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開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―
皆川博子/早川書房
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総合評価

216件)
4.0
57
83
46
3
0
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    18世紀のロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない死体――四肢を切断された少年、顔を潰された男性――が発見される。 ダニエルと五人の弟子達に、盲目の治安判事は捜査協力を要請するが…。 ゴシック・ミステリといった感じで、80歳過ぎた作者がこれだけのものを描いたのには、ただただ脱帽。 参考文献に「ロンドン路地裏の生活誌」他いろいろ含まれていることからも判る通り、18世紀のロンドンの猥雑、不衛生、貧困、賄賂、犯罪、形骸化した裁判…といった当時の生活文化を生かしながら、随所にその時代でこそあり得た小道具をちりばめ(阿片チンキ、鰻のパイ、ニューゲイト監獄!)、ミステリとしての設定にまで生かしきったエロ・グロの描き方はすごく良い。(という自分も、まだロンドンのこの時代については勉強中なのですがね) スウィニー・トッドとか、地獄の火クラブとか、切り裂きジャックとか好きな人は好きでしょうね-、こういう世界観。 カットバックで挿入されている詩人志望の美少年のストーリーと、外科医ダニエルの弟子+盲目の判事の捜査のストーリーの絡ませ方も上手く、ラストの法廷劇的展開からエピローグまで一気に楽しめました。 が、作者には申し訳ないのですが、私は解剖ネタがちょいと苦手でして(この作品の中で書かれているグロ描写レベルは初心者レベルなのは判ってます)、そこらへんの描写のせいで心躍る設定の中に入り込めなかったのが残念。 盲目の判事が美青年だったらな…もうすこし点数上がったかもな…。

    0
    投稿日: 2011.09.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    どんなお話なのかな、と前情報なしに手に取ったのですが、舞台は退廃の空気をまとった17世紀あたり(だったかな)のイギリス、主な登場人物は解剖学教室の先生、助手、それから主席判事と助手2人といったところ。解剖学教室の死体が増え……その死体を巡る物語です。誰が殺したのか、でもあり、どうして殺したのか、でもある。 ネタ自体はとても面白い。雰囲気は、ドラマのシャーロック・ホームズっぽいくらさで、解剖学教室と死体なので、ちょっとグロイですが、ホラーっぽさはあまりなく。解剖学教室のメンバーや判事たちを中心とした事件後の時間軸と、ある1人の少年を中心にすえた過去の時間軸を交互にした構成です。12章あたりはあの子を殺した本当の犯人は誰ぞ!と迷いました。 ただ、登場人物が多いせいでしょうか、各キャラクタの描写が薄くて、表面をなでるような感じ。わざとなのかもしれませんが、その分、登場人物たちの心情に寄り添えなくて、物足りなく感じました。あの子とかあの子とか、アンちゃんとか。 それならそれで、新本格っぽいテイストなので、もう少しトリックの解明部分を劇的にしたら違った印象を受けたと思うのですが、わりと犯人やトリック部分の開示があっさりしているので、おおっという驚きが薄かったり。 全体的にもうちょっと書き加わったらすごく好きな作品になったのになあ、という思いが強くて、その分、残念な感じでした。

    0
    投稿日: 2011.09.05
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    皆川さん、初読。 実に心惹かれる話だった。解剖、死体増殖、美少年。盲目の判事に助手の姪。 ちょっと安定しない文体で読みづらかったが、力技で押し切られたって感じ。 いや、何言ってるかわかんないやって部分も、最後まで読めば、そこが謎解きだから仕方なかったのねって納得。 もう一度読みたいが、惜しいかな、図書館返却日が明日・・・。残念! 

    0
    投稿日: 2011.09.01
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    18世紀のイギリスでは、外科は内科に比べ低い地位にあり、解剖に至っては神を恐れない行為とされ、法医学はないに等しかった。 舞台は内科医の兄の援助で成り立っている私設解剖教室で、死体を買い取っては教材にし、標本を作製していた。 その解剖教室の弟子の二人が、ロンドンへ出てきたばかりの天才詩人の少年に出会う。少年は古語を自在に操って詩作し、自分を売り込むために羊皮紙に自分で書いた詩を、古い時代の詩を発見したと偽っていた。 解剖教室で墓あばきから買い取った妊娠した準男爵令嬢の死体の解剖中に捜索の手が及び、予期せず、手足を切断された少年の死体と、顔とつぶされた新聞社主の死体が発見され、盲目の治安判事が解決に乗り出す。 少年の残した手紙から被疑者とされたのが悪徳投資家で、少年を監禁して「古詩」の創作をさせ、高く売れるであろう偽古詩の秘密を知る人物を殺害していったと思われた。 その一方で、悪徳投資家は新聞社主と共謀し、内科医の兄を破産させて、解剖教室の標本を含む資産を奪おうとしたため、弟子たちは治安判事に協力して標本を守ろうとする、ように見える。 が、しかし。。。。 結末は意外などんでんがえし。 解剖結果が事件解決に結びつくことを、事件の解決を通じて認識されていたり、当時のイギリスの裁判は告訴する人がいないなら、殺人犯でも起訴されなかったり、裁判官や陪審員の買収が当然のことのように行われていた、など興味深い知見ももたらされる。

    0
    投稿日: 2011.08.29
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    皆川作品の西洋モノを読むのは『死の泉』に続いて二作目。『死の泉』に比べると軽やかで淡い感じ。謎ときが面白く、一気に読みました。

    0
    投稿日: 2011.08.26
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    18世紀ロンドン。外科医、ダニエル・バートンの私的解剖室には今日も墓あばきから買った屍体が横たわっていた。 今日の屍体は妊娠6か月というレアもの。だがそこへ治安隊が屍体の捜索に踏み込んできた。 あわてて隠す弟子たち。そしてなんとか捜索を乗り切り、さあ続きを!と屍体を引っ張り出してみると、なんと屍体が増えていた。 四肢を切断された少年と顔をつぶされた男性の2体。 そこへ現れた盲目の治安判事は戸惑うダニエルと弟子たちに捜査協力を要請。 一体この屍体は誰で、犯人は誰なのか・・・? 初・皆川作品です。評判がいいので読んでみました。 非常にテンポがよくて読みやすく、また面白かったです。 18世紀ロンドンの雰囲気、習慣、風俗がとってもよく表現されていました。 そしてまた、この時代ならではの犯罪、というか幕引きにただただ脱帽。 なによりダニエルと弟子たちの愉快なこと。 解剖大好きで、「解剖ソング」なるものを歌いながら術具を用意する彼らのやりとりは非常に微笑ましかったです。 解剖の必要性、重要性は(一部では)認識されていたけれど、忌み嫌われていた時代。 内科医はとても尊敬されていたが、外科医は低いものとされていた時代。 それでも医療の進歩のため、なにより解剖が大好きなダニエルの解剖馬鹿っぷりはいっそ爽快な気持ちにさせてくれました。 これはぜひシリーズ化して、また彼らの活躍(?)を読ませていただきたいと思いました。  

    0
    投稿日: 2011.08.25
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    いつも耽美で幻想的なものばかり読んでいたので、新鮮だった。真摯なのか小悪魔なのか、少年たちに幻惑される。そして、まさかのどんでん返し。ラストは寂しくも、美しかった。佳嶋さんのイラスト(表紙)も素敵でした。

    0
    投稿日: 2011.08.23
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    18世紀ロンドンを舞台にしたミステリは、ただただ素晴らしいの一言に尽きる。物語の最初から解剖シーンと屍体のオンパレイド。ロンドンの喧騒と腐敗と格差の描写もなかなか。全てのツボを押さえられてしまって...もう満足です。 少し言うとしたら、密室好きにとってあの密室は少し弱いかなと。あと、ちょっと斜め上でも雰囲気に馴染んでよかったのではないかなと。 ただ満足にはかわりなく、満腹です。

    1
    投稿日: 2011.08.23
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    [関連リンク] Twitter: https://twitter.com/#!/toyozakishatyou/status/103855695681687552

    0
    投稿日: 2011.08.18
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    面白かったわー。 ちゃんと伏線がはってあったのに、やられました。 解剖学教室の面々も、探偵役の盲目の検事も、大変魅力的でした。

    0
    投稿日: 2011.08.07
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    18世紀ロンドン、解剖教室を中心に展開され、安楽椅子探偵が活躍するミステリ。さすが皆川博子さん。一気読み!シリーズ化しないかな。

    0
    投稿日: 2011.08.07
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    18世紀のロンドンを舞台にしたミステリ。解剖学教室で学ぶ少年たちを巡る、さまざまな事件。増える死体。絡み合う謎。そして予想外の真相。……うわー、まさかそういうことに? 途中まではなんとなく推理できたと思ったのだけれど。ラストの展開には唖然。これは思いもしなかった……! 動機も分かってみれば納得できるものではあったけれど、想像できなかったなあ。 少年たちのキャラや判事も魅力的。そして「解剖ソング」もシュールで楽しいです(笑)。これ、メロディも聴きたいなあ。

    1
    投稿日: 2011.07.31
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    18世紀ロンドン、解剖、監禁、密室、四肢を切断された少年と顔をつぶされた男性の屍体、外科医とその弟子達、盲目の判事…をテンポよく捌いていく筆者の手練。ちょっと可笑しくちょっと哀しい、不穏と耽美。 皆川さんに、衰えなし。

    0
    投稿日: 2011.07.26
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    増える死体、暗号、密室、解剖学といったミステリ的ガジェットを詰め込みつつ、様々な登場人物の思いが交錯する複雑な人間ドラマを描き出す手腕が素晴らしい。18世紀倫敦の猥雑で怪しげな雰囲気も魅力的。 なによりもその軽妙洒脱な文体に驚かされる。まさに皆川博子の新境地。

    0
    投稿日: 2011.07.24
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    18世紀のロンドンを舞台に、外科医ダニエルとその教え子たちが巻き込まれた不可能犯罪。御歳81歳の重鎮・皆川博子が、キャリアからは想像出来ない鮮度、たおやかな語り口、時系列を巧みに操った構成、そして魅力的な人物造形で描くゴシック・ミステリ。ピーター・ラヴゼイ、コニー・ウィリス、P.D.ジェイムズ好きの僕の趣味にぴしゃりとはまった傑作。3世紀も前の英国が舞台なのに、この瑞々しさと余韻。青春物語としても出色の1冊だ。

    0
    投稿日: 2011.07.23
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    素晴らしすぎて言葉もない。 もうね、紹介文にあるこの一節「18世紀ロンドン。増える屍体、暗号、密室、監禁、稀覯本、盲目の判事……」これだけでもう、なんというか大好物ばかり並べられた極上のディナーといっても過言ではない。 皆川博子を読むときって、続きが気になって気になって、続きを読みたくて読みたくってたまらないんだけれど、でも読み終わるのが凄く嫌で読みたくないような、でもページをめくる手も文字を追う目も止めることは出来なくて、読みきってしまう。そんな感覚に毎回襲われますが、今回は更に顕著だった。 耽美で幻想的で猟奇的で美しい世界にとっぷりと浸れることが出来て幸せでした。

    0
    投稿日: 2011.07.20