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さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記(新潮文庫)
さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記(新潮文庫)
井伏鱒二/新潮社
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総合評価

22件)
3.3
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7
9
2
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    ジョン万次郎に興味があって、3つの短篇のうち「ジョン万次郎漂流記」を最初に読んだ。勝手に司馬遼太郎の『菜の花の沖』(やはり江戸時代にロシアに拿捕された商人、高田屋嘉平を描いた小説)みたいな壮大な娯楽物語を想像しながら読み始めたが、すいぶん雰囲気が違う。大げさな感情描写や細かい時代背景の説明などはほとんどないまま、淡々とした描写が続く。それでいてじわじわ伝わる何とも言えない滋味深さ。読み始めの拍子抜け感から一転、うなりながら読み終えた。次に読んだ「さざなみ軍記」にはさらに感じ入った。一度では味わい尽くせない、文学作品の魅力がすみずみに。またうなる。再読必至。(「二つの話」はちょっとピンとこなかった)。

    1
    投稿日: 2025.07.12
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    (2021/1/24読了) 「ジョン万次郎漂流記」など三編の小説集。 「さざなみ軍記」は、平家の若い武将(知盛の息子に仮託?)の日記として綴られる。小隊長の目線から見た戦の風景が面白い。 文体はやわらくてコクがあるが、お話としての盛り上がりは特になく、まあ、さざなみみたいにゆらめいてフツっと終わる。 「ジョン万次郎」も同様で、万次郎の数奇な運命をよどみなく綴ってはいるが年代記風で起伏はない。 もう一編、「二つの話」は時間旅行を先取りしたような内容だが、どことなく間抜けで不思議な趣。 井伏鱒二は、山椒魚などを読んだ気もするが、記憶は定かではない。

    0
    投稿日: 2025.01.31
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    伊坂幸太郎編の短編集の中に井伏鱒二の「休憩時間」があり、そういえば、「山椒魚」と「黒い雨」以外読んだことなかったなあ、と、名前は有名な「ジョン万次郎漂流記」を読んでみた。 司馬遼太郎の作品にジョン万次郎はしょっ中登場するけれど、彼を主人公にするとまた違った物語りに感じた。 漂流者は5人いた訳だが、ジョン万次郎だけが、抜きん出て語学を習得出来て、観察眼に優れていたのは何故か。シンプルに、若く知的好奇心が強くかつ地頭がよかったんだろう。 語学の面では、後に続く者は大量にいただろうから、やがて相対的な価値は落ちていったのだろうが、あの時日本にジョン万が出現した、ということは奇跡のような出来事だと思う。 正しいときに正しい場所にいることの難しさと、そうなった時のダイナミズムを感じる作品だった。

    31
    投稿日: 2024.10.14
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    「さざなみ軍記」は読んでいる時はなんだかやけに淡々とした話が続くなあ、と言う感覚だったのだけど、解説を読んで足かけ9年かけて少しづつ発表して主人公の成長を描こうとした作品だったと知ってなるほどと納得がいった。それにしてもそれだけ長い期間かけて割と短い期間7月から3月までの必ずしもクライマックスがあるわけでもない作品を淡々と書くのもなかなか。 「ジョン万次郎漂流記」はとても面白く読めた。数奇な運命というしかないけど、どこまでが史実でどこまでが井伏鱒二の創作なのかはわからない。もちろん基本的な出来事は実際の記録に基づいているのだろうけど小説的なセリフや行動は登場するアメリカ人たちの振る舞いが井伏鱒二的な鷹揚さを感じさせて良い。昭和12年の作品ということはまさに戦争に進んでいく日本でこのような作品が描かれて直木賞も受賞していたわけで、何となくの感慨がある。 「二つの話」は実験的な小説を手元にある材料で作ってみようとしたけどオチはつけられなかったというかんじ。二つのエピソードはそれぞれ面白いんだけどね。

    0
    投稿日: 2023.08.04
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    3作品収録。平家の逃亡を描いたさざなみ軍記、ジョン万次郎の生涯の2篇は(さざなみ軍記は読みにくかったものの)面白かった。2つの話はそそられず。

    0
    投稿日: 2023.07.06
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    『ジョン万次郎漂流記』のみの感想。  幕末から明治初期にかけての実在の人物についての小説。資料にない部分は井伏氏の空想で補われている。  冒険譚として非常に面白かった。  土佐で貧しい漁師だった万次郎は15歳の時の正月に他の四人とともに漁船に乗っていて、嵐に会い、一週間ほど漂流した。  ようやく周囲が一里ばかりの無人島に到着し、そこを当座の棲家とした。彼らは島でただ一箇所岩の窪みに水が溜まっている所だけを“井戸”として大切に使い、あほう鳥を取って食べるなどして命を繋いでいたが、それも限界に達した頃、そばを通りかかったアメリカの漁船に助けられた。  身振り手振りでかなり言葉が通じ、そのアメリカ人たちは万次郎たちに大変親切にしてくれた。  ハワイのオアフ島で5人は上陸し、4人はそのままオアフ島に残り、生活の保護まで受けて不自由なく、暮らしたが、万次郎だけはホイットフィールド船長に大変気に入られたので、そのままジョン・ホーランド号に乗り続け、太平洋を横断しながら捕鯨し、やがて、アメリカのマサチューセッツに上陸し、船長の家族と共に暮らすことになった。  アメリカで万次郎は学校にいかせてもらったり、農耕牧畜の余暇に読書したり、測量を教わったりして、教養を身に着けた。また、捕鯨船に乗り組んで、アフリカやインドのほうまで捕鯨に行ったり、一人カリフォルニアまで銀の採掘に行ったりもした。  立身出世する人というのは、いつの時代でも、どんな場合でもやることが違うのだなと感心した。面白かったのは、万次郎が捕鯨船で世界を回っているとき、2回くらい、日本の船と出会っているのに、その時は言葉が全然通じていないのだ。アメリカの船に助けられた時にはあんなに言葉が通じたのに、いくら万次郎の土佐弁とその時出会った船に乗っていた日本人の方言が違うといっても、心の問題なのだな。  何年かたち、ある時、万次郎はハワイに行って、昔一緒に漂流した仲間を訪ねる。一人は病死してしまっていたが、あとの3人は元気に働いて暮らしていた。日本へ帰る相談をし、一人はハワイに残ると言ったが、万次郎を含むあとの三人は中国へ行く商船に乗せてもらい、日本の近くで下ろして貰ってそこから小舟で自分たちで上陸する計画を立てた。大変危険な計画だったが果たしてそれは成功し、万次郎達は沖縄の島の一つに上陸出来た。  一通りの取り調べを受けたが、アメリカのことや英語を知っているということで、薩摩藩主らに気に入られ、やがて日本に黒船がやって来たころ、通訳として江戸に呼ばれた。その後、捕鯨、造船、測量の分野などで活躍し、福沢諭吉や勝麟太郎らとともに咸臨丸に乗ってサンフランシスコにも渡った。晩年には開成学校で英語教授をした。そして、アメリカに行って、恩人ホイットフィールド船長にも会うことが出来た。  初めに漁船が漂流した時には生きていたことだけでも奇跡であったのに、その後はなんと運が良かったのだろう。勿論、運を引き付けるものを万次郎たちは持っていたのだろうが、鎖国時代で、しかも日本がアメリカに武力を見せつけられて脅される少し前に、万次郎たちが出会ったアメリカ人たちはなんといい人たちだったのだろう。ファンタジーかと思うくらい素晴らしかった。  この小説が発表されたのは、昭和12年、日米間が険悪になり始めたころだそうだ。    

    38
    投稿日: 2021.07.27
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    「2つの話」はよく分からなかったけれど、残りの2つはとても良かった。 漂流記の方は、調書や文書等ジョン万次郎記念館を思い出しながら読んだため面白かった。こちらはほぼ作者の味付けはなく、ノンフィクションのように感じた。帰国後の国の情勢やジョン万の行動については記念館よりもわかりやすかったように思う。 さざなみ軍記は平家物語に人情味を増やしたような感じ。内容はとても好きで良かったのだが人物が多く名前も覚えづらい、また文体も難しいので読みづらくてもったいない。

    0
    投稿日: 2021.01.07
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    井伏鱒二、優れた作家と思いきやあまりの面白くなさに辟易した。3話の中でも最後の「2つの話」は最低であった。

    0
    投稿日: 2020.11.01
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    表題作に加え、「二つの話」と合わせ短編三つ。「さざなみ軍記」。平家の都落ちの過程で主人公の成長の様子を描いたもの。戦を忌避したい気持ちも窺える。「ジョン万」。実在した人の話だが、資料が少ないので虚構の部分が多いが、それがゆえおもしろい。「二つの話」。過去にタイムスリップするフイクション。2019.12.3

    0
    投稿日: 2019.12.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

     この小説は、「さざなみ軍記」「ジョン万次郎漂流記」「二つの話」の三作品が収録されています。  「さざなみ軍記」は、平安時代末期から鎌倉時代初期と言いますが、前夜までを平家の某と言う主人公からこの時代を語っています。  「ジョン万次郎漂流記」は、日本史でも少し習っている当時の漁民の一人が漂流して帰国した話です。  「二つの話」は、新井白石の時代の話です。

    0
    投稿日: 2014.03.29
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    確か『黒い雨』でも感じたが、この作家の特徴は見た目はシンプル、意図が濃密に詰まっているところか。 表題作二作ともに、パーツは淡淡としているのだが、退屈させることなく、かつ、主張をさりげなく刷り込んでくる。書かれた時代背景を考えれば、この作家の反骨心と才に一目を置かずにはいられない。

    0
    投稿日: 2014.03.08
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    「ジョン万次郎漂流記」.そっけないくらいの淡々とした文章で,偶然と時代の流れによって大きく変わってしまった一人の男の人生が語られる.帰国後,幕末から維新にかけての大活躍は,一見したところ,成功した人生にも見えるのだけれど,私には彼の身の丈にあった生き方ではなかったように思えてならなかった. 「さざなみ軍記」.西国に落ちていく,平家の若侍の手記の形をとった小説.読んでいて,気持ちが塞いだ.こちらは星2つ.

    0
    投稿日: 2012.08.10
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    土佐沖で遭難後、異人船に救助され、アメリカ本土で新知識を身につけて幕末の日米交渉に活躍する少年漁夫の数奇な生涯「ジョン万次郎漂流記」。 「黒い雨」もそうだったが、井伏鱒二の小説はノンフィクション風で、気が付くと引き込まれて読んでいる。ジョン万次郎とともに漂流し、ハワイに漂着した者が他に4人もいたこと、日本に帰国したのは万次郎を含め3人だったこと、万次郎が明治31年(享年72歳)まで生きたことなど、この本を読むまで知らなかったことが多かった。

    0
    投稿日: 2012.03.16
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    どちらも、淡々と書かれている。面白かった。 作者の感情は隠されていて、でもどこかしら意欲的な感じを受ける。

    0
    投稿日: 2012.02.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    平家ものだというので、読んでみました。 教科書の山椒魚以来の井伏鱒二です。 さざなみ軍記・・・ネタばれになります。 某平家の公達の日記形式です。 だいたい都落ちから一の谷後まで。 主人公の公達の名前は明かされませんが、 父が新中納言で十六歳、武蔵守ということで、平知章です。 小隊を預かり、若年ながら、軍を率いて成長する様子が、描かれています。 六波羅を懐かしんだり、逃げたいと思う気持ちも見え隠れしつつ。 精一杯背伸びしていたんだと思います。 が、言葉選びが難解で、読みにくい。 時代がかってるんですが、それが、 平安を現代語訳した雰囲気を出しているのか、昭和風なのかよくわかりませんが、どっちにしろ、難解。 感情移入はし辛い。 ついでに、新中納言だの、三位中将だの、能登守だの、平家の皆さんの呼称はみんな 官位なので、誰が誰が知ってないとわからない不親切設定。 官位呼びはまぁ、当然なのですが、系図とか、最初についててほしかった。 ちょっと、誰が誰かわかるように学ぼうと思いました。 最後にオチ。 なんか!え?ここで?ってところで、うやむやに終わります。 一の谷で打たれる史実を踏まえて、次の日の戦で死ぬってところでぶつ切れるならわかるんですが、 史実に反して、生き延びてるんですよ。この知章は。 なのに、中途半端に怪我して、代筆させてすやすや眠ってるって。 そこで終わり!? 消化不良だわ。この、生き延びちゃった後どうするよ。 むしろ、くっついてるジョン万次郎の方が面白かったです。個人的に。

    0
    投稿日: 2011.09.10
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    一軍の将というものは、覚丹の表現によると部下に対して「猥りに糺さず、もってその志を犯さず、気を失わしめず」と心得るべきだというのであった。 伝蔵は言った。 - 世界のはては東西南北みな同じように、行くところまで行けば東西南北みな世界のはてにきまっている。いや、この島はまだ世界のはてとは思われぬとしても、助船がこの沖を通ろうとは夢にも考えられぬ。今日この島に着いたが最後、この島で朽ちはてるよりほかはないだろう。しかし考えようによっては、今日この島に着いたのが天地初時(あめつちはじめのとき)とも考えられぬでもない。みんな気を大きくして、そういうことにしたらどんなもんだろう? 他の四人のものは、ではそういうことにしようと答えて衆議一致した。つまり現代の言葉で言いおなせば、当日をもって無人島紀元元年の第一日と定め、おのおのその生命を慈しみ人生に対する懐疑を捨てようという説である。

    0
    投稿日: 2011.05.21
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    歴史物にしては読みやすい。さざなみ軍記は平家没落時の話で、一人の若い公達の成長過程が書いてある。終わり方が尻切れトンボではあるが、それも井伏鱒二らしくて面白い。他二編ある。

    0
    投稿日: 2010.11.14
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    ジョン万次郎は江戸の時代、幼少期に土佐沖で遭難して異人船に救助されて、アメリカで色んな勉強をして帰国後日米交渉に活躍、のちは教育者になってその知識を伝えていくって云う、聞いただけで面白そうな人生を送った人。 そんな人生を送った人物の小説がなんで薄い文庫本一冊で収まってるのか怪訝に思ってたら、案の定小説というよりは純粋な伝記でした。 もっと肉付けして、吉川英治あたりに書いて欲しかったなぁ。 なんなら大河ドラマにでもしてほしい。

    0
    投稿日: 2010.10.24
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    さすがに練達の作家の手になる歴史小説だと感じる。平易でありながら、その時代の空間の奥行きや手触りとともに、主人公たちの心理に、すっと入りこむことができる。

    0
    投稿日: 2010.10.11
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    船で遭難し、無人島で苦しい苦しい生活をしてる 万次郎はじめとする5人の日本人が アメリカ船のホイットさんに救助されます。 それから長い長い万次郎の世界漂流が始まるわけですね。 5人の日本人の中で一番若い万次郎が学習するに最適な若さだろうと見初められ 英語の勉強から、欧米文化や知識知恵までを教えられます。 日本にやっとの思いで帰国しても 今度は日本の役所による調査調査、、、 それが終わったあとも鎖国から開国という時代に巻き込まれ 海外との橋渡しになる万次郎。 15歳で遭難したことが、 万次郎のその後の人生をすごくグローバルにしました。

    0
    投稿日: 2010.06.16
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    たしかジョン万次郎がよみたくて買ったんだったと思う。 でもジョン万次郎も面白かったけど、さざなみ軍記がおもしろくて 驚いた覚えがある。 終わりははっきりしないけれど、そこも含めて面白かったんだよね。

    0
    投稿日: 2010.01.16
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    ジョン万の素晴らしさに着目した井伏さんは最高です。私は井伏さんが大好きです。 この話の素晴らしいところは沢山ありますが、前半の船の中での食べ物の下りが最高すぎます。ジョン万の素晴らしさは、努力だの勤勉だの人徳などではなく、あそこにあると思いました。いや、人徳の原点はあれだと思います。腹が減った時こそ人間の真価が問われると思います。

    0
    投稿日: 2007.11.30