
総合評価
(45件)| 24 | ||
| 12 | ||
| 0 | ||
| 1 | ||
| 0 |
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
直前にトルストイの『光あるうち光の中を歩め』を読んでいたので、キリスト教の教えとは、信仰するとは、赦しとは、正しさとは… キリスト教について学びながらも疑いながら触れる時間が続いた。 なによりまず、須賀しのぶさん、ほんとにすごい。 物語の組み立てにしても、知識量にしても。なのに読みやすい。 この本を読んだおかげで、わたしはナチス、キリスト教、ユダヤ、第二次世界大戦について何も知らなかったんだなと気づけたことは大きい。もっと知りたい、知っておかなければと思った。 でももう残り150ページを切ったあたりからそれどころでもなくて……なにをどう言えばいいのか分からない。 せめて最後にアルベルトとイルゼが会えたら良かったのになとか思うけど、それはわたしのエゴでしかないしアルベルトは望んでいないこと。 マティアスとひとときを過ごせただけでも良かったのだろうなあ。 あまりに強くて美しく、冷静で隙のない、器用だけど一周まわって不器用にも思えるアルベルト。 許されない罪は罪としてのしかかり、本人も理解している。自分を救うのは自分というアルベルトの言葉にも納得できる。 でもやっぱり、世間一般のいう幸せをもっと味わってほしかった。罪を重ねる必要のない生活を送ってほしかった。外野からそんな風に思われることは望んでないだろうけど。 マティアスになりたかった、の言葉についてもアルベルトからもっと聞いてみたかった。 マティアスのどんなところに憧れて、羨んで、嫌だったのか。アルベルトの言葉で聞きたかった。 マティアスはこの後どのように生きていくのだろう。 きっと、変わらず信仰と疑心の間で揺れながら、でもその視点があるからこそ立派な司祭でいられるのだろう。マティアスが生きている間はまだ、そうできるのではないだろうか。 時代が過ぎるごとにアルベルトのように自分の責任は自分に還るというような考え方をする人も増え、キリスト教との関わり方も変わっていく人も増えるのだろう。今はイベントのときにだけ教会に行くという人も多いと聞くし…… まだまだキリスト教については理解が及ばない部分が多いなあ。 きっとまた読み返すことになる本。 次読むときにはどう思うのだろう。
0投稿日: 2025.10.26
powered by ブクログ2巻を通して、読み進めることがしんどいシーンも沢山あったけど読んで本当に良かった。 あの時代に本当に彼らのように生きた人がどこかにいたのだと思わされた。 最後の2人が対話するシーンはずっと忘れられないと思う。
0投稿日: 2024.09.01
powered by ブクログ読むのにとても集中力の必要な心にずっしりと重い本でした。戦争に翻弄された若者たちの受難の物語り。受難としか言いようのない、その時代に生まれたことだけが不幸な彼ら。バチカン以降は涙が止まらなくてページを捲れませんでした。当たり前ですが奇跡は起こらず。最も神に愛されたのが彼だと信じたいです。
1投稿日: 2023.07.31
powered by ブクログ歴史的背景やキリスト教の考え方含め学ぶことができた。 スケールの大きなストーリーで非常に面白かった。
0投稿日: 2023.05.30
powered by ブクログ人を赦すとは 最後のアルベルトの言葉で マティアスはこれまでのアルベルトへの対峙が間違っていなかったとわかるのでは そんなふうに思われたい そんな生き方をしたい 生き方、考え方 心に響く本でした
0投稿日: 2023.05.03
powered by ブクログラストは圧巻。ラストまでの物語も重くて、苦しくなりもしたけれど、深く深く心を打つ一冊だった。 マティアスとアルベルト、二人の主人公。正反対に見える思想、生き方をしていたけれど、お互いがお互いにどこかで助けられていた。 後半、イルゼが再登場するところからが特に見せ場で、それまで抱いていたアルベルトの人物像が180℃変わっていく。 マティアスを見て、アルベルトは微笑んだ。 そのアルベルトは、マティアスが今まで見てきた無数の顔の中で一番美しい笑顔をしていた、とあった。 この時、マティアスが求めていたアルベルトの救いの願いは聞かれたんだと思う。 タイトルにある「棘」。何を意味しているのか、それがラストで明らかになる。そして思うのは、神様の愛からもれる人はいない、ということ。 素晴らしい作品でした。図書館で借りて読んだのですが、これは手元に置いておきたい一冊。
0投稿日: 2023.04.02
powered by ブクログ敵対する立場で、幾度も運命を交差させてきたアルベルトとマティアス。 この物語の果ては、本当に慟哭という言葉が相応しい。 神は、乗り越えられぬ試練を与えることはない。 …などと言うのも愚かしく感じるほどの、悲惨な殺戮。意味を見出せない戦闘。 今この瞬間も、女性や子供を含めた民間人に銃を向けている兵士たちは、皆こんな心境でいるのだろうか。 そうだとしても、到底受け入れられないのだけれど… 現実になおも続いている侵攻や、防衛のためと称して軍備を増強しようとしている政府。 感想を書くことも出来ず日にちが経ってしまったが… とにかくとてつもなく力のある作品だった。
6投稿日: 2022.12.20
powered by ブクログ第二次世界大戦時ナチス支配下のドイツでかつての同級生2人、ナチス側のアルベルト=ラーセンと迫害される側である修道士のマティアス=シェルノの2人の戦いを描いたお話。2人は互いに対立することもありながら不思議な巡り合わせの中で協力もしつつそれぞれの戦いに挑んでいく。 マティアスは初めから分かりやすく真っ直ぐで、人道的な戦いを行う。 対するアルベルトはナチス側であり悪役かと思いきや彼は純粋に守ると約束していた奥さんを守り切り、同時に助けられるところではマティアスやユダヤ人に手を貸すところもあった人。ロシア遠征ではユダヤ人を大量に虐殺していた訳で、決して善人とは言えないけれど、自分も彼と同じ立場ならどういう行動が取れたかと問われると分からないし、戦時下における善人の定義はわからない。ただ、最後にアルベルトが処刑されることにはマティアスやアルベルトの奥さん含め反発や悲しみを覚える人が一定数いたことは事実。アルベルト本人は気にしてなさそうだけれど、私も読者としてアルベルトの最期は納得いかない気持ちもあり、辛かった。でも今のウクライナ情勢含め、本当に色んなことを考えさせてくれる本だった。
0投稿日: 2022.06.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
出会えてよかったと思えた本。「革命前夜」の方だと思い手に取ったところ、一気に1、2巻と読み終えてしまいました。多くの人を殺したことは、時勢という状況を差し引いても許されないことなのに、それでも彼に救われて欲しいと願いました。けれどそれこそ読者である自分のエゴだとも感じます。 彼がとても人間らしくて、本心が別のところにあったのだと知れたからこそだと思います。 もう一度気持ちが落ち着いたら読み直したい本です。
0投稿日: 2022.06.18
powered by ブクログ戦争の話だと思って読み進めると、信仰の話だった。言い方はアレかもしれないけど、いろんな登場人物の言葉や生き方を通して神・教会・信仰を解釈してみましょうというエクササイズのような読書体験でおもしろかったです。 全体をもっと短く、ドッカンドッカン派手にスピード展開するような小説にしなかったのは、戦争の話としてじゃなく信仰の話として紡いだからなんじゃないかな。 私は映像を脳裏に立ち上げて小説を読むタイプではないけど、このラストの美しく静かなシーンはめっちゃ映画!って感じで浮かんできました。
0投稿日: 2022.05.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
マティアスとアルベルト、かつての親友だった2人の歩んだ道は、分たれたと思えばある一点で繋がり、決して完全に分たれることのない絆がそこにはあったのだと思います。 アルベルトの最後の言葉…確かに彼にとって神は信仰の対象ではなかったかもしれませんが、その分自分信じ、そしてマティアスに心からの信頼を寄せていたのではと思いました。 自分の罪は他でもない自分がすべて背負うものだと、1人で刑に赴くアルベルトの姿。 最初から、こうなることを予期していたかのようで…それも受け入れた上で護りたいものを護ろうとしたかなと思うと、胸の震えが止まりませんでした。 最後はまた繋がった2人の道。 きっとマティアスはアルベルトの想いも背負って、彼は彼の使命を果たすために生きて行くのだと思います。
0投稿日: 2022.04.10
powered by ブクログ須賀しのぶの作品にはいつもああそうだったのかと感じ入るところが多い。ナチスドイツとして世界の悪をすべて飲み込んでいったドイツ国内でヒットラーの側にもそれに相対する側にもさまざまな人間がいたんだろうとは思っていた。1933年以来反対派はナチスに根絶やしにされたのではなく、教会にも司法にも息をひそめながらも、抵抗を続けていたんだと思わせる。その中でアルベルトとマティアスが幾重にも重なり合いながら最後に大団円となるできすぎた結末ではあるが、この過酷な時代を生きた主人公たちを讃えることに異議はない。
0投稿日: 2022.04.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
信条を突き通すために我を変えないのか、信条を突き通すために我を様々に変えていくのか。 勝者が正しいとされた戦後の残酷さをまざまざと感じさせられました。
0投稿日: 2022.02.27
powered by ブクログ先ずはカバー装画に惹かれ、展開の速さ・スリリング・想像も付かないストーリーに圧倒されました。 はっきり言ってとてもとても面白いです。 ナチス政権下のドイツ、イタリアを舞台に、第2次大戦でのユダヤ人虐殺、弱者虐殺をテ-マに、聖職者マティアスとナチス傘下アルベルト、相反する立場ではあるものの実は‥‥ Ⅰ巻 P460《1度、神の存在を意識してしまったものは、どれほど否定しようと、そこから逃れられぬのかもしれない。神によって無垢な魂に打ちこまれた棘は、二度と抜け落ちることはない。》
0投稿日: 2022.01.15
powered by ブクログ障がいのある人やユダヤ人への迫害を阻止しようと、自分の持つ力を出し切る修道士マティアス。ナチスの立場から宗教を弾圧をしてきたアルベルト。 第二次世界大戦の最中、ドイツやドイツに侵攻されていた国で起きていたことを、彼らの目を通して見ているようでした。 それだけでも星5つの価値でしたが、驚きの展開もあり読み応え抜群です。
2投稿日: 2021.08.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読書備忘録589号(上下巻なので)。 ★★★★★。 文句なし。 そして戦争が始まる・・・。 アルベルトはSSの保安部隊アインザッツグルッペンとして、戦時下の反ドイツ分子を処理する。障害者を絶滅させる安楽死作戦、独ソ戦におけるパルチザン狩り。共産主義者、ユダヤ狩り。 一方のマティアスは修道士と、反ナチ組織のレギメントの連絡員として活動する。 舞台は東部戦線からイタリア戦線へ。保安部隊から武装SSに配置転換されたアルベルトは連合軍のイタリア反攻に対応していた。マティアスも徴兵され国防軍の衛生兵としてイタリアモンテ・カッシーノの激戦区に身を投じていた。そして再会・・・。 度重なる絶体絶命の危機をなぜか生き永らえるマティアス。その陰にはアルベルト。アルベルトの謎の行動。 そして戦後。 捕虜収容所の地獄から生還したマティアスは、アルベルトの行動の意味を知ることになる。 そこには、揺るがない信念があった・・・。 そして、部隊が壊滅するなか、こちらも生き延びたアルベルトに対する審判、所謂アインザッツグルッペン裁判が行われる。アルベルトの判決は! 熱い熱すぎるよ!須賀さん。 日本人が戦時ヨーロッパの、しかも宗教的な内容が濃い凄い物語を書けるとは! ただモノではない。笑 上巻ではまだまだでしたが、下巻で一気に★5つ。 ただ、最後50pくらいですべての種明かしをするのであれば、もっともっと伏線をきっちり張っておいて欲しかった。実はこうだったんですよ、ああだったんですよ感が半端なかったことも確か。別に良いけどね。笑
1投稿日: 2021.06.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
二回目読了 初めて読んだ時は最後のコーヒーのシーンで「この期に及んで、アルベルトは自分の欲望を最大限満たすために人を利用する(しかも相手とwin-winになるように)の上手いなー」と感心していたのですが… 読み返してみると若き日のアルベルトはそんな人ではないんですね。大人になって才能に目覚めたのか?良いことか悪いことか分かりませんが。 「たぶん、俺は君になりたかったんだと思う」という言葉は本心なのか、マティアスを満足させるため言ってみたのか、作品を読みながら随分と疑い深くなったのもあって、読めば読むほどアルベルトの考えていることがますます分からなくなってきました。 ただ、私が不味いコーヒーが大嫌いなので思うのですが、コーヒーに対する思いは本心ではないでしょうか(笑) アルベルトのコーヒーの最後の記憶がおかわりしたくなるほど美味しいものであったこと、そのことをマティアスと共有できたこと、一瞬でもマティアスの心を満たすことができたこと、その点については心の底から良かったねと言いたくなりました。 さて、美味しいコーヒー片手にもう一度読み返してみますかね。
0投稿日: 2021.05.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
不意に出会ってしまった名作。 本当に本当に良かった。 マティアスとアルベルトの決して交わらない正義が、その中で交わる出会いと運命が、抗えない時代の流れと力が。 どんどん作品の中に引き込まれていきます。 上下巻で1,200ページを超える大作ですが、絶対に後悔しません。 アルベルトの最期に想いを馳せて、本を閉じてから、ふと、マティアスはまた失ったのかと気が付く。 神は何度も、何度でもマティアスに試練を与え、マティアスもまた何度も、何度でも向き合い越えていくのだろう。 アルベルトの最期が穏やかでありますように。 マティアスの祈りが届きますように、と思わずにはいられない。
2投稿日: 2021.05.03
powered by ブクログ宗教という難しい問題を戦争との関連で語られていてとても勉強になった。ページが多いけど、一気に完読。登場人物それぞれに魅力的があって、女性たちの強さも印象的だった。戦争の惨たらしい描写にも関わらず、冷静に状況をイメージできるのは著者の文章力によるものだと思う。最後、言葉を返せないマティアスを、アルベルトの腕がやんわりと廊下へ押し出した時点で感極まってしまった。そしてラストは限りなく清々しく静謐。時間をおいてまた読みたいと思える小説です。
1投稿日: 2021.01.31
powered by ブクログ信念を持ち、ブレない人が強いんだろうな。 教皇から告解をする赦しを得た場面、強い想いは通じるんだと印象に残った。
0投稿日: 2021.01.24
powered by ブクログ修道士マティアスとナチス親衛隊アルベルトの、本来混ざり合うことのない二人の運命が折々に交錯する。マティアスはそれを偶然と考えていたけれど、最終章で実はアルベルトが仕組んだ必然だったのだと明かされる。 少年時代友人であった二人が後に白と黒の運命を歩むも、実は二人とも白だった、というありきたりな結末にはならない。白というにはアルベルトの手は血に塗れ過ぎていた。 アルベルトに言わせれば、カトリックもナチスも指導者が被指導者に無限の服従を課す指導者原理に基づいたもの。よって二人は似た道を歩いていたとも言える。 二人とも種類は異なるとはいえ信心の心を持ちながら、そこに絶対性を見出せず、マティアスはユダヤ人を救おうとしないカトリック体制へ、アルベルトはユダヤ人を虐殺するナチス体制に持った上部への懐疑を拭えずにいたことも共通する。 アルベルトの妻イルゼの告白から、大恋愛劇としても読める。そこで物語は一転、次に別の真実を告白した男の述懐で更に一転。 最後まで読者を惹き付ける語りに圧倒されっぱなしだった。
2投稿日: 2020.12.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
須賀しのぶ先生の本を手にするのは流血女神伝以来。 読み応えのあるものを書く作家だったと記憶していたが、 期待通りで大変満足でした。 解説によれば、2010年に刊行されたものに大幅な改定を加えたのがこの文庫版であるとのこと。 文庫版はマティアスの視点で書かれていますが、 2010年版の方はアルベルト視点だというので、次はそちらを読みます。 というのも、 アルベルトの行動原理がいまだに理解できず…… マティアスへの憧れがあったのだとはなんとなくわかりますが、 それがどうしてああいった生き方になるのか。 2010年版で答えが見つかることを願って
0投稿日: 2020.11.29
powered by ブクログ歴史的な内容で難しい部分もありますが、読後感は重く感慨深いです。登場人物を通して、その時代の情景が想像できました。いつだって戦勝国が正しい歴史とされる。敗戦の責任とはなんなのか、色々と考えさせられる作品。本当に読み応えがありました。上下巻でここまで完成された内容って凄いです。
0投稿日: 2019.08.12
powered by ブクログ2019.01.21読了 相変わらず、評価が高いのに驚く。 私にとってはなんということのない作品でどこがそんなに皆さんの心を引きつけるのかわからなかった。 まず、あらゆる事にやたら細かく説明がされていて全体像が捉えにくい文章であった。 ドイツ語のカタカナは馴染みづらく人物、地名、その他作品の50%ほどがカタカナで書かれていてなかなか心に入ってこない。 必死について行こうとするから楽しめないんだと思い、テキトーに流し読みし始めた頃に作品の趣旨が頭に入ってくるようになった。 この結末は、昔からよくある気がするので特に感動するものでもなかったが、ナチスとカトリックの関係や今まで知らなかった虐殺の範疇(本作の内容が事実に基づくものならば…)、戦後の連合国によるナチ軍人、ドイツ国民に対する姿勢など始めて知る事柄も多かった。 第二次世界大戦中のナチスの極悪非道さに対する表現よりもキリスト教カトリックのヒエラルキーやシステムについてかなり詳しく述べられているが、そこにあらゆる宗教に対する作者の疑問こそが含まれているのではないか? 私自身この作品の価値はそこにあると思う
0投稿日: 2019.02.22
powered by ブクログ緻密な取材と検証に基づく真実味ある設定と、謎がそれとわからないまま物語が進行し、あとでからくりに気づかされ、読み返して初めて謎と理解できる複雑な構成力。この巻では二人の主人公だけでなく女性の存在が特に印象的で物語にインパクトをもたらしている。「革命前夜」もそうだったが、ミステリーとノンフィクションが混ざったような小説で、早く完結を味わいたいというはやる気持ちや読了後の安堵感と読了ロスの全てを味わえる読み応えのある本。
2投稿日: 2019.01.05
powered by ブクログ戦争中の人々と宗教との関わりの深さがよくわかりました。日本とは全く違うなー。 歴史に残らない人々の感情を垣間見られるのは、小説のいいところだよなーと思いました。
0投稿日: 2018.07.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
第二次世界大戦下のドイツ。かつて親友だった二人が、SS将校と修道士として対峙する。あまりにも重い時代。とてつもなく重いものを背負った二人。戦争の行く末を知っているだけに読み進むのがつらくて、それでも二人の生き様をなめるようにじっくり読んでしまった。後半の『神の棘Ⅱ』は戦闘の描写が多くて本当につらかった…。 ドイツの暗い歴史とドイツ軍に興味のある人はぜったい楽しめるからぜひに! SS将校アルベルト・ラーセンの生き様がとにかくかっこいい!精鋭と名高い部隊を指揮し、終戦を迎えても抵抗し続け、鬼のようだったラーセンが後年部下に慕われる姿に、新撰組の土方歳三をかさねてしまった~~。かっこいい!
0投稿日: 2018.07.03
powered by ブクログ色々なことを感じながら読んだ。 第二次大戦前後のドイツを舞台に、修道士と、ナチス組織の隊員となった2人の幼馴染の半生が描かれる。 様々な要素が複雑に絡み合って、単純に何が善で正義で、何が悪で罪なのかを判断できる状況では全くない。この時代に生きた人たちは、迷い、翻弄され、傷つきながら、必死に生きようとしていたのだなと改めて思ったし、「その後」を生きる私達は、2度と自らこんな状況下で生きなければならないような事態に陥らないようにしなければと強く感じた。 神は耐えられる試練しか与えないというけれど、当時の人々や主人公2人に与えられた試練の重さ、背負わされたものの過酷さに、胸が詰まった。正直、アルベルトの内面というのは私には最後までよく理解できなかったけれど…(彼は半生をかけて神を試し、正義や善が行われることを待っていたのかなぁという気もするけれど、それにしても…) アルベルトとマティアスの2人は結局表裏一体なのかなと思ったり… 信仰という感覚のない私には、当時のカトリック教会がどんな反応をしていたのか、よく知らなかったけれど、政治と宗教についても考えさせられた。 読んで良かった。
0投稿日: 2018.05.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
イルゼにはビックリ!ユダヤ人だったとは。でもって「浮気」がアルベルト承知だったとは!しかも「サズ」だったなんて、マティアスってばオンナを見る目無さ過ぎw フェルシャーの下種な告解にも驚き。じゃあ、そもそもの発端は、お前のジェラシーだったのかあ〜!成る程ね、この告解の伏線でテオのエピソードがあったのね。うーん。物語の構成上の必然性は理解できるけど、キャラクターの重みからするとバランス悪い。後半でもう1つなんかテオ絡みが欲しかった。 でも、コレで「ミステリ」でござい…は無理がある。「実は…」が発覚するのがミステリ、ではないと思うのよね。 若い米兵看守のアルベルト評、「悪い奴じゃないのに融通がきかない」が言い得て妙w
0投稿日: 2017.10.09
powered by ブクログ神の棘 Ⅰ、Ⅱ総じての感想。 ナチスの支配するドイツにおける、マティアスとアルベルトという、ふたりの男の物語。 かつては友と呼べる間柄だったふたりの生きざまを、想いを、この小説で追っているうちに、いつの間にか自分の中の「正義」と「信仰」に対峙することになる。 激動の時代の中で神を信じたマティアス。 最後まで己に従ったアルベルト。 信じるものは、神か。己か。
0投稿日: 2017.09.12
powered by ブクログ「あぁーーー!!」 最後の一行を読み終えた直後、慟哭しました。顔を覆って天を仰いでしまいました。あまりにも、あまりにもアルベルト・ラーセンという男はずるい。ずるくて、愛しく、美質にあふれていて、悲しくなるほどです。 マティアスと同じく、アルベルト・ラーセンという人が、通巻二冊を通しても私にはわかりませんでした。内面は確かに書かれているのに、本心というものがよく掴めませんでした。その、よくわからんアルベルト・ラーセンは、妻から見れば強靭な夫で、マティアスから見れば様変わりしたよくわからん冷徹な男でした。よくわからん強靭で部下からの信頼も厚いアルベルト・ラーセンの内面や憶測が外部の一太刀から語られるたび、ツンデレかよ!と突っ込まずにはいられませんでした。 マティアスの行く先には、かならずアルベルト・ラーセンがいました。アルベルトはまるでマティアスを導くように先まわりして、マティアスを信仰の道へと先導しました。アルベルト・ラーセンは、マティアスにとって、道を示すような人だと思いました。ラストを読んで、なお、その思いは深まりました。 アルベルト・ラーセンはずるい男です。友を自分の理想に引き立てたように、私には思えます。アルベルト・ラーセンの思う、マティアス・シェルノが、最後には残されました。アルベルト・ラーセンはひどい男です。 「なぜおまえばかり」とアルベルトはこぼしました。その先は「神は救うのだろう」と続くのかな、と思いました。もしくは、選ばれるのだろう、かもしれません。 「神の棘」は、羨望の物語でした。羨望、嫉妬がなければ起きなかったことです。でもそれは、人からは、拭い去れない感情です。 神の棘とは愛だと語られています。神の愛は試練で、選ばれて痛みを与えられ、それを乗り越えれば、神の愛に応えられる、ということなのかな。なぜおまえばかり。アルベルトの台詞は、ふとした瞬間に頭によぎりました。 信仰とはいいものだな、とマティアスを見ていて沁み入りました。荒れていたマティアスが手放さなかった信仰、愛は美しく、とてもきれいで、アルベルトの最後の台詞に説得力を持たせています。 一巻はなんとなく読み終えたのですが、二巻はそれはもうのめり込んで読みました。安楽死施設のくだりから、聖体、謁見、叙階、裁判……めまぐるしく、一気に読みました。アルベルト・ラーセンに降りまわされ、アルベルト・ラーセンの幸福を祈って読みました。 最後、アルベルトは幸福だと言いました。本心かもしれないな、と、ここまで書いていて思いました。マティアスとすごした、コーヒーの匂いに包まれた時間。切なく、美しい、もどかしいラストが、読み終えた直後に唸るほど、私は好きです。
0投稿日: 2017.07.22
powered by ブクログ第二次世界大戦下、ナチスの支配するドイツで対照的な立場にある二人の奇妙な運命を描いた作品。誰もが知る「非道」の代名詞である組織を中心にした話とあれば、どうあっても重い物語にはなりますが、それでも先を読ませる筆力、そして主人公ふたりの荒々しい魅力に満ちた作品でした。 「時代」のせいばかりとするにしてもあまりに非情な所業を成してきたアルベルトのひとつの真実が最後に明かされるという意外な展開がさらに深みと最後の場面の余韻を深めています。 余りに多くの命が無碍に失われ、それを自ら執り行ったり、見送るしかなかったという人生は想像することもできない「フィクション」です。 けれどもかつて…いや、今でもきっと、このようなことは続いてしまっているのでしょう。それを思うと、あまりに平和に生きていることの幸せを思わずにはいられません。
0投稿日: 2017.07.22
powered by ブクログユダヤ人大量殺害という任務により、消えない罪を背負うアルベルト。衛生兵として戦地にあり、神への救済を求めながら死んでいく兵士たちを前に苦しむマティアス。 ふたりの男は、歴史の流れに呑まれながら運命の悪戯のように巡り会う。 この作品は物語の進行それ自体は、ほぼ想像通りに進む。 その点だけを見れば、意外性のないつまらない作品とも言える。しかしこの作品に意外性を特に求めず読んでいたため、そこに問題は余り感じなかった。 カトリック教会が時代にあわせナチスを否定したり、ヒトラーを祝福したりと態度を変えたことは、やはり残念だ。 教皇や司教たちであっても人間であり、カトリック教会の総本山であるバチカンが、余りにも巨大でありすぎるために矛盾としか思えないことが起きてしまう。神様はそんな哀れな人間をどのようにご覧になっていただろう。 カトリック教会に矛盾があっても人々は、辛く苦しいときにこそ神の救いを求める。そのときに神のかわりに神の言葉によって救いと癒しを与えるのは、カトリック教会司教や司祭だ。 信仰は欠かせない。 そう改めて感じたのはマティアスが衛生兵として加わった戦地での描写だった。普段とても敬虔とは言えない、自分がキリスト教徒であることさえ忘れてしまっているような人であっても、死ぬ前には自分の行いを赦してもらいたい、心安らかに命を終えたい。きっとそう思う。 たとえ矛盾があってもバチカンの存在は大きな意味がある。 キリスト教徒であればイエスの受難がユダヤ人によるものということはわかっている。しかし、だからユダヤ人は迫害されても仕方ないと考えるキリスト教徒は殆どいないと信じている。 教皇がユダヤ人迫害に対して何らかの苦言を呈してくれたならと思ってしまう。 この作品を読みながら考え、なるほどと腑に落ちることと更なる疑問を持ったりと大変愉しく読んだ。 物語の進行に面白さがないと書いたが、最後には、ああ、そうきたか、と思う場面があり、最後まで愉しませる作品だった。 他の作品にも興味が出てくる良い作品と出合えて嬉しく思う。
0投稿日: 2017.01.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
上下巻一気に読み終わってしまった。須賀しのぶらしい、骨太な作品で、読み終わったあとの充足感はひとしお。第二次大戦前から戦後にかけてのドイツの、社会や人々の生活がリアルで、映画を見ているような気分にもなった。 修道士・マティアスと、軍人・アルベルトの軌跡をたどっていると、作者はドイツを舞台にしたかったのではなくて、『神』とはなにか、『赦し』とはなにかというテーマを描くために、この時代のドイツを選んだのではないかと思えてくる。その問いかけがはっきりと示されるのはマティアス視点の話のときだけだし、カトリックの神に問いかけを続けるマティアスとは違って、アルベルトは棄教しているし、自分の行動の結果とそのための救済を自分自身に負わせる。でもアルベルトのこの考え方も、○○教の神と名はついていなくても、1つの信仰の形のように見えた。『神の前に何も持たずに立つことと、実はとてもよく似ている』とあるし。 タイトルの『神の棘』とはなんなのか、その発言をするヨアヒム・ フェルシャーの告解に鳥肌が立った。棘は神の愛情の証だと彼は捉えていたけれど、その棘は果たして神から与えられるものなのか、それとも罪悪感をきれいな言葉に言い換えただけなのか、なんだかすっきりしない気持ちが残る。それも踏まえて、何度も読みたい小説。電子書籍ではなく、紙の本でおいておきたい。
0投稿日: 2016.08.23
powered by ブクログWWⅡ前後のドイツにて、それぞれ信念、信仰を持つ男2人を軸に進む物語。 誰しも生きるに必死な中、マティアスとアルベルトの繰り返される衝突は仕方のない事とはいえ悲しい。 終盤の交流が静かだけど、穏やかではなく、美しい。 Ⅰは展開の重苦しさに乗れず、なかなか進まなかったけど、Ⅱはどうなってしまうのか気になりすぎて一気に読んでしまった…。 Ⅱの終盤におけるマティアス視点の驚きは半端じゃない。
0投稿日: 2016.07.10
powered by ブクログナチスや当時のキリスト教界の勉強に、もってこいの本。 どうしても、アルベルトに注目してしまうけど、他者のために必死で足掻き、祈るマティアスの生きざまも眩しいです。 ただ、マティアスに限らず多くの登場人物たちがなぜこうも、神やキリスト教に依存しているのか分からなかったです。 ナチスがここまで教会を弾圧していたこと、ドイツを占領した米軍の「解放者」とは程遠い行いなど、初めて知ることばかりでした。 私がこの世界にいたら、ただおびえて逃げるばかりで二人のような行動する人間にはなれないです…。 できれば翻訳されて、多くの国の人々に読んでほしいです。
0投稿日: 2016.03.09
powered by ブクログ「天使と悪魔」のようなストーリーをイメージしていたので、少々面食らいながらもアルベルトとマティアスの行き着く先が気になり、一気読み。 ナチスドイツ下における過酷な運命に思わず顔をしかめながらも、潔すぎるアルベルトになんだか涙。後半のアルベルトの妻の告白には参りました。 長いけど、読みごたえのある一冊でした。
0投稿日: 2016.01.12
powered by ブクログⅡ巻では激戦〜終戦直後の様子が描かれる。 加筆訂正により、登場人物の心情がより細やかになったように感じられた。それ自体は良かったのだが、そのせいもあって、マティアスの信仰心がややファナティックに感じられることが多かった。 はっきり読み比べていないので、記憶と照らし合わせた印象論に過ぎないのだが、単行本版と文庫版、小説としての完成度が上がっているのは文庫版で間違いないと思う。ただ、単行本版であった荒々しさが無くなってしまったのはやはり残念だ。
0投稿日: 2015.09.02
powered by ブクログ愛する者を守るために 神に怒り、嘆き、赦しを乞う。 妬み、憎悪、それは愛と表裏一体。 極限の中で見つけた己の願い。 神の棘は時に人を神のもとへと誘う
0投稿日: 2015.08.26
powered by ブクログⅠの続き。 ナチス時代のドイツ。親衛隊に入隊したアルベルトと、修道士のマティアス。図らずも対立してしまった旧友の物語。 ドイツのポーランド侵攻から第二次世界大戦、そしてドイツの敗戦。戦後の様子までが書き綴られているのだけど、本当に一言で感想を述べるとすれば、「戦争は人々に何ももたらさない」ということ。 だからこそ今読めてよかった。プレゼントしてもらえてよかった。 著者の須賀さんは大学で史実を専攻されていたようだし、この小説を書くにあたってたくさんの文献を読まれたそうなので、この小説を読んだだけで当時のドイツで起こっていたことが分かりやすく理解出来ると思う。 物語としても、とても面白かった。 戦中の描写はハラハラするけれど、最後はとても静かに終わったのも印象的。 アルベルトはとても冷酷な人間の設定だけど、なぜか憎みきれないところがあって、その理由が後になってから明かされるという、枠としてはミステリ小説。 マティアスはそのまま純粋で真っ直ぐな青年で、読みながら思わず「頑張れ」と応援してしまうような人物。 その二人が基本は平行線を辿りながら、たまにその道が交錯する。人と人の不思議な縁を感じずにいられない。 個人的に思うのは、この表紙の感じは作品としてはちょっぴり損しているような。中身はとても硬派でしっかりした歴史ミステリなので、もっと重厚な表紙の方が合ってるような気がする。 自分ではあまり選ばない小説を読めて、そしてそれがとても面白くて読んでよかったと思えたのもひとつのめぐり逢い。 時を置いて再び読み返してみたい小説。 そして関連本にも興味が…。
3投稿日: 2015.08.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
鉄拳神父マティアスさん素敵です! フェルシャーの告白を聞いたうえで分かりやすい棘(拳)を与えてやれるマティアスと、望んだ棘を与えられてなお自分を赦していたのかどうなのかとか考えているフェルシャーの差たるや。左の頬も殴られてろ。 先が分かっているぶんラストは穏やかに読めたのですが、イルゼへの老婦人の言葉でびっくりするほど涙がでてしまいました。アルベルト夫妻の恋愛描写少ないなーまあ須賀作品では真っ先に削られるところだよなあーと思っててこれだから、もし出会いのくだりをしっかり書かれてたらカサカサになってたかもしれません。命拾いをしました。
1投稿日: 2015.08.18
powered by ブクログマティアスとアルベルト、時代に翻弄されながら、置かれた環境下で、自分がなすべき事を問い続け、やり続けた。 暗い時代の中で、そんな人の強さ、煌めきが描かれている。 しかし、現代の日本で生きるものとしては、政治権力と宗教との関わりがどうしても理解しきれない。 今でも宗教を表に出した戦争は行われていて、唯一神を信仰する宗教は他者を受け入れられず、迫害する方向にしか進まない様にしか思えない。 神が神を受け入れなくては、前には進めない。
0投稿日: 2015.07.26
powered by ブクログ以前に読んだ「提督の娘」でもすごく頭のいい人なんだなーと感心して経歴をネットで見てなるほどと思いつつ同郷の方なのでシンパシーを覚えつつ2作品目読了。 終盤は涙なしには読めず泣きながら読みました。
0投稿日: 2015.07.19
powered by ブクログハードカバー版を既読。もう何と言ったらいいのか。何と書いたらいいのか。まさに慟哭と呼ばれるかたまりを喉元に詰まらせながら読み進めたⅡ巻は、悲劇と残虐と無力をこれでもかと描いている。すべてを背負って生きることを当然としたアルベルトが民衆の目にどのように映ろうと、彼の生き様はまるで神に仕えるものと同等か、それ以上であると言わざるを得ない。憤怒の嵐のなか苦悩するマティアスの対極で、凪いだ風のように立つアルベルトの姿が脳裏に浮かぶ。信仰と法と戦争。それらを小説というかたちでこうも深く表した作家が他にいるだろうか。
3投稿日: 2015.07.08
powered by ブクログ取り扱うテーマとしてはどうしても避けられない残酷なシーンの数々に打ちのめされながらも、最後見たさについ勢いで読んでしまいます。 2人の運命が奇妙に交差するローマへの道程がとても好き。 そして最後のアルベルトの台詞で、何度も泣いてしまいます。 文庫では会話が増えたことによって、人物の温かみが増した気がします。 マティアスもアルベルトもよく動きよく喋るなあと。 特にマティアスはシーンが追加されたことにより、新たな魅力を感じましたね。 1巻でも述べましたが、全体的に読み易くなっていると思います。 この「易しさ」が結構好みを分けるような気もするのですが…。 個人的な意見としましては、単行本の淡々とした温度感の方が好きです。 だからこその、アルベルトの貫いたものに余計込み上げるものがあったかな、と。 しかし最後はほんと何度読んでも泣いちゃいますね。 追加の会話によってアルベルトの心情に足しの部分もあったんですけど、それでもやっぱり最後の一言が何より重い。 胸が締め付けられます。
1投稿日: 2015.06.30
