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死の泉
死の泉
皆川博子/早川書房
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総合評価

87件)
4.2
32
25
16
1
0
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    第二次大戦下のドイツの,とある施設と実験 心情描写と構成が巧みで臨場感を持ち広がる物語に圧倒されます 狂っていると思ったものは人が持ち合わせた面の一つなのか 優生思想と執着 異なる考えを嘲り排他する 壁の向こうへ言葉も届かない

    0
    投稿日: 2024.11.23
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    死の泉(皆川博子/ハヤカワ文庫) 初の皆川作品で今年読んだ本のベスト。700ページの螺旋のような物語世界に詰め込まれたまとわりつくような悪、憎しみ、暴力的な独善、愛情。文章で表現される地獄の恐ろしさ。読書中は他のことに手がつかず。仕掛けられた構成にも驚く「このミス」ベストワン

    8
    投稿日: 2024.10.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ナチスによって設立されたレーベンスボルンから物語は始まる。前半のマルガレーテ視点の語りでは、特定の出自や特徴を持った子どもを増やそうとするその罪深さがよく描かれている。そこに不老のための人体実験や、去勢処置によって少年の歌声を維持するカストラートなど、倫理的に問題のある要素が物語に組み込まれていて非常に緊張感と重苦しさがある。 終盤はミステリの色が濃くなり、胸のザワザワが止まらない。 フランツが秘密を抱えていたなんて考えもしなかった。マルガレーテはもう妊娠しなくなったのかなと思っていたので、実は第二子がいたのも納得。何も知らずにエーリヒだと思い込まされて大人になったミヒャエルがあまりにも可哀想だ。こんな複雑に絡み合った物語を編み出した作者がすごい。 濃厚な物語だった。読み応えがすごい。と感心したあと、あとがきで地獄に落とされるところも素晴らしい。クラウスの、美に対する執着の凄まじさがすべての人を不幸にした。 はじめから読み返してみると、自分の理解度が上がっているため見逃していた細かい点に気づけて、本当によく作り込まれている作品であることが分かる。

    1
    投稿日: 2024.06.06
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    凄まじい作家的熱量を感じた。 本書は、作中に登場する人物が著した書物を、架空の翻訳者が訳したという体を取っている。まず意味が分からない。 舞台はWWⅡ下における独逸、狂疾的な医師を巡る危うい内容だが、情報が多く一口でまとめ切れない。 終盤にかけとっ散らかっている印象は拭えないが、約650Pの大ボリュームで、作者の脳内の一片を感じれた気がする中々の読書体験が出来た。

    10
    投稿日: 2024.04.22
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    コインロッカーベイビーを読めなくて放置しててこの作品もそれに続くかと思ったけど読み終えた…。ヘビーだった…。すごいね。この作品。訳わからなくて読み終わってから検索しまくった。通勤電車で読みたい。みんな居るところで読みたい。1人の時読むと頭おかしくなりそうな作品。

    1
    投稿日: 2023.09.18
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    読み手に委ねられる部分があるので好みが分かれそうだけど、個人的にはかなり好きだった。 虚構が入り混じっておぞましくも美しい。

    0
    投稿日: 2023.02.27
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    うわぁぁぁあ、やばい…600ページ超、ずっとゾクゾクしてた…最後の最後までどうなるのどうなるの?という感じで… 物語の構成自体も、ドイツ語原作を訳した、という形で、その構成自体とあとがきにかえてで明かされる真相がもうこわすぎる… 科学者が彼らの興味の赴くままに人の体を使って実験できる世界って怖いな。なに、2人の人間をくっつけるって…早熟させた女の子に子供産ませるって…ああこわい。 皆川ワールドあっぱれ、すごく怖かったです。 p.253 私のしたが、フランツの唇を割った。すぼめてら吸った。そのとき、わたしの舌が、フランツの唇を割った。舌の先が軽く触れ合った。口の中に、甘やかな感覚が広がった。わたしの舌は、もういちど、ゆっくり、フランツの口の中をさまよった。フランツは目を閉じ、首に回した両腕に力をこめ、わたしを引き寄せた。わたしは舌の罠から少年を解放し、頬と瞼にキスしたが、口の中に残るこの上なく甘い柔らかい感覚が、わたしの全身を浸し、酔いに誘った。 p.409 言葉を探しているギュンターに、ミヒャエルはさらに言った。「楽しいこと、面白い事は、書物で追体験する方が、現実に勝ります。苦痛だって、想像の中から、楽しみにすり替えることができる。ほんとの苦痛は体験したくない。そうでしょう?何しても、僕は、外は要らないんです」ミヒャエルの言う外に生きてきたギュンターとしては、相手の言葉を認める事は、自分の声の否定に他ならない。 「それでは、全く、生きているとは言えない」「だから、死人だって、認めています。でも、生者が死者に勝るとは言い切れないでしょう」「君は生きているんだから」「僕だって、不安や恐怖が全くないわけではありません。でも、どうしても避けられないことなら、積極的に受け入れてしまった方が楽です。それが自分にとっていいことなんだと認めたほうが」

    1
    投稿日: 2023.02.25
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    恍惚とした読書体験でした。 全編に漂う退廃的な雰囲気にうっとり。 この雰囲気が、合う合わないがありそうですし、 結末に解釈の余地が残るところも、好まない人はいるかと。 私は「いやー日本に皆川博子がいてよかった」と感じ入りました。 彼女の他の著作も、大切に読み進めたいです。

    0
    投稿日: 2023.02.06
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    この長大な作品、最初何がテーマなのか分からなかった。ともかく作品全体に亘って薄気味悪いのだ。ナチスの断種政策、民族浄化が背景にあるからだろう。主人公の一人マルガレーテの視点で描かれた前半はわかり良かったが、彼女の元恋人ギュンターの視点で語られる後半となり、混乱気味となる。ミステリー色が次第に強くなってゆき、オーラスの謎解き部分では???の連続。これが皆川博子の真骨頂なのであろう。

    0
    投稿日: 2023.01.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    悲劇にしかならないことは最初からわかっていたので、重い話を読める時で良かった。 貫き通せる大人陣は本望だろう。巻き込まれた子どもたちがキツい。 そして、それらを全部崩壊させるラストだった。 これは、虚構の世界とラストのどちらにハマるかによって、読み方が変わる。前者ではフランツの愛憎、苦悩に揺さぶられ、後者ではクラウスに振り回された。 どこからどこまで虚構なのか、事実か。 最終的にはクラウスがアメリカ(と大佐、これは偶然)を振り切り、城と2人のミヒャエルを手に入れるため、と解釈した。 この話はマルガレーテの手記(全て終わってから、錯乱してから書き直されているので、事実とは限らない)と夢想、フランツの復讐、クラウスの執念が複層になっている。 ・マルガレーテが城に行ったのは雪が残る新緑の時期であり、これは戦後に行ったこととの混同。ギュンターと一緒にいたのは夏。 ・マルガレーテと繋がることができるのは同系統である2人のミヒャエル。エーリヒは繋がれ、マルガレーテは時を止めた。 ・エーリヒをクラウスが手に入れるにはフランツの復讐が必要。…このため、マルガレーテが呼んでいてもギュンター=フランツ説は取れなかった。。。 ・アリツェとレナはカメロットに安置されている(マルガレーテが錯乱した原因のひとつ)ので、リロ、アリツェ、顕微鏡を持って来るテオ(テオ自体はいたかも)は幻想。刑吏の酒場はあったかもしれない。フランツの死と共に彼らの世界も崩壊した。 ・マルガレーテはギュンターをフランツと混同しているが、これはフランツが成長して自分を攫ってほしいという願望。同様に繋がることもすべて夢。 ・城の中でマルガレーテはギュンターを認識している。これが正しい場合、ギュンターは城まで生存か。しかし、パンツァ以降のギュンターはすべて創作の可能性もある。 ・マルガレーテが夢の中で見つけたギュンターの墓、東部戦線で亡くなったのは兄あり、ギュンターは西部戦線に行っている。24歳戦死であれば終戦時。しかし、戦死してしまうと入れ替わりが成立しない。少なくとも戦死したのは兄だったことになっている。マルガレーテには戦死でも構わないか。 ・クラウスはギュンターの城を手に入れ、ギュンターと入れ替わる(家族に、弟にする)手段をとった。クラウスの遺産もギュンターに引き継ぐ算段をこの時点でしていたか。 ・フランツがクラウスの喉を裂いたのは、逆か。わざわざ喉。泣。 ・あとがき手記。クラウスは子供に歌うように命じた。マルガレーテがミヒャエルを見知らぬ子供と認識していた訪問時、とも読めるが、城の中、と読んだ場合、クラウスとギュンターが2人のミヒャエルに歌って、といい、クラウス(フランツ)が殺害されたシーンに繋がる。穿ち過ぎか。 ・聖職者はクラウスとフランツ、繋がったレナとアリツェ、2人のミヒャエル、祖母が混在。 ・ヘムルートたちの扱いが適当なのは作者がギュンターだからか…。 …と、諸々考えたものの、捩れた空間をさまようだけになった。

    1
    投稿日: 2021.11.23
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    前半は割と好き。差別や戦争、貧困から子供を守る母親の苦悩とたくましさを感じた。 後半(2部以降)は、結末ありきでムリヤリ話を動かしてる感じで納得度か低いというか...。登場人物もやたらと多くなりごちゃごちゃしてる。 最後は、実は○○でした的な展開だけど、伏線もないので驚きはない。 あとがきを読むと見方が変わるのだけど、これ必要だったかな、、、

    0
    投稿日: 2021.11.19
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    第一部はマルガレーテ視点で書かれているが、 第二部は色んな人の視点が入り組んでて 現実と妄想が入り乱れる文章に振り回される。 ぜひ最後の『あとがきにかえて』まで読んでほしい 絶対もう一度最初から読み返したくなるので

    0
    投稿日: 2021.08.12
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    最後の最後まで翻弄されてしまった、なんという体験だろう。解説で北村薫さんが「皆川作品は皆川博子のもの、そこにわれわれ読者の喜びがある」という旨のことを仰っていたが、正しくそのとおり。 こんなに分厚いのに無駄な描写が何一つないのはもう、驚きを超えて恍惚のため息。

    0
    投稿日: 2021.07.17
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    「歌う城壁」の童話を起点に、正統アーリア人の子を養育する施設・生命の泉、ナチスの地下壕、不死の人体実験、ボーイソプラノを生涯維持する去勢手術等々書き並べると不安になる題材を、元SSの科学者の家族を中心とした物語としてまとめ上げた一冊。 読んでいる間中、ずっと靄に包まれた感覚に陥っていた。何が謎で何が真実なのか、作中で一応明らかにされる。 がしかし、この作品自体が真実なのかをわからなくする仕掛けが冒頭からあとがきに至るまでを貫いている。 お伽噺のはずの歌う城壁の下で十数人の命が現実に消える。 読後残るのは恐怖……。 楽しい小説ではない。 面白いと言っていいのかもわからない。そう言えば不謹慎になってしまいそうな。 けれど、先を読まずにはいられなかった。 須賀しのぶ著『神の棘』の感想で、同時代のナチスを題材にしたものとしてこの本の名前を挙げているのが目に付いて手に取った。内容は全然違うものの、そちらを読んでいたおかげで時代背景がよくわかり、より深く作品に没入できた。 話の面白さでは『神の棘』の方が、一口に言えない「凄さ」ではこちらの方が断然上かと。 敢えて言えば、背徳の面白さがある。 うん、結局面白いのかも。しかも、とても。

    0
    投稿日: 2020.12.15
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    久々にのめり込める文学作品に出逢えました。 最初のタイトルのページからあとがきまで丹念に練られた仕掛けに舌を巻くことになります。。 登場人物は多いもののメイン、サブ、とも全員に意味のある役割が付されています。また幻想的なシーン、場所、アイテム、台詞、この作品を構成するすべてに無駄が1つもありません。単発で終わるモチーフがないのです。必ず後で反芻されたり、別の意味や文脈で再登場したりと、作者の脚本力と言おうか物語を紡ぐセンスにひれ伏したい気持ちです。 勿論ストーリーの大きな流れもドラマチックで、クライマックスになるにつれてドキドキが増していき、ページをめくるのが止まらなくなります。 この作品で描かれている登場人物の複雑な生い立ちや感情や立場を考えると、誰が悪で誰が正義かわからなくなります。自分がこの人物の立場だったら恐らく同じ決断をするだろうと思います。ある意味それぞれの人物に共感できる余地がある、だからこそ登場人物一人一人の残酷な行動や言動や態度に、切なさを覚えます。清濁のみこんだリアルな人間描写にも着目してほしいです。 また、第2次世界大戦から東西分裂のドイツの抱える閉塞感、矛盾、誇り、祈りを、丁寧に描き出している文章も素晴らしく、政治軍事経済芸術宗教さまざまな知識と理解がないと、これは完成されなかったと思います。60歳ごろからの執筆、構想10年、、 納得です!!近年の分かりやすい正義と悪の世界観に飽きてきた人、人間の暗い部分に関心がある人、是非読んでみてほしいです。

    5
    投稿日: 2020.11.04
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    ツイッターでも、優れた日本人同士を結婚させることを国家事業とすべき、という意見を某氏が披露していて炎上していたときに、話題にした人がいましたが、ナチのレーベンスボルン(命の泉計画)がこの本の前半の背景。超人種アーリアというナチの妄想によるアーリア増産計画で、征服した各国から金髪碧眼の子供を略奪し施設に集められる。また、金髪碧眼の若い女性とSS兵士たちのあいだに子供をもうけさせ出産させるといった、ホロコーストの対称にある優生思想計画。ホロコーストに関しては周知だけれど、レーベンスボルンに関してわたしが知ったのはつい数年前、映画『誰でもない女』で、たぶんそれを知る日本人は少ないのでは。本国ドイツやヨーロッパではどうなんだろうか。ノルウェーではレーベンスボルン施設が10か所設置されてナチ党員とノルウェー女性とのあいだに生まれた子は12000人とwikiにはある。ホロコーストにくらべて大きな声で語られることが少ないとすれば、それは多く存在するであろう「当事者たち」つまり生存するその子どもたちに、配慮するためなのかなって思う。自分が、もしくは自分の親が、ほんとうの父親がナチだったということ以外誰だかわからないとか、母親がその計画に利用されナチ党員と性交渉をし自分が産まれたとか、そういう人がヨーロッパにたくさんいて、それを公表できずにいたり、自分でもそれを知らずにいたりするのかもしれないと、想像してみる。 で、レーベンスボルンのことをもう少し知りたくて、それを題材にした本書を読んでみた。レーベンスボルンは表向きは、子どもを安心して産み育てられる施設となっていて、そこで未婚のまま出産するマルガリーテが前半の主人公で、彼女の一人称で物語が進む。後半からは様相が変わり、語り手も変化していく。ジャンルとしてはミステリーになるんでしょうか。作者皆川博子さんは初読ですが、知識豊富でびっくり。まるでドイツ人が書いているみたい。っていうか、そういう手法が取られていてそれはそれであとがき含めて工夫が凝らしてあるのだけれど。ナチがおこなっていた人体実験などの科学の知識を戦後アメリカがソ連に奪われないように秘密裏にSSの科学者たちをアメリカに招聘していたとか、ドイツ、ポーランド、オーストリアに続く土地の地下に広大な岩塩屈が存在し、かつてそこで強制労働させられていた囚人たちが地上を懐かしんで地下都市を岩塩で彫刻した跡が今でも残っているとか、知らなかったことを知れてよかった。物語としては、ちょっと少女漫画チックというか、こういう題材をこういうエンタテイメントにしてしまっていいのか、という、読んでいて罪悪感が残るというか、微妙でした。お話しそのものも、あまり面白くなくて、さいごの方は「誰が誰でもあまり興味ない。早く終われ」となってしまった。

    0
    投稿日: 2020.08.05
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    一部は第二次大戦下のドイツ。ラストはとても先が気になる状況で終わっています。悶々とする中、二部は戦後15年。読み手を翻弄しながらこの間になにがあったのか、少しずつ現在の状況から垣間見える時の破片。色々なものが必然のように繋がる様を息をのんで追いかけました。そして三部。世界観から構成からすべてが大満足のラスト。なのに「あとがきにかえて」が余韻に浸っていた私を椅子から転げ落としました。徐々に頭の中に浮かび上がったものにすべての違和感が解消され、思わずため息が出ました。凄いものを読みました。皆川さん大好きです。

    0
    投稿日: 2019.06.14
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    不思議な話。不気味で不穏な不協和音を聞いているような感じもするし、壮大な音楽を聴いてるような感じもする。狂った時代の犠牲になった人たちを想う。

    0
    投稿日: 2018.07.08
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    『「ドイツは豊かになった」ヴェッセルマンはつづけた。「だが、その代償に、内に向かう目をドイツ人は失った。人は、重く、下へと成長し、根を地底に広げ、大地の水を吸い、そして思考は鳥のようにはばたき光につつまれる。しかし、不安という糸が、鳥の脚を地上の風につなぐ。そのようにして、我々ドイツ人は思索のなかに生きてきた。」 「思索の結果が、戦争でしたよ。」』 ナチスドイツの思想とそれを体現したクラウスの狂気。妻となったマルガレーテの発狂。その狂気に育てられた子供たち、フランツ、エーリヒ、ミヒャエルそれぞれの悲劇。 緊張感の途切れない気持ちの悪い恐ろしい作品。 発狂したマルガレーテの手記がうまく使われて、本当は誰が誰なのか、、、。ミステリー要素も入って面白い作品!

    0
    投稿日: 2018.01.14
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    のめり込んで読みました。じゃあどんな話なの、と問われても、説明ができません。ただ、敗戦間際のドイツの話で、としか伝えられません。 皆川博子さんの書かれる青年は、痛々しく、我慢強く、美しくて、さびしい人です。たったひとりの身体にぎゅっと、とびきりの秘密を抱えた男の子です。「開かせていただき光栄です」のエドやナイジェルにも心を揺さぶられたことを、「死の泉」を読み終えて強く思い出しました。 そういう、決意を、胸に誓いを湛えた青年が狂おしく好きな人に読んでもらいたい本です。

    0
    投稿日: 2017.07.18
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    ナチスドイツというのはともかく小説の題材になるネタが豊富なのか、やたらと色んな人が話を作っていて、なんか良く分からんけどえらい耳年増になってる気がする。でもなんでナチスがあれだけ熱狂的に受け入れられたのか、ってのが、これだけ小説が書かれる、ってのにも繋がるんかな。ムッソリーニとかカストロじゃダメなんだろうしな。 それはさておき悪い奴の話である。なんでこう悪い上に頭おかしいのにうまくやるんだろうね。こういう本を読めば皆さんきっと真面目に働くより頭おかしくなった方が良いや、ってきっと思うよね。いや、思わないかな。にしても去勢が男性の与える恐怖心はスゴイ。

    0
    投稿日: 2017.07.03
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    この本自体、著者の内側があり、訳者の外側があり、 その大きな外側で作者の枠組みがあり、 全てが誰かの創作なのだから どんな仕掛けがあろうとも作者の用意した世界なのだけど 最後の最後に、それもあのような場を使い、 これまで読み進めて、没頭していた世界が 一瞬にしてグニャリとゆがんでしまい、 あらゆる人、モノが違った一面、解釈を見せ始め 不確実で幻想的な世界に入ってしまう。 何が、誰が、どの部分が物語上の真実で虚構なのか。 確実なのは美へのあくなき追及。 美のために差し出されるいけにえ、犠牲になるもの、 純粋で醜くもある欲望。 今まで見ていたはずの世界の真実とともに 張り巡らされた技巧を解き明かすよう、 最初から読み直さなければ、と思わされる。 これだけ厚いのに、振り出しに戻らさせる力が容赦ない。

    0
    投稿日: 2016.11.27
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    第二次大戦下のドイツ マルガレーテ、 医師クラウス フランツ、エーリヒ、そしてミヒャエル 難語チョコチョコ調べながら、皆川ワールドへ 長かったけど厚みのある文章の読後感が心地いい。

    0
    投稿日: 2016.11.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

     ◆若干ネタバレあり◆ 文庫本にして650ページ近い大作。 ナチス台頭するドイツにおけるマルガレーテの手記の部分と、それを受けた十五年後のドイツ。 手記においては、マルガレーテの微妙な心理が描き出される。 自分の産んだ子を守るために、医師クラウスと虚構に近い(マルガレーテは完璧な拒絶を持ち切れない)夫婦になる。 カストラートの美に魅入られたせいで、SSでありながら「ポラッケ(ポーランド人)」のフランツとエーリヒを養子に入れる、なかば狂気に近いクラウスの情熱。 去勢や人体改造(レナとアリツェの双子)への抵抗を感じる正義感をときどき発揮しながらも、クラウスの強大な力には逆らえないマルガレーテ。 やがて、子供のフランツに対し、5歳のときに好きになった8歳の(そしてのちにミヒャエルの父となる)ギュンターの面影を見る…。 何かがどこかでねじまがってしまった虚構の「家族」が、第一部で描かれる。 十五年後の二部からは視点の統一がない。 壮年ギュンターの視点、クラウスと看護婦ブリギッテの息子である少年ゲルトの視点、ゲルトに同性愛を抱くヘルムートの視点、さらには「大佐」の視点に、狂したマルガレーテの視点、とごちゃごちゃに入り交ざる。 十五年の間に何が行われたのか、誰が加害者で誰が被害者なのか、マルガレーテの見る幻の正体は…、というのがミステリの部分。 どの人物も「核」を持っている。 正義感と自己愛に揺れるマルガレーテはもちろん、「卑小にして偉大な」クラウスさえも、深い闇をもった人物として、造型されている。 幼さゆえに虚構の家族に早くなじむエーリヒと、エーリヒを手なづけるための要素として養われているせいで、「父」に愛憎をもつフランツ。 兄弟はクラウスとマルガレーテへの復讐を糧に、生き延びる。 ゆがんだ教育を受けるミヒャエルを庇護したいギュンター。 全員が全員、物語を動かす原動力になっている。 そしてライトモチーフの巧妙さ、全体の構造の壮大さ、「あとがきにかえて」で覆される本自体。 どれをとっても一級。

    0
    投稿日: 2016.07.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『開かせていただき』から皆川文学にはまって第5弾目(笑) 幻想的で美しい世界観に引きずり込まれ自分的には結構早いペースで読んでしまったかな。 クラウス医師の美への執着、マルガレーテの狂った世界、兄弟の復讐劇に感情を翻弄されつつ読み終え、最後のあとがきで物語を覆す言葉が…。 始めに本を開いたときに野上晶訳とあったので嫌な予感はしていたけどね。 著者の語る「実在してる人物」「複数の特性をかねあわせて一人の人物」という言葉から、あの時あの人物は死んでしまったのではないか、あの二人は同一人物なのではないかと思考が完全に迷走してしまった。 何度読んでも分からないままになるかもしれないけど時間を少しあけて再読したいな。 謎は解けないままでも充分魅力的ですが。

    0
    投稿日: 2016.03.04
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    2015/12/20/Sun.〜 最初から読み直し。 2016/04/20/Wed.〜10/25/Tue.

    0
    投稿日: 2015.12.20
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    第二次大戦下のドイツ。 未婚で子供を生むためナチの施設に身をおくマルガレーテから話しは始まります。 戦争、ドイツ、ナチ、と聞けば悲惨な状況しか思いつきませんがこの話しではそこまで鮮明にナチに対して書かれている訳ではないです。戦争を経験したマルガレーテのお話しとして読んでいると、途中から急にミステリー要素が出てきます。最後の最後までドキドキですが、やっぱり戦争の悲惨さも感じました。最後の『あとがきにかえて』もちゃんと読んで下さい!

    0
    投稿日: 2015.11.03
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    ナチスドイツの時代を舞台に描かれる超大作。海外文学の体裁がとられているけど、実際、読み応えも海外文学のそれ。でも、海外文学より国内文学の方に魅力を感じてしまう自分としては、これも完全には入れ込めなかったってのが本音。自分なりに分析してみると、やっぱりカタカナの人名がネックなのではないか、と。あと、地名がピンと来ないのも大きい。もちろん、海外にはこんな人名があるんだとか、あの国にはそんな場所があるんだとか、そういう意味での興味はあるけど、それでもやっぱり、骨肉となっている和名には及ばず。といいながら、これからも海外文学とか、ずっと読んでいくんだけど、きっと。

    0
    投稿日: 2015.07.02
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     ミステリだし、という油断を全く許さない正統派の物語。  嘆美だし、幻想的なのに骨太。どうしたらこんな話が書けるんだってなる。  そして最終行までたっぷりと楽しませて頂いた。  ありがとうございます。  最初から読み直したい……! うわぁぁぁぁってなる。

    0
    投稿日: 2015.06.11
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    ナチス統治下のドイツが舞台の壮大な物語。背徳的で美しい世界感にすっかり魅了されてしまった。永遠の高音を保つために去勢をする男性歌手、双子を使った人体実験、人種差別の悲劇、秘密の城塞などなど、題材の全てがツボにはまった。第一章が特に素晴らしい。実名で登場した歌手の歌声や、舞台となったオーバーザルツベルクなどを検索して見ながら読んでいたので、読了に時間が掛かってしまったが、物語の世界にもっと深く浸れて良かった。これは再読必須な一冊!

    1
    投稿日: 2015.04.13
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    皆川さんの作品読了後は、必ず打ちのめされ暫し呆然となる。今回はそれが圧倒的に凄かった怪作。歴史的背景の描写も、切羽詰った人間模様も、想像を絶する構成と“仕掛け”も、全てにゾクゾクした。(何でノーベル賞じゃないの?)

    1
    投稿日: 2014.11.09
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    史実と虚構と幻想が入り乱れて読書酔い。読み終わって本を閉じると同時に出たため息がほとんど深呼吸。題材が<戦中戦後のドイツとポーランド・自分の美意識に取りつかれた学者・傷つけられる美しい若者たち>と似ている「薔薇密室」もすごく好きだけど、これは全く、素晴らしいな…。史実が濃い分虚構も狂気も影を増すような。最後に謎が解けてひっくり返されるミステリ要素も強烈だし…。休憩本など言語道断。読めるだけ一気に読んで浸る以外に道はなかった、という程好み。

    0
    投稿日: 2014.10.02
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    この耽美さは誰にも真似できない。40歳すぎてデビューして80超えても書いているって本当にすごい……。

    0
    投稿日: 2014.09.27
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    ふと立ち寄った古本屋で[そして夜は甦る]の初版本と共に購入した、苦手な皆川博子の作品。奥付が二つあるし落丁か?と思ったがそれが作品の重大な秘密とは!巨大な怪物フェンリルの北欧神話と白バラ抵抗運動の二つが、私生児を生むマルガレーテの手記と関係している。会議で議論の主題と直接関係のない自分の知識をひけらかす人がいるが、馴染みのない神話や史実が傑作を生んだのか巨大な流産か、全体の1/3が終った段階では判別出来ない。ヴェッセルマンは未だ普通の高飛車な医者だし。しかし相当に面白い。ドイツの風物描写が秀逸。 苦役列車の主人公よろしく14歳になった看護婦の息子ゲルトの独白から。親にも学にも職にも恵まれず自警団みたいな?ところで苛めにあってる。そしてギュンター、白バラの学生を裏切ったあの男。何食わぬ顔でヴェッセルマンと対面してるけど似非な家族と暮らすうちにマルガレーテは狂ってるし。ヴェッセルマンよりもゲルトを苛めるヘルムートや、ミヒャエルの本当の父親を知ってるエリーザベトの方が余程気持ち悪い。ちょいちょい挟まれるファウストに基づく歌と共にポーランド兄弟の復讐が始まるが、まだ僕は釈迦の掌で躍る孫悟空だ。 どこでメビウスの帯が交差したのか?奥付けが2つあるのはそういうことか。ドイツ語の枠構造またはアラビアンナイトの入れ子構造みたい。野上晶のあとがきがまず謎。あなた訳出したんでしょ?その人物が誰か分かる筈じゃない。最後に生き残ったのはあの2人でしょ?そしてあっちの2人はBLなの?もはや皆川博子のあとがきも作品の一部かと訝ってしまう。勝手に思い描いた人間関係は最終章で徹底的に崩され柔ちんだと思っていた人物が黒幕的な物語。北欧神話とゲーテ・ファウストとフェルメールの絵と白ばらと。

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    投稿日: 2014.09.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    1週間ほどかかってしまいましたがなんとか読了。最後駆け足で読んだのでまだ理解しきれてませんが、でもとても面白かったです。最後の仕掛けにびっくり。 薔薇密室でも思ったのですが、最初全然焦点を充ててなかった人がどんどん話の中心に来るのがすごい。 あと最後のどんでん返しは見事に騙されました。そして最初はただの変態ストーカーかと思っていた(失礼)ヘルムートがだんだん格好良くなっていくのが良かった!

    0
    投稿日: 2014.09.02
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    「死の泉」皆川博子◆第二次世界大戦下、ナチの産院にいたマルガレーテは医師クラウスと結婚するが、クラウスの美に対する愛情は歪んでいく。人体実験などグロテスクな部分もありながら蠱惑的で、その魅力に引きずられるように読み進めるうちにいつの間にかどっちを向いて立っているのか分からなくなる

    1
    投稿日: 2014.04.06
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    ナチスドイツの時代。貧しさのためにナチス側のある博士の妻になった娘の物語。何不自由ない生活の中で娘はかすかな幸せを得たかに見えたが、彼女と博士の養子の少年たちは博士のおぞましい研究の犠牲になっていく。そしてヒトラーの死後、少年たちの復讐が始まる。

    0
    投稿日: 2014.01.06
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    ~2005以前読了。詳細は覚えてないけど、皆川作品の独特な雰囲気におぼれた。(なんと表現すればいいのだろう、隠微というか…こういうのがゴシックなのか??) ああ、カタルシスって感じ。合ってるかわからないけど。 そしてラストの衝撃!でも何に衝撃を受けたか覚えていないので、再読したい度:10中9

    0
    投稿日: 2013.12.22
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    皆川博子という作家は、私の中では長らく『トマト・ゲーム』『奪われた死の物語』『水底の祭り』『巫女の棲む家』の作者だった。 最初に手に入れた本は『トマト・ゲーム』で、この本はもうずっと書棚の一番いい位置にしまわれていた。 あの頃好きだった作家は他に、赤江瀑、森茉莉、澁澤龍彦。 私の本棚では「耽美(BLという意味じゃなく!)」派の、一種あやういゆらぎを見せてくれる作家さんという括りだった。 当時はPCなんて便利なものもなく、田舎の高校生には書籍目録というものからも縁遠く、好きな作家の本は文庫に書かれた既刊本を注文するか、いろんな書店を何度も回って偶然店頭に並んでいるのを見つけるぐらいしか方法がなかった。 そしてある日見つけた皆川本は時代物で、面白くはあったのだけど、一瞬で異世界に連れて行ってくれるという作品ではなかったように思えた。 その次も時代物。 だんだん皆川博子は書店をはしごしても見つけたい作家ではなくなって、『トマト・ゲーム』も『水底の祭り』も書棚の奥まった場所に移動されてしまった。 そして『死の泉』。 皆川作品から離れてもう何年もたって、手にした本。 何かひとつ欠けても失われてしまいそうな繊細な構築、根底を貫く美意識、そしてほの暗さ。 あの頃と同様に物語に没頭した。 もう何度も読み返しているけれど、美しさは褪せない。 死ぬまでにあとどのくらい、こんな美しい本に出合えるだろうな…

    0
    投稿日: 2013.09.25
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    皆川博子が1997年に発表した小説。初めての皆川さんの本でした。今までに読もうと思った時期が何度かあったんですが、タイミングが合わず。しかし、今まで読んでいなかったのを後悔しました。第二次大戦下のナチスドイツで繰り広げられるミステリー…になるんだろうか。ナチス、人体実験、レーベンスボルン、カストラートなどなど、なんて濃密で耽美なお話なんでしょう。後半、駆け足になってしまっている印象もありましたが、前半の戦時下の話はとても細かく描写され映画を観ているようでした。また、ラストのあとがきには一瞬騙されました。

    0
    投稿日: 2013.07.05
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    久しぶりに大作を読みました!! 途中途中意味不明なところもあったけど面白かったなぁ~ 最後のエーリヒとミヒャエルの正体にはびっくりしました!! フランツは結局、罪を自分の中に閉じ込めて許しを探していたんだね そ~いやゲルトはどうなったんだろう? 萩尾望都先生に漫画化してもらいたい作品です

    0
    投稿日: 2013.06.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    狂気じみた執着が生み出すこの世のものとは思えない程の美しさと残酷さ 物語の終盤で明かされる真実に驚かされる場面があるのだけれど、それで終わったと気を抜いてはいけない その後の更なる告白により今作の暗澹とした深い混沌の世界に引きずり戻されてしまった

    2
    投稿日: 2013.06.04
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    第二次世界大戦中のナチスドイツ~戦後を舞台にした重厚な物語でした。訳本という形をした入れ子構造の物語で、最後の最後で驚かされました。何が事実なのか惑いましたが、物語全体に漂う耽美的、幻想的な雰囲気を楽しむことができました。 ナチス、ナチ親衛隊、カストラート、人体実験、レーベンスボルン、廃城、地下洞窟など。

    1
    投稿日: 2013.03.20
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    ちょっと読みづらい部分もあったけど、面白かった。 あとがき読んで「えぇ!?」ってなった… これから読む人は間違ってもあとがきを最初に読んじゃいけませんよ。 最後の方はどんでん返しも多かったのですが、あっさりしてる部分はやたらあっさりしてる気がしてそこが気になったかな。 前置きは凄い細かいんですがね。 とにかくあとがきの破壊力が凄まじい。 結局あの人は… あと、個人的には第一印象悪かったヘルムートが後半好きすぎて、城での場面では手に汗握ってしまった。

    0
    投稿日: 2013.03.14
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    ナチス、人体実験、カストラート、フェルメール…… 小池真理子さんが言った「美しい悲劇」には私も共感した。きれいで醜くて、悲しくて美しい。 これは大作!悪、愛、美‼ 始終不気味な雰囲気をたてるこの本。クラウスのせいかもしれない。私は彼の存在感を強く感じたから。狂。 あとがきを読んだ時の驚きは、もうたまならかった。途中から「あれ?この人おかしくない?だってこれじゃまるでー。」 戦争は嫌なものばかり連れてくる。 いろんなものが詰まってる本なので、なかなか上手く文章にできない。 第二次世界大戦下のドイツ。厳選された孤児や外国の子どもらを保護するナチの施設〈レーベンスボルン〉。マルガレーテ、その施設の医師クラウス、美しい歌声を持つ二人の男の子はそこにいた。

    0
    投稿日: 2013.02.19
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    ふぅー読了。 第2次大戦下のドイツが舞台で、ミステリというより純文学を読んでいるようでした。 本全体が入れ子構造になっているものは初めて読んだため、最初のページを捲った時に???という感じでしたが、あとがきまで読んで感動! 翻訳本の体をとっているため、少し堅苦しい文章に感じますが、それが本書をより一層魅力的にしています^^ 第1部から15年後の第2部「ミュンヘン」では、心身を患ったマルガレーテの現実と記憶と空想とが入り乱れ、章を通して一人違う時間を彷徨っている様子がねっとりじとーっとしてて不気味。 第2部・第3部は、時系列や視点の入れ替わりが多く、少し読みづらかったです; 読んでいる間、皮膚の下をそわそわーっと虫が這っているような感覚になりますが、惹き付けられる1冊でした^^ (中央図書館1/23~29)  購入予定

    1
    投稿日: 2013.01.30
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    読んだのは何回目だろう。 これは今年の神保町ブックフェスティバルで買った文庫版のサイン本。 単行本も旧版の文庫も持っているw

    0
    投稿日: 2012.12.18
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    カストラートにはまっていた時期に読みました。 濃密で甘美な物語。 マルガレーテの想いが頭からしばらく離れませんでした。 読んでいて、深い森のイメージが浮かびました。 皆川博子さんのドイツものは、どれも好きです。

    0
    投稿日: 2012.12.05
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    ちょっと難しい部分があったけど、面白かった。 読み終わっても謎が残っていて、本が出す全体の雰囲気が謎だらけでした。それもNICE!!と思える完成度を感じました。

    0
    投稿日: 2012.09.05
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    もうね、凝ってる! 初めから終わりまで凝ってる! 「あとがき」と「解説」がこれほど重要になるなんて…! いやそれでも疑問が多いのだけど、物語の雰囲気と混じり合っていっそ神秘的なのだ。 現実と過去や夢の回想がまじりあった文章って、ややこしいから好きじゃないのだが、この本にはもう最適! だって戦時中のドイツって情報統制、思想統制、洗脳が行われていたわけだから、こうやって現実と虚構を行き来する文章ってもう、十分効果があるわけだ。怖い。 アーリア人至上主義を謳っているドイツで、「金髪碧眼の白痴」なんて口を滑らせてしまったマルガレーテの苦悩。私生児を国家のためだからと手放したくないという葛藤。狂信的な結婚相手クラウスとの関係。養子との触れ合いと――。もうね、これが戦時中戦後のドイツとなると、「ないない」なんて言えない雰囲気がある。 もう疑問も多いのだけど、うん。楽しかった。

    1
    投稿日: 2012.06.30
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    天国的で背徳的な世界をただよっている、その解けないところがいい。 第一部が人間から見た哀しい現実ならば 第二部は人間?から見た悪夢、いやどちらも悪夢なのでしょうね。 他の方々には、同じ文章を書かせてもこうも魅惑的にならないと思う。 この内容で皆川さんの流麗な文章であるから幻想的になるのでしょう。

    2
    投稿日: 2012.06.20
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    まだ140ページだけど、何せ文体が素敵でかなり惹かれる。 やっと読み終わった~。 面白かったけど、さすがに長かったなぁ

    0
    投稿日: 2012.06.20
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    ナチス、SS、人体実験、地下洞窟、変声しない美声のカストラート。そして最後でひっくり返される驚き!重厚で海外翻訳ものを読んでいる様でした。「聖餐城」につづきまだ2冊目ですが、皆川博子、恐るべし^^です。凄いです。物語は真実の上にそれ以上の真実らしさをもって物語られる。許されることではないがクラウスの美に対する偏執は判る気がする。それは狂気との隣り合わせ。狂気が物語を構築する。凄まじい話でした!!

    2
    投稿日: 2012.06.16
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    【内容紹介】  第二次大戦下のドイツ。  私生児をみごもりナチの施設<レーベンスボルン>の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。  が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがてこの世の地獄を見ることに……。  双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。 吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作!

    0
    投稿日: 2012.06.15
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    思わず感嘆のため息が漏れてしまうほどの美しさ! 皆川さんの紡ぎ出す一言一言は、まるで宝石のようにキラキラしていて、 それでいて、時折ゾクリと肌が粟立つようなおぞましさも内包している。 心が震えました。この本、大好きです。 戦時中のナチスドイツ。 金髪碧眼の見目麗しいア-リアンの子供達だけが優遇され、 ツィゴイネルやユダヤ人というだけで弾圧されるという恐ろしい時代。 神話に始まり、古城、人体実験、地底の洞窟……等々、 あまりにも魅力的なモチーフが、幻想的なミステリに絶妙に絡み合い、 悲しくなるほど美しく耽美的な世界でした。 いつまでもこの世界に浸っていたかった!!

    1
    投稿日: 2012.04.14
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    たまに読みたくなる皆川さんの重い小説。 なかなか読み進められなかったが、後半の盛り上がり、緊張から終幕への流れはさすが。 だけどやっぱりちょっと入り込み難かった。時間をかけて読み過ぎたか。 再読したらまた評価は変わりそう。

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    投稿日: 2012.03.28
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    戦時下ナチスが管理していた未婚の妊婦/ドイツ周りの国から連れて来た孤児を保護する施設に身を置く人々を中心に展開される幻想ミステリ。 文章がとても読み易くスラスラページをめくる事が出来るが、あまり注意をせず読むとラストに向けてのドンデン返しで置き去りにされてしまう。 後読み易いとは言え物語が長過ぎるので、ミステリ部分を期待して読んでしまうと冗長に感じてしまう恐れあり。 耽美的な雰囲気を小説で味わい人なら期待に十分に応えてくれるはず。そのついでにラストに驚くのが本書を一番楽しめる読み方かと。

    0
    投稿日: 2012.03.16
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    読み終わった瞬間の衝撃が計り知れない。 感想を書くとネタバレせざるを得なくなるのであまり詳しく書けない。 ナチス・ドイツのレーベンスボルン施設からはじまり、時に敗れた中世の廃城にて物語は終わる。ドクター・ヴェッセルマンはいけ好かないが各所に鏤められたモチーフが美しい。 この物語を読んでいるあいだは、ずっとこの物語のゆくえを思い続けていた。ここまで心を捕らわれる話もなかなかない。 最後のどんでん返しがまたこの上なく絶妙で、この物語に捕らわれる日々はまだまだ続きそうです。 再読したい。

    0
    投稿日: 2012.01.19
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    新装版を購入。この表紙凄く好き。 アマゾンが画像を切り替えたらこちらも変わるのかな? 濃い。 物語の構成の仕方がやっぱり素晴らしいです。最初はなかなか進まなかったけど、ちょっとずつ引き込まれて2部?に入ってからは早く続きが読みたくて仕方が無かった。 架空の作者の作品を架空の作家が翻訳した、と言う設定が面白い。 重いストーリーで、ミステリアスな部分を残しつつも、美しく終わろうとしていた物語・・・なのに、この後の架空の翻訳家によるあとがきが怖い。最後の最後で謎をばら撒いて終わっていった。 はっきり答えを出さない。モヤモヤするけど、それが心にずしっと来る。こういうのが「幻想文学」なのかな? これだけの長編だと、拾いきれてない情報もあるだろうし、理解できてない部分も多いと思う。頭が良ければもっといろいろ考えられるんだろうけどなぁ。 レビュー読んで気付いたけど神話に重ね合わせてるのも凄い! びっくりしたのが参考文献の数!論文か!

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    投稿日: 2011.10.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    幻想的な文章が肌に合わない。この世界に浸りきることができれば、メタミス的な部分であったり、入れ替わりトリック(なりすましか)にもハマるのだろうが・・・。

    0
    投稿日: 2011.09.26
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    第二章あたりから、ぞくぞくするような感覚と一緒に早く早くと先を急ぐ目が止まらなかった。読んでいたのは夜で、早く寝たかったんだけどどうしても最後まで読まなきゃ眠れないようなそんな感覚。文章の構成がうまいのだろうし、いちいち気になるワードが出てきて「え、それって?」と作者の解答を得たいがために先へ先へと読み進める。最高だった。 この作者の作品はどれもぞくぞくっとくるものがあるけど、ドイツを書かせたらそのぞくぞくっも二倍三倍。伯林蝋人形館もそうだったし、この死の泉もそう。 最後の最後まで気の抜けない話。そして構成がおもしろかった。 どこからどこまでが現実で、幻想なのかわからなくなる世界はここちよくて不気味。 読み終わった後で結局なんだったんだろう、と、思って呆然とする感覚が気持ちいい。 ■概略 第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設<レーベンスボルン>の病院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの球根を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに……。 双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。

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    投稿日: 2011.09.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最後にどんでん返しで作中作っぽい構成といい、さすが皆川博子さん。重厚です・・・浦澤直樹の「モンスター」とか京極堂の「魍魎の箱」思い出したり。

    0
    投稿日: 2011.07.30
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     次第に崩壊していくナチスドイツと、それに歩調を合わせるように次第に退廃的になっていく登場人物たちの人間模様が、ある種の陶酔感を残す魅力的な作品でした。    ただラストに近づくにつれて、ストーリーが一気に進むが、スピード感が増すというより、文章が粗くなった。  非常に惜しい気がする。

    0
    投稿日: 2011.06.21
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    最後の最後まで恐かった。ナチスのことは知っているような気がしていたが、まだまだ知らないことがあるらしい。 美に狂気を向ける人間が権力的な力を持つとこれ程に恐ろしいとは。この狂気や恐怖は皆川博子さんでないと書けない。恐ろしいと同時に美しいのだろうな、と想像してしまった。 最後のオチがまた恐怖を煽るので、終わったと思っても気が抜けない。

    0
    投稿日: 2011.02.20
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    スタジオライフの芝居の原作ということで読んだ本。 ナチス時代のドイツを女性がどう生き抜いたかということがテーマになってる小説だと思うんだけど…。 違う??

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    投稿日: 2011.02.06
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    コワイ話を書く作家だと思って読み始めたのに、なんだ〜、ナチスの時代を書いた時代小説だと思ったら、じわじわと怖さが増してきた。 ナチスに限らず、軍部は存在自体でホラーなのかもしれない。

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    投稿日: 2010.10.27
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    これすごい中身の濃い、トリッキーな小説なんだよなあ。 でも私に読解力がなくて、その魅力を十分に味わえてない気がする。 いつかじっくり再読したい。

    0
    投稿日: 2010.09.06
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    皆川さんの長編は初チャレンジ。 ぷはあ、満腹です。 堪能。 舞台はドイツ。 子供を安全に産むためのナチの施設、〈レーベンスボルン〉から始まる、美と狂気の物語。 文章は決して読みにくくはないけれど、奥深く精緻で色濃い。 大抵のレビューで言われるように、言葉の使い方、設定や世界観はグロテスクで、(それ故)最高に美しくて魅力的だと思う。 でも短編から入った私がそれに加えて感じたのは、物語の速度。 永遠とも思われる(しかし緊張感に満ちた)時間から、一気に傾れ込んでゆくクライマックスまでのメリハリがとても上手い。 読んでいてこんなに鼓動が速くなったのは初めてだと思う。 ドラマや映画では味わえない、むしろ漫画に近いようなカメラワークというか。 胸にどすんと響くこの質量感は高級品の証。 読書好きな人には是非体感してもらいたい逸品だと思う。

    2
    投稿日: 2010.07.29
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    第二次大戦下のドイツ。異常なまでにカウンターテナーに執着を見せる医師クラウス。彼により精神に異常をきたした妻、去勢された養子、ナチスの名の元に人体実験をくりかえすなど異常に満ちた世界。 なんだかよくわからない話だった。人体実験とか気持ち悪いし、登場人物がみんな狂ってるし。でもこれが当時のドイツの様子だったのかも。だって本当に有り得そう・・・

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    投稿日: 2010.07.05
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    たぶん「総統~」を最初に読んでいなかったら、これが人生のベストになっていたかもしれない。この物語を理解するにはもう少し読み込まなきゃいけないみたいだ。一読しただけでは物語の深いところまでは分からない、難解な作品だと、思う。

    0
    投稿日: 2010.03.11
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    内容はとても重たいのに、続きが気になってしまい、どんどん読み進めてしまう。 舞台版のラストの演出の方が好みだ。 良い原作あっての良い舞台だと再認識。

    0
    投稿日: 2010.01.04
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    私は時系列的に逆、先に「薔薇密室」や「冬の旅人」、そして「聖餐城」を読了してからこの作品を読んだのだが、それらと同種の空気を内包した、おなじみの皆川ワールド。 電車の中で音楽を聴きながらだとか、日常生活の合間の時間に細切れで読み進んでいくのがもどかしく、そして大層もったいなく感じられる耽美な世界。 頭の先から爪先までどっぷりと心身を沈めることこそが、皆川博子氏の長編小説の正しい読み方に違いない、と再確認した。 他の長編に比べて若干ミステリー小説としての色合いは強いようで、物語終盤の疾駆もやや意外ながら快い。 ただ、ご存知のように彼女は直木賞作家だが、はっきり“あっち側”の小説を書く人なのかなあ、と問うてみると、ちょっと疑問かも…。

    0
    投稿日: 2009.12.23
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     ドイツ人の小説を架空の翻訳者が翻訳したという2重構造で、ナチ支配下に始まる復讐劇。  面白い。さすが、1997年の「週間文春のミステリーベスト10」で1位になっただけある。結構、陰惨な部分もあるが、全ては耽美。最後の謎解き(?)が、未消化という感じは残るが、まぁそんなことどうでもいいでしょ、ってぐらい勢いがあった。  お勧めです。

    0
    投稿日: 2009.10.31
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    美しすぎる。美しい物・事をここまで文字のみで表現できる人はそうそういません。 ストーリー全体も、エピソードも、どこかの一文からそれこそ単語一つでも、どこをとっても美しい。凄い。

    0
    投稿日: 2009.07.29
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    時代背景が解りにくいものを嫌う人にはオススメ出来ませんが、基本的に難しい文面ではなく、整理されていて緻密。 舞台はドイツのナチス時代、その後当たりです。 小説での面は、ミニマムなのですが内容としてはスケールでかい感じを受けます。これが世界観というものでしょうか。 ナチスとして有名な部分から、マイナーな部分までをバランスよくとりいれて、初心者にもマニアも楽しめのではないでしょうか! ミステリーを盛り込んだ、計算されつくした構成は、美術品のような完成度。 エーリヒ・フランツコンビの旅が妄想をかきたてますね(腐)ええ、詳細は原作にはないんですけどね!www それぞれの人生を、それぞれの思いで生き抜く先にある『運命』は、残酷で一途なまでの『愛』。 男と女というジェンダーは駆け引きのためではなく『命の連鎖』の為に使われる。奥深い性愛にも、肉体関係だけではなく、プラトニックがあるのかもしれないと思う逸品。(あ、でも清い内容ではないと思うw)

    0
    投稿日: 2008.05.20
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    10月29日読。 長い割には???な物語でした。物語中の「あとがき」をちゃんと読んでないせいもあるだろうけど、ちょっと複雑だった。

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    投稿日: 2007.10.30
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    第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作。

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    投稿日: 2007.05.07
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    あえて話の内容は書きませんが、読んだ後の余韻はしばらく消えません。 皆川さんの話の構成力と文章力の高さが前面に出ているお話だと思います。 地固めもバッチリ。リアリティに溢れています。 視覚的にイメージしやすいため、映画を観てるみたいでした。 濃密で繊細な文章で綴られた耽美な世界をぜひご堪能くださいませ♡ あと、本の装丁が凝っています。 全てを読み終わった後に、誰もがあれ?って何度も確認するはず…!すごすぎます。

    0
    投稿日: 2006.09.07
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    初めて読んだ皆川さんの長編です。 長編なのに一気に読み終わってしまい、しばらくその後味がずっと残っているような気がしました。 舞台が、第二次世界大戦中のドイツなのですが、歴史小説というよりはしっかり幻想的かつミステリー的でぐいぐい引き込まれてしまいます。 私の皆川さん好きを確固たるものとしたのはこの小説です。

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    投稿日: 2006.08.21
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    私を耽美と官能と狂気の世界へと誘ってくれた作品です。以来皆川博子先生の作品中毒となり著書をコレクターするに至っています。癒しというより毒に近い、けれどこの世界は一度知ってしまえば抜けられません。 後半、謎が解けない作品でもありますが自分にはその謎がまた深みとなっています。

    0
    投稿日: 2006.08.06
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    ナチス・ドイツの奢った妄想でうみだされた<生の泉レーベンスボルン>アーリア民族を人為的に増やすことを目指した狂った機関のみせる悪夢。そもそも人類学でアーリア民族を特定することは、あいまい過ぎてできないらしいのに。金髪碧眼がヒトラーの美意識にかなっただけじゃん、って感じなんですが。権力を得た美意識は、迷惑きわまりないというのが、この本を読むとわかります。カストラートの少年、異形の少女、弄ばれる美女。すごく面白かったのですが、読後が悪夢をみたようで(笑)結構、クるものがありました。

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    投稿日: 2006.02.10
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    ミステリを超えた「奇跡の大作」!美と悪と愛が交錯する物語。甘美さと頽廃。真の耽美が味わえます。これを超える小説は当分ないかも…というくらい衝撃的でした。

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    投稿日: 2006.01.08
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    ナチ萌えなら必読。ハーレクイン乱歩調? 奇怪グロテスク+ロマンス有り、しかも背景はドイツ第三帝国ですから、盛りだくさん! 「このミス」でもランク上位…この面白さは嘘じゃありません。私はゲルトが一番かわいかった。でも主題は多分、数奇な女の半生です。

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    投稿日: 2005.08.31
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    文庫化を待っていました!ちょっと思っていた本とは違ったけれど、読みごたえは充分ある。ナチの人体実験など史実を巧みに使って描いた悪と美には、なんとも言えない陶酔感がある。おぞましさももちろんありますけどね。戦後何年経っても語り継がれるドイツの汚点なんだろうなぁ。子どもを使ったということは絶対許されないことだもん。

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    投稿日: 2004.11.22
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    前半は戦中、後半は戦後と別れるのだけど。後半になると、現実的なサスペンスが中心となり、前半で感じた美しさが欠けるのは否めないかも。ラストに仕掛けられたどんでん返しは驚きではあるが、正直、誰が生き残り、誰が死んだのか、誰が誰の名を騙っていたのか、どうもはっきりしないままだったりする。

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    投稿日: 2004.11.12
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    第二次世界大戦のドイツ、私生児を身ごもりナチの施設<レーベンスボルン>に身をおくマルグレーテ。 カストラート、ボーイソプラノ、ナチの人体実験・・・など、これでもかってくらい耽美ーな材料が揃っていて別に耽美じゃないところがすごい。

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    投稿日: 2004.11.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    第二次大戦下のドイツ。ギュンター・フォン・フュルステンベルクの子を身ごもったマルガレーテは、ナチの施設“生命の泉《レーベンスボルン》”に身を置く。不老不死の研究を行い芸術を偏愛する医師クラウスに求婚され承諾したマルガレーテは、彼の養子であるフランツとエーリヒそして産み落とした我が子・ミヒャエルと共に戦中の最中、豊かな生活を送りつづけていた。 だが、家政婦であり、昔の看護婦仲間であるモニカ・シュネーは、執拗にマルガレーテを脅迫する。戦火を逃れオーバーザルツベルグへ移り住んだ1945年春、事件は起った。しかし英ランカスター機の投下された爆弾はオーバーザルツベルグの全ての建物を壊滅、それは闇の彼方へ……。そして、15年の歳月が流れた――――――――。 最初、この本を手にして扉を開けた瞬間、確かに「おや?」と思った。その疑問を持ちつづけたまま、読み進めて行くこととなったが、それが後に、あんなトラップの布石だとは思いも寄らなかった……。 確かに、この本は“どんでん返し”があると聞いていた。従って、淡々と進む話をその最後の瞬間の数ページの為だけに読み進めていたと言っても過言ではない。 しかし、思いも寄らない趣向で「やられました」の一言に尽きる。今まで色々本を読んだが、こういう趣向ははじめての経験だ。以前読んだものの中で、宮部みゆき著の「火車」という作品があるが、これは読んでいて作者の意向が伝わったし、あえてこういう手段をとっているという事が読めた、だがこの作品に関しては全くそこまで読めなかった。完敗である。 物語は本当に淡々と進む。三部構成になっていて、“? 生命の泉”だけでは一体何を語ろうとするのかが読みきれない。“? ミュンヘン”で繋がりが明確になり、最終の“? 城”で一気に佳境へ突き進む。ただ悔やまれるのが狂気の医師であるクラウスの狂気さがあまり出ていない部分と、執拗に殺意を抱くフランツとエーリヒの動機面が弱く感じる。そしてミヒャエル。 特にミヒャエルに関しては意外とあっさりだったのが悔やまれる。あそこまで書ききってるのだから、読者としてはもう一捻りを求めてしまう。それは読み手側のエゴというものなのだろうか。 多分、これは読む人によって賛否両論あるだろう。そういう作品だ。だが、二重三重に絡めた謎、そして、650頁近くに及ぶこの大作が、最後のたった数行で読者を驚かす手腕は見事だ。と思わずにはいられない。 マルガレーテと一緒に並ぶあの足は一体誰のものなんでしょうねぇ……。うふv

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    投稿日: 2001.06.06