
総合評価
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powered by ブクログ(⌐■-■)疾走してる感じ、フロストパクリぽい。でも読ませる。 ⊂|⊃ [ಠ_ಠ]事件が頼み事になってるフロストだな。
0投稿日: 2025.10.08
powered by ブクログオーディブルで。世界的ピアニストのライダーが、演奏会のため、とある街を訪れるところから話は始まる・・・と思いきや、始まらない。ホテルのポーター、支配人、支配人妻、などなどなど、関わって来る人たちが次々に自分のことを延々喋り出し、ライダーにすごく敬意を払っているのだけど、邪魔しかしない感じで、ライダーを疲弊させる。悪夢のような不条理と、説明に書かれていたが、まさにそれで、それを面白がれる精神状態ならいいのだけれど、今のわたしは、まだ四分の一ほどのところで、聞くのを断念した。
0投稿日: 2025.09.10
powered by ブクログまるで悪夢を見ているような展開で、読みながら悪夢にうなされるような感覚を覚えました。途中までで挫折してしまいました。
0投稿日: 2025.08.12
powered by ブクログカズオ・イシグロの4作目の長編。ブッカー賞を獲った「日の名残り」のあとにこれだったから、きっと面食らった人は多かったろうに。 世界的ピアニスト(と思われる)ライダーが「木曜の夕べ」なる催しで演奏をするために、欧米のとある街を訪れる。 ただしこの物語の舞台は不条理であり、筋が通っていない。悪夢的な世界の中で、とっ散らかりながら進行する。 悪夢的な世界なので、すべてが脈絡なく突然起こる。ライダー自身も「木曜の夕べ」で演奏する、ということのみ認識しており、それをやりきることが使命だということのみ理解している。そのイベントがどこで行われるのか、誰と行うのか、何もわからない。それを知ろうとすると突然誰かが現れ、見知らぬ場所に連れて行かれる。でも見知らぬ場所は言われてみるとよく知っている場所であり、そこで自分がどのように振る舞えばよいのかを思い出す。しかし、その場で適切な行動を取ろうとすると、取れない。動けなかったり声が出なかったり。まさに悪夢的。 なんというか、不条理が9割、常識が1割くらいの内田百閒的な悪夢であれば、それはもう幻想小説的な感覚で、スタートから一気に増大していくエントロピーを受け入れる(というか諦める)ことで楽しむことができる。一方でこの小説はカフカ的悪夢、不条理5、常識5くらいの配合で物語が進んでいくので、不条理な世界に入ってエントロピーが増大しかかったときに、こんどはその世界の中で道理が発生し、エントロピーが収束していく。理解可能な世界に連れ戻された気になった瞬間また不条理が発生する。この繰り返しが不気味であり一種の疲労感を生む。 その悪夢的展開が延々940ページにわたって続く。これは賛否あるのもむべなるかな。 カズオ・イシグロの数々の作品の根底に共通するものの一つに、「記憶の曖昧さ」というものがある。 この記憶の曖昧さが、彼が描く物語に大きな特徴を与えている。彼の作品の特徴である「信用ならない語り手」を作り出したり、奇妙なミスリードを我々にもたらして話を展開させるのもこの記憶の曖昧さを巧みに利用したものであると思っている。 そして今回の作品についても、単なる不条理小説なのではなく、今までであれば、たとえ曖昧であってもあくまで時系列という軸はぶれていなかった記憶を、悪夢的舞台という設定を利用して時系列すら無視して物語に組み込んだというふうに見ることができる。 時系列を無視というのが正しいのかはわからない。ある程度まで読むと、実はこの作品がある種の階層構造を持っており、そういう意味では時系列は正しいのかもしれないのであるが、それでも一読では完全に時系列を無視した記憶が出てくる。それでも、記憶のトリックをふんだんに散りばめていると考えると、いかにもカズオ・イシグロの作品らしいと言える。 彼が書いているものに、ぶれはない。そう思える。 940ページ、分量としてはだいぶあるのだが、ただ読みにくいわけではないから特にこのボリュームが苦痛ということはない。 ただ、先にも述べた通りこの不条理世界を体験したときの不安やイライラがこの長さ続くというところは、うーん、難しいな。 私はすごく面白いと思った。私はね。というところかな。
18投稿日: 2025.06.29
powered by ブクログ悪夢の中でもがきながら読み進めていく感覚。 一つの小宇宙が小さな本の中にぎゅっと詰めこられているようで、家の中にこの本があると引き込まれてしまいそうになり、本を閉じた時に鳥肌が立ち恐怖を感じた。日の名残りが美しく精巧な描写だったからこそ、充されざる者の不安定さや歪みが対比になるようだった。混沌とした世界を描いていても発散的な描写にならないカズオイシグロの素晴らしい技量を感じることが出来る一冊。
0投稿日: 2025.04.21
powered by ブクログ難しかった…退屈といえばもうそれまでだし、不条理?とかそういう世界を楽しめる人向けかなと。休み休み、どうにかこうにか読んだけど、よくわからなかった。私はストーリーがないとダメなんだなぁと思った。
1投稿日: 2025.03.29
powered by ブクログ退屈なのに読み進めたくなる作品。今まで体験したことのない読書体験だった。 読み切った後でやっと、全てのシーンに、ああ、なるほど、と納得できた。 登場人物全員がどこかおかしさを抱えていて、読者はそれに翻弄される。そこが面白いと感じられる作品でした。
0投稿日: 2024.11.23
powered by ブクログ成し遂げた結果よりも、成し遂げる過程で刻まれる記憶を慈しむ。 幸福はそこにあるのではないか。 そして周りの皆の幸福があってこそ自らの幸福も有り得るのではないか。 このようなテーマを感じとり、さらに最後、鉄道に乗って移動する情景と絡めて、少々勝手だが『銀河鉄道の夜』を想起した。 音楽家としての名声と、代償として失った家族との生活、愛する者からの信頼。 ほんとうは、後者がなによりも大切であった。 町おこしのイベントとしてピアノ演奏に来たはずが、ライダーは周囲の者の生き様を見せられるばかりで翻弄される。だがそれらの出来事はライダー自身の過去を投影し、かれは意識の深淵に潜り込む。これでよかったのか、よいはずだ、まちがっているのか、そうではないのか……。演奏会場にたどり着こうとしてさまよう町は意識そのもの。 人生の歩みの中頃に真に大切なものに気づき始めてさめざめと泣く、そんな暗さは、夢から引き戻されて目覚めたころに味わう侘しさと色合いが似ている。 訳者は、カズオ・イシグロは薄明、薄暮の作家だとコメントしているが、それは言い得て妙だ。 ひとつを追い求めれば片方が離れていく、そんなもどかしさが作品全体を覆っている。 この長さがあってこそ、深い感動を得られた。 すぐにはわからないのが、生きるということであるから。そして挙句の果てに、わからないものだから。
9投稿日: 2024.10.25
powered by ブクログどこまでも続く混沌とした世界。希望を求めながら、信念を抱きながらも、どうしようもない世界に身を置く人たちの声が響き合う。 そんな物語(物語ではないかもしれない)を900ページにわたって総合的に立ち上げている。良い意味で退屈。読み続けるのに苦労したが、唯一無二の読書体験だった。 柴田元幸さんがイシグロベストに挙げるのも納得の一作。
0投稿日: 2024.09.18
powered by ブクログ面白かったの一言に尽きる。ページが進めば進むほど引き込まれていった。不思議な雰囲気が癖になる。カズオ・イシグロ作品の中でいちばん好きかも。
0投稿日: 2024.05.14
powered by ブクログ230708*読了 900ページ以上の大作。読書好き、カズオ・イシグロファンとしては嬉しい。 冒険ものでもミステリーでもないのに、よくこんなにたっぷりとこのストーリーを書けたものだと思う。 架空の街があり、そこで公演を行うためにやってきた有名ピアニスト、ライダー。 この街にとっても転機となる重要なイベントに招かれ、大役を果たすつもりでいるのに、ホテルの支配人、ポーター、ポーターの娘とその息子、街の議員たち、再起を果たそうとする指揮者、そのかつての妻…とにかくたくさんの人の願望に巻き込まれてしまう。 現実と夢、現在と過去が、ごちゃごちゃと混ぜ合わさっているような、なんとも夢想的な流れに捉われ続けるライダー氏。 いったい何がリアルなのか。リアルなんてものは存在しなくて、全てが夢なのか。分からない。その分からなさがおもしろい。 ともすると、飽きてしまうような展開なのに、早く続きを読みたくなる。この力こそが、カズオ・イシグロさんなのだと強く思う。
0投稿日: 2023.07.08
powered by ブクログカズオ・イシグロの4作目。ハヤカワ文庫で948P(厚いし重い。物理的に読みづらくて手こずった)。 不条理ゆえか、焦燥から喪失、郷愁‥‥いろいろな感情がよぎった。今までにない不思議な読後感。
9投稿日: 2023.06.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
900ページ越えの分厚い物語は、高名なピアニストが演奏のために町に着いたところから始まる。出会った人々から次々と持ち込まれる奇妙な依頼に振り回され続ける物語。ドアを開けると全く別の空間に繋がっていたり、人の記憶が自分の記憶にすり替わっていたり、突然に生み出される過去の重大な記憶など時系列も不安定で、状況を捉えにくい。はじめはとても読みにくかったが、すぐにこれは夢の中なのだと気付き、不穏な空気に溢れる不思議な世界を堪能しました。巻き込まれたできごとの周りでの悪戦苦闘が延々と続き、何かがスッキリと解決する場面は一つもなく、もちろんハッピーエンドとかバットエンドとか単純に括れず、捉え方によっては悪夢とも言えなくはないが、それでもほのかな未来への希望が感じられる小説でした。夢の中も現実の人生も同じようなものなのも。
1投稿日: 2023.03.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
こんなにも読みながらイライラした小説は初めてだ。ただイライラするというのは、面白くないということではないのだ。主人公は自分の予定も訪れた街の地理も把握しないままさまよい歩き、出会った人たちからの不躾な頼み事を断ることもできずドタキャンする。自己弁護に満ちた語りが何ページにもわたり、悪夢のような迷宮を通りぬけると、最後にはこっけいな悲劇に転じる。主人公は目的だったリサイタルすらせずに街を去ろうとしている。カズオ・イシグロらしい、皮肉に満ちた人生の迷宮のような作品だ。
1投稿日: 2023.01.01
powered by ブクログすべてが夢の中の話なのかと思うほど、空中に浮かんだように感じる文庫本900ページを超える作品。それなりに話は展開されていくのであきはしないが、もう一度読み返そうとは思えない。イシグロさんの小説の中では散漫だなと思ってしまう一冊。
0投稿日: 2022.10.08
powered by ブクログ最後のなにも解決してないのに知らない下層階級の人に泣きついて朝食を食べるラストが気持ち悪すぎて変な夢を見た。 でも読んだ本に左右されて眠れなくなるほど心に色が付いていない部分があったんだと知って嬉しくなる。ずっと子どものまま小さいものも大きく感じたい。
0投稿日: 2022.07.27
powered by ブクログ驚く程に読み進まない小説でした笑。通勤時に進めるものの、時間が出来ても余り手に取りたいとは思えず多分一月位かかって読了。文庫で900ページ越えはシンドい。 私こういうの知ってます。nightmareです。経験あります。今まで何度も見た夢なのだが、就職決まってあとは卒業だけってタイミングで必須教科を取りこぼしてるのに気づくんです。この小説を読んでてこのnightmareを何度も思い出したことか。 たった数日間の話が900ページ強の中で微に至り細に穿ちで綿々と綴られていくのですが、著名(?)なピアニストのライダーがアチコチで街の住人に振り回される様は相当なストレスを読者に与えます、多分それをイシグロさん狙ってましたかね。。。 いやそれでも最後まで読んでしまうのは私がどっぷりとイシグロ沼にハマっているからなのでしょう。イシグロバージンさんは決してこの小説から初めないで頂きたい。私はこれを読み、益々他の作品も読みたくなる沼(笑)。
1投稿日: 2022.05.03
powered by ブクログある町の危機を救うために、世界的なピアニストがスピーチと演奏をしにくる話。約950ページの小説はさすがに長かった。かなり分厚い本だったが、わざわざ上下巻にわけるほどの小説ではないというのが個人的な意見。本当に何を伝えたかった作品なんだろう。しっかりとしたオチはないというのがイジグロの特徴なのだろうが、最後の最後にどうしても期待してしまう。しかし、案の定何もなく終わってしまう。まぁ、とにかく、出てくる人物ひとり一人が、ドラクエの敵のように、主人公の行く手を阻むというRPGのような作品だった。
21投稿日: 2022.03.13
powered by ブクログ「充たされざる者」(カズオ・イシグロ : 古賀林 幸 訳)を読んだ。 読んでいる間中〈混乱〉か〈苛立〉もしくは〈混乱と苛立〉に支配される。 『ライダー』は泥濘んだ方泥濘んだ方へと足を踏み出さざるを得ない状況に落ちていく。 カズオ・イシグロ氏は読み手の辛抱強さを試しているみたいだ。(笑) 過去に一度挫折した作品だが、今回は腰を据えてじっくりと向き合った。 最後の最後に救済が待っていた。
0投稿日: 2022.02.28
powered by ブクログまさに、不条理文学。みんながサイコパス。 物語って、なにか目的があってそれに向かって進んでいくものだけど、これはその途中でいろいろな別の目的がうまれて、結局当初の目的は果たされずに終わる。 しかもみんな話が長く、別のエピソードを勝手に語ったりするので、語り手と同じように読みながらイライラしてしまう。 でも不思議なことに、最後まで読めてしまった。すごいなカズオ•イシグロ。登場人物があまりに、予測不能なので、クスッと笑ってしまうところもあった。 結局、この世界は何だったのか。夢?? 登場人物は結構、語り手と似ているところもあった。
1投稿日: 2021.11.03
powered by ブクログそろそろ桜が咲こうかという時季になんだけど、今年みた初夢の話。 燦々と陽光降り注ぐ部屋でクリスタルピアノを弾いているYOSHIKIが、メロディを奏でるのをやめ、グラサンを指先でスッとあげながら、こちらを見ると、じゃ、20分後に、これ舞台で歌って下さい、と言って出て行った。 オッケー!任しときな!と安請け合いしたのはいいものの、よく考えたら、俺、歌詞を知らないや、ということに気づいた。さすがにお客さんの前でカンペみながら歌うのも失礼だし、手のひらに書いて、それみながら歌うってのも、様にならないし、さて、どうしよう・・・ ってところで目が覚めた。 完全に大晦日にみた紅白の影響だ。 だいたい夢って、その先の展開が読めなくなって困ってくると、目が覚める。自分の想像力以上のものは出てこない。 じゃ、もし覚めなかったらどうなるかっていうと、この小説みたいな展開になる。 延々と困った、困った、が続く。 充たされざる者、ってそういうこと? 主人公はたぶん世界的に有名なピアニストのライダー。故郷に凱旋公演で戻ってきた。街中誰もが彼のことを知っていて、誇りに思っているので、あっちこっちで声をかけられる。有名人の宿命だから、それは我慢しなくてはいけないこととわかりつつ、公演を前に肝心のピアノを弾く練習が出来ない。 会う人会う人、私がどれだけあなたを尊敬しているかとか、昔あなたに会ったことがあるとか、今度こういう会があるからぜひ来て下さい、ちょっと寄ってひと言スピーチをしてくださるだけでいいんです、とか。 ライダーも、忙しいのに、まあ、ちょっとだけなら顔を出しましょう、とあっちこっちで安請け合いしてしまうので、もう、スケジュールがメチャクチャ。そもそも自分の公演までのスケジュールってどうなってんの?となってしまう。 困った。困った。 まんがにっぽん昔ばなしのおじいさんのナレーションが延々とリフレインする状況に陥る。 そのうち、時間の流れもおかしくなり、空間もあやしくなってくる。 そして、ひたすら、困った、困った。 だまし絵のエッシャーの世界を小説で表現したらこんな感じになるんじゃないかな。なんか拗れてて、どこかでループしてて、知らないうちメタモルフォーゼしちゃったよ、みたいな感じ。 この作品、傑作か駄作か評論家のあいだでも評価が分かれているらしいが、たんに好きか嫌いかだと思う。 自分はこういうの、嫌いじゃないから、途中退屈したけど、最後まで読んで良かった、面白かった、と思えた。でも人には薦めない。 だって長いんだもん。
0投稿日: 2021.08.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
悪夢を彷徨うような不条理な小説でした…… ふわふわ、あてどなく1000頁近くも彷徨うのはいささか疲れました。 なのにシュールリアリスティック的ではなく、最後まで読ませる力があるのは、作者の確かな手腕によるものでしょう。 そんな夢の中で、挟まれる断片的なエピソードは、誰でも覚えのあるような根源的な傷を抉ってきます。 両親とシュテファンの関係とかお辛い… ライダーの両親が来ないこととの相似性もありますね。 ブロツキーとミス・コリンズとの関係は、ゾフィーと自分との関係とも相似しているような気がする。 過去、現在、未来を淀んだ形で顕現した世界なのかもしれない そう考えると、グッと面白くなった
0投稿日: 2021.06.22
powered by ブクログブロツキーとは何者なのか Audible体験、悩んだ末に分厚さ的にも内容的にも自力で読破できるか不安な本作を選んでみたけど朗読いい感じ。しょっぱなのホテルのポーターの哲学とかハンガリアンカフェとか家族関係をつらつらと綴る感じとか幼少期過ごした部屋の話とか不思議だけどなんか好き 9番⚽ ボリスを私の息子だと言い出すライダー 『2001年宇宙の旅』 度々思い出したように出てくるゾフィーへの苛立ち ブロツキーに延々とチンポとキモい性生活の話聞かされるの嫌過ぎるんですが…
0投稿日: 2021.06.01
powered by ブクログ正直に、読むのにとても疲れた一冊。 カフカの小説のような不条理感がずっと続き、時間の観念が崩され、いまどこにどれくらいいるのかわからなくなりながら、停滞しそうで停滞しない感じの物語に翻弄される。そして疲れる。 最後まで気の抜けない感じで、「よし、読むぞ!」と気合いを入れないと読み進められない感覚は久しぶり。 読後の達成感を味わいたい方は、是非。
0投稿日: 2021.02.17
powered by ブクログ世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り…。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の問題作。
0投稿日: 2021.01.31
powered by ブクログとても風変わりな作品。私はこういうの好き。 夢の中のように脈絡なく続くストーリー、歪んだ時間、辿り着かない目的地、見知らぬ知人達(矛盾してるけど"見知らぬ知人"が正しい表現だと思う。) 永遠と続くワンカットシーンのような小説。 読後は長い夢を見終わったような気だるさ。
1投稿日: 2020.11.02
powered by ブクログこの本はすごい。ほとんどもしくはすべての登場人物が自分のことしか考えられない。もどかしい思いで何度も本を閉じたのだが、読みきったあともう一度それぞれのエピソードを読んでみると、噛めば噛むほど味が出てくる。吸い尽くせないほどに。頑張って読み切る価値がある。 自分は果たして本当に誰かのことを知りたいと思ったことがあったのか? そう思っていたと感じていたときでも、ただ自分のことを誰かがどう思っているかを知りたかっただけではなかったのか? 時に誰かに優しくすることはできるが、結局いつも自分のことばかりだったんじゃないか? そんなことを思う。 最初は荒唐無稽で夢のような世界の話だと思うのだが、読み終わって数日が過ぎたあたりから、だんだんとそれが世界の本当の姿なんじゃないかというふうに思えてくる。みんな言いたいことだけを言っていて、すべての人同士がすれ違っている世界。でも、それは全くもってありのままの現実なんじゃないかと。
4投稿日: 2020.04.19
powered by ブクログこれまでのイシグロ作品と一線を画す非常に不思議な小説。読んでも読んでもつながらない、なにか少しずつずれていく、現実もしくは非現実。自分の考えの小さなサイクルが帰ってこない、ボールペンの試し書きのような思考と行動。なんでしょう、理解できないものは永遠に平行線になる、といったような不寛容を感じされる、まさに”充たされざる者”の物語。そういう解釈にたどり着くラストになぜかすっと入る読後感。
0投稿日: 2020.02.18
powered by ブクログ読書とは苦しいものなのだよ、と思いながらなんとか読了。 翻訳本にありがちな、どーにもならない鼻持ちならない文章ではなく、自然な日本語な上に読みやすい文体に翻訳していただいていますし、内容もすっと入ってくるんですが… とにかく、読み進めるのが苦しく、どんなに頑張っても1日2章か3章読めればよい方でした。 なんだろう、この経験は。 万人におすすめできない本の筆頭にあげられるかと思います。 ですので、評価はできません…
0投稿日: 2019.07.19
powered by ブクログ一応読んだことにするが、最初の数ページで飽きた。というか自分には面白さがわからない。文学とは難しい。ページ数も多い。
0投稿日: 2018.12.26
powered by ブクログ巻末の解説によると、発表当初から賛否が大きく分かれたという本書。デビューからそれまでに寡作ながらいずれも高い評価と栄誉ある賞を得た作家が、本当に書きたかったものを書いたそうです。 出だしから登場する人たちの長いセリフ、それに続く非現実な場面転換。序盤から、読み進める側は、この奇妙な小説をどう受け止めていいのか、戸惑います。否定的な感想を持つ人は、おそらくこの戸惑いを消化できなかったのではないでしょうか。そうした気持ちも当然と言えるほど、風変わりな小説です。 自分は、その風変わりさが、ルイス・キャロルのファンタジー小説に通じるものとして呑み込み、非現実な進行も含めて楽しむようになり、中盤からは予想もつかない展開にスリリングな興奮を感じるようになった口です。※なお、補足すると三月兎やハンプティダンプティ的なものは登場しません。あくまでもひと同士の想いのズレや行き違いを描いたものです。 もっとも印象深い小説のひとつ。そう評したいです。
1投稿日: 2018.11.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ライダーは著名なピアニスト。中欧のこの国のある街に演奏会の招待できている。街をあげての記念式典だそうだ。タクシーでホテルに到着したが、迎えにでる人もなく、運転手がとまどうばかり。ようやくポーターが出てきたが、本来は支配人が出迎えるべきなのに申し訳ないと何回も詫びる。これから先もライダーは色々な人に用事を頼まれ、それを成し遂げようと努力するごとにまた不思議な出来事にさえぎられるということが続く。不思議な霧の中でお話がすすむような感じを受ける。
0投稿日: 2018.10.11前衛芸術性はよくわからない…
マジックリアリズムが使われた作品は読みときが困難で、作者が意図的に主題をぼかしているため、何かとっかかりが無いと作品から読み解けるものがなくてがっかりしてしまうこともある。特にマジックリアリズムの作品を何作も読んでいると当初の目新しさがないので消化不良に戸惑ってしまう。 作品の感想としては意味が分からないのについつい読めてしまうという不思議さだけが残ります。カズオイシグロの筆力と翻訳者の努力に頭が下がりますね。 内容は、おそらく、ですが、主人公の過去と有りうべきだった何かが、全ての影として架空の町に現出している、そして、作品の最終章が示すようにこの街そのものが一つのトリックとして、相対的異邦人から見た欧州の社会と制度、そして信仰を夢として見せている、という格好でしょうか? 街には壁があり、基準は落とさないのです。まるで、まるで…。 何というか、そういう歯切れの悪さに我慢できないと長大な長さを誇るこの本は途中で投げ出したくなるでしょう。 意味がないところに意味がある。そういう感じでは、あるのでしょうね。 芸術は元々そういうものでもあるわけですが…。 うーむ、評価するにはもっと芸術への理解がないと評価できない作品ですが、とにかく星5つ。
0投稿日: 2018.09.30
powered by ブクログ人々は自分の理由をしゃべり、空間は自在につながる。 名を成したピアニストのライダーは「木曜の夕べ」というコンサートに出演のため、ヨーロッパのある町にやってきたが、出会う人々からいろいろな相談を持ち掛けられ打合せもままならない。 ホテルのポーター、ポーターの娘とその子供、ホテルの支配人、支配人の息子の若いピアニストなどが一方的に事情を話し出す。またそれに丁寧に応えてしまうライダー。またレセプションの会場、カフェ、ポーターの娘の部屋、写真撮影の建築物などががぐるぐると、あるいはドアからドアへとふいに現れ、途切れ、繫がる。 ポーターの娘とその息子ボリスのアパートに行くあたりまでの7,80ページくらいまでは普通に事が進んでいくようだったが、人間関係と建物の位置関係がだんだん歪んで来て、しかし内容は人々のライダーへの一方的な相談が延々と続く。 いつのまにかポーターの娘と息子のボリスがライダーの妻と子供になっていて、会話の内容も過激に、絵具を全色塗りたくったようなものになってゆく。いいかげん人々の独白に飽きて、ライダーがリハーサルできないのにいらいらしてくるが、だんだん混沌としてくるあたりから、ウォン・カーウァイあたりの映像でやったらけっこういいのでは、などと思い始めると、物語世界を楽しめた。 全939ページ、厚さ3.5cm。上下にしたらきっと下を買う人は半分以下かも。1冊で重かったが途中斜め読みしてしまったが、なんとか読み終えた。 カバー絵の黄色い街灯に照らされたこげ茶の建物と路地が内容にぴったりだ。一点透視の路地の先は歪んだ時空間に続くようだ。
0投稿日: 2018.08.27
powered by ブクログこの作家は、読者に霧のなかを歩かせる。名声高いピアニスト、ある街のリサイタルに招かれるが、住民の厄介ごとに巻きこまれ....。テーマは家族愛だろうか。最後救いあるけど、仕事人間のお父さんへのペーソスを感じる。どこの国、時代、家庭にもありそうな不条理。読み終えるのが難渋で、再読はしたくない。
0投稿日: 2018.06.17
powered by ブクログ登場人物の会話が多い。脈絡のない場面転換。移動にも違和感が残る。夕べ見た夢をたくさんつなげて、言葉で表現するとこんな感じになるかも。 ボヤーッとした世界の霧の中をやっと歩み終えた。 チョット疲れた。
0投稿日: 2018.02.16
powered by ブクログ深い動揺と混乱を得た。 夜見る夢をこんなにも緻密に具現化したものは見たことがない。恐ろしい。悪夢である。
0投稿日: 2018.01.19
powered by ブクログこんな本は今まで読んだことはないし、技巧も文学としてもすごいのだけど、タイトルの通りすぎて、好みで言えば好きとは言えない。。。 とにかく、卵とベーコン、ソーセージ、トマトにコールドミートや熱々のコーヒー、焼きたてのクロワッサンやロールパンと言ったたっぷりの朝ごはん食べよう、と思った。
0投稿日: 2018.01.04
powered by ブクログ不思議と読み進めてしまう 非常に独特で、つかめそうでつかめないような、笑えるような笑っちゃいけないような、ぬるぬるした小説。 これは誰もが見る「夢」の共通言語で描いたというインタビューを見て、その描写のあまりの巧みさに気付いた。
0投稿日: 2017.12.21ノーベル賞受賞に敬意を表して
私は芥川賞とったからといってわざわざその本を買う程ミーハーじゃない?! 2、3の作家以外にはせいぜい毎月買っている文藝春秋に掲載されているのを拝見する程度。しかしノーベル賞しかも日本人がとなればこれはまた別のお話。 なのでイーブックスストアからダウンロード版を買ってみた。「日の名残り」とこの「充たされざる者」。但し作者のカズオ・イシグロさんは日本人の両親のもと長崎で私と同じ年に半年程遅れて生まれたとはいえ5才で英国に移住し既に日本語を話せない英国人の方。 英語で書かれ日本語に訳された作品。しかしダウンロード版であとがき等すべて入れてではあるが、なんと2080ページもある長編でそれでなんとたったの926円。さすが早川書房さん、安い。しかも207円分のポイント使用で719円か、うーん。安す過ぎかもとページ数と値段で考えるうつけ者の私。 さてレビューなんて自分の無教養を晒す程おばかさんでないという私としての健気な誇りはあるがここはノーベル賞に免じて恥ずかしながら書いてみよう。 動機のひとつとしてまだ誰もレビューを書いていない。わたしが栄えあるこのノーベル賞作家の長編の作品の初レビューをせしめる一生に一度の絶好の機会。 ソルジェニーツィンはイワン・デニーソヴィチの一日でノーベル賞を取ったがこの作品は主人公であるラーダーという名の世界的なピアニストの傍観者然とした3日間の出来事を過去の出来事とテクニカルに往き来させながら織りなし濃密に。いや読んでてもどかしくなる位の回りくどい会話が繰り広げられる。なので途中途中はしょって読み進めて予想に反した穏やかなラストへ。 さて何十年か前、意図せず足を踏み入れてしまったカフカの世界。といっても3つしか読んでないけど。うち2つは何度も。 なんか読み進めて感じる訳のわからない違和感 あれは変身?いや城か なぜか蘇ってくる不思議な違和感がなんか共通してるなと。読んでいて背中に感じるゾクッとするもの。 こんなレビューは読み飛ばして是非本作品をお読み下さい。
1投稿日: 2017.10.10
powered by ブクログカズオ・イシグロ『忘れられた巨人』が面白いと話題なので読んでみようかと思ったのだが、そう言えば『充たされざる者』が未読だったのを思い出して、読んでみた。 時間も空間も歪んだ世界で、登場人物は何重にも重なり、悪夢のような(というか悪夢そのものの)不条理が延々と続くが、個々のエピソードが魅力的でグイグイと読ませる。大きな話の筋は世界的ピアニストのライダーが「町の命運は音楽藝術の解釈次第にかかっている」と信じられている町に招かれて演奏と講演を行うというストーリー。その枝葉として、やがて彼の義父であることが明らかになるポーターのグスタフとその娘ゾフィーとの不条理な関係、その関係と相似する名指揮者グロツキーとその元妻コリンズの関係、その関係と反比例する平凡な(しかし自己欺瞞の権化のような)ホテル支配人ハフマンとその婦人との関係、ライダーの幼少期と重なるゾフィーの息子ボリス、ライダーの青年期と重なるハフマンの息子シュテファンなどが描かれる。場面転換のたびに「あー、そちらに気を取られて本線を外れてはいけない」と思いながらも、話は枝葉から枝葉へと迷い込んでいく。 長らくカズオ・イシグロで一番好きだったのは『わたしたちが孤児だったころ』だったのだが、『充たされざる者』はそれを上回るかもしれない。願わくば原著で再読してみたいところだが、長いからなぁ…。
1投稿日: 2016.11.13
powered by ブクログ丁寧な物言いなのに無遠慮な、愚かしい悩みを延々と聞かされる。昔だったらつまらない、と読めなかっただろう。愚かしい悩みが他人事でなくなってくる歳だから読めたと思う。
0投稿日: 2016.09.17
powered by ブクログ時間も歪み、空間も歪み、常にズレがある世界で起きる出来事は、現実なのか主人公ライダーが見ている長い長い悪夢なのか… モヤモヤとしたものに包まれているような感覚になりました。 そして、ここまで登場人物達の言動にイラつかされる小説も珍しい。 主人公に次々と利己的な頼みごとや相談を持ちかける人、何か起きても永遠と言い訳するだけの人… そして何よりライダーの身勝手さ、我儘さにイライラ。 もう、ライダーに関しては最後の方はイラつきを通り越し「またか」という呆れが勝りましたが。 でも、どんなにイラっとさせられても、途中で読むのを止めようとは思わない、むしろ早く続きが読みたいと思う小説でした。 好き嫌いは大きく分かれると思いますが、私は面白かったし読んで良かったです♪
0投稿日: 2016.05.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「わたしを離さないで」や「日の名残り」路線を期待していた私は思い切り肩透かしを食らいました ^^ 巻き込まれ型のスラプスティックなんですよ~! まー作者にしてみれば同じ路線ばかり期待されるのは 芸域の狭さを言われているようで不本意なのかもしれませんが・・・好きなんですけどー、こういうのも~この路線ならもっと徹底している作家が何人もいるのでイシグロが頑張らなくても・・・ ポール・ラドニックの「これいただくわ」とか、イーヴリン・ウォーの「大転落/ポール・ペニフェザーの冒険」とか、ヴォネガット辺りがお好きな人にオススメです。
1投稿日: 2015.03.23
powered by ブクログ2014.8.7 カズオ・イシグロで唯一読めていないこの作品、この度三度目?の挑戦。 2014.8.11夕方 家で読んでるとすぐに寝てしまう。まだ290ページ。あんまり手強いので、基本方針として喫茶店で読むことにした。近所の喫茶店との相性はすこぶるいい感じ。 2014.8.12 自宅安静を言い渡されたため外出できず。そのおかげでちょっとはかどった。P506まで。残り半分きった。ちょっと慣れてきたかも。リズムつかめたかも。一気に読んでしまいたい。 2014.8.14早朝 昨日300Pちょい読んだので、ようやく読了となる。最後まである意味、裏切らない不条理。物語も半分を過ぎたあたりから、整合性のなさや、登場人物・世界観の歪さがかえって面白く感じられるようになった。このへんで覚めるよなあと思っても、最後まで覚めない夢のような話。保坂さんの『未明の闘争』をちょっと思い出す。カフカっぽい感じなのかな。
0投稿日: 2014.08.07
powered by ブクログカフカとかがお好きな方なら、きっとお気に召すに違いない、良い不条理具合(?)です。 逆に、整合性を求める方には不向きなのかもしれませんが・・・。 939ページもある大作ですが、不思議と、読んでいてイメージが映像化されて浮かびやすいです。 どことなく、グリーナウェイの映画を観ているような印象を受けます。
0投稿日: 2014.03.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
長い。だらだらと長い。結末らしきところも盛り上がりらしきところもなく、イラッとする人のイラッとする行動が延々と続くんだけど、でもこの人の書く会話ってどことなく人間的なおかしみがにじみ出ていて、なんとなくだらだらと読み終えました。 この感じはThe Office(イギリスのコメディドラマ)に似てるかも。ツボにはまり出すと、それぞれのキャラクターの言動がいちいち笑えますが、そうでないとただの冗長な小説にしか読めないかもしれない…。
0投稿日: 2013.09.29
powered by ブクログ「私を離さないで」は良かったが、本作はいまいち。 文庫で900ページを超える、冗長で、まるで悪夢を見ているような作品。 このシュールな作品を、どうとらえるかは、ひとそれぞれだが、個人的には時間とお金の無駄。
0投稿日: 2013.01.31
powered by ブクログこれまでのイシグロ作品比べて長さ的にも内容的にも格段に読みにくく、つかみにくかったにもかかわらず、読後は本当にいろいろと考えさせられた。読書会があれば参加して見たいと初めて思った作品だった。不毛なコミュニケーション、過度な要求、ゆがんだ空間と時間、それが最後の電気技師で初めて噛み合う。しかし、ライダーは全然完成されていかない。また、本作は無名の登場人物が象徴的な意味を持っているようだ。
1投稿日: 2012.11.26
powered by ブクログ最高。イシグロの作品の中で、一番気にいっている。カフカ的だけど、カフカはこんな長編を最後まできっちりと仕上げたりはしないだろう。
0投稿日: 2012.10.27
powered by ブクログ<ある東欧の町にやってきた世界的ピアニスト、ライダー。 「木曜の夕べ」で演奏することが決まっている彼の元にさまざまな相談が持ちかけられる・・・。> 今作でカズオイシグロの長編制覇!! 900ページ以上の大長編にもかかわらず、なぜか上下巻に分かれておらず文庫本で一冊。 分厚い本がすきなのですが、正直文庫本でこれは重くて仕方ない・・・ ちゃんと単行本では上下巻に分かれているのに何故なの?ハヤカワ書房さん。。 さて感想。 背表紙の内容紹介を読んだ限り予想していたのは 「わたしを離さないで」や「わたしたちが孤児だったころ」のような “どうすることもできない運命の受容”みたいな結末かと思いましたが全然違いました。 とにかく不条理な世界の連続。一つ先の扉をくぐればまた新しい不条理な世界。 そしてその扉は時間と空間を飛び越えることを可能にする。 読んでいくうちに靄のかかった不思議な世界に迷い込み、 主人公ライダーとともに、読者もどこからが本当にあったことで、どこまでが本当はなかったことなのか、 この町の迷路にまよいこみます。 とにかく全ての人間が言い訳ばかりで少しずつ、何かが欠けている=充たされざる者。 そしてそれは主人公であるライダーも同様である。 三谷幸喜曰く 「フィクションの中で、その場にいないにもかかわらず、一人称で自分が見ていないことの内容を話すことは作法に反する」と述べていたけど、この本の場合、それがさらに靄のかかった世界観を出すのに力を貸しているんだろうな・・・ しかしいかんせん長い・・・。 たぶんこの本からカズオイシグロに入ったら、他の作品読まないだろうな 苦笑
0投稿日: 2012.03.05
powered by ブクログこれは長引いた。 文庫で900ページ超と厚いし、内容はなんとも奇妙な展開が 延々とくりかえされ、ついていくのは困難。 作者自ら言っているが、これがかなり実験的な構造なのだ。 小説というもののあり方を考えさせられた。
0投稿日: 2011.12.05
powered by ブクログこれはなんというか、ライダーの悪夢を読まされている感じです。 読みやすい文体ではあるけれど、「ダロウェイ夫人」やマキューアンの「土曜日」を思い出させる実験的な小説。
0投稿日: 2011.11.25
powered by ブクログ正直、イシグロのファン以外は読まなくて良いかも。主人公のライダーが周りの人間に翻弄される、夢とも現実ともつかない不思議な小説。これは読者を選びます。イシグロファンの僕は好きですけど、オススメはしません。
0投稿日: 2011.11.17
powered by ブクログ語り手ライダーは世界的なピアニストとして、ある小さな街のコンサートに招かれた。 町の人々は彼の音楽が閉塞感ただようこの街に新たな風を呼び込んでくれると大きな期待を寄せているが、物事は予定通りに進まず、ライダーは混乱の中本番を迎えてしまい……というお話。 余白の多い独特な語り口で、はじめは困惑させられる作品ですが、物語中盤あたりからこのお話の方向性が掴めてきます。 そうするともう、読者はこの世界から離れられない。 私たち誰もが抱える充たされない苦悩を、装飾的な分析を一切せずにここまで真正面から描いた作品は初めてです。 カズオ・イシグロという作家を理解するのに最も重要な作品であると感じました。
1投稿日: 2011.07.30
powered by ブクログ世界的ピアニスト、ライダーはコンサートのためにヨーロッパのとある町にやってきた。 町の住人は、それぞれに問題をかかえ、その解決をライダーに求める。 ごついです。 1000P近くあります。ま、これを上下巻とかに分けなかったハヤカワ文庫は、グットジョブだと思いますよ。 ライダーは、ホテルのボーダーや支配人に始まって、とにかくありとあらゆる人から相談を持ちかけられたり、依頼をされたりするんだけど、どれも彼を尊敬しているといいながら、とにかく利己的なのだ。多分、本人も気づいていない欺瞞であったり、偽善なんだろう。 そして、そういうのを延々と読まされるわけだ。 ライダーじゃないけど、いい加減にしてくれといいたくなるのである。 このどうしもようない不条理な感じが、カフカっぽいといわれてるらしいが、カフカの主人公には確固たる自我があるのに対して、ライダーには自我がない。 その自我の変容は、まるでコンピューターグラフィックで人の顔が微妙に変っていく様子をみている感覚に近い。 確かに、他人は自分を映す鏡ではあるけど、本来そこにあるべきゆるぎなさが、ない。 ピアニストでコンサートのためにやってきたというのに、ライダーがピアノを弾くシーンはとても少ない。 そのことが、彼のゆらぎの要因なのだろう。 で、読み終わって「タイトル通りだな」と思った次第である。 充たされない者は、なにがどうあっても、何を手にしても、結局は充たされることはないのだ。その充たされてない所以は、結局自身のせいであると気づかない限り、悪循環は続く。 …そうか、そういう悪循環の話だったのかと、思う。
0投稿日: 2011.07.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ついに読み終わった。 文庫本で935ページ、厚さ3.5センチ。 その量はともかく、登場人物は緻密でありながら、時間感覚だけが 奇妙に歪んで話が進行、主人公がどんどん薄らいでいくような 不思議な感覚・・・。 「カフカ的」とよく評されている。たしかに出来事の不条理だけは たしかにそうかもしれないけれど、自分はほとんどカフカ的とは 感じなかった。現実の世界なんて、むしろ「これぐらい歪んでいる んじゃないか?」そうではないと思い込みたいだけで・・・ カズオイシグロの最高傑作は、今のところこれではないか? 2017.10.5追記 ノーベル文学賞!おめでとうございます!
0投稿日: 2011.06.12
powered by ブクログ誰もが生きている中で次第に溜まっていく鬱屈さを持っていて、多かれ少なかれ、それを解決するのに誰かに手伝ってもらいたいと思っている。でもその大部分は、明快な解決は難しいのだろう。 ストーリーの展開は遅く、内容がシュール。 最後の描写が鮮やかだった。
0投稿日: 2010.04.26
powered by ブクログ小説に「構造美」を求める人にとって、これほど緻密に整った作品はお目にかかれないだろう。 装丁で見られるように、読者は薄暗い一本道をひたすら歩かされる。カフカが迷宮であるなら、これは暗い街道だ。そもそも、カズオイシグロの作品には「語られざるもの」が主題であり、常に「語られる」ものから周りを見渡さなくてはいけない。一本道を歩きながら、ひたすら真っ暗な風景に向かって景色を投影しつつ歩いていくことになる。 作品の一番大きな仕掛けは、あとがきに書かれている。この仕掛けに気づけた読者にとって、900ページを超える道のりはさして遠いものではない。
1投稿日: 2009.03.22
powered by ブクログ読んでも読んでも終わらず、さながらカフカのようで、自分にとってちょっとした地獄のようになってきたのでもう止めた。
0投稿日: 2009.01.14
powered by ブクログ主人公ライダーの前にはドアへと続く、絶え間ないステップがある。彼はドアに辿り着こうとするが、段差が様々でなかなか進むことができない。幾分ドアに近づいていると想像するがそれは彼自身想像の中でのことだ。そもそも彼は自身の足元を確認せず(できず)、階段の形しか目にはいらない。 私は何を求めているのか。何を求めていたのか。いつまで求め続けるのか。まずどこに向かうべきかと省みることはない。もちろん正しい答えはないけれど・・・・。
0投稿日: 2008.09.14
powered by ブクログ何かを掴もうとして走っても飛んでもあと少しで手が届きそうなのに届かない。手が届く寸前で後ろから足を引っ張られ、新たな面倒事が立ち上がり、そちらに気を取られている間に追い求めてきたものが視界からフェードアウト、結局面倒事は収まらず、疲労困憊したところにまた面倒事・・・振り回されてくたくたになりながら、結局何一つ解決しない。歩いても歩いても辿りつかない恋人の部屋。急いでいるところに追いすがってお茶でも飲んで行けと熱心に誘う幼馴染。始まらない講演会。弾けないピアノ・・・これは間違いなく悪夢の舌触り。正統派英国リアリズムを追究した「日の名残り」でブッカー賞を受賞した後の作品がこれで、イギリスの書評家諸氏は大いに戸惑ったとか。評価もくっきり二分。個人的にはこれ好きでしたけど、賞貰ったりする類のもんではないですね確かに。
1投稿日: 2008.02.26
powered by ブクログ芸術、音楽が価値を支える街では記憶、人間関係、地理、感情、 まるで夢の中にいるかのように不確実で確か。 そして長い。900ページを超える紙の枚数ではなく、 慇懃無礼に自らの問題を一方的に語る人々の話が。 語らねば心通わず、語っても心通わず。 だから、他人の状況などお構いなく、とにかくよく喋る。 その度に救世主ライダー氏が ユラユラと夢から現実、現実と夢の間を彷徨うように。
0投稿日: 2007.10.07
