
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
子供向けの遠野物語を読み民話や伝承の魅力を改めて感じ、評価の高かった井上ひさしの新釈を手に取る。丁寧に編まれた方9つの短編は最後までしっかり読者を楽しませてくれる。物語を読んだ、という深い満足感を味わえる一冊。 物語は入れ子構造式に展開しており、作中ではある老人が時に本家の遠野物語について触れながら彼の経験した不可思議な出来事が語られている。 読みすすめていくと時に沼地に足を踏み入れたような、狐につままれているような不思議な感覚に襲われるが、最終的には世界というのは本来こういうものかもしれない、、と妙に納得して全てをそのまま受け止めてしまえる。 物語の世界と自分の世界の境界が曖昧になっていく感覚がとても心地良い。 あっという間に東北の仄暗い御伽話の世界に誘われ、井上ひさし氏の力量の高さを改めて実感した。
0投稿日: 2025.09.10
powered by ブクログどの話にも民話らしい仄暗さや余韻がある。 狐や河童だけでなく、『雉も鳴かずば撃たれまい』『岩魚の怪』などの大胆な翻案も。 解説にもあったが、『遠野物語』にはない入れ子構造がとられているのも面白い。この本の語り手の「ぼく」と物語の語り手の「犬伏老人」との関係性がタテ軸になることで、単なる短編集ではない連続ドラマとしても楽しめる。
0投稿日: 2025.03.14
powered by ブクログ遠野物語を現代に甦らせた連作短編集。 物悲しかったり、艶っぽかったり、遠野物語風味を楽しめた。 最後はほほーっと唸ってしまいました。
0投稿日: 2025.01.27
powered by ブクログ岩手旅行に行くので遠野物語を読もうと思い立った。中学生のころ、言葉遣いが難しく挫折した遠野物語。まずはライトなものを、と探していたら見つけた本書。オシラサマや河童の話を作家が煮詰めるとこうなるのか!と思った以上に面白い。 著者は実際に釜石療養所で働いていたようで、それだからか、本当に語られている昔話のようなリアルさがあった。
0投稿日: 2024.09.14
powered by ブクログ井上ひさしの代表作ともいえる連作小説集。たぶん、新潮文庫の百冊にも入っていたような記憶がある。 収録されているのは、「鍋の中」「川上の家」「雉子娘」「冷し馬」「狐つきおよね」「笛吹峠の話売り」「水面の影」「鰻と赤飯」「狐穴」の9編。 民俗学者柳田國男が書いた「遠野物語」の中に収録されている伝説や昔話を、井上ひさし流に新たな話として現代に蘇らせたものである。 どこか聞いたことのあるような親しみのある話が、笑い話や怖い話、不思議な話と生まれ変わっている。 この本を最初に読んだのは、高校生ぐらいの時、それから何度も読み返しているし、本自体2冊目になっている。 ストーリーもあらかたわかっているのにもかかわらず何度も読めてしまうのは、井上ひさしの冗長なぐらいのと言いつつもテンポの良い、独特の文体に引き寄せられてしまうところがあるのかもしれない。 また、話のいくつかは、艶っぽい女性が出てくる(これも井上ひさしらしいが)。こういう大人の女性は、歳を経ないとわからない所があるよね。(まあ、今になってもわかっているとはいいがたいが・・・。) こういった所も何回も読める所なのかもしれない。 もとになっている話も、何処かで聞いたことがあるよなあと思う話が料理されているのでその事もあるのだろう。 この本は1976年に筑摩書房から単行本が出版され 1980年に文庫化されている。 思ったより出版が古いなあ。(笑)
0投稿日: 2024.08.03
powered by ブクログ軽快な語り口。巧妙なプロット。読後に味わう悲哀。東北の山水とそこに生きる人びとの奇譚。いずれも印象深い話だった。川での生死をめぐる話『川上の家』と『鰻と赤飯』の余韻は忘れがたいものだ。
0投稿日: 2024.01.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かった。 遠野物語自体はまだ読んでないが今度読んでみようと思う。 犬伏老人から語られる話はどれも興味深く主人公が夢中になるのもわかる。まあ割と血生臭い話も多いが。 途中時系列が合わないなとか老人についての謎が芽生えてきたところ、ラストで全部腑に落ちて「そりゃそうかー!」ってなった瞬間すっきり。
0投稿日: 2023.10.10
powered by ブクログ遠野物語は柳田国男の原作に限る。現代語訳や京極夏彦が脚色したものも読んだが、正直つまらない。遠野物語の迫力は柳田の文体により作られたものといえよう。 ただ、この新釈遠野物語は別物で、面白い。遠野物語の原作をそのまま使っているのではなく、材料をうまく戦後まもなくの時代に落とし込んでいる。遠野物語を読んだことのある人なら、ああ、あの話か、と分かる。このころまでは、柳田の遠野物語と地続きだったのだろう。
4投稿日: 2023.10.09
powered by ブクログ日本の昔の生活や風習、考え方とか面白おかしく、そして水っぽく綴られていて面白かった。 ふと思い出して、息抜きに読み返しそう
0投稿日: 2023.04.25
powered by ブクログ遠野物語をもとにしたと思われる短編集。これはおもしろい。 遠野物語の原作を読んだことがないので、どのくらい原作に忠実なのかわからないけど、どこか胡散臭い犬伏老人の語る話は幻想的な話や怪奇的な話などバリエーション豊かでテンポがよく、ハズレ無しの面白さ。 最終話でキッチリとオチまでつけてくれる丁寧さで、大満足の一冊でした。
0投稿日: 2023.01.16
powered by ブクログ遠野物語をベースにしつつ、昭和28年頃に、山中に住む不思議な山男から聞いた話として、複数の小話が綴られている。 東北で語り継がれてきたであろう話がベースになっているものと思うが、一昔前の東北地方で苦しい生活を送っていた人たちの様子や、人間と動物の情愛など不思議な話が多く、変な話だと思いつつも、なぜか引き込まれて一気に読んでしまった。
18投稿日: 2021.04.24
powered by ブクログ「遠野物語」のパロディかと思って読み始めたが違った。そこに下地はあるものの独創的なファンタジーである。山の神、精霊、河童、狐付き。都市では失われた自然との交歓をユーモアたっぷりに語ってくれる。2021.2.4
0投稿日: 2021.02.04
powered by ブクログ柳田国男の『遠野物語』とどれほど対応しているのかはわからない。 でも、河童や沼の主のウナギが登場したり、馬と人間の娘の恋など、多くの話が下敷きになっているのだろう。 大学を休学し、故郷近くの釜石の国立療養所で働く青年を視点人物に、山で出会った犬伏老人から怪異譚を聞くという設定になっている。 老人はいったい何者なのかという謎解きが、個々の怪異譚をくるむように配される。 老人の体験談として語られるため、東北の嘗めてきたつらい歴史も織り込まれている。 たとえば昭和恐慌で、多くの娘たちが身売りされたこと。 鉱山での恐ろしい労働。 私たち読者は、怪異譚を楽しみつつも、そんな悲しい歴史にも思いをはせることになる。 本作の特徴は、地形が目の前に見えてくるかのような描写だろうか。 昔、地理学を専攻する先輩が、村上春樹を読むと、その土地が目に浮かんでくると言っていた。 へえ、専門家(事実、彼は現在大学の教員になっている)は違うものだなあ、と思ったものだ。 本作は、シロートたる私が読んでも、土地のありさまが想像できた。 これを彼が読んだら、どう読むのだろう?
0投稿日: 2020.09.02
powered by ブクログ井上ひさしの本をそういえばあんまり読んだことないな、と思って手に取る。昔話や妖怪の出てくる話。元ネタの、遠野物語を読みたくなる。 落語でも狸や狐に騙された小咄というのはよく出てくるけど、その感じととてもよく似ていて、既視感があったので少し評価は低めに。 里山や村などの自然と近い生活感が感じられるところがよかった。ちょっと自然に近い気持ちになれる。 短い話が続くので、気分転換したいとき、旅のお供におすすめ。小説も、ある意味では化かし合いだなあと思ったり、霞のかかったような本でした。表紙が可愛い。
0投稿日: 2020.03.23
powered by ブクログ遠野物語を下敷きにした物語集。筋はどれも陰惨にして哀切、だけども次が読みたくなる面白さがある。 一発目が夢オチなのでオチもなんとなく想像できてしまうが、読後感はスッキリ爽やか。
0投稿日: 2020.01.16
powered by ブクログ柳田国男の遠野物語は昔読んだことあってなんか不思議な物語だなぁ、と思った記憶があった。中途半端なところで物語が終わったり、話のつながりがなかったりしたところにそんなイメージを持ったのだと思う。 それから、10年以上経って再び本を読み始めると、いたるところで柳田国男と遠野物語の名前を見るようになった。これはもう一度読まねばと思っていた時に、ちょうどハマっていた井上ひさしさんの「新釈」バージョンを見つけたので思わず手に取った。 最初の感想としては、柳田国男の作品より読みやすい、という物であった。山奥の病院でバイトをしている僕に山伏老人が話を聞かせるという体で物語が進んでいくため、なんとなく全体的につながりがあるように感じた。絶妙なところで山伏老人がお茶を飲んだりキセルをふかしたりするためこちらも飽きずに話にのめりこめる。 また、これは扇田さんの解説を読んで思ったことだが、柳田国男が遠野に伝わる口語物語をまとめたのは、民俗学的に素晴らしいことだが、一部口語によって伝わったという文化が結果的になくなってしまった。(確かこんな感じの事だった)と書かれていたのが印象的だった。その点、この新釈遠野物語は、話を語って聞かせるという体で物語が進むため、口語という文化に折しも本を読んで触れられた。 ただ、幾人もの作家を引きつけてやまない遠野物語の魅力が私はまだ実感できない。だから、これからも遠野関係の本を読んでいきたいと思う。
0投稿日: 2019.01.22
powered by ブクログタイトルに「遠野物語」が入っているからという先入観入りまくりで最初の話を読んでしまったので 最後に「ええー;」という感じに(笑) でもオチまではどきどきしながら楽しく読めました。 他の作品も断言しない、言い切らない良さと 善と悪で容易に分けない良さがあり、 ただただ切ない話もあり… 特に妻の話の切ない事と言ったら…! と 思っていたのに 最後の話を読んでまた「ええー;」という感じで終わるという(爆) とても面白い一冊でした。 10年後くらいにもう1度読みたい一冊。
0投稿日: 2015.12.16
powered by ブクログ(*01) 柳田は伝説成立の要件として具体的で固有名称で呼ばれる地物と関連付けられていることを指摘している。その点で本書に収められて数編の創作は伝説的でもある。 新釈遠野物語と称しているものの、多くは釜石側に編まれた物語である。本書に現われる地名を地図に探れば、この新釈物語の世界がやや立体的に(*02)浮かび上がってくる。 伝説の語りは怪異とされ得体の無いものを対象にしていると印象されてしまうが、本書においてはそうでもなく多くは動物譚(*03)として読める。 語りの老人の姓は犬伏であり、老人はイヌないしキツネをトーテムとしてトランペットという鳴き声の隠喩とともに老人像が描かれる。「川上の家」はカッパ(これも古典的には動物である)、「雉子娘」はキジとコウモリ、「冷し馬」はウマ、「狐つきおよね」はキツネ、「鰻と赤飯」はウナギとコイと老人周辺の人物との交歓であった。動物との交歓のクライマックスは獣姦と殺傷である。冒頭の「鍋の中」の巨漢は柳田の文脈の面影が残る山人であり、人間よりは動物に近しい霊的な存在であった。 (*02) 創作か実在か定かでない地物も登場するが、これは最終話で主人公(*04)が指摘する老人の語りのクロニクルな編集における齟齬とともに、創作面と現実面との作為的なずらしや歪みとして読めるのかもしれない。時間と空間をもっともらしく現実に溶接する試みとして興味深い。 (*03) もう一つの物語の筋に近代と資本がある。鉱山の現場、運搬の現場、畜産の現場、小作の現場を、老人は近代的な個として巡っている。この近代の解釈を新釈とするかどうかはともかく、伝説的な語りの中に近代がどのように現れるか、柳田の本編でもその端緒は現われていたように思う。 (*04) 主人公が老人の語りに対し、時に急かすような合いの手を入れる。そしてそれを老人が諌めるというおなじみパターンが数話繰り返される。合いの手は物語に読み手を参入させる方法である。主人公を通じて私たちは物語に挿入されているのである。
0投稿日: 2015.06.02
powered by ブクログ柳田国男の「遠野物語」を下敷きにして井上ひさし版の民話を9話収録している。作者自身であろうと思われる、大学休学中の「ぼく」が、遠野と釜石の間にある療養所で働く内に山にすむ犬伏老人と出会い、民話を聞くという筋立てだ。柳田版に比べれば格段に読み易いが、なにかやはりおどろおどろしい雰囲気は否めない。井上ひさしの文章だから読めるという感じで、他の人ならかなり怖い話である。
0投稿日: 2015.05.16
powered by ブクログ〈メモ〉とても上手く出来ている。 切なくなる物語もちらほら。 「遠野物語」を物語化・立体化し、ユーモアを加えた作品。解説が良い。 また読みたい。特に解説。
0投稿日: 2014.11.09
powered by ブクログ2014.7.7. am2:53 読了。題名の通り、随所に遠野物語の影響がみられる。遠野物語を現代版ににしたことで、本来この物語が持っている時代に対応して変化していく能力や話し手によるアレンジがなくなった
0投稿日: 2014.07.07
powered by ブクログ遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”は、その山中に住む犬伏老人に出会う。老人は“ぼく”に、遠野に伝わる奇天烈な話の数々を語って聞かせた。柳田國男の名著「遠野物語」を井上ひさし氏が新釈したもう一つの「遠野物語」。 話し上手な犬伏老人のインチキ話の数々に、誇大癖のある“ぼく”は当初疑心暗鬼になりながらも暇つぶしと思って話を聞き入るが、しだいに“ぼく”は老人に次の話を乞い始める。老人が語る9つの話は、木々や動物といった遠野の美しい自然を背景に今も昔も変わらない人間の滑稽な姿を浮彫にする。印象的だったのは「雉子娘」「笛吹峠の話売り」、そして最後の「狐穴」。 後悔先に立たずなオチはどれも秀逸で、読んでいる方は自分自身も話の登場人物のようにラストで途方に暮れるが、それがまた不思議と心地いい。「やられた」の一言。
2投稿日: 2014.06.21
powered by ブクログ誇大癖のある"ぼく"と、語り部である いんちき臭い犬伏老人が「遠野物語」の序文に なぞらえつつ紹介され、つるりと始まる物語。 山の緑の稜線に重なる白い夏雲。 世界が反転するような不思議で美しい 桜の花びらほどの大きな雪の舞う景色。 美しい描写にうっとりしながら、 老人の話す怪異に夢中になりページをめくると、 それはいつしか艶っぽい話、悲しい恋の話、 残酷な話、悲しく面妖な話へと様変わりしていく。 本家遠野の話を小さな骨組みとして 話は隆々と肉をつけ、種を知っているはずの 手品が鮮やかに趣向が変わり、感嘆し、 最後には井上氏の愉しい試みに口角が上がる。 遠野とどこかしら地続きでありながらも、 延長線上のオマージュに留まらず、 再構築され生まれ変わる遠野。 "ぼく"となった聞き手の私は 犬伏老人の話を心の底から楽しみ魅了される。 見事な筆致にまさしく、どんとはれ!!
10投稿日: 2014.06.14
powered by ブクログ柳田国男の『遠野物語』を読む前に読了。 一つ一つの話が気持ちのいい終わり方をしていたので楽しく読むことが出来た。
0投稿日: 2013.03.16
powered by ブクログ久々に手に取り読みました。 もともとは柳田国男が遠野地方にまつわる民話・伝説を集めたものですが、これは何度読んでも、不思議な気分にさせられる本です。
0投稿日: 2012.07.15
powered by ブクログgoole mapとwikipediaを見れば、だいたいのことは分かってしまう世の中だけど、それが完全に思い込みであることを教えてくれる1冊。 目の前にいる人は、人間なのか、獣の類なのか。 ここからあそこへは、近いのか、遠いのか。 全ては、やってみなきゃ分からないんだ。
0投稿日: 2012.07.02
powered by ブクログ「遠野物語」は柳田国男が佐々木鏡石から聞いた遠野地方にまつわる民話・伝説を集めたもの。 本書は、その「遠野物語」にインスパイアされた物語。 「犬伏」という名の老人から聞いた物語を「ぼく」が書きとめた、という設定。 「遠野物語」は語る側も聞く側も誠実な人物だったが、「新釈遠野物語」では語る側は、いんちき臭く、聞く側は誇張癖がある、という事になっている。 犬伏老人が語る物語は、山の民、動物、妖怪、人間が対等な立場で関わりあう。全て犬伏老人が関わった話ばかりで、なぜ、こんなに怪異に関わるのか、とツッコミを入れたくなるほどだが、それは最後の物語で全て分かる趣向になっている。 怪異の物語ではあるが、どこか懐かしい感じもする。 夏祭りの夜、人通りの少ない裏通りに入ってしまったような、 すぐ近くに「普通」の世界があるにも関わらず、少しだけ異なる「異世界」に踏み込んでしまったような、 「大人向け日本昔話」 と言ってしまってもいいかもしれない。
0投稿日: 2012.06.09
powered by ブクログ肩肘張らずに読めて面白かったです。遠野物語をベースにしつつパロディではない。これは確かに「新釈」だなぁと妙に納得しました。柳田国男が読んだら、大喜びするんじゃなかろうか。
0投稿日: 2012.02.19
powered by ブクログ初めて読んだのは高校生の頃だったか。。 その後、時折、読み直してしまい、結局何度読み直したことか。 読み直すたびに、気付かされることがある。 「笛吹き峠の話売り」が一番好き。
0投稿日: 2012.02.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
10年以上前に立ち読みした一冊を久しぶりに購入して読了。 「東北・遠野の昔話」を「東京でトランペットを吹いてた犬伏老人」に語らせていることに意味があるのかもな、と感じた。東北外の人が東北の昔話を語りで聞くと、その語りの味わいは楽しめてもその聞き取りに気を取られてしまい話には入り込みにくい。それを犬伏老人にあえて標準語で語らせることにより、かえって遠野の物語にある普遍性と独自性に気づきやすくなる。 10年経って読み方が変わったな~、と感じるところも多かった。東北に生まれ育ち、東北と日本語を知り尽くした筆者にしか書けない一冊。
0投稿日: 2012.02.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
じわりとした恐怖や、じわりとにやり。 遠野の世界は、こんなところ? 恥ずかしながら柳田国男を読んでいませんが、井上さんならではの優しさも、きっと込められているのだろうなぁと思いながら読みました。
0投稿日: 2012.01.22
powered by ブクログ読後感は良い小説でした。 井上ひさしさんについては昔観たひょっこりひょうたん島くらいのイメージしかなく。 また、遠野物語事態も怖い話程度の事しか知らずに読み始めました。 序盤は愉快なセリフや展開に夢中になったけど、序盤の後半あたりに下ネタっぽい話があり、こういう話も書くんだなぁ、と思ってたらその後も下ネタっぽい展開が多くてちょっと辟易しました。 あと、最初に「腹の皮を少しはよじらせる」とありましたが、なんだか悲惨な死に方が多く、個人的によじれたのはごく最初の方だけでした。 ただ、結末はとても爽快な感じで良かったです。
0投稿日: 2012.01.14
powered by ブクログマウンテンバイクが流行るずっと以前、山の中を走り回っているか、部活のテニスの何れかで時間の殆どが過ぎて行った。結果、当時あまり本を読まなかった。そんな高校時代、同級生に薦められて読んだのがこの本だった。何故、読む気になったのかは、思い出せない。けれど、同級生の薦められ方に、その気になったことを、ぼんやりと思い出す。物語の設定と、そこに描かれた場所に、当時とそれまでの暮らしと経験から、すんなりと入り込めたのかもしれない。井上氏の描く物語と表現が、今でも独特の像を結ぶだけでなく、その空気や湿度、匂いや感触まで伴った世界として、自分の中に残っている。だから今も、大好きな、そして大切な本(作品)の一つとして在る。
0投稿日: 2011.11.08
powered by ブクログ言うまでもなく柳田國男の『遠野物語』へのオマージュですが、元本よりはるかに面白いです。というか全くの別ものです。 もう本当にこの人は天才です。稀代の作家です。 いろんな話がある中でも特に河童の話が好きでした。 『吉里吉里人』とか長すぎて手に取れない人は、この薄い本から読み始めるといいと思います。
0投稿日: 2011.06.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
そのオチは……読めたかも。 お話自体は楽しめたんだけど、遠野物語ではないなあ……って印象でした。タイトルでそういう方向に期待をしすぎてしまったのかな。
0投稿日: 2011.05.22
powered by ブクログ面白かった。 話し自体に新鮮味はないが、著者持ち前の軽快な文章で気軽にスラスラ読める。大人のための昔話。 遠野物語を再読しよう・・・
0投稿日: 2011.02.21
powered by ブクログとてつもなく面白い本を読んだとき、あるひとは「鼻血が出る度おもしろい」と言った。だから僕もそれに習おう。同題は柳田國男のものが有名であろうが、現在では仮名づかいのところで読むには少しばかりの忍耐と慣れが要る。その点、この書物に収められた9つの短編は読む度にわれわれをあれよあれよという間にお伽の世界へ連れて行ってくれる、まるで安眠枕のような存在である。あの山を越えれば現実にそんな世界があるのに、われわれは気付かぬ振りをしているだけなのかもしれない。そう思いながら何時も目が覚める。
0投稿日: 2010.11.09
powered by ブクログ悲劇的な作品が多い。ハッピーエンドの話は少ないし、何か教訓めいたものでも、自分の妻を殺してしまうなどの悲しい話が多い。 民話とは口伝によるものであり、文章化されたものは意味がないという主張がある。本来民話というのは語り部さんによって、明文化された形ではなく、語りという音声によって伝えられてきたもので、それを文章化するということは民話の本質を損なう恐れがある。それを避けるためにこの小説では、洞穴に住むお爺さんに主人公が話を聞くという形をとっているらしい。語り部さんに話してもらっている感じをできるだけ再現している。 遠野に行きたいと思った。テレビで柳田國男の遠野物語が百周年を迎えることを知ってこれを読もうと思ったわけだが、実際にこのような民話の舞台となった地を訪れてみたいと思った。 馬、キツネなど、動物と人間が交わる話が多い。おそらく現在よりも、昔は動物と人間の距離が近く、心が通じているような感覚が大きかったのだろうと思う。 安吾が言う、モラルがない、アモラルな話も多い。特に河童の話は非常に悲しい話だった。 最後の締めくくりがあまり気に入らない。お爺さんに話を聞いていた主人公はキツネに騙されていたという話で、俗にいう夢オチに近い。確かにこのような話の締めくくりは難しく、このような形でしか終わらせることはできないかもしれないが、あまりにもありがちな終わらせ方で、面白くない。
0投稿日: 2010.09.19
powered by ブクログ老人が青年に昔話を語る形の物語。山深い遠野の風景を思い描きながら楽しく読めた。 よくよく考えると、エッチな話も盛り込まれてたりして、それもまた日本の古い風景だったりするのかなと思う。
0投稿日: 2010.09.15
powered by ブクログ井上ひさし版遠野物語。 語り部の犬伏老人と聞き手の「ぼく」 の会話の中で、老人の奇妙な体験談が語られる形式。 ユーモアあり、ブラックありで なかなか読み応えがあった。 最後のオチは良いとは思うけど おぉっ!と驚くほどでもない。
0投稿日: 2010.09.05
powered by ブクログ遠野にブラブラ行って本家のルーツ探しながら歩きたい気持ちになりました。リアルにはそんな楽しいことはないのを知りながら…
0投稿日: 2010.07.16
powered by ブクログ著者の訃報に接して読んでみた。 井上ひさしの遠野物語オマージュ作品。決してパロディーでは無い。柳田・遠野物語に敬意を払いつつ、笑いあり、涙あり、エロあり、妖怪ありの著者独自の味付けが成されている。さながら日本昔話風の怪異譚と云った処か。たかが妖怪、されど妖怪。妖怪の描写にも作家さんの個性が出るもので、井上ひさしの描く妖怪は、ちょっと風変わりなお隣さん。人間と妖しがごく普通に共存している世界。素朴な味わいの中に郷土・東北と人間に対する深い愛が溢れている様に感じる。河童や座敷童子が住まう地が永く守られていく事を祈念すると共に、著者のご冥福をお祈り致します。
0投稿日: 2010.06.06
powered by ブクログ犬伏老人の語る、ちょっと不思議な昔話。最後の最後までキツネ騙しのオチかと思うけど、でもこーゆー翁(?)がいたら、きっと毎日でも話を聴けるだろう。
0投稿日: 2008.11.01
powered by ブクログ井上ひさしさんの世界全開です。伏線の巧みさと、結末(オチ)のどんでん返しは、超一級です。短編の連作ですが、どれも素晴らしい作品です。
0投稿日: 2008.04.17
powered by ブクログ柳田国男の「遠野物語」が嫌いだと話したところ、こちらならどう、と貸してくれた。こちらは面白い。対話というスタイルがそもそもの民話にふさわしいスタイルだということもあるだろう。しかしそれ以上に大事な違いがある。 柳田国男は別に遠野が好きだった訳ではなく、遠野で民話を採集してくれる知合いがいただけで、現地はまったく不案内なのに対し、井上ひさしは現地に詳しいのだ。だからまったく書かれ方が違う。柳田国男のしたことの価値はあるのだろうが、私はその方法が嫌いだ。官僚だもの。 井上ひさしの話はともかく引きつける。これは面白い。毎度彼は東北の匂いのする物語を作るけれど、やはり地に足がついている。それはとても大事なことだと思う。面白かった。
0投稿日: 2007.10.10
powered by ブクログ「偽原始人」が面白く、井上ひさし氏の作品で次に手にしたのがコレ。 「新釈」ということで、もとは柳田国男氏のパロディ短編集です。 一話一話の仕掛けといいますか、まぁそれがとっても面白いです。 最後の仕掛けは途中で読めますが、そんなことは気にならないくらい心温まる感があります。
0投稿日: 2006.04.21
powered by ブクログ柳田さんの本物を知る前に、こっちを先に、高校生の時に読みました。新釈って書いてあるからなんだ?と思ったらちゃんと遠野物語ってあるんだ、と、岩波文庫を買いました。こうやって、本が増えていくのです。
0投稿日: 2004.09.24
