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長英逃亡(上)
長英逃亡(上)
吉村昭/新潮社
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総合評価

17件)
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    幕府の政策を批判して収監された高野長英が脱走してからの逃走劇を描く。 逃走生活は長年にわたるが、そのあいだに長英は色んな人を頼る。人は一人では生きていけないし、いざという時に頼れる人がいることの大切さが分かる。 若干長くて、読むのに体力を要した。

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    投稿日: 2022.10.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    火事による切り放し、義務付けられた3日以内の回向院への集合。知己の人を訪ね歩く。もちろん、戻る気はない。放火は長英の策略。始めからの計画。しかし、読者は葛藤に駆られる。戻って欲しいとも思う。もしかしたら寛大な処置が得られるかもしれない。言い含められ火をつけた栄蔵は後に捕らえられ火刑。逃亡中匿ってくれた隆仙は拷問を耐え抜き、元に戻らない体に。後少し待っていれば、厳罰を強いた町奉行耀蔵は左遷される。不当な裁きでも従うべきだったのか。個人の視点だけではなく、歴史的見地からも考えたい。逃避行は続く、下巻へと。

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    投稿日: 2021.09.19
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    現代に事実を知っているだけに、非常に読むのが辛く、苦しかった。 氏いわく、「事実と事実の間を埋めて行く資料が乏しい中で。考えをめぐらす作業の辛さ、面白さを語っている。が、これほどまでにリアリティに迫る文学があるだろうかと息をのむ。 間道、街道が好きでちょくちょく行くことが多い為、場面と人の息遣いを想像しながら読んだためになかなか進まなかった。 蛮社の獄による処刑としか習っておらず、1850年という時間にさらし首になった彼。逃亡の時間は13年。科学のツールが無い現代とは違うとはいえ、捜査から逃れる我身を守るツールもない。灼熱、豪雨・暴風、極寒積雪、そして捕縛に寄与するミラ美との目と口から逃れる全てが描かれている感じ。 上は上州・信州・越後への旅。山歩きで少しは知っているエリアだけに、わらじで着物で歩くその姿、食事の粗末さ、体力に驚嘆するばかり。

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    投稿日: 2021.01.21
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    吉村昭が描く、逃亡物語は、本当に息が詰まるような緊迫感で、リアリティがすごい。 どんな取材をすれば、ここまで迫真迫る物語が描けるのだろうか。 他にも、逃亡を描いた物語にも当てはまる。 物語にグッと引き込まれてしまう。

    0
    投稿日: 2020.08.31
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    現代に比べてSNSやインターネットなどの情報拡散ツールが圧倒的に少ないのに、各藩の村人たちの結束力や幕府の徹底した捜索により現代より遥かに逃げ延びるのが困難な世界で行く先々で多くの人に協力してもらいながら間一髪で逃げ延びる高野長英。 歴史の授業では「蛮社の獄で捕らえられたが牢屋に放火して脱獄、後に捕らえられて自殺」程度しか教わらなかったので詳しい背景が分かりとても面白い。下巻も楽しみ。

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    投稿日: 2020.03.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    幕末の蘭学者・高野長英の入獄、脱獄、そして逃亡を描く歴史小説。上巻は江戸を出た長英が、様々な知己に助けられ、上州を抜け、越後を超え、奥州に辿り着くところまで。 淡々とした文体により、むしろ逃亡者の閉塞感と切迫感が強く感じられる硬派な小説。下巻の展開が気になる。

    0
    投稿日: 2019.07.24
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    昔読んだのだけど、また読みなおす。 息の詰まるような文体である。吉村昭の小説が読めることは幸せなことだと思う。

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    投稿日: 2016.05.27
  • もう少し脱獄を留まれば・・・

     当代一の蘭学者と謳われた高野長英。小伝馬町の牢屋に囚われて五年、下男を使って獄舎に放火させ脱獄。その後の逃避行が凄まじい。もう少し脱獄をせずに留まれば生きて放免になったかもしれない、その歴史の皮肉が悲しい。

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    投稿日: 2015.04.11
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    政治犯として無期懲役を食らったところ金を使い脱獄。 行き先々で迷惑をかけながらも生き抜いていく生命力の強さは 史実では傲岸不遜な長英先生を表しているといえなくもない。

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    投稿日: 2014.01.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    破牢の末、高野長英は武蔵(板橋、戸田、浦和、大宮)上州、越後から母に会いに故郷水沢へ。その逃避行は圧倒的なスリルに富み、また長英の心の動き、多くの支援する人々との暖かい交流。幕府の威信にかけた追跡はとても100年前とは思えないような鋭さで、思わず読んでいる私自身が追われているような緊迫感があります。私にとっては浦和(大間木)大宮(片柳)など住んだことのある近隣の場所の昔の佇まいを感じさせてくれる楽しさもありました。

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    投稿日: 2013.08.25
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    江戸時代の獄中はこういうものなのかと感じられた作品。 牢名主という存在があったのかと興味深く感じられた。 上巻は獄中生活から幕末の世を見ている様子が感じられる。

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    投稿日: 2013.07.23
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    (「BOOK」データベースより) シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて5年、前途に希望を見いだせない長英は、牢屋主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄絶な追跡をはじめる。

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    投稿日: 2013.02.17
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    蛮社の獄で捕らえられた開国論者、という予備知識しかなかった。 この弾圧が理不尽なものだったのは理解できる。 高野長英というひとが、蘭学を本当に頑張って、その道の第一人者であったのもわかる。 頑張って勉強して一人前の学者になって国のために働くつもりがこんな目に遭って 逃げ出したかった気持ちは、わからないではない。 ただ、他に方法がなかったのかもしれないが 彼のやり方は事有るごとに誰かを巻き込みすぎる。 逃げろ、がんばれ、と思う気持ちの裏で 巻き込まれ多かれ少なかれ犠牲になった人々のことを思ってしまうと 彼の道行きを100%応援することがどうしてもできない。

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    投稿日: 2012.06.20
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    高野長英が政治犯として牢獄に入るところから小説は始まる。 牢獄内での凄惨な生活、その後との脱獄と逃亡生活。読む者の心も締め付ける程の描写。自分が他人から追われているような錯覚。 この『逃げる』ことの心理描写は、吉村昭の得意とするところで、「桜田門外の変」、「彰義隊」でも存分に堪能できる。 下巻が楽しみだ。

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    投稿日: 2012.02.24
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    長英の逃げッぷりには並々ならぬ執念を感じた。それにしてもここまで匿ってくれる人がそんなにたくさんいるんだなぁ。さほど人格者というわけでもなさそうなのに。

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    投稿日: 2011.12.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    2010.12.29~2011.1.19 全2巻読了 天才的蘭学者・高野長英による6年有余の逃亡生活。その才能ぶりにも驚くが、その才能を賞賛して逃避行に賛同する多くの人たちの献身ぶりも強い意思が感じられる。地縁血縁が色濃い時代なので聞き込みで逃亡者を割り出しやすいとはいえ追跡してゆく幕府側の捜査網も鋭い(鳥居耀蔵って遠山金四郎の政敵というだけじゃなく、思想弾圧側の筆頭だったんだ!)。もう少し我慢すれば脱獄しなくてもすんだこととか、牢獄内で情をかけた相手に最後に裏切られるとか人の運命や悲哀を感じる。

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    投稿日: 2010.12.29
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    夫のふるさと岩手県水沢市の誇る文化人。生家を訪れたことがあり、墓も義母の家と同じお寺にあるので何故か親近感が沸く人物。 興味があってこの本を読み始めたけど、その生きた時代の厳しさと人間くささが印象に残る。長編小説だけど、一気に読める魅力ある一冊です。

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    投稿日: 2009.05.20