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蓼喰う虫
蓼喰う虫
谷崎潤一郎/新潮社
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総合評価

77件)
3.5
6
28
29
6
1
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    これほど話が進展しない本があったとは。最初から最後まで何も変わっちゃいない。一ヶ月以上かけて長々と読んできた結果がこれとは、と呆然。公然の仮面夫婦である要と美佐子夫妻。お互いの心は冷え切っているのに、別れる決定打がない。別れたいのに、別れない...を延々とやっているだけのストーリーであった。一見妻には優しく理解がある要だが、妻に無関心。この「無関心」が妻にとってはダメージが大きいよねと美佐子に同情してしまった。全体的に曖昧な性格の登場人物のなか、親戚の高夏のキャラがキッパリスッキリしていてお気に入り。

    1
    投稿日: 2025.06.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    今なら簡単に離婚できる理由なんだけどね。 人形浄瑠璃に惹かれ始めたりってのは娼婦系のルイズ(西洋)からある種人形みたいな「お久」(日本)みたいな方に好みが変わってきてるって事なのかな? 作風的にもこの辺から変わってきているし。 難しい。

    0
    投稿日: 2025.03.18
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    谷崎潤一郎をちゃんと読んだのはもしかしたら初めてかもしれない。 時代は古いが、綺麗な文章でしっかりと絵が浮かんでくる。人形浄瑠璃などこれまで興味はなかったが、見てみようかという気になってしまう。 優柔不断な主人公なので、話は進まないのだが、これから何か過ちが起こるのか?というところで終わってしまった。

    0
    投稿日: 2025.01.26
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    とてもよかった 二人の心理描写が細く描かれていた。 表紙にもなっている子供の絵には思わず心を打たれた。

    0
    投稿日: 2024.11.19
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    中後期谷崎の代表作。関係が冷めてしまった夫婦にまつわる話。夫公認で間男の元に通う妻と、娼婦の元に足繁く通う夫、二人の関係や内面の微妙な葛藤が、詳細にというよりはもはやくどくどといっていいぐらいに描かれる。谷崎自身の私生活を反映した作品とも言われるが、周囲の人間には容易には伝わらない当人たちの関係や葛藤の機微に谷崎の想いが表されているのかもしれないなと共感しつつ読んだ。人間関係や愛情の根本が何かという部分には本作では踏み込まれないのですが、その辺りは「蓼食う虫」というタイトル付けとも関わってくるのだろうか。

    0
    投稿日: 2024.09.27
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    時代を経てもなんだか今と通じるようなちょっと粋な姿が面白かった。 子供のことを案じながらも、別れる夫婦だけどでも、お互いのことは思いやれていて壊滅的なわけでもない感じ。

    2
    投稿日: 2024.03.29
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    メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1757180962067333468?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

    0
    投稿日: 2024.02.13
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    面白くないわけじゃないんだけど、あまりにも静。 序盤引き込まれるんだけどな、結局これからのところを見せてもらえないからか、文学的にはこれでいいんだろうけどストーリー的にはどうしてもドロドロ展開とかそういうの望んじゃった感あるから、え、これで終わり?感。 あとは単純に価値観の問題。わかるよ、夫婦の微妙な感覚、子供への気遣い。 でも大事なことだからこそ高夏に任してほっとしてなんかいないで、両親が子供にきちんと正面から向き合ってほしいなって思っちゃう親心。 妻が〜みたいな感じで進んどきながら夫が風俗通ってたこと詳しく話すのはわりかし最後の方になってからで、何となく男の狡さ?みたいなの感じてもうた。 本作全体の量に対して、謎の3人メンツで浄瑠璃見るとこちょっと長すぎかな?笑

    0
    投稿日: 2024.01.30
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    文庫本の裏表紙に著者の私生活を反映した問題作、と書いてあるのが気になって読んでみた。 物語の冒頭、旦那が出かける前に身支度を妻が手伝ってやるシーン。 それだけのことなのに、女性の姿態の描写が妙に生々しく、さすがの描写でいきなり引き込まれた。 世間体を気にして離婚に踏み切れない主人公。 子供に自分の口から言うのさえ憚れて、従兄の口から子供に伝えてくれないかと思っている。 妻の父親にもなかなか切り出せない。 グズグズぶりがなんとも情けない。 こんなんだから嫁が旦那に魅力を感じず、外で彼氏を作るんだよ!と思ってしまった。 前編を通して昭和20年代の日本の雰囲気を満喫。 TVもネットもない時代、娯楽であった文楽、人形浄瑠璃を楽しむシーン満載。 決してキレイとはいえない芝居小屋でのトイレ事情や裸電球の照明など、芝居好きの私には興味深かった。 妻の父親は50代後半だというのに、やたら老人という描写。人生100年時代となった今でいうと70代位でしょうか。

    3
    投稿日: 2023.11.27
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    妻譲渡事件がモチーフなのでしょうが、後半は物語を彩る小物たちを使って陰翳礼讃を小説に落とし込む実験作だったのかとも思ってしまった。

    0
    投稿日: 2023.08.28
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    谷崎潤一郎のフェミニズムが自分に通じる部分があって、今作も読んでいてしっくりきた。そのフェミニズムの形は現在のLGBTQ運動の高尚な志しに根付いた立派なものなんかでは決してなく、極個人的な生きやすさの為に選択した受動的で頼りないismなのだ。

    6
    投稿日: 2023.07.31
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    裏表紙の簡単なあらすじを見てどんなものかと思ったが、文章美しく、心理描写に優れている谷崎潤一郎の世界にすぐに入ってしまいました。 性的不和の夫婦が段取りを踏んで離婚に向かっていけるよう取り決めをすると言う様な話はこの作品が書かれた時代には衝撃的ではなかったか。 別れたあとの妻とその恋人の幸せを願う一方、1人になる自分を想像した時の心情など、あれこれ思う気持ちの表現が巧み過ぎる。 文楽の世界が描かれているのも物語に色彩を与えている素晴らしいところ。

    1
    投稿日: 2023.07.02
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    久しく性交渉がなく冷めきってしまった要と美佐子の夫婦。要は娼館に通い、美佐子は外に男を作っている。しかし、子どものこともあり、なかなか離婚に踏みきれずにいる。妻の父に誘われて人形浄瑠璃を見に行ったりするうちに、要は義父の若い妾に惹かれていく。 夫婦が離婚に踏みきろうかと逡巡しているように、物語もなかなか進んでいかない。義父たちと一緒に人形浄瑠璃を見に淡路島へ出かける場面がのどかで印象的。

    0
    投稿日: 2023.03.10
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    お互いに愛想が尽きたというか、「夫婦」としての気持ちを失った男女が、 離婚話に決着を付けるまでを描いた物語。 端的に言えばこうなんだけど、そこに至るまでの男の心情を垣間見たり、 またそれよりも文楽について事細かに書かれていて、 離婚話より文楽の方が気になって気になって仕方なかった。

    0
    投稿日: 2022.11.06
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    古書店?で100円ぐらいで購入。 登場人物の名前と名字がごっちゃになったけど何とか読めた。美佐子のお父さんからの手紙難しかった。 要めっちゃ腹立つ男や。 妻のこと愛せない。泣かれてイライラする。抱けない。義父の妾が理想の女。外国人女性との不倫セックスやめられない。 美佐子は1秒でも早く離婚して阿曾さんと結ばれるべきだと思った。

    0
    投稿日: 2022.10.13
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    傷つきたくないし、相手にも傷ついてはほしくない。はっきり言いたくはないけど、こちらの気持ちを察してくれないかな。こっちから決定的な宣告をするほどの意思はないから、そちらで決めてくれないかな。 全編にのらりくらり漂うそんな気配が、いかにも都会的というか東京的。古典ではあるけども、今の時代にもすごくしっくりくる感覚で驚き。 人形浄瑠璃や、まるで人形のように老人の趣味に従うお久への要の憧れも繰り返し描かれるが、もう女なんて人形のようだったらいいのに、黙ってついてきてくれよ、と思う無気力な草食系男子の思考という感じで、こちらも今日的だと思った。 人形芝居がヤジで台無しになるのが、人間はそうはいかないよ、という暗喩のように感じられた。 前読んだ時はもっと切なさを感じたのだけど、今回は結構俯瞰で読んだ。 読書の感想って、思ってるよりその時の自分の状況とか精神状態に影響されるものなのかもなあ。 そして111108さん、この拍子抜けの結末は、またすぐ忘れちゃいそうです笑

    24
    投稿日: 2022.09.16
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     久しぶりに読み返しました。実は文庫版ではなくて、全集版です。で、なんというか、すらすら、引っかかりなしで読めてしまって、結構、面白かったのです。考えてみれば、こんな、まあ、どうでもいいような話を、こんなに面白く書ける谷崎という人は、今さらながらに天才だと思いました。

    18
    投稿日: 2022.06.29
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    初めての谷崎潤一郎。 解説では谷崎潤一郎の作品でも異色を放つという。 人物、心理、風景、関係、動作などの描写は言うまでもなく小説の重要な要素だが、そのいずれにも偏らない、バランスの取れた、いいようによっては特徴のない作品と感じる。 さらに、筋立てはシンプル。 矢が的に向かって素直に放たれるように、起伏の隙間を縫う。 有島や三島などではぐっと唸らされる場面に出くわすが、それもない。 ただこの作品は情緒のみ特徴とする。 ここに出てくるひとたちの情緒がこの作品に通底する出汁となり、読み応えを与えるのかもしれない。

    1
    投稿日: 2022.05.18
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    蓼喰う虫もなんとやら。あえて今日読むよ。 最近はもっぱら"娼婦型"だが、芯は良妻賢母であるはずの妻・美佐子がひらひらと恋人の元へ通うことを公認している夫・要。 世間様や一人息子のまえでは体裁を弥縫し生活する仮面夫婦、でもそれが二人とも納得尽くのバランスの良い関係性であるんだとしたら、それはそれで有りなんでないかな。 ゆくゆくは離婚する方向で話し合いはついたものの、じゃあそれはいつになるのか、いざという肝心の一歩を互いに相手任せにしちゃう感じ、いいね。生活だなぁ。 人形浄瑠璃や着物にまつわる描写が多くて多くて、知識不足ゆえイメージを膨らませるのが難しかった。「閨房の語らい」と書いて夜の夫婦生活を意味するのは、なんか面白くて妙に気に入ったので覚えておきたい。

    7
    投稿日: 2022.02.14
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    今の時代でもこの様な夫婦はいると思う。 お互いの心理描写の微妙なバランスを細かく描けており感心した。最後の場面は淡路の人形浄瑠璃のお話が出てくるのだが、私世代から見ると、このサブカルチャーの描写はは 初見のため頭に入りにくかった。 世の中は色んな人がいます。蓼食う虫も好き好きです。

    3
    投稿日: 2022.02.12
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    妻に外で不倫を許し、自分は娼婦を漁る仮面夫婦。離婚を念頭に置きながらも、お互いが距離を測り自分が傷つかない方法で新しい一歩を踏み出すべく静かに静かに時を選んでいる二人の様子がなんともむずむずする。それは全く理解できない、というのではなく妻側としてわかる部分もあるせいかもしれない。妻が着物を揃えるシーンなど殊更だ。妻の父とお久、要の関係の微妙さも落ち着かないが、相反するように丁寧に書かれる文楽のシーンも印象的。この時代の日々の細やかな様子、心の機微、やっぱり谷崎の文章はするっと入ってきて綺麗だと思う。

    0
    投稿日: 2021.12.23
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    仮面の夫婦の話。結婚というのはそれぞれ他人同士が一緒になることであり難しい。一方で子は鎹とは言い得て妙。

    0
    投稿日: 2021.10.26
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    谷崎の有名作。 両者合意で「離婚すること」を内々に決めた夫婦が、子供や義父にどう伝えようかとくよくよする話。 この時代にして、あくまで理性的にかつ公平に?対処しようとする男性主人公の心理が主で、その西洋的な?理性に浄瑠璃などの純和風古典的な価値観がアンチ的に忍び寄ってくる…という趣向は後期谷崎への助走として興味深いが、その情景のみに終わるので作品としての満足感というか、「打ちのめされ感」で言うと、卍とか猫と庄造に比べると今ひとつな感想。 でも、谷崎は大好きです。

    3
    投稿日: 2021.02.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    妻を肉体的にも精神的にも愛しきれない夫とそんな夫から愛されたい反面本当の恋を知った妻が、これからの人生をどうするか踏み切れないでいる話。 何か大きな事件や進展があるでもなく、どちらかから、はたまた誰かが2人の関係に見切りをつけてくれないかと他力本願な2人を描いている。 別れを切り出されたい、自分が悪いのはわかっている、お互い似たもの同士だからこそ踏ん切りがつかなくていつまでもうじうじ言い訳ばかり。 じれったいと思う人が多いかもしれないけど、個人的には特に夫に共感ができるなあと。 愛はないし一緒いても仕方がないと分かってても、いざ別れを切り出すと涙が溢れてくる、だけど避けては通れないけど、できることなら先延ばしにしていたい。 一時の感情で娼婦のところへ行くけれど、結局はそちらにも踏ん切りはつかなくて…。 なんだか本当に人間らしさがぎゅっと詰まってるような印象でした。 途中の人形と女性を照らし合わせる描写もフェミニズムの象徴なのかな、その辺よくわからないけど。 理想の女性像、たしかに芸達者でお料理もできて気の利く肌の白い女性は男性の理想なのかな、女性的にも素敵だなぁとは思うけど。 2020.12.11 読了

    1
    投稿日: 2020.12.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    蓼喰う虫 (和書)2010年01月24日 16:45 1951 新潮社 谷崎 潤一郎 良かった。谷崎潤一郎の作品をもっと読んでみたい。

    0
    投稿日: 2020.09.25
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    私の人生の悩みの一つでもある、愛と性欲についての本だ!と思ったので手に取ってみた。あとこの題がいいね( ´-`)調べてみたら「蓼喰う虫も好き好き」という諺があるんだ。勉強になった。 うーん..。最初はまぁ性欲で繋がらない夫婦の内面的な問題点について探っていくものかと思っていたけど、どうも違いそう。途中までもっと重いのが好きだな~っていう感想だったけど、そういう視点ではこの小説の魅力や扱っていることは捉えられなそう。主人公夫婦と、対照的な老人カップル、高夏とルイズの存在、そして 弘(絶対子どものことそんな心配してないでしょ!と思った)がそれぞれどんな印象を与えるのか、もう少し深く考えてみたいものである。 主人公の名前が要だから、何かずっと要潤で想像してしまった(*´・∀・)

    4
    投稿日: 2020.04.03
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    全てにおいて完璧だと思って結婚した女なのに、なぜ妻という立場になると、欲情しなくなるのだろう……。セックスレスが原因で不和に陥った一組の夫婦。夫は勝手気儘に娼婦を漁り、片や妻は夫公認の間男の元へと足繁く通う日々を送る。関係はもはや破綻しているのに、子供のことを考えると離婚に踏み切れない。夫婦を夫婦たらしめるものは一体何か。著者の私生活を反映した問題作。

    0
    投稿日: 2019.06.18
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    性的不調和が原因で、離婚しようとするが、なかなか踏み切れない夫婦を描いた作品。 今のように簡単に踏み出せないのは、当時の世間の目が大いに関係している。 妻の立場を思うと、こんな夫は嫌だ!と言いたくなる。自分に性的な魅力を感じてくれず、また他の男のもとへ通うのも助長されるのだから。しかし、なかなか夫を攻めきれないのは長年寄り添ってきて情がなかったわけでは無かったからであろう。しかし、妻は夫に素直になることができないのは可哀想だと感じた。 スッキリしない終わり方、と言われればそうなのだが、当然なのではないかと感じた。最初から曖昧な関係、曖昧な心持ちの夫婦だったのだ。それが、最後に綺麗に収集される方が違和感がある。きっと夫婦は別れ、それぞれの道を歩むのだろう。しかし、そこまで描く必要もない。一貫した終わり方だと感じた。

    1
    投稿日: 2019.02.20
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    著者自身が体験したとはいえ、妻を他の男に譲るという常軌を逸したストーリーを、日常生活上の一場面のようなリアリティを持って描くことの出来る著者の筆力に感嘆する。

    0
    投稿日: 2019.01.27
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    読書会の課題本。すでに「離婚する」と結論は出ているが、子どものことや世間体を気にして、なかなか離婚届を書けずにウジウジしている夫婦の話。登場人物にほとんど共感できるものがなく、途中からほぼ流し読みですませた感じである。中盤に文楽や長唄などについての講釈が出てくるが、オマケみたいな印象しかなく、特に注目すべき議論はない。ラストも個人的には不完全燃焼な印象しか残らなかった。

    0
    投稿日: 2019.01.15
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    どこの夫婦にも多少はありそうな不和が比較的若い時期に訪れた悲劇ではあるが、夫婦感の感情の起伏をとても繊細に丁寧に描いており、また表現がうつくしい。 嫁の父が中を取り持とうとしているが読みのほうが遠ざける原因が目かけのお久にあることとか、はっきりと描かれてはいないが根深い感情があると察しつつ考えさせられる。 淡路に三人で人形浄瑠璃観覧に行くところは本筋ではないけれど情景が浮かぶようでとても楽しい。夫のかなめの感情はルイズやお久を慕っていることが終盤に明かされいよいよ興味深い展開に。 最後に父娘二人ででかけ、嫁が泊まりを了承した意外な展開から、残された要とお久の風呂場や寝床での描写などの後に突如終わる展開が何故かとても印象深い。

    1
    投稿日: 2018.10.01
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    何も起こらない。 ある状態のまま、ずっと、このまま、で、続いちゃうんだ。 はぁ、でもそれが読ませちゃう。 刻々と、切々と、丁寧に、これでもかと、こだわりまくりの男たち。 多分、このままダラダラと、この状態を続けていく、ブルジョアな人々。

    0
    投稿日: 2018.09.12
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    これはコメディだと思って読んでよかったのかしら…? 最初の場面から、二人の優柔不断コントが面白い。そしてなんとなく自分に重ねてしまい、恥じ入るような気分になる。 高夏と美佐子の会話が、粋でカラッとしててよかった。高夏ぐらい決断力があって人の懐にするりと入れる社交性の持ち主なら、この夫婦関係も違ったのかもしれない。 そういえばアソさんの人となりにはあまり触れてなかったけどどんな人なんだろう。 なんか、出てくる人みんな悪い人じゃないのに、それぞれに腹の中に何かしら抱えてて、それを表に出せず(出さず?)にのらりくらりと享楽的な日々を過ごしてる感じだなー。 最終的に二人は別れて、要はお久とそういうことになるんだろうか?どっちにしても誰も幸せになれそうにないけど…

    0
    投稿日: 2018.07.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

     妻が外に愛人を持つことを夫が容認する仮面夫婦。「別れよう」と心に決めながらも、決断できない様子、ゆらゆらする心情は、理屈っぽい読者(と従弟)を苛立たせるが、そう簡単に割り切れぬのが人間というものなのだろう。  結末は描かれない。主人公が妻の老父の妾(いかにも日本的な美しさを湛えた女性)に心惹かれる様子がなんとなく書かれ、あっけなく幕切れが訪れる。別れたのか、それとも別れなかったのか、そこは大して重要ではないのかも。ハイカラなもの、日本的なもの、その両方が多く描かれる中で、終局は日本的なものに原点回帰したことが根底にあるテーマなのかも知れない。注釈の多さが読み進める上で苦労にもなったが、当時の文化芸能の片鱗が見えておもしろかった。  娼婦型と母婦型。娼婦型の女は男を引きつける「女性らしい」肉体を持ち、母婦型の女は控えめな「女性らしい」精神を持つ、ということなのかなと思った。どちらも「女性らしい」なら、女性はその逆説の中で生きなければならないということなのかも知れない。そしてそれは、現在も変わらず女性につきまとう逆説なのかも。

    1
    投稿日: 2017.12.07
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    主人公の要と美佐子は仮面夫婦。妻に恋人があることを夫が容認している。それどころか、元はといえば要が美佐子を女として愛せなくなったことが原因であるため、むしろ妻にそういう存在があると知って要は安堵したほどだ。それでももう二人の間には小学生の息子もいるし、美佐子は要があれといえばあれとわかる世界に唯一の女でもあり、これが夫婦でなくて何であろうという一組の男女なのだ。この二人が、お互い理性では離婚しようと思ってそういう話し合いをしているのだが、二人そろって決断が苦手な人間で、できることなら自分は棄てられるほうでありたいと思っているので、まったく煮え切らずにずるずると仮面夫婦(正確には、何事かを察知している息子も含めた、仮面家族)を続けている。 執筆当時は、これだけでけっこうアバンギャルドだったのでしょうか(とはいっても谷崎作品全体からみれば変態度低いのだと思いますが)。 今だとなんとなく、22時からのドラマにありそうな、ゴロウちゃんと尾野真千子とかがやってそうな、そんな感じ。 さて、この家族がどうなることか… という話かと思いきや。 美佐子の父、つまり要から見ると義父である老人は、生まれ育ちは(要・美佐子同様)東京でありながら、老いてから関西に住みすっかり関西好きになってしまったという、谷崎自身の投影のような人。京女であるお久という若い妾を囲っていて、芸事や料理や立ち居振舞いなどあれこれ自分好みに仕込んでいる。この老人が作中、文楽とか、家の作りとか、暮らしぶりとか、なんやかんやと哲学を語るのだが、内容は陰翳礼賛と重なる。 要は、どこかこの老人の生き方に惹かれている自分に気づいていて、口では面倒だ、仕方ないなどといいながら、老人とお久の淡路巡礼の旅に付いていく始末。 だんだん、要と老人の話になっていきます。 老人が持論を唱えたり要が色々考えたりしているのが続いてだれてきたころに、少しはっとさせる秘密が出てきたりして、いい感じに起・承・転ときたところで、こう来るとは…… やられたぜ。

    1
    投稿日: 2017.08.10
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    まるで骨董のように淫靡な艶を愛でる、そんな趣味を若い妾との生活全般に求める義父。それを古臭いと思いながらも次第に惹かれていく主人公。その間に妻(義父の娘)との離婚話が進んでいく。いつものことながら、何重にも倒錯した人間関係を設定しながら、それを読者にすらすらと理解させ納得させてしまう筆力はすごい。この物語の主なテーマは、義父の趣味だと思います。

    0
    投稿日: 2016.07.27
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    上方の旦那衆は芸事の素養がありました。浄瑠璃や地歌、高尚だと能、謡曲を習っています。文楽を中心に上方文化がふんだんに語られますが、文化的な継承をしていないと、ハードルが高く、読者を選びます。主人公は富裕層で、神戸のドイツ人の店で買ったレバーソーセージを毎朝、食するなど“ハイカラ”な生活ぶりです。心が通わなくなった夫婦の別れるまでの姿を描いていますが、移住先の関西がすっかり肌に合った様子がわかる作品でもあります。

    0
    投稿日: 2016.05.23
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    谷崎文学に顕著な、倒錯的な愛情や変態的な偏愛が排除された珍しい作品。 谷崎文学の魅力はそれらの他に、90年前の日本も、現代とそんなに変わらないな!と思わせてくれる身近な日常描写があると思う。 例えば浄瑠璃の劇場の客席で化粧を始める娘と初老の父親のやり取りが面白い。 「第一女が身だしなみの法を知らない。お前のその手の中あるのは、そりゃあ何というもんだね」 「これ?これはコンパクトというもんよ」 「近頃それが流行るのはいいが、人中でも何でも構わずそれを開けて見ては顔を直すんだから、ちっとも奥ゆかしさというものがない」 電車内での化粧直しは、90年間進歩が見られない女性像の一つなのかもしれない。

    0
    投稿日: 2016.05.03
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     肉体関係を持たなくなってしまった夫婦が離婚に踏み切れずにいる話。女は娼婦型と母婦型に分かれる、女は神であるか玩具であるかのいずれかである、などなどの主人公・要の女性観に共感はできないけれど、なるほどこういう考えもあるのかと興味深く読んだ。そんな要が日本の伝統文化に触れながら、最終的に魅力を見出だす女とはこういう人なのか―――というのが暗に示されているラストがとても好みだったけど、その解釈にはちょっと自信がない…。

    0
    投稿日: 2015.12.13
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    谷崎潤一郎の作品にしてはさらっとした作品だなぁと思ったのが第一印象であった。 様々な提案をしておきながらも、結局何も変わろうとしない登場人物たちが妙にリアルで、意味もなくだらだら会話している場面が何故か好き。

    1
    投稿日: 2015.01.25
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    最初から離婚の話。最後まで決着がつかない。こんな終わり方?という終わり方。離婚の理由はいたって現代的。というか、昔も今も大してそれは変わらないのかもしれない。変わったことと言えば、離婚が増えて、そのハードルが下がったということくらいだろうか。夫から女として見てもらえない妻、美佐子さんが別の男に向かっていく。近所の夫妻を想像しながら読んでしまった。(名前が同じというだけ。その夫妻が冷え切った関係というのでも、妻が不倫をしているというのでもない。)重要な役割が与えられた妻の父親、その妾、お久一人だけの京都弁がなぜか懐かしい。はたして、美佐子は父親のことばを受けて、離婚を思いとどまるのか。煮え切らない夫も夫、不倫相手の男も男。何ともすっきりしないお話ではあった。

    0
    投稿日: 2014.09.29
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    老人とお久がとてもいい。憧れる。 うまく言葉では言えないが、情景や、風情がとてもいい。 五つ星の満点よりも、星が四つのほうが実はいいといったような味わいがある。 読書会で出た配役案では美佐子は高岡早紀。要は筒井道隆君がいいと思う。お久は意外と難しい。老人はもっと難しい。

    0
    投稿日: 2014.06.16
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    主人公と、そのオルターエゴとも言える老人の美的感覚があるところでだんだんと交差してくるところが面白い。 人に何かの美的感覚を教え込むところから教育ははじまるのだけれども、小説のタイトル通り蓼喰ふ虫も好きずき、良いか悪いかは受けとる側の時期と機嫌次第のところも大きいのでありまして、はいそうですかという具合にはみんな自分の美的感覚を人に合わせることはできない。 老人の文楽趣味にしたところで玄人ぶって高尚ではあるように見せてはいるけれども、上方びいきではない人にとってはなんてことない退屈な人形芝居である。でもだんだんとその良さが分かってくるのもまた面白いところ。人の好きにはそれぞれ生理や系譜があるのでそう簡単にはいくまいよと谷崎が笑う姿が浮かぶような気がする。 しかし、何でも選べる時代であるからこそ、「好き」と「べき」の折り合いをどう付けて行くのか、という観点から見れば、教訓になる小説であると思った。 もっと派手で倒錯した谷崎っぽい世界観が好きな人は多いと思うので、ぱっとしない作品かもしれないが、個人的には関西に生まれ育った者として耳にしたことのあるフレーズの数々がちりばめられているこの作品、そしてこの作品をとおして伝えようとする「女性観」「美的感覚」が僕は好きです。 女性の権利を云々言う方々からすれば、女性の内面や外面をモノのように扱うことに強く嫌悪感を感じるのだろうけども、それは理想の男性像云々の話にしてもどっこいどっこいでありまして、結局は好きか嫌いかという無理強いできない好みの話になってしまうわけです。 合わなくても、好みが違っても、どこかで繋がらなければならないときもある、それを切ることに未練を感じることもある。こういう捉え方の方が、なんでも割り切る考え方よりも僕は好きですね。

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    投稿日: 2014.04.11
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    途中から飛ばし読みしてしまった…つまらぬ…私には難しすぎました。 息子と犬が出てくるシーンはほっこりしたけどなぁ! 私は谷崎作品の猫やら犬やらがすきなだけなのかも。

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    投稿日: 2014.03.27
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     谷崎文学はずいぶん以前に「痴人の愛」を読んだ。先日三島由紀夫を読んでいたら解説にこの「蓼喰う虫」が引き合いに出されていたので読んでみることにした。  谷崎文学は男女間の込み入った関係を書いたものが多いのだろうか。これもきっと自らの嗜好が影響しているのだろう。  普通の夫婦が「性格の不一致」で離婚をしようかという話である。現代で言えば全くありふれた原因であるが、発表された当時の昭和初期にはセンセーショナルなストーリーだったようだ。  途中に淡路浄瑠璃を見に行く場面が出てくるが、この描写がなかなか面白い。その当時の見物の仕方が活写されていて、谷崎自身も浄瑠璃に造詣が深かったと思わせる。

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    投稿日: 2014.02.22
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    新しさと古さのすれ違い。 結婚の価値観、人付き合いの価値観、美しさの価値観まで、自分が当然と思っていることをこうやって誇張すると違和感とか苦悩を生むのね。 「理想」の雛型をひたすら追い求めているような。 2024.12.01再読 10年以上前に読んていたのをすっかり忘れてた。 新しい時代、新しい夫婦の関係、新しい価値観といいながら美佐子と要がウダウダウダ…まどろっこしい。そんな中で義父と妾(全体的に有閑階級だ)との人形浄瑠璃の観劇やら漆塗りの弁当やら地唄やらに付き合わされて古臭いと思っていた女性や文化の中に自分の求める美しさを見出したり、徳川時代を引きずりつつも新しい時代の狭間で考える、昭和の男性の話。

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    投稿日: 2013.12.02
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    書名の「蓼喰う虫」とは諺である「蓼食う虫も好き好き」の、あんな不味い蓼を食べる虫もいるように好みは人いろいろである、というところから来ているのだろう。 この物語は大きくは2つの流れになっているようで、主人公の要(かなめ)を中心に、通である義父の人形浄瑠璃好きに付き合っている内にだんだん自分も傾倒していく様子と、もうひとつはこれが本流ですが、妻の美佐子を抱けなくなったのを発展(?)させ、妻には愛人を持たせ、自分は娼婦通いで、将来的に離別するのを前提に仮面夫婦を演じている異常な関係を、両者巧みに場面を移しながら描いていきます。書名からすると、人形浄瑠璃の世界をこんこんと描き、義父自体、人形のような妾・お久を自分色に染め上げている物語の方がその意に直接的ですが、その関係の異常さを解消せずに夫婦のぐだぐだな惰性生活に実のところ浸っている要・美佐子の関係性のことも指しているのでしょうね。 大阪文楽や淡路の人形浄瑠璃の世界をそれこそ通の道楽さながらに描く様は、谷崎の文芸評論であるとともに谷崎自身の傾倒ぶりも感ぜられ微笑ましい。 夫婦の機微やそれを察する息子の言動などみっちり細やかな表現は、逆にますますぐだぐだ感を高めていきますが(笑)、実のところのどうしようもない心情が奥ゆかしく(?)読者に伝わってきて、物語の行く末がとても気になりだしますが、これも谷崎らしい非常な余韻をもったラストになって、おいおい!と。(笑)考えるに、これは最早「夫婦」ではなく仮面夫婦だが、しかし相性は「夫婦」としてぴったりというこの異常な関係を、この瞬間においてぴったり切り取り、夫婦である男女間のある心情として永遠に封じ込めたかったのでしょう。放置、あるいは投げっ放しジャーマンを食らうのも好き好きなんですけどね。(笑)

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    投稿日: 2013.11.03
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    谷崎大阪移住後初の作品。谷崎文学の過渡期にあるような作品。日本文化の美しさをこの辺から愛ではじめている気がする。『細雪』へ続いていくような雰囲気を感じる。夫婦生活が破綻している夫婦、しかも妻には夫公認の愛人がいる。そんな夫婦の別れるのやら別れないのやらなんだか煮え切らないお話。蓼食う虫も好き好きってね。2013/296

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    投稿日: 2013.10.16
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    男女としてやっていけないのはわかっていながらも なかなか離婚まで踏み切れない夫婦の話。 誰も傷つかない離婚なんて無理だし、 そもそも主人公が女に求めるものが複雑すぎて...。 そんな女の人いないよ。 ストーリーに大きな盛り上がりや展開があるわけでもない、 小説なのに小説らしくない不思議な本。 先日読んだ「陰翳礼讃」のような、谷崎の美学を主張している部分が目立つ。

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    投稿日: 2013.10.03
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    小説の勉強のために読むが、勉強のポイントが分からん。自分に必要な著者かどうかを再検討の必要あり。。人生は短い。俺よ、古典を読んでる暇はあんのかい?

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    投稿日: 2013.06.29
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    初谷崎文学。三島由紀夫と同じく、精緻かつ美麗な日本語がふんだんに使われており、なんともストーリーを読み進めるのに苦労します。 難解な日本語を駆使しながら描写される場面一つ一つが、軽く読み飛ばせない重厚さがあり、読み終わると大きな達成感が。 性格上の不一致が理由で別れる夫婦が主人公達ですが、淡々と進んでいく物語の中で彼らの息子が親の擦れ違いを敏感に感じながら、それと知らずに戯けてみせたりする場面はなんともやるせないです、切ないです。

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    投稿日: 2013.04.21
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    設定にいくらかの無理があるのが、どうしても最後に響いてくる。 互いを性的なところ以外では、ほぼ完全に認め合っている夫婦が離婚せざるを得なくなる。 そんなに認め合っているのならば、憐れみでも時々抱いてやれば良いんじゃないだろうか? そもそもどうして結婚したのか? そこら辺が、最終的に解決しきらない。さすがに無理がある。 どこか首をかしげざるを得ないところが残る。 それでも、やはり谷崎の文は綺麗だ。流れも美しいし、心理描写、景色描写、ともに綺麗だ。もはやストーリーの方は少々、目をつむったって構わないとさえ言える。 何を書いたって良いわけじゃないにせよ。 男と女を鋭い切り口で捉える。 その点、確かにストーリーとしては無理のある設定だったけれど、男女の関係を捉える切り口としては面白い設定だと思う。 とにかく谷崎の文は綺麗で、かつ、変に気取ってもなくって、勉強するところが多い。

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    投稿日: 2013.02.12
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    物語の根底は自分の現況に近いものはある。しかし、こんな暮らしぶりは有り得ない!この時代、裕福な階層だけが夫婦愛だの離婚だのを思い悩むことができたんだろう。現在とのギャップは仕方ない。

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    投稿日: 2012.11.25
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    表面上は何の問題もないように思われる一組の夫婦。しかし性的不調和がもとで、もはや男女の愛情はなくなっていた。妻には夫公認の恋人がおり、いつ離婚しても構わない状態ながら、別れることができない。 ついつい、そもそもこの二人はなぜ結婚したのか?と考えてしまうのは私の無粋さなのか。このおとなしさを新しい魅力ととるか、物足りなさととるか。ラストはちょっとぞくっとしたけれど。

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    投稿日: 2012.09.19
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    あからさまな変態はでてこない谷崎。人形のような操られ(舅の)愛人と、浮気妻を対比した女性観と読むのがストレートだろ?が、語り役はゆとりかっ!?てほどめんどいこと避けまくりの中年だし、色ボケ爺はうざいし、正しくはダメ男のハナシだと思うのね。

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    投稿日: 2012.02.01
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    個人的には、読んでいて心持の良い作品だった。 テーマ自体はあまり楽しめるものではないが、夫婦の破綻しきった会話から、肉親に対する愛だけでは夫婦は成立しない、という忘れがちだが当然の、厳しい摂理を感じた。 谷崎文学においては、少々異色な作品だと言われているらしい。 確かに、他の作品と比べると穏やかで、官能に訴える描写が少ないことは事実である。しかしながら、谷崎潤一郎の、着物や生活用品に見出す華やかさを語る豊かな筆致、また人間の持つ影の部分をそういった美しい文章の間隙にちらつかせるあたりなど、彼の文学的エッセンスを至る所に見出すことができるのではないだろうか、と読了後に感じた。 例えるなら、鮮やかな色をした林檎に、一匹の虫が卵を産みつけ、その幼虫が林檎の表面を傷つけることなく、内部のみを侵食していく様、である。表面的な平穏や美が内包する、絶望的な終幕の時。そういった緊張感が、この本からはひしひしと伝わってきた。

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    投稿日: 2012.01.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ※ツイッターより転載 「蓼喰う虫」読み終わった。読んでるときに「うっは、こいつら嫌いw」と思い、中盤はだらっだらしてるな、と思い、最後はこれだけ壮大な設定作り込んでおきながら結局何も解決しねえのかよ!と苛立った。もう谷崎中期の作品の男どもは皆二次元にでも恋してろよ。 酷い言いようであるが、自分ではあながち外れたこと言ってないと思ってる。春琴抄はまだほほえましかったが蓼喰う虫は正直しつこいしうざい。ニヤニヤできる要素が一つもない。要は結婚しないで一人で風俗巡るか本でも読んでありもしない女性像に性的倒錯でもしてればよかったのに。 というわけでヴァイニンガー「性と性格」読みたい。どんなにねじまがろうと私はこの切り口から蓼喰う虫を解釈したい。最早これじゃあ文学じゃなくて社会学かもね。でもやりたいものはやりたい。突っ走りたい、すごく。

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    投稿日: 2011.11.18
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    東京から関西に引っ越してきた離婚したい夫婦の話。別れたいんだけど、なかなか踏ん切りがつかない夫婦の関係がどことなく微笑ましい。そんで、なんかほのぼのしてる。人形浄瑠璃のくだりはちょっと眠たかったけど、面白かった。

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    投稿日: 2011.10.27
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    "妖しく交錯する"という表現がぴったり当てはまるような内容。 既婚者だからこそ、この小説を興味深いと思えるのかもしれません。

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    投稿日: 2011.08.20
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    う~ん。 2人に共感は出来なかったけど、夫婦の形は様々なんだと改めて実感。 この時代でも意外に離婚ってあったのかなと気になった。

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    投稿日: 2011.06.04
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    谷崎潤一郎の作品はいつか揃えたいなと思っていて、新潮文庫の表紙が好きなのでこの作品もこれで買ってみた。 谷崎は『春琴抄』『痴人の愛』のイメージだったので正直、どう受け止めたらいいか迷うお話でもあったかも。静かな作品。けれどこの人の描く女性はやっぱり魅力的で、男性もある意味で魅力的だと思う。着物を着るのに妻がいないと不便だというくだりがなぜか妙に好きでした。 美佐子に感情移入をするとほんのりせつない。思いやることはできても愛し合っていない男女のぎこちなささえ、静かにうつくしい会話で紡がれる。

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    投稿日: 2010.12.12
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    夫である要の目の前で他の男の家に向うことを告げる妻の美佐子。 夫婦の愛情でつながれなくなくなった彼らは 離婚を決め、決めたはいいがお互い悪者になりたくないために 決定打を出せず、また息子にも言いだせずにいる。 全く波風を立てないで離婚をするって不可能ですよね。 夫婦間でもそうだし、お互いの家族やその周りの友人関係にも 絶対に関わってくる話。だって家族じゃなくなるんですよ。 この話ではその無理なことを人知れず行おうとします。 しかし延ばし延ばしにして友人が発破をかけに来ても変化せず。 情というより惰性で暮らしている感じです。 もどかしいというほどではないけれど 余裕のある居住まいにどちらかというと呆れてしまう。

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    投稿日: 2010.09.05
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    話の途中から浄瑠璃にまつわるうんちく噺のオンパレードが始まり、なんだこれはエッセイか?というくらい小説らしからぬ様相を呈してくる。 『陰翳礼讃』や『文章讀本』とやや被っている部分も多い。 私は谷崎のファンだが、正直この作品はマニアックすぎてついていけなかった。上級者向け。

    0
    投稿日: 2010.07.06
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    初めての谷崎小説。随筆集に収められている『私の見た大阪及び大阪人』『陰翳礼讃』『いわゆる痴呆の芸術について』と併せて読むと、著者の文化観をより詳細に把握できて面白い。 話自体は、関係の冷え切ったとある夫婦が正式に別れるまでを淡々と描いた、特に何のドラマがある訳でもない地味な物語だ。起承転結のはっきりした、流れるように運ぶ小説に慣れ切っている、もしくは好きだという読者には辛い一冊。ただ、よくよく読むと実はこれが男女間の痴情のもつれを描いた話などでないことが分かる。露骨には書かれない分、著者の暗に意味するところのものに気が付いた時には、思わずぞっと怖気が立つ。この物語には、本当の「女」などいない。そこには、男が自らの趣味生活を投影する虚像として購入した、「人形」たる虚ろな女の姿しかいない。 結局、主人公の要が妻・美佐子に対し一切の感動を失ったのは、彼自身の文化的嗜好に彼女がそぐわなくなったからである。要は、元々東京人として、首都のさっぱりとした、いかにも都会的な雰囲気を好んでいた。義太夫など、京阪のいわゆる「伝統芸能」は、ずうずうしくていやらしいものとして生理的に嫌悪していた。それが、いつしか(舅とその情婦の影響だろうか)否応なしに日本の古典文化に心惹かれるようになり、中盤の淡路島のシーンを経て後、彼はすっかり昔気質の文化人へとその本質を変貌させてしまう。そうなれば、無論それまでに愛した女など糞の役にも立たない。要にとって、「女」は生身の実体などではなく、彼の趣味生活の理想を現実にあるものとして再現するための、奢侈品の類に過ぎないのだから。彼にとって、「女」とは自身のセンスを問われる写し身だ。好みが変われば身につける服の趣味も変わるように、人間として「女」を愛することのできない要は、気分によって侍らせる女の種類を変える。そこに罪悪感はあっても、真の反省はない。だから、妻の浮気にも彼は他人事のような不感症を保っていられる。彼の趣味に合うものでなくなった時、美佐子は彼にとっての「女」でなくなる。骨の髄まで芸術という病に冒された、孤独な男のそれは見上げた自慰行為ではないか? とはいえ、心底気の毒な男だとは思うものの、物語自体に対しては個人的に好きな部分もある。とりわけ、美佐子の可愛さときたら本当にたまらない。浮気相手の阿曾と結婚の話になって、「僕は君に対して誠実になりたいから、君が夫と別れた後お互いに飽きることがないという保証ができない。だから結婚の約束はできない」と言われ、それでもふざけた間男の放言を信じて、「あたしは飽きないつもりなの」と虚勢を張っている。否、虚勢を張ることしかできないでいる。愚かで、気の毒で、つくづく最後まで救えない女だと、その可愛さだけで本当に胸がいっぱいになる。著者自身、「女」という生き物に対し言い知れない軽蔑の念があるのではないか。しかし、そんな彼が描く馬鹿な女たちは、いかにも人間らしい哀れっぽさに満ちて、読者の心を同情と共に締めつける。なんて馬鹿でかわいそうな、それでいてたまらなく愛おしげな女だろうと読んでいるこちらとしては眩暈までしてくる。 単に、これが「女」の幻影を愛することしかできない、酔狂な男の物語であるというなら、これほどつまらない話もなかったろう。それでも、この単調な物語が味わい深いものに仕上がっているのは、この物語の中に著者自身の自らに向かう強烈な皮肉が込められているからだ。第一、妻を浮気相手に譲渡するつもりでいる物好きな男という主題そのものが、著者自身の「小田原事件」にまつわるエピソードを彷彿とさせる。「蓼喰う虫」とはつまり要、ひいては谷崎自身を表す言葉だ。趣味を通じてしか女を評価できない、自らにとっての「神」としての女を追い求めるだけの哀れな男。もし、著者が真実要のような男であったとしたら、女としては本当に願い下げだと思う。彼の恋は、ただの自己満足に過ぎない。理想への信仰に縛られるがあまり、彼はそこで空虚な女の微笑みを、手の届かないものとして永遠に思慕しているだけに過ぎない。

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    投稿日: 2010.02.16
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    谷崎潤一郎です。お耽美です。 主人公・斯波要と妻・美佐子は夫婦でありながら 互いに夫婦としての愛情を持てず、他に愛人を持ち、離婚間近にある状態。 幼い息子・弘や、仲介人の高夏、妻の父とその愛人。 情景描写や人形芝居などの古めかしく綺麗な文章と、 なまめかしいエロチシズムと称される独特の雰囲気が特徴でした。 個人的にはお久が一番魅力的だったかな。 こういう谷崎作品のとろりとしたなまあたたかい雰囲気が結構好きです。

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    投稿日: 2009.12.28
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    理想の別れ方 と言ってしまえば簡単だけど、 この別れ方を出来る夫婦はそう居ないと思う。 12年連れ添ったということ自体に 大きな愛が育まれており 男女の情愛は欠落していても 切れない絆がある。 心に残った一節 『要にとって女というものは神であるか玩具であるかのいづれか』 そして要にとって妻とはそのどちらにも属さない。。。 男にしか分からんことだな。と言いつつ、 女である私はその『妻』に分類されがちな 女であるということが何となく分かるこの頃。。。

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    投稿日: 2009.10.19
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    もごもご踏ん切りのつかない気持ちを書くのが上手ですよねー。 終わり方は細雪みたいな余韻を残す感じ。上り詰めていく終わりも好きですが、こういう終わり方も素敵。 09.08.21

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    投稿日: 2009.08.21
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    「性的不調和が原因で夫婦了解のもとに妻は新しい恋人と交際し、夫は売笑婦のもとに行きながら“蓼喰う虫も好きずき”の諦念に達して、互いにいたわりあいつつ別れる時機を待つ」(作品紹介より)夫婦の話。 別れると分かっているのに今さらのように義父の誘いに付き合う夫。仮面夫婦を演じることにうんざりした様子で恋人のもとへと急く妻。まだ小さい一人息子も二人の別れの近い事を感じているけれど何の素振りも見せない。 義父と妾にあてられて、でもその姿が羨ましく感ぜられる夫の心が面白かった。

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    投稿日: 2009.07.22
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    いろいろな小説があふれ、 毎月新しいベストセラー本が入れ替わり立ち代り平積みにされるこの時代。 そんななかで今でも読むひとをひきつけ、 共感させ、驚かせる。 どういう風にしたらこういう美しい文章を かけるのだろうと思う。 妻は不倫。 夫は娼婦の下へ通う。 こんな話を正しい美しさで表現するのは 至難の業だ。 たんたんと進む話のなかでも 要が涙するシーンでは 胸が痛む。

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    投稿日: 2009.07.03
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    終わり方がすごい。 谷崎好きなわたしでも途中退屈になったりしたんだけど、ともかく終わり方! ええーっておもう。 でもちょっとマニア向け過ぎやしないですか谷崎先生…? というわけで初読者にはおすすめできない。

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    投稿日: 2008.12.11
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    初めての谷崎作品。粋な昔の人の生活が偲ばれる作品だった。ただ離婚するかしないか揺れる要の心情のその先をもう少し見たかった。

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    投稿日: 2008.05.30
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    思い出の品その3.恋とか愛とかの探求も大切だと思うけどハッキリしてほしいな!けじめ的にな!しかし自分も同じようなものですあちゃー

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    投稿日: 2008.04.20
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    お互いに、浮気相手が居る夫婦のお話。夫は妻が外に恋人をもっている事を許している。というか、推奨している。でも、妻は夫が外に女を作っている事は知らない。(多分)離婚の時期をいつにしようか悩む夫婦。すぐに離婚出来ない訳、それは息子の存在。 なんだか、漱石の家族小説みたいな雰囲気が漂う作品でした。

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    投稿日: 2008.03.06
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    自分達をモデルにした小説であるから故意にか、他の作品よりも一歩離れて語っているような感がある。 諸所に小道具を使って暗示させるようなところがあるが、気づいても気づかずとも面白いと思う

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    投稿日: 2007.03.23
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    出てくるのは夫と妻と子どもと妻の恋人と妻の父とその妾とおじさんだけ。夫婦は離婚したいが、お互い受身的なので離婚もせず、どーしよーかと悩みながらただ日々が過ぎていく・・。それだけなのに、なぜ2回目を読んでしまうんだろう?

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    投稿日: 2006.10.09
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    この作品は、倦怠期の夫婦が離婚するまでを描いたとよく言われるが、私はこの小説の真の主題は「ピグマリオニズム」であると思う。

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    投稿日: 2006.06.10
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    倦怠期の夫婦の話と、その夫の父親の話の二つが別々に語られながら交差する話。この話ではそれまでの西洋風の女性ではなく、日本的な女性が持ち上げられていたのに驚いた。細雪につながるものが見える。

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    投稿日: 2005.07.13