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キミトピア
キミトピア
舞城王太郎/新潮社
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総合評価

40件)
4.2
12
14
5
1
0
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    ほっこりする短編集。『あまりぼっち』が面白かった。人との繋がり、安心していられる場所について考えさせられました。日常に溢れてる何気ない会話など、大切にしたいと思いました。

    0
    投稿日: 2025.03.30
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    舞城王太郎作品では、感動と切り離されているようでいて人とは別の道で誠実さや愛にたどり着く主人公が多く登場するが、本作の主人公たちの世界や人間に対する興味のなさはかなり徹底していて突き放されているような冷酷な印象を受ける。特に「やさしナリン」や「あまりぼっち」「真夜中のブラブラ蜂」の主人公たちは冷たい印象で、「興味ないけど幸せになってね」ではなく「興味ないから」でおしまいにしてしまうようなタイプ。小説を読みながら彼らの思考に触れているとだんだん息苦しい気持ちになる。 最後に収録されている「美味しいシャワーヘッド」という短編がそういう行き場をなくしている息苦しさの逃げ道を作ってくれるような話になっている。本作の収録作のなかで唯一「自分はなにかを失っているのかもしれない」と気づく主人公で、ただ気づいたところでお話が終わる。話の構成としても太宰治でよくある感じで、ほぼ繋がりのないバラバラのエピソードがなんとなく同じ主人公の話としてひとつの題名のなかに収められていて、気の抜ける感じがある。

    0
    投稿日: 2023.09.29
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    面白いとか感動するとかではなく、とにかく好き。 何故、好きなのか理屈をつけてしまうと好きでなくなってしまいそうで怖いので思考停止しておくのがいいなあと漠然と思っているうちに10年以上経ってしまったくらいに好き。

    0
    投稿日: 2023.03.26
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    芥川賞ノミネートされてた「美味しいシャワーヘッド」。 いつもの、一本のエピソードをゴリゴリ進めてくのとは違ってちょっとした出来事をぽつりぽつりと散文的に?話していくのが 読み終えた今とても不器用なようで胸に響く。 みんな僕を通り過ぎ、置いていったけれど、生きてる。続いてる。 最後に読んだシャワーヘッドが謎に一番心を動かされた。 とっ散らかってて別にモチーフで纏まってたりとかもしないのに。 なんていうか佇まいみたいなものが切ないんです。文学って。 シンプルにおもしろかったのは「やさしナリン」「ンポ先輩」「あまりぼっち」辺り。 そうそうこれこれみたいな、大切にしたくなる、いつものやつ。

    0
    投稿日: 2020.04.05
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    舞城さんの本を読んだのは実に数年ぶりで…それこそ一つの前の職場にいた頃、一番読んでいたのは大学生から社会人になりきれてない、22の壁を越えられなかった頃だったと記憶しています。 出版年の頃にはもう今の仕事だったわけですが、その時期にこれだけぶれない話しが出せるんだから本当に凄いなと。 著者の作品は大学時代の私の「最先端」であったので、今となっては少し懐かしいものがあれこれとでてくるのです。 ガラケー。某巨大掲示板。絵文字。フォントによる表現。などなど。 懐かしさと少しの痛み(恥ずかしさとか)を伴う時代感覚と、古さなんてなにものですか読んでりゃわかるでしょおもしろいって、という感覚が同時にきて、斯くして私は夜中にひとりで笑い転げる始末でした。 短編集です。 スマホとかなかったころの最先端です。今でもスマホがわかんない世代と、産まれてからこの方ネットが常時接続だった世代の、丁度合間の世代には息苦しくなるくらいの感覚です。 ラノベを息をするように消費し、全く同列にさして疑問も挟まずディケンズとか芥川とか読んでた世代がごろごろしてました。あのころはネットもゲームも読書も結構私的な経験だったんじゃないか。 だからそれをのぞき見るような本書は悲しくても笑っちゃうような短編ばかりなのです。 すっとこどっこいしょ、はすごい秀逸なんじゃないか。 冒頭のやさしナリンでは「くそがっッ…」て思いながらいろいろユルして行けそうな気になって、最後までよんでまたもどって「くそがっッ…」てなりました。 いつだって自分の掌からとびたったようでそうでないものがたりに。

    0
    投稿日: 2016.07.03
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    もうなんか、どうしていいかわかんないくらいにおもしろかった。 どの作品もほんとうに凄みがあって、はっとすることだらけだった。 ずっと読んでいたい作品集だった。

    1
    投稿日: 2014.04.28
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    「真夜中のブラブラ蜂」「美味しいシャワーヘッド」は、なんか舞城作品のなかでも新しい感じがした。犬に噛まれて田原俊彦歌いだすシーンは電車の中で笑いをこらえるのが大変だった。チイちゃんのくだりはぞっとした。あと特に好きなのは「やさしナリン」「添木添太郎」「あまりぼっち」。特に「添木添太郎」はよかった。やっぱり青春時代の痛みとか選択のやるせなさを描くの上手いと思う。

    0
    投稿日: 2014.04.06
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    最初やさしナリン以外はまらんかったけど三回目くらいですごいはまった。ンポ先輩もあまりぼっちも定期的に読んで克己したいところ ブラブラ蜂と添木は悲しみの描写がリアルすぎてつらい シャワーヘッドはよくわからない・・・また読もう

    0
    投稿日: 2014.02.10
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    「真夜中のブラブラ蜂」の腑に落ちるような落ちないような感じがとても舞城らしい。改めてフィクションは普遍性のあるものを特殊な形で提出するものなのだなあと感じた一編。

    0
    投稿日: 2014.02.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表題・個々の題名が良い。 【やさしナリン】 人の不幸に対してパニックになってしまい、自分の安全が確保できないほど相手に親切にしてしまう。(お金をあげてしまったりなど) そしてそれに対して「人に優しくすることの何がいけないの?」とう態度を取る夫。 【添木添太郎】 「神に愛された子」の周りにいると、自然と彼女を助けるように「何か」に利用されてしまう 【すっとこどっこいしょ。】 将来を決められなくて、何にでもなれるように理系も文系も勉強したりしている高校生の主人公。 人生は目標を決められなくても進んで、そのために新しい選択肢が出たりすることもある。友達の彼女の浮気を問いただしたら腹をさされ、それがきっかけで出会う人もいるように。 「なめた高校生」のアピールがすごくて、主人公を全く好きになれない。 【ンポ先輩】 ショックで心に空白ができる。その「空白」が主人を乗っ取って、自分は何者なのかと親しい人につきまとう。 【あまりぼっち】 毎日、「昨日の自分」が自分を訪ねてくるようになる。 何もする気が起きなかった主人公だが、明日もやってくる「これからの自分がつくる昨日の自分」の存在の為に、生きて働いて行こうと思うようになる。 【真夜中のブラブラ蜂】 子供が独立したのを機に、夫から「グダグダしてるの見るのもやだから、なんか始めてみれば?」」と言われて始めウォーキング。 次第に「単にブラブラしたいんだ」と気付き、ついには離婚して世界中をブラブラするようになる話。 アメリカで偶然(子供に言わせればブラブラの運命めいた理由)出会った事件の犯人の描写が怖い。 複数の60代男性の血まみれのチアリーダー姿。 【美味しいシャワーヘッド】 まあいいや、どうでもいいや、みたいな適当な態度では見失うものや見過ごしてしまうことが多すぎるのだ。 気を付けるというのは、言葉通り、気を張って相手に、対象に、寄り添うということだ。 そうせずにいて見失い取り戻すこともできない、それが自分のそばにあったということを知ることもできない

    0
    投稿日: 2013.11.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    第148回芥川賞候補作「美味しいシャワーヘッド」を収録した中短編集。 舞城王太郎さんの作品は初体験。かなりクセのある文体の作家さんだというのは聞いていて、初めてならこれがお薦めと何人から言われたので手に取りましたが……うーん、文体よりも物語にクセがあるなぁ。 7編の物語とも物語が向かう方向に意外性があって、言葉の選び方一つ一つが特徴的。現実の世界で、あまりウチの周りにいないタイプの登場人物でその違和感が時々、イラッとさせられます。 「やさしナリン」は夫婦の物語。人の可哀想に異常に反応してしまう夫とその妹に振り回されながら、関係を再構築していく過程が伺えます。 「やさしナリン」という言葉の選び方が単純に凄いなぁと思いつつ、突き放した見方に同調仕切れず消化不良。 「すっとこどっこいしょ。」「ンポ先輩」「真夜中のブラブラ蝶」は登場人物に受け入れづらい方が登場するので、読んでいると結構苦痛。 一番好きなのは「あまりぼっち」かなぁ。 ある日突然、自分の目の前に現れる"昨日の自分"。別居中の妻子の元に向かうも、その日の晩には"昨日の自分"は消えてしまう。 SFな設定ですが、他人に興味のない今の自分と、消えてしまう不安を抱えた昨日の自分との対比が面白いですね。

    0
    投稿日: 2013.10.14
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    キミトピア、というタイトルはなんかぞくっとくるものがあってどうかと思いますが。7編の中・長編入りの作品集。 初めて舞城王太郎読んだの阿修羅ガールが文庫化した直後で阿修羅ガールで初めて読んだんだけど、舞城王太郎は女の人のような気がする。どうなんでしょ。 舞城作品は比較的メタファーががっつりしているんだけど、結構後半までそれがうまいこと隠されたりしていて、それが解けたときの快感が強い。 主題もはっきりしている。 「やさしナリン」ではかわいそうな人を見るとなんとかしなきゃ!というスイッチが入って冷静なときにはできる判断がどうにもうまくいかずに暴走してしまう兄妹を兄の嫁視点で描いている。 そのかわいそうな人をみたときに出てくるドーパミンみたいのに主人公は「やさしナリン」という名前をつけてわかりやすくする。言葉ってほんとうにすごくて、そうなると読んでる側(私)もやさしナリンに思い当たるフシが続々と湧き出てきたりする。 「やさしナリン」だけじゃないけど、この作品集は言葉の繊細さといものがひとつの大きなテーマだったのかな、とも思う。 「美味しいシャワーヘッド」は、「好き好き~」の柿生がやったことと同じようなことを樽歩がやり、もっと大きな枠で主人公が読者に対してやる。 「あまりぼっち」読んでちょっと働かねばと思った。ヴェイユを読んでても思ったことだけど。

    3
    投稿日: 2013.10.11
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    芥川賞候補作「おいしいシャワーヘッド」収録の舞城短編集。これを読んでいて思ったこと。舞城きっと芥川賞とれないんじゃないかな。個人的には「すっとこどっこいしょ」が好み。舞城初心者にも読みやすい短編集。2013/245

    0
    投稿日: 2013.09.04
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    分厚さなんてなんのその。「考えることに馴れて考えてないように感じられても、それは考え終わってるだけで、そこでもう考えることがなくなった訳じゃない。次へ行くのだ。次へ。」がすごく心に残った。

    1
    投稿日: 2013.07.25
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    短編集。優しすぎる夫とその妹が引き起こすあれこれを描いた「やさしナリン」と日々のあれこれを描いた「おいしいシャワーヘッド」が良かった。

    1
    投稿日: 2013.07.19
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    七つの短編集。 やさしナリン……『可哀想』に弱い人 添木添太郎……いないいないと神様? すっとこどっこいしょ。……青春。将来。 ンポ先輩……キチ女?え、怪談的な? あまりぼっち……僕僕タイムスリップ 真夜中のブラブラ蜂……子育ても一段落してブラブラしたい主婦 美味しいシャワーヘッド……ちょっとよくわかんないけどトシちゃんのとこめっちゃ笑った 最近は読みやすいのを立て続けに読ませてもらってるなあと思う。 舞城の、女性主人公の話は読みやすいので好きだ。だから、この七つの短編の中でもやさしナリンが一番好きだ。 可哀想に弱い、という発想がおもしろい。突飛に感じるけれど、理解できる感情だし、はっとさせられた。 作中に、やたらとハートマークが乱舞しているが、これは『w』に置き換えたらわかる。なぜハートマークだったのか……。 つい吹き出して笑ってしまった箇所が多かったのはすっとこどっこいしょ。ニンニンて。 ブラブラは最後にこんな展開になると思わず驚いた。 美味しいシャワーヘッドに放浪息子と町でうわさの天狗の子が出てきたのがすこし嬉しかった。 夫婦の話が多かった気がするのだが、舞城王太郎最近結婚か離婚かしたのだろうか、と邪推。櫛子の書いてる小説が明らかに舞城王太郎なのでつい安直に考えてしまう。舞城王太郎は主婦なんじゃないか疑惑。

    0
    投稿日: 2013.07.11
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    間違いのほうが正しい答えよりも正しい場合があって、これがそうなのである。 (冒頭より) やさしナリン 添木添太郎 すっとこどっこいしょ ンポ先輩 あまりぼっち 真夜中のブラブラ蜂 美味しいシャワーヘッド 全てのお話で、誰かが何かしら混乱してて、それに共感したり、笑ってしまったり、なるほど〜と思わされたり。 始めの4篇が好きでした。 すっとこどっこいしょの「ニンニン」からの「くせ者ーっ」の流れとか大爆笑です。いやぁ、ますぅヤバイ。ヤバすぎる。 P116 神がごめんとひと言謝ってきたなら許さないでもないという気持ちで生きている。 P260より 言葉は間違える。 感情も間違える。 心も間違える。 私はこれを憶えておかなくてはならない。

    0
    投稿日: 2013.07.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    短編集。初、舞城王太郎さん。 twitterでフォローしている方が呟いていたのが面白そうで読んでみる。 (ややネタバレ含みます) 【やさしナリン】  うわぁ、これすごい!まず、「やさしナリン」という言葉のセンスがすごい。 あるあるというか、いるいるというか、むしろ自分やさしナリン過多じゃね?というか。 人の「かわいそう」に耐えられず、妹夫婦(この妹も緑里と同じタイプ)の問題に関わってしまう夫の緑里を見ながら、妻の櫛子が独白していく話。 やさしい=善意=正義じゃねーだろっていうところをズバズバ、でも淡々と描いてる。櫛子さんと緑里の関係をどうおさめるのかな、と思ったら、最後に関係ない第三者の犯罪を強引に突っ込んできて、緑里がやっと自分のやさしナリンがどういうものか気づくんだけど・・・。 東日本大震災のあと、会社勤めの友人に聞いたんだけど、就業中、突然立ち上がって「(被災者のために)何かやらなきゃダメだよ!」って言い出した人がいたらしい。自分が無事にいつも通りの生活をしていることで、罪悪感を感じるような気持ちは分からないでもないけれど、それは何かの解決にはならない。 自分も含めこういう感情のやりとり、あるなあと生々しさを感じるんだけど、 かといってこの短編を読んで何か解決したり啓示を受けたりということもない、なんだか居心地の悪さを感じる。 同時に、なんだろうこのセンス?!という感嘆も。舞城さんてこういう作風なのかな? 【添木添太郎】 うーん、なんていうかシュール? メインは新一と槻子と緋沙子の三角関係(や、小学生なのでこの言い方は誤解を招くけど)と、それぞれの意志の確立、なのかな? 槻子の特別な体質を巡って保護者、被保護者という共依存関係に持っていくのかと思いきや、登場人物たちはみんな、自己の精神の独立を選択する。 そんな小学生いねーよ!というか、大人になったって難しいよ!と思いながら、ここでもうまく小説世界に入り込めない違和感を感じる。 【すっとこどっこいしょ。】 主人公の梨木の、中学二年生から大学三年くらいまでを、梨木本人の一人称で語っていく。 ありそうでなさそうな日常生活を語っていきながら、クライマックスで梨木が大けがをし、そこから結局は特に何も解決されない。それでも梨木は自分の気持ちに折り合いをつけているんだけど…。 読者としてはなんていうか、すごい突き放され感を感じました。 独白の部分、分かるなあという個所もここかしこにあって、面白いんだけれど、共感できる小説を読んだ時のカタルシスがない。 ひたすら人の人生をなぞって終わったような? 登場人物が皆フルネームで、でも小説の筋にはそんなに関わってこなかったり。現実の世界でもすぐそこを歩いているおじさんにだって、名前があって人生があるんだけど、私の人生には全く関係ないわけで。 小説に書かれている中の、どの情報が大事なのか、よくわからなくなって、混乱してくる。 誰かが、カメラをずっと回しながら日常生活を送っていて、ただひたすらそれを再生してみているような。 途中で、「小説を読む」ってなんだっけ?という気にすらなって来る。 推理小説なら事件が起きてそれが解決されるカタルシス、 恋愛小説なら主人公に共感したり、文章の美しさを味わったり。 そういう読む姿勢が全く通じなくて、でも文章が下手とかつまらないとかいうわけではなくて。何となく、感情の生々しさだけを感じて、読むのが辛くなってきた。 図書館で借りた本なので、返却期限もあり、以上3編を読んだところでギブアップしました。読んでいない短編は以下4編。 ・ンポ先輩 ・あまりぼっち ・真夜中のブラブラ蜂 ・美味しいシャワーヘッド ※※※追記※※※ 【ンポ先輩】 (ネットで返却延長できたので、続きを読む) この話、かなり好き。なんだろう、人に対してもやっとしていた部分にそうそう!という共感もあるんだけれど、自分に対しても見たくないところに向き合わなきゃいけない感じ。それが読んでいて辛いのかもしれない。

    0
    投稿日: 2013.06.28
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    読書中。”藪の中”的なモチーフを感じる。著者の実力からいえば、傑出したものはないものの、日常の不可解と言葉の不可解がベースになっていると思った。(13.0626)

    0
    投稿日: 2013.06.26
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    改めて舞城好きだーと思った。【やさしナリン】久々の舞城だったせいか主人公が鼻についてしまって内容に集中できなかったので再読したい【添木添太郎】黒い馬の夢の恐怖をきっと忘れてはいけない。そしてその恐怖に負けないことがちゃんとした大人になるということ【すっとこどっこいしょ。】最初はいい感じの青春かなーと思ったけど終盤何が何やらで笑うしかなかった。気楽に読める【ンポ先輩】やっぱ舞城天才か…途中からぶっ飛んだ気がしなくもないけどそれも私の穴あけのせいか(違うか?)間違ってても穴をまた空ければいい話。【あまりぼっち】うーんよくわからんSF。理解力が足りなくて残念…理解できたら超面白そうなのに。【真夜中のブラブラ蜂】何これ優しすぎ。挨拶が素敵とか煙か土かryの作者と同一人物とは思えん…色々さておき夫がかわいそうかも。【美味しいシャワーヘッド】ふんわりとしか理解できなかった。けど何度も何度も読み返したい作品。

    0
    投稿日: 2013.06.10
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    読み終わるのもったいなくて、しばらく読み進めるのやめちゃう時がある。 そんな小説。 それぞれの短編になんかしら感じるものがある。 うまく言葉にできないような、気持ちだったり状況だったり。 表現できないんだけれど、残しておきたかったり大事だと思いたかったり。 だから、そばに置いておきたいんだ。 そんな小説。

    0
    投稿日: 2013.06.01
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    全7編を収録。そのうち、好きだと思ったお話は、まず「やさしナリン」!可哀想な人に弱く、自分を傷付け、身近な人に迷惑をかけてでも、冷静な判断ができなくなり、可哀想な人に親身になってしまう兄妹。優しさっていうのは決して間違いではないからこそ、優しさの振る舞い方でとんでもない醜悪な展開となってしまう。そして「ンポ先輩」!これは全体を理解できているわけではないけれど、空気読んでよ、という圧力に、私は空気の奴隷じゃない・・っていう主人公の主張に痺れた!!最後の「真夜中のブラブラ蜂」もカッコ良くて興奮した。子供を大学まで育て上げた若い奥さんが、「散歩」を極める話。この3点に共通するのは、主人公がある主張について討論するシーンがあること。「やさしナリン」では、ヒステリックになってしまった旦那と、「ンポ先輩」では、空気を読めと詰め寄ってきた友人と、「真夜中のブラブラ蜂」では、散歩することを楽しんでいる主人公に対して、暇ならもう1人子供を作ろうと提案してきた旦那と・・・。意見が合わなくなる、論点が少しずつズレテていくときの、イライラする感じ。悲しくなって、諦めちゃう感じ・・・。面白いな。

    0
    投稿日: 2013.05.27
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    ズバズバ自分に当てはまるんでごめん!って思った。この人の短編読んだのはこれが初めてだったけどはまるわー。

    0
    投稿日: 2013.05.04
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    舞城ワールドでも比較的読みやすくてソフトな中篇集かな。 「真夜中のブラブラ蜂」、「やさしナリン」、「美味しいシャワーヘッド」 の拘り方はやっぱりね^^って思います。 誰かと誰か・・・それがもしかしたら自分であったとしても、 必ず交じり合わないところがあるんですよね。 その交じり合わない状態に自然に向き合える自分が いるのか?相手はどうなのか??? 分からないことだらけだから、悲しいこともあるけど、 楽しいこともいっぱいあるんだと思います。

    0
    投稿日: 2013.04.27
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    どんどん内容がやさしくなってきますねー。 好き好き大好き超愛してるも物凄く分かりやすく表現していましたけど、今回はさらに。 これは中高生向きかもしれないですが、読み応えあって気持ち良かったです。 舞城さんは女性一人称が巧みになってきて、谷崎めいてきましたな。 13.03.20

    0
    投稿日: 2013.04.05
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    冒頭に書かれてた「間違いの方が正しい答よりも正しい場合があって、これがそうなのである」これが全ての短編集。なので疲れるし納得出来なくてストレス溜まる。でも時折笑っちゃったり、ほほぅと思ったり、うーんと考えたり、でも読み終わるとそれぞれのラストにニヤッとしたりする。すっとこどっこいしょがいちばん好き。

    0
    投稿日: 2013.04.04
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    芥川賞候補作wを含む7編の短編からなる今作。 書き下ろしも3編含まれなかなか読み応えある ボリュームですが、あまり疲れる事なく、 かといってサラリと読む...でもない割と 充実した読書時間でした。単純に...面白いんですよね。 人同士の繋がりや関係の中での自分...。人によっては 甘くもあり厳しくもあるんでしょうが、自分というものと 他人との関係を書かれた内容が多かった...気がします。 家族、友人との関係の中で口論めいたやりとりが 妙に印象に残り、自分のイヤな部分と各主人公の 自分のこそが正論という主張が重なり...凹んでしまう。 でも...言葉に出来ないんですが...「でも」と 思ってしまう自分がさらにいる訳で...。いつまでも こうやってもがいていく事しか方法がないんだなぁ...と。 単純にどのストーリーも何かしらの爪痕を残す 面白い作品で、スピード感やカオス感はないですが 温度と奥行きを感じる...アナログちっくな作品集 というイメージです。

    1
    投稿日: 2013.04.01
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    やっぱり舞城王太郎大好きだー!!と再確認。 「やさしナリン」「すっとこどっこいしょ」「美味しいシャワーヘッド」がよかった。言葉にはしないような、そしてそれゆえに記憶に留められず日々頭の中を過ぎ去っていく細かな感覚が再現される感じ。 「すっとこどっこいしょ」のニンニンとか♥♥♥とか、舞城さんのこういう文体のニュアンスもすごく好き。マスールっていわゆるキラキラ?な名前なのに読んでるうちに「ますぅ」ってカワイイなぁと思ってしまって面白い。 「美味しいシャワーヘッド」のラストは一冊のラストに相応しく印象に残った。

    0
    投稿日: 2013.03.26
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    7つの短編から成る。底を流れているのはいずれもYOUTOPIA。他者への現実的愛だ。妥協のないまっすぐな信念が個性を際立たせている。「やさしナリン」「添木添太郎」「すっとこどっこいしょ」「ンポ先輩」「あまりぼっち」「真夜中のブラブラ蜂」「美味しいシャワーヘッド」。タイトルを見ただけで期待感が喉元までせり上がってくる。いずれも玄妙なる深い意味がこめられているが、自分の想像するイメージとは悉くかけ離れており、どれもこれも綺麗に想定を裏切ってくれた。展開の飛躍はかなり抑制が効いており洗練された仕上がりにも好感を抱いた。芥川賞候補に4回ノミネートされる理由も判れば選に漏れる理由も判るような気がする。自分はとことん好きだ。

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    投稿日: 2013.03.24
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    今になって舞城王太郎の魅力に気付くのは、対話や行動の中で省いたり見逃したくなる心の動きを、しっかりと言葉で紡いでいるからなんだと感じる。

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    投稿日: 2013.03.22
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    YOUトピア。間違いのほうが正しい答えよりも正しい場合があって、これがそうなのである。 主人公の頭の中に入り込んで、一緒に追体験している感じ。ありえないはずのことが、普通に起きていく、でも、夢の中じゃない感覚。最近の有名映画名。

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    投稿日: 2013.03.02
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    7編入り。それぞれに色々な意味で自分探し中。同じく自分探し中の私にはナイスなタイミングだったのかも。

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    投稿日: 2013.03.02
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    ユートピアはYOUTOPIAではなかったのかと、アホな私はドキッとした。 この冒頭のポワーッとした感じが、とても好きだ。 舞城先生の言葉はおもしろくて、分かり易くて、語感が良くて、頭にスッと入るので、何だかテンションが上がってくる。 それで誰かに話したくなって、きっかけを作ってくれる。 書下ろしの方が好きかな。 特に「添木添太郎」と、「真夜中のブラブラ蜂」が好き。 この2作品は、私の心を抉ってきた。 進んでいくときの寂寥感というか、寂しさというか、そんなのを感じる。 あと「すっとこどっこいしょ。」 面白い♡♡♡ 表紙は調布のようで、いつか西暁町も見てみたいなと思った。 ブラブラっと行ってしまいたいね。

    0
    投稿日: 2013.02.21
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    初めての舞城王太郎でしたがなかなかに好きです。 作られたいくつかの言葉が、とてもしっくりきました。 理路整然とした、でもちょっと融通のきかない感じを受ける議論が あってとても面白かった。

    0
    投稿日: 2013.02.20
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    +++ 夫の「優しさ」を耐えられない私(「やさしナリン」)、進路とBITCHで悩む俺(「すっとこどっこいしょ」。)、卑猥な渾名に抗う私(「ンポ先輩」)、“作日の僕”と対峙する僕―(「あまりぼっち」)。出会いと別離のディストピアで個を貫こうともがく七人の「私」たちが真実のYOUTOPIAを求めて歩く小説集。第148回芥川賞候補作「美味しいシャワーヘッド」収録。 +++ 上記のほか、「添木添太郎」 真夜中のブラブラ蜂」 「美味しいシャワーヘッド」 +++ 疲れる読書だった。出てくる人出てくる人がみな一様に生き辛そうで、それが、生真面目さゆえなのか、偏屈だからなのか、純粋すぎるのか、あるいはそのすべてなのかがよく判らず、出口のない屁理屈に付き合わされて、つい納得しかけてしまいそうになる心地なのである。それぞれの物語の主人公にうなずけることもなくはないのだが、すべてが極端すぎるというかなんというか、なのである。結局は自分の主張ばかりで、他人の気持ちを慮ることが欠けているからだろうか。誰もが一歩間違っちゃった感じで疲れるのである。自分も気をつけようと我が身を省みた一冊である。

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    投稿日: 2013.02.19
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    舞城王太郎の最新短編集。 相変わらず面白すぎる。 軽快な言葉遊びと少し不思議な人間たちが織り成す物語は一見ファンタジックなんだけど、実は普通に人生を送っている僕らの「生きること」「他人との付き合い方」の本質を突いてくる。 それが痛快でもあるし、図星だからこそ心をヒリッとさせられたりもする。 芥川賞の候補になった「美味しいシャワーヘッド」はさすがの出来で、舞城作品にしては漫画のタイトルやバーなどの固有名詞が連発される珍しい作品だが余計にリアリティが増す。 主人公の小澤に共感してしまった。舞城作品で一番共振できたキャラだ。 芥川賞取れてたら帯の文句も変わってただろうに。賞レースに乗るには覆面じゃダメなんだろう。

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    投稿日: 2013.02.16
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    『ユートピア』を何となく『YOUTOPIA』だと思い込んでいて、大好きなあなたと一緒にいられるのならそりゃその場所は楽園だわなと考えていた。≪君とピア≫の≪ピア≫が何のことかは判らないけれど語感は明るいし何だか可愛いし。 でも君が笑って指摘する。 『ユートピア』は『UTOPIA』で、イギリスの政治家トマス・モーアが16世紀初頭に書いた小説のタイトルで、理想郷としての共産主義社会のことだし、語源としては『どこでもない場所』になるんだよ、と。 え、ちょっと、何その余計な蘊蓄。 僕は言う。 じゃあ僕のキミトピアはユートピアじゃなくてその反対だな。 僕と君が一緒にいる場所はひたすら現実的な場所だもんね。政治は常に完璧なんかとは程遠いし、人の気持ちも考えもはっきりしないし落ち着かないし、正しいも間違いも曖昧だもんね。 ふふふ、と君が笑う。あなたが言うと、現実の場所も能天気に聞こえるねえ。 まあね。 どんなにバカップルのぽわーっと間の抜けた言葉に聞こえようとも、僕はキミトピアを信じていて、そこに住み着くつもりなのだ。 わーははは。 間違いのほうが正しい答えよりも正しい場合があって、これがそうなのである。 【やさしナリン】 『これまでも嘘はついてない?』 『いや~無理。俺櫛子には嘘はつけないよ。今回マジできつかったもん。絶対ないよ』 『じゃあ、嘘はついてないけど、私に話してないことない?』 『そうよね。夫婦だもんね。性格とか性質とか、そういうことじゃないもんね、妨げになるのは。本当に困ってるのは上手く話し合えないってことでしょう?』 『どうしてそこまで…。夫婦の問題って、そこまで普遍的っていうか…』 『単純なものなのよ。そりゃそうよ。夫婦ってのはお互い話し合いながら一緒に生きていこうって契約だからね』 【添木添太郎】 『証明できないネガティブな断言なんて単なる呪いだ。』 『新一くんの凄いところは、私の病気のことを無視してるわけじゃないのに、何でもないことみたいに感じさせてくれるとこだよ』 『僕が槻子に言ったあの台詞を思い出し、泣きそうになるが、でもこれは余韻みたいなもので、本物じゃないから泣きたくない。』 『私たち、ちゃんと自分の気持ちで生きていこうね』 『うん。それ以外は嫌だよ』 【すっとこどっこいしょ。】 『なんだこいつらうぜえ♡♡♡人の困難に自分の薄っぺらいプライドかぶせてくるんじゃねえよ♡♡♡♡♡』 『ゆっくり自分の進む道考えな。考えても出てこなかったら、まあ流れに任せるのもありだけど、でも流れに任せる任せないも自分の選択だからね。変に流されたって人のせいにしないようにね?』 『暗い屋根裏部屋で金谷と俺に会話ゼロ!空気重い♡♡♡』 『アウト!アウトーッ!浮気決定!金谷もういいぞ!カモン!俺もうこれ以上見ると性的に歪んじゃいそう!!』 『別にあんたのことは好きじゃないよ♡♡♡』 【ンポ先輩】 『精神っていうのは意識と無意識を合わせた、人間の内的世界の全てを表していて、心っていうのは、気持ちと感情で動かされた言葉が作った世界のことを言うんじゃないかと…』 『…精神は頭の中にあって、心は胸の中にあると思ってます。心の働きを常に精神が受けているので、密接に結びついてるけれども、別物じゃないでしょうか?』 【真夜中のブラブラ蜂】 『それはそれ、これはこれだ。』 『他の人の普通を演じるために人生があるわけじゃありません』 『自分の愛情を証明するためのセックスなんてしたくない。そんなことしなくても判っててもらいたい。』 『私、あなたのことが好きで愛してたから純一を作ったの。私の暇つぶしのための子供なんかいらないから』 『…何で目的が必要なの?何かを生まなきゃいけないの』 『虚しくないの?網子、何にも残してないじゃん。写真も撮らないし、何の記録も残してない。スケッチもしないし日記も書いてない。何が残ってるの?』 『何にも残ってないよ。記憶も忘れちゃう。それが?』 『それが虚しいだろって言ってるの。ただ時間だけが過ぎてるじゃん』 『虚しくないよ。私は楽しんでるもん。虚しいってのは信介の想像だけだよ。人の楽しみを虚しいなんて決めつけないで』 『でも実際に何も残ってない。記録も記憶もない』 『何で何かを残さなきゃいけないの?そうしないと価値がないの?』 『私は死にたくない。自分を長い時間かけて無痛のまま殺していくようなことをしたくない。本当にこの一心だ。』 『私たちはいつの間にか、純一を育てるための装置みたいになっちゃったんだよ。愛情が、その装置の、潤滑油としてしか働かなくなっちゃってた…』 『電話を切り、私は泣く。何で泣いているのかは判らない。でも私のための涙だ。』 【美味しいシャワーヘッド】 『いなくなると困るという寂しさと、一緒にいて欲しいという愛情を混同すべきじゃない。』 『あのね、思い出とかお話とかって、結局心を揺さぶられてないと思い出せないのよ。言葉とか、風景とかもそうだね。どんなことも、単に記憶はできても、自分では取り出すことができない。思い出せるのは、心の揺さぶられたものだけ』 『…じゃあ、俺は結構、毛利に揺さぶられてるのか、な』 『私としてはね、揺さぶられなくても憶えておいてもらえるような女の子になりたかったよ』 『言葉を尽くそうとしてみて初めて、僕は苛立ち、その焦りの中で毛利樽歩の話を思い出し、心をちゃんと動かしていない者には何かを思い出すことも叶わないと知り、それが絶望になり、そして同時に大きな慰めにもなる。今悲しくて、悲しいからこそ憶えておけるのだ。』 『思い出も思いも空想も行われなかったことも秘密も、全部言葉で語られるが、言葉にされない物事もある。言葉では掬いきれない小さな、細やかないろいろだ。でもそれらは記憶に残っていないんじゃなくて言葉にできないだけで、全部僕の中にあるはずだ。あるなら、いい。なくしてしまったわけではないのだ。』

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    投稿日: 2013.02.16
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    『煙か土か食い物』とか「熊の場所」とか、前は、舞城は、「心の形には、そうなった源がある」という立場で書いていたように思う。 それが、『ビッチマグネット』では、「源とか理由とか、ないものなのだ」という立場になっていた。 そういう、「ないものなのだ」という話を集めた短篇集が、この『キミトピア』。すごいしっくりくる話ばかりです。

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    投稿日: 2013.02.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    書き下ろし3編を含む短編7編。 いずれも相変わらずのスピード感で、ほどよい読み応えもあり、面白い。最近の舞城の描く世界は、何気ない日常が、ふとしたことでどんどん逸脱していって、その逸脱を収束させようと頑張って思考する、という1つのパターンがある。この「逸脱」が、「やさしナリン」だったり「穴食い虫」だったり、「気持ちの搾りかす」だったり、人と人との関係性の中で顕在化するちょっとしたズレにスポットを当てて独特の言葉でその本質を追究していく感じがとても面白い。  冒頭の「ユートピア=YOUTOPIA」についての記載が、昔あった「ぴあ」の「はみだしYou とぴあ」を連想した人も多かったんじゃないかと思うが、ここにある言葉  どんなにバカップルのぼわーっと間の抜けた言葉に聞こえようとも、僕はキミトピアを信じていて、そこに住み着くつもりなのだ。    っていう境地ってすごい心地よい。  「ンポ先輩」で出てくる「怪談っぽい世界」。言葉や感情が内包する嘘や間違いから生まれる心の穴に気づいてあげられれば哀しみが減る。  すべての小説世界に共通して流れているのは、こういう「人と人がすれ違うもとになる目に見えないモノ」であろう。それを「怪談っぽい」と表現する。舞城の小説の中には、解離性同一性障害であったり、強迫神経症だったり、明らかに精神疾患を意識した人物がよく登場すると思うのだが、作者は、これら1編1編の作品の中で、その得体の知れないモノに名前を付けて「気づきやすい」ようにしてくれている。  だからこそ、この人の作品は妙にポジティブな読後感を与えてくれるのだろう、とそう思う。

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    投稿日: 2013.02.10
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    『ユートピア』を何となく『YOUTOPIA』だと思い込んでいて、大好きなあなたと一緒にいられるのならそりゃその場所は楽園だわなと考えていた。≪君とピア≫の≪ピア≫が何のことかは判らないけれど語感は明るいし何だか可愛いし。 でも君が笑って指摘する。 『ユートピア』は『UTOPIA』で、イギリスの政治家トマス・モーアが16世紀初頭に書いた小説のタイトルで、理想郷としての共産主義社会のことだし、語源としては『どこでもない場所』になるんだよ、と。 え、ちょっと、何その余計な蘊蓄。 僕は言う。 じゃあ僕のキミトピアはユートピアじゃなくてその反対だな。 僕と君が一緒にいる場所はひたすら現実的な場所だもんね。政治は常に完璧なんかとは程遠いし、人の気持ちも考えもはっきりしないし落ち着かないし、正しいも間違いも曖昧だもんね。 ふふふ、と君が笑う。あなたが言うと、現実の場所も能天気に聞こえるねえ。 まあね。 どんなにバカップルのぽわーっと間の抜けた言葉に聞こえようとも、僕はキミトピアを信じていて、そこに住み着くつもりなのだ。 わーははは。 間違いのほうが正しい答えよりも正しい場合があって、これがそうなのである。 以上(『キミトピア』冒頭引用)

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    投稿日: 2013.02.06