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いけばな―知性で愛でる日本の美―(新潮新書)
いけばな―知性で愛でる日本の美―(新潮新書)
笹岡隆甫/新潮社
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総合評価

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    笹岡隆甫氏は、1974年京都市生まれの華道家。未生流笹岡の三代家元。京大工学部建築学科卒業後、大学院博士課程を中退し華道に専念。3歳より祖父・二代家元笹岡勲甫に師事し、2011年に三代家元を継承。舞台芸術としてのいけばなを追求し、国内外でパフォーマンスを展開。京都ノートルダム女子大学・大正大学客員教授等を務めるほか、環境活動「DO YOU KYOTO?」の大使としても活躍。 本書は、いけばなについて、歴史、型・形式、反映された思想、美の特徴、フラワーアレンジメントとの違い、使われる花材と技法、いけばなの今後等、幅広い観点から解説したものである。 私はアラ還世代で、いけばなについての知識は(正直なところ関心も)全くなかったが、「日本の古典文化」は十年来のテーマとしており、本書と同じ新潮新書の千宗屋『茶』や安田登『能』を読んだり、能や歌舞伎や文楽の公演を見に行ったりしており、その流れで本書も手に取った。 読了後の(上述の通り基礎知識は全くないので)備忘と印象に残った点を記すと以下である。 ◆いけばなの基本は「型」。型通りに花を組み立てていけば、誰にでも美しい花が生けられる。センスは不要。 ◆いけばなの歴史は「型」の歴史。尚、現在では古典の再評価がなされている。 ・室町「たて花」・・・座敷飾りの一部。中心に「しん」の枝を直立させ、足元に季節の草花「下草」を添える。 ・江戸前半「立花」・・・大名が中心。アートとして独立し、花枝の種類や数が増えて大型化・複雑化。 ・江戸後半「生花」(せいか/しょうか)・・・裕福な町人が中心。簡素化。高さの異なる三本の役枝(「天・地・人」)で構成。直立から斜めに。 ・明治「盛花」・・・西洋の園芸植物を取り入れる。平たい皿状の水盤に低く、水平方向に広がる。 ・昭和「自由花」・・・大正デモクラシーを背景に、それまでの「出生」(自然のままの姿や性質を重視)から、抽象的で自由なデザインへ。 ・戦後「造形いけばな」・・・前衛いけばな運動により、生きた花を使わないオブジェのようなものも。 ◆流派の数は、他の伝統文化より格段に多い340。池坊、草月流、小原流が三大流派。室町時代に池坊、江戸時代中期以降に遠州流、古流、未生流、明治大正期に小原流、昭和に草月流が生まれ、いずれも創流された時期の型をお家芸とする。 ◆フラワーアレンジメントは、濃厚なソースを使うフレンチ。「足し算」の美。いけばなは、素材の味を引き出す日本料理。「引き算」の美。 ◆ルーツは、八百万の神を信じた祖先が、神霊の宿る依代(よりしろ)である常盤木(ときわぎ)を家に持ち帰って、床の間に飾ったもの(玄関に飾ったものが門松)。そのほか、仏前の供花や鑑賞の花など、複数のルーツがある。 ◆花を飾る風習は世界中にあるが、そこに精神的な価値、宇宙観や人生観を見出したのは日本人だけ。いけばなは、その道を歩む中で人生の指針を得る「(華)道」。宗教的世界観、陰陽五行思想なども反映する。 ◆いけばなの美の特徴は、不完全なものの尊重、左右非対称、くずしの美、正面への敬意、余白の美、移ろいの美、白銀比にみる無常観等。 ◆いけばなは、「型」においては一つの極限に達しており、これからの新たな可能性は「見せ方」にあるのではないか。寺院や屋外など様々な空間で、音楽にあわせて、大きな作品をいけあげる過程を見せる「いけばなパフォーマンス」はその試みの一つ。 いけばなを嗜まない(私のような)人間には若干細かいと思われる内容はあったが(いけばなはやらなくても、庭で園芸などをする人には参考になるのかもしれない)、裏を返せば、十分な知識を得ることができた。 著者が懸念しているように、現代社会において、日本の古典文化(いけばなに限らない)は、存続の危機にあるといっていいのかもしれない。 しかし、二元論的世界観を理論的背景の一つとして進んできた西洋的近代化(資本主義や科学万能主義)が壁に直面している今、それを乗り越えるカギが、日本人が古来から受け継いできた、人間を自然の一部とみなす自然観、自然との共生にあることも間違いはない。 末尾の一文、「いけばなでも、最も大事なのは、花を美しくいけることではなく、私たちにぬくもりを与えてくれる花に感謝し、その花の命の移ろいを最後まで見届けることです。命を大切にする、無駄遣いをしない。そんな気持ちが、美しい地球に繋がっていく。私はそう、子供たちに伝えたいと思っています。」に共感する。 (2025年11月了)

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    投稿日: 2025.11.21
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    日本人が興味を持っていて、なおかつ敷居が高くて 遠巻きに見てるものに、いけばながあると思います。 綺麗だなと思うし、もっと鑑賞する機会があって いいと思うのですが、生にはなかなか お目にかかれず…。 まして習うとなると、なんにも知らないで お教場を探すのも気が重くって。 何か入門書…と、数年前にチェックして やっと読みました。 理路整然と解りやすく説明される華道の世界。 お家元の流派でなくてもきちんと説明されていて どの流派も良い所があるんだとわかるのが、 まず好印象。 どこに見に行けばいいのか。 何となく見逃しては惜しいポイントなども ちゃんと語られていて。 語り口は決して冷たくないですし 全く知らない人向きに執筆されているからって ほんのさわりだけふわっと書いた感じじゃないので これ読んだらまず、実際に作品を見たくなります。 そして見る専でもいいので華道を好きでいたいなとも。 華道が無理でも、お花を一輪…そんな気持ちに させられる本でした。 何か読むものないかな? というなら、普段知らない世界への扉として ぜひどうぞ。

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    投稿日: 2016.11.10
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    未生流笹岡の家元がいけばなの精神をわかりやすく紹介。 陰陽五行説に基づく考え方や、白銀比、禁花など、日本文化入門としても楽しめる。

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    投稿日: 2014.05.12
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    生け花の知識など全くありませんでしたが、設計施工は別、というより「型」があり、それをつくるところから。論理思考が必要だと。 全体としては、いけばなの入り口を借りた日本の美という概念のおさらいという印象です。著者はいけばなの家元ですが、建築を学んだ経緯もあって、建築を引き合いにした記述も楽しめました。 古典的なままでいようとしない著者の姿勢にも好感が持てます。少し簡便に書かれすぎかもしれませんが、日本の「引き算」の美の再見直しに。

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    投稿日: 2012.01.06
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    別に「花」とか「美」とかいうキャラでもないのだが、歳を重ねてくるとなんとなく歴史とか文化とか知っとかないとまずいかな、程度の関心で読んでみた。 流派にとらわれないニュートラルな視点で書かれていて、「いけばなの世界を一応知っとく」という目的は十分達せられた。 ただ、それ以外にも個々のコンテンツは結構楽しく読める。単なる歴史や技法の解説にとどまらず、集金システム、白銀比と日本人の関係だとか、世襲、昨今の指導者の後継者不足問題とか、そのまんま別の社会でも使えそうなテーマ。 掘り出しモンの一冊でした。

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    投稿日: 2012.01.02
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    未生流笹岡といういけばなの家元が建築学を学んでいたとは面白い。型は設計図か! 論理的思考で花を生ける。 センスは不要とくれば、男性の嗜みとして成立します。まあ、好みはあるとして。

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    投稿日: 2011.11.18