からも滲みでてしまっている感じの感性、好き 「詩人の卵巣」 が染み渡った

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    投稿日: 2014.04.05
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    【経緯】 小川洋子の短編読んでみたくて 【目次】 •飛行機で眠るのは難しい •中国野菜の育て方 •まぶた •お料理教室 •匂いの収集 •バックストローク •詩人の卵巣 •リンデンバウム通りの双子 【感想】 「まぶた」。現実と夢、対峙と無視、生と死の境界線たりうるもの。 虚構と現実が絶妙に混じり合って、読後なんともいえない共感と気持ち悪さを感じた。後日ひとつひとつの感想を記しておきたい。 【共感】 •ペンパルは現実の辛気臭いことをいうより虚構でも盛り上がったほうがロマンティックで楽しいと思う。赤毛のアンっぽくて好きよ。 【引用】 【不可解】 はっきりとは言わないで、読者に考えさせる感じさせることができる小川洋子って、スゴイ。

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    投稿日: 2014.02.04
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    自分からは遠いけれど、決して非現実的ではなく。世界のどこかで、ひっそりと紡錘がれているような奇妙な話。小川洋子の話を読むと、汽水域、の言葉が思い浮かぶ。海水と淡水がひそかに混じりあった、煩くもなく、落ち着いた世界。そこには海水で生きるものの淡水で生きるものとの生と死が静かに拮抗しつつ、微妙なバランスを保っている。作品の完成度でいうと、「海」の方が綿密で、魅惑的。

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    投稿日: 2014.02.01
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    どれもすこしずつ不思議でしっとりとした雰囲気の短編集。 普通と異常のはざまをゆらいだ感覚になります。

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    投稿日: 2013.10.13
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    表題作を含む8篇を収録した短篇集。ここでは、どの作品もかろうじて日常の空間に踏みとどまっている。だけど、そのもう少し先には異界が待ち構えているような危うさだ。異界の入口までは2歩、あるいは3歩か。表題作の「まぶた」は、文字通り"まぶた"に偏執した物語。フェティッシュの対象としてはきわめて珍しいながら、言われてみれば見事に衝いている感じもある。ここでの物語群は、たとえ光や青空が描かれていても、全体に暗くモノトーンが支配する。巻頭と巻末が暗く冷たいウイーンの物語であるのは、この作品集に統一を与えている。

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    投稿日: 2013.09.24
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    人のからだの描写が印象的な短編集。 登場人物は優しくて、グロテスクで、ときどき嘘をつく。 あらゆるものから攻撃性が排されていて、眠りや違和感や死はただそこに完結されて存在して、そっと周りに影響を与える。 暖かくて、柔らかくて、乾いていて、少しだけざらついた肌触りの物語。 「バックストローク」が、一番好きです。

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    投稿日: 2013.07.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表題作「まぶた」は同著「ホテル・アイリス」の原型なのかな?という感じの短編。小川さんは、惨めたらしいものを惨めたらしく、けれど不快な下品さを感じさせない風に書くのが本当に上手な人だと思う。

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    投稿日: 2013.05.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    短編集なのですが、私には話一つ一つが未完に感じました。どんな話なのか分からず、最初は釈然としませんでしたがタイトルである「まぶた」を考えるとある共通な箇所が伺えました。上手く説明はできませんが、、、まばたきをするだけで光もしくは闇の世界に一瞬にして切り替わります。それをこの本では生と死に置き換えているように思えます。この薄い瞼のように常に死と隣り合わせです。 少し不気味な話があったのでミステリーホラーかなと一度は考えましたが、終盤につれ意味が分かってくると同時に話の一つである「リンデンバウム通りの双子」での父の最後の行動に自分の考えが変わりました。温もりのある本だったんですね。 とてもいい本を読んだ気がします。

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    投稿日: 2013.05.10
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    生と死…深淵なテーマを内包した、小川洋子さんらしさを堪能できる短編集。 小川洋子さんの書く物語を読むと、静かで、霧に煙る、少し寒い異国の街を想起してしまう。石造りの建物には孤独な人達がひそやかに暮らしている。 深読みすればいくらでも深読みできるけれど、私はあまり考えすぎずに、この雰囲気に浸るのが好きだ。時にエロチックで、どこか不吉な、この独特な雰囲気に。登場人物達の人生の重さを受け止めて、私の心もずっしりみっしり詰まるような気がする。 巻頭の「飛行機で眠るのは難しい」、巻末の「詩人の卵巣」「リンデンバウム通りの双子」、それに本のタイトルともなった「まぶた」が特に心に残った。切なさが、残った。

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    投稿日: 2013.03.25
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    2013.3/19 まぶたとは。 眠るときに閉じる皮膜。場合によっては、死ぬ瞬間に閉じる皮膜でもある。 この8つの短編は "眠り" と "死" をテーマにしたものだと思う。 その中でも「匂いの収集」「バックストローク」が好き。

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    投稿日: 2013.03.19
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    とても奇妙で不思議な物語。物語の終わりは、どれも着地する場所に戸惑う話が多いけれど、何故か感じたことのないような温かみがある。『バックストローク』が良かった。

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    投稿日: 2012.12.29
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    再読。 ふと思う。「小川洋子が読みたい」と。その瞬間にはすでに、どの作品を欲しているのかも頭に浮かんでいる。目次を見ただけで涎が出てしまいそう。ああたまらない。 73頁目 《どんな時でも彼はわたしを否定しない。すべてを受け入れる。》 否定することは容易い。違うことが当たり前だから、ただそれを認めるだけでいい。けれど、差異をそのままの姿で受け入れることは本当に難しい。意識しても、無意識だとしても。 80頁目 《「ハムスターだよ。彼が見てるんだ。目の病気でまぶたを切り取ってしまったから、目を閉じることができないんだ」》 見たくないものを見続けなければならないこと。見たいものを見ることすら叶わないこと。残酷なのはどちらなのだろう。 116頁目 《彼女は匂いの専門家だ。この世のあらゆる匂いを収集するのを趣味にしている。》 何フェチかと聞かれたら「匂いフェチ」と答えるようにしている。それはたぶん、「香り」でなくやはり「匂い」でなければならない。妙なこだわり。 133頁目 《彼は決して自慢げにではなく、お伽話を聞かせるようにユーモアを込めて喋った。タンスと壁の間や流し台の下では、彼の声は思慮深く響いた。》 内容なんてさほど重要でないことが多い。話し方や話す場所、込める感情や選ぶ言葉でその物語は良くも悪くもなる。 148頁目 《弟は背泳ぎするだけで、わたしの求めるものを何でも差し出すことができた。》 たまに不安に思うことがある。一緒に居て、自分に何ができているのかと。だから言葉にする。少しでも伝わるように、気持ちや感謝やお詫びを何度でも繰り返す。 189頁目 《アルファベットの並ぶページをめくっていると、たとえ両手に収まるわずかなスペースであっても、世界の果てのどこかに、僕のための居場所が確保されているんだと、感じることができた。》 自分の言葉を形にして残すという行為は、結局、自分のためなのかもしれない。 読了。 小川洋子さんの作品を読むと、感想も解説も紹介も、一切が無意味なことに思えてくる。詩や短歌を眺めて「いいなあ」と詠嘆するように、その場限りの余韻だけで満たされてしまう。「言葉の標本」として文字を収集しながら頁を繰っていくのがたまらなく楽しい。

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    投稿日: 2012.12.02
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    ちょっと奇妙な8つの短編集。 う~~~ん。 読み終わってズバリ感想を言うと。。。。 中途半端やな~。(苦笑) なんか全てが全て中途半端でした。 え?これで終わっちゃうの?え?何が言いたかったの? って感じ。 8つの短編は 『飛行機で眠るのは難しい』 『中国野菜の育て方』 『まぶた』 『お料理教室』 『匂いの収集』 『バックストローク』 『詩人の卵巣』 『リンデンバウム通りの双子』 です。 この中でまぁまぁ良かったのは『匂いの収集』かな?最後、お~~こわっ!って感じでちょっとゾッとした。 で、一番イケてなかったのは、表題にもある『まぶた』。 中学生の女の子がこんな大人の喋り方しないだろ~!!って思って、なんだかすっごい読みづらかった。で、あの終わり方。は?って感じ。 なんだかな~。 ま、こんな本もあっていいのかもね。

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    投稿日: 2012.11.28
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    短編集。 どの物語も小川洋子さんらしく、 静かでどこか物悲しいけど心が暖かくなる不思議なお話。 それと、文章が綺麗。 綺麗というか潔癖な感じすらする。 しかし、やはり長編が好き。

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    投稿日: 2012.11.27
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    ファンタジックであり、ホラーテイストの短編集。 『飛行機で眠るのは難しい』 飛行機でとなりあった男の物語を主人公が聞かされる作中作的話。 『中国野菜の育て方』 訪問販売の老婆にもらった中国野菜を育て始めた主人公。 やがて芽吹いたその野菜は怪しい光を発するようになる。 寓話めいた深い物語だと思うが、味わい方が少々わからなかった。 『まぶた』 表題作。 渡し舟で行き来しなくてはならない「島」に住むNと、15歳の私の交流を描いた話。 『お料理教室』 古民家を改装した料理教室に参加した主人公。 風変わりな「先生」と主人公のある日の料理教室の風景を切り取った作品。 とても小川作品ぽいなと思った。 『匂いの収集』 様々な香りを集める「彼女」と「僕」の短編。 サイコホラーの香りを秘めながら、ふたりの愛情の交歓は『薬指の標本』を思い出した。 『バックストローク』 将来を嘱望された背泳ぎ選手の弟を主人公が振り返る話。 これまた寓話的。 『詩人の卵巣』 不眠症のわたしが睡眠薬を持たず訪れた異国で、 詩人の卵巣に生えていた髪の毛で織物をする老婆と出会う話。 あまりピンとこず。 『リンデンバウム通りの双子』 離別した娘と会うためロンドンへ向かう途中に、 自分の著作を長年翻訳してくれている老人のもとを訪れた主人公。 ウィーンで出会った翻訳家は、双子の兄と共に生活していた。 物語の展開よりも、主人公と翻訳家の翻訳を通した交流が描かれる冒頭部分が印象に残った。 郵便受けを介したやりとりが、一作目の『飛行機で眠るのは難しい』と共通に流れるものを感じ取れる。 死をはじめ、病や異質なものを切り出すことで、生きることを浮かび上がらせているのが小川さんの作品かもしれないと思った。 残暑に読んだものの、秋の夜長にこそぴったりかも。 ゆっくり読みたい。

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    投稿日: 2012.10.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    一瞬のうちに取捨選択するシャッター 必要なときには閉じたままの眠りを 場合によっては死をも準備してくれる薄い被膜 薄い膜の開閉ひとつですべてが決まり すべてが終わってしまうはかない劇を書く 光の授受の瞬間に、「まばたき」との「あいだ」に 失われていく寸前のものと、うまれ落ちる寸前のものとを見分ける特異なまぶたで彼女はその光を丁寧におっていくのだ。 上記のすべてはあとがきに記された堀江俊幸の 小川洋子に、『まぶた』にかんする書評だ。 小川洋子の作品にも まぶたを感じ、そのことばたちに 愛を感じたのに、やはり作家、この説明の行かない小川洋子の大事に書きあげてきたものをまた 丁寧につつむのだ。 「まぶた」の存在になんともぞくぞくとした、魅惑や畏怖、ただならぬものを感じたのに、それをうまく表現できないこのむづかゆさのようなものを払しょくしてくれた。 ああ、このことばたちは 書き留めて残したい。

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    投稿日: 2012.09.18
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    どの話も私にはあまり発見がなくてつまらなかった。 最近、何を読んでも面白くないのだけど、 たまたまとった本がダメだったのかしら・・・ やっぱり、たまには安い古本じゃないものを買わないとな…

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    投稿日: 2012.09.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    静かで奇妙な8編の物語を収める。 どれも冒頭からあやしい雰囲気を醸し出しているので覚悟をしながら読むのだが、それでも“その時”になると「あっ…」と息をのむ。 たとえば「匂いの収集」で身体のパーツの入った瓶を見つけてしまう場面、「バックストローク」で弟の腕がもげる場面、「詩人の卵巣」で詩人の死因が明かされる場面。 それらを、登場人物たちのように一方で冷静に、一方でやわらかいまなざしで受け止めることができない。 私にはちょっと小川色が濃過ぎたのか。

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    投稿日: 2012.08.28
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    短編8つ。 どれも独特の雰囲気があるのだけれど、中途半端に終わっているような感じで好きになれなかった。

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    投稿日: 2012.08.23
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    しとしと雨が降っている時に紅茶を飲みながら読みたい。 そんな雰囲気?の小説。 文章の美しさや表現はよかったものの、 話としてはまぁまぁ・・・

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    投稿日: 2012.08.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表紙の絵が少し気味悪くてなかなか読めなかった本。 不思議な雰囲気を持った短編集。 言葉や物語のそこかしこに魅せられるものが散らばっている。

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    投稿日: 2012.07.19
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    『リンデンバウム通りの双子』がよかった。 逆にそれ以外は、老婆や身体の一部など不気味さを連想させる要素による、おとぎ話的なわざとらしさが強く感じられた。その点があまり好みではなかった。 ・飛行機の中で古書商の男が語った「眠りの物語」。死の要素に満ちたその物語とともに私は眠りに落ちてゆく。『飛行機で眠るのは難しい』 ・12日の木曜日に見知らぬ老婆にもらった中国野菜を育てていたら夜中に光るようになった。老婆の畑を訪ねると、そこには駐車場しかなかった。『中国野菜の育て方』 ・レストランの前で倒れている男を助けたことをきっかけに、少女は、島にある男の家に通うようになる。男の家のハムスターにはまぶたがなかった。男が語る話は事実とは信じられない気配がある。『まぶた』 →ホテルアイリス? ・つつましい雰囲気が気に入って通うことにした料理教室での実習中、突然現れた排水管清掃業者に、清掃してもらうことになった。排水口からは流したものが次々と吹き出し、流しは60年分の汚物でいっぱいになった。『お料理教室』 ・彼女は匂いを茶色い小瓶に収集していた。彼女がいないときに棚の一番上を覗いてみると、知らない男の身体の一部が、瓶に収められていた。『匂いの収集』 →薬指の標本? ・作家にとって、プールは特別な風景であった。強制収容所の処刑場近くにある場違いなプール。背泳ぎの選手として将来を期待されていた弟のために、母が庭に作らせたプール。しかし弟は、あるとき左腕を降ろすことができなくなり、ついにその左腕は付け根から抜けてしまった。『バックストローク』 ・恋人をおいて一人で訪れたある街の裏道には、昔の詩人のための小さな記念館があり、そこには詩人の孫である老婆と客引きの少年がいた。記念館の展示ケースに収められていた髪の毛は、詩人の卵巣に生えた髪の毛で、詩人はそのために命を落としたのだった。その夜、ベッドでまどろむわたしの意識の前に、老婆と少年が現れ、わたしは眠りへと誘われていった。『詩人の卵巣』 ・わたしの作品をドイツ語に翻訳してくれていたハインツは、80歳過ぎの老人であり、しかも一卵性双生児であった。ロンドンの娘に会いに行く途中、ウイーンに立ち寄ったわたしは、ハインツ兄弟の人生の話を聞き、思い出の場所を訪れる手助けをした。『リンデンバウム通りの双子』

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    投稿日: 2012.06.11
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    久しぶりの小川洋子作品。 ずいぶん昔に、友人から「お前のまぶたのラインが良い」と言われたことを思い出して、ほうっとなった。

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    投稿日: 2012.04.24
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    淡々としているようで、どこか奇妙な感じのする短篇集。 独特の雰囲気が、何とも小川さんらしいです。表題になっている「まぶた」を始め、どの物語も不思議な後味が残りました。

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    投稿日: 2012.03.03
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    独特。不気味さがあって、気持ち悪さがない。すぱっと終わる。考えされはしないけど、シーンの画像が強く残る。

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    投稿日: 2012.03.01
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    短編集です。収録作品「バックストローク」が大好きで、何回も読んでいます。他の作品も素敵なものばかりです。

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    投稿日: 2012.02.19
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    表題作を含む、8つのお話が収められた短編集です。 表題作の『まぶた』は、『ホテル・アイリス』によく似た話でしたが、あんなに激しくはなく、オチも少し違いました。 どの話も、死、或いは死に近い気配が感じられ、どことなく不安な気持ちになります。 それが、非常に小川洋子さんらしくて、好きなのですが。 凄いな、と思うのが、読み始めてすぐに、彼女の世界にぐっと入り込んでしまうところ。 長編も好きだけれど、やはり、短編が凄く上手い人だなぁ、と、感じました。

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    投稿日: 2012.02.11
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    短編集。小川洋子の淡々とした文は癖になります。ちょっとダークなファンタジー。ミステリ(匂いの収集)は好きだなあ。

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    投稿日: 2012.02.08
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    博士の愛した数式から惚れ込んでしまった小川洋子の短編集。必要最小限の場面描写で物語を綴る小川作品は短編が合う。 それぞれ普通の暮らしをしてきた主人公たちが少し不思議な体験をすることで自分の人生を考え直す。どんな体験をしても生き方を大きくは変えられないが、考える行為が大切なことだと気づかされた。 休日に静かな所で読みたい。

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    投稿日: 2012.02.06
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    現実のようで、すべてが非現実。 白昼夢みたいな心地よさと残酷な鋭利さ。 最後にすっと冷たくなるような。

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    投稿日: 2012.02.01
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    ハードの表紙の方が好き。小川洋子ワールド。 清潔な、というより清廉な?、生々しさとかグロテスクさ、痛々しさ。友部病院で読みたい。 最後から二番目の話が好き。

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    投稿日: 2012.01.31
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    小川さんの書く男性はみんな優しくてスマートですごく紳士なんだけど、時々見せる素の表情がどこかいやらしいと言うか、強かと言うか、妙に人間くさくて好き。

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    投稿日: 2012.01.09
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    読んだ後は少し寂しくなる話が詰まった短編集。小川洋子さんの小説は体の一部だったり、親しくしていた人だったり当たり前のようにそこにあるものを失うお話が多いですね。

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    投稿日: 2012.01.02
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    ・飛行機で眠るのは難しい ・中国野菜の育て方 ・まぶた ・お料理教室 ・匂いの収集 ・バックストローク ・詩人の卵巣 ・リンデンバウム通りの双子 から成る短編集 今まで読んだ小川作品では「わたし」ばかりだったのに、「僕」もでてきてなんだか新鮮でした。 しっとりひっそりと、今のじめっとした梅雨の時期にぴったりの作品集。

    0
    投稿日: 2011.11.28
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    小川洋子さんの作品は、いつもどこか秘密めいた雰囲気が漂っている。ハムスターの描写は、少しだけ怖かった。

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    投稿日: 2011.11.24
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    恐怖と愛情の関係は案外遠くない。感覚器官が鋭すぎて生きづらい人たちしか出会うことのできない世界。表舞台のちょうど反対側、憧れとはほど遠い世界。そこにわたしは確かに憧れている。まぶたの中で、1番好きなお話しはどれだろうと思っても、決められないふしぎ。結局ぜんぶ好きという結論を出して、本を閉じる。

    1
    投稿日: 2011.10.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「僕の手の中に、彼女の死はあったのです。」    --「飛行機で眠るのは難しい」より 8つの短編から成る。 相変わらず、奇妙な世界に足を踏み入れた気分にさせる作家だと思った。 ほんとにところどころなんだけど、情景が安倍公房とかぶるところが見受けられる気がするのは私だけだろうか。

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    投稿日: 2011.10.02
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    気持ち悪い、怖い。 読んでいた時の感覚が、アイヴスの交響曲第1番を聴いている時とそっくりだった。 電車で読んでると、酔った。 物語の中を漂う空気は、本当に作られたものだった。 気持ち悪い。 読み終えたあとに何が残るのか。考えさせられもしない、違和感だけだった。

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    投稿日: 2011.09.09
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    小川洋子さんの短編小説の読後感は夢から覚めたときに「夢か…」と思う感じに似ている気がします。 行間の読ませ方、心象風景や空気ですら感覚に響かせる表現が好きです。同じ言葉を使っているのに、なんでこんなに文章の雰囲気を変えられるんだろう…

    2
    投稿日: 2011.09.09
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    8編が収録されています。 「飛行機で眠るのは難しい」 「中国野菜の育て方。」 「まぶた」 「お料理教室」 「匂いの収集」 「バックストローク」 「詩人の卵巣」 「リンデンバウム通りの双子」 どれも、興味深くひきつけられるのですが、あっけなく話は終わってしまいます。この作家の特徴なのかな。 読み終わった後から、ワンシーンがふとよみがえってきて思い出されてきます。 今回の中では「バックストローク」が印象的でした。

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    投稿日: 2011.09.07
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    短編集でした。 表題作はエロそうでエロくないです。 ホテルアイリスのもととなっているのでしょうか。

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    投稿日: 2011.09.02
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    小川洋子さんの本は、勝手に自分で想像できる部分が多いから楽しい。人によって想像の仕方は異なるだろうから、解説を読むのもまた楽しい。解説を読んで、なるほどと思い、また読み返したくなる。そんな本はなかなかないと思います。 この短編集で特に雰囲気が好きだったのは「お料理教室」。こんなお料理教室あったら、私も行ってみたいなと思いました。 それから、「バックストローク」。小川洋子さんが描く若い男性は、ときにすごく色っぽくて、艶かしい。いやらしい描写があるわけではないのに、姉弟の関係があやしく見えます。(私だけ?!)

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    投稿日: 2011.06.16
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    ふわふわとしていて掴みどころのない話。雰囲気を楽しむ文章だと思う。物語を欲している自分としては、少し物足りない。

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    投稿日: 2011.05.26
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    つかみどころのない文章で、ふわふわと浮かぶまるでとらえどころのない雲のような話だった 面白くって一気に読んだ とてもいい。

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    投稿日: 2011.04.29
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    どれも温かな話だった。 でもどこか寂し気な。 小川洋子さんの作品は長編のほうが好きかも。

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    投稿日: 2011.04.04
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    短編集です どれもちょっとグロくて 不気味でした 嫌いじゃないけど 1編1編がかなり短いので さらっと読めますが 引き込まれるかんじではないかなー バックストローク が一番面白かったです

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    投稿日: 2011.03.27
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    ▼あらすじ 15歳のわたしは、高級レストランの裏手で出会った中年男と、不釣合いな逢瀬を重ねている。男の部屋でいつも感じる奇妙な視線の持ち主は―「まぶた」。 母のお気に入りの弟は背泳ぎの強化選手だったが、ある日突然左腕が耳に沿って伸ばした格好で固まってしまった―「バックストローク」など、現実と悪夢の間を揺れ動く不思議なリアリティで、読者の心をつかんで離さない8編を収録。 ▼感想 七戸優さんのイラストカバーに惹かれて、思わず表紙買い。 表紙の通りの、少しこわくて、奇妙で、読んだ後ぞくっとするおうなお話だった。 個人的には「匂いの収集」がお気に入り。 最後6行から一気に、恐怖感に包まれて支配される。 小川洋子ワールド全開でした。

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    投稿日: 2011.03.06
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    2010.11.17. 久しぶりに読んだ。やっぱり、小川さんの書く端正で静かな文章が好き。少女と老人という組み合わせ、最強だと思う。

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    投稿日: 2010.11.21
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    短編集が収められたこの本は、 小川ワールドが広がってました。 描写に使用している言葉が キレイなあたりは、 主人公たちが 『なにか』に捕らわれてしまうように 読者も一緒に捕らえてしまうみたいです。 わたしの好みは双子のお話♪ ただ、読んでる途中で飽きる可能性もあり。

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    投稿日: 2010.10.23