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空海の思想
空海の思想
竹内信夫/筑摩書房
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総合評価

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    フランス文学の研究者である著者が、空海の思想の内奥にせまる本です。前著『空海入門―弘仁のモダニスト』(ちくま学芸文庫)より、さらに踏み込んだ考察が展開されています。 著者は空海の思想のうちに生命論的な発想を見いだし、ベルクソンに通じるものがあると考えています。空海の思想をある種の生命論とみなす解釈は梅原猛にもありますし、著者とおなじくベルクソンの哲学に造詣の深い美学者の篠原資明にも『空海と日本思想』(2012年、岩波新書)という著作があるので、そうしたとらえかたは一般の読書家たちのあいだでは、ある程度受け入れられているのではないかと思います。 その一方で著者は、真言宗の宗乗にとらわれることなく、空海の思想に直接アプローチすることをめざしています。本書は、著者自身による文献考証の結果も簡潔ながら示されており、著者がみずから空海のテクストを丹念に読むことで、その真のすがたにせまろうと試みていることがうかがわれます。ただ、そうしたミクロな分析と、空海の思想を生命論として解釈するというマクロな枠組みのあいだには、相当なギャップがあるように感じてしまいました。 新書一冊という厳しい分量的制約のなかで、空海の願文をじっさいに読み解くという手つづきと、その思想の根幹となる発想をともに語るのはむずかしいことなのかもしれませんが、このことが読者のスムーズな理解をさまたげているのではないかという気がします。

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    投稿日: 2020.02.14
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    『空海の風景』を読了し、空海に共鳴するような気持ちを覚え、研究家の書籍を読もうと思った。中立的な視点から空海の残した願文等の言葉を研究し、後の時代に鼠入したであろう部分を指摘し、少しでも空海の思うところを解説しようと試みる著者に出会えたことは幸運だったと感じた。梵語が中国語に翻訳され、漢字音訳語として日本に輸入された結果、マントラを正しく唱えられないまま現在の読誦に至っていることが目から鱗であった。空海学会や町石道を歩こう会も興味深い。

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    投稿日: 2017.08.27
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    「弘法大師」としていわば神話的な存在として語られがちな「空海」を、一人の人間として捉え、どのようなことを考えていたのかを見ていく本。 後世の僧が付け足したと思われる文言や言葉を出来るだけ取り除き、唐から帰ってきたばかりの空海が書いた願文から即身成仏の指すところや声字実相の真言(マントラ)とは何か、そして「虚空尽、衆生尽、涅槃尽、我願尽」で有名な万灯万花会の願文まで盛りだくさん。 少し漢字が多く、一回読んですぐ理解できるとは到底言えない内容だが、それだけ新書にしては濃く、内容も含め、菩薩仏教における密教等々をわかりやすく解説してくれてる。 「突き詰めていけばいくほど空海とはどういう人物かわからなくなる、、」ということをあとがきにも引用して書かれているが、僕が初めて空海に興味を持った司馬遼太郎の『空海の風景』にも全く同じようなことが書かれていた。 この本を通してわかる断片としては「沙門(努力する人)空海」、真っ直ぐに、すごく真面目ですごく賢い、ブッダを、菩薩仏教をきちんと理解した人だという、書けば当たり前のこと。  でも、これがすごく難しいことは、本書を読めばわかる、そんな解説書にもなってる気がした。 サンスクリット語、大切。

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    投稿日: 2015.06.10