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陽だまりの樹(11)
陽だまりの樹(11)
手塚治虫/手塚プロダクション
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総合評価

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    このレビューはネタバレを含みます。

    「暁の急襲」   万次郎率いる歩兵隊が大村屋に奇襲をかける。   相手は刀、こちらは銃。勿論銃のほうが威力は上。   二階に上がる万次郎は楠と対峙する。   親の敵でもある楠と刀で戦うことに。   傷を受けながら楠の首を跳ねる万次郎は反動で裏庭に落ちる。   それは平助の目の前だった。   平助に頼んで良仙の元へ。   良仙の手術が済んで、平助に姿をくらませと万次郎は言う。   大村屋を完全に制圧した歩兵隊。   反対に悩む良仙。 「愛憎の館」   勝とのやり取りで万次郎は大手柄だった。   そして、万次郎の昇進と、銃、人数が増える。   唐竹割りに肩はザックリ、顔は額から右頬にかけて。   一生モノの傷だ。   そんな時、ワーグマンという男が取材に来た。   豊屋のお紺と一緒にいた男だ   家に帰ると母が待っていて、傷跡を見て仏壇の父に泣きながら報告。   外に出ていると綾がやって来る。兄の敵だと言って小刀で襲ってきた。   払う形で綾を突き飛ばした先に石垣。頭を強打。   脳震盪を起こしていた。   一時は回復したが急変。高熱、痙攣、失語症。   どうも様子がおかしいので、脳に挫傷を受けたのではと医師は言う。   調べた結果評定所が罪人に自白させるための結果、彼女は棍棒で頭を強打されていた。   母は・・・綾に何も食べさせぬと言う。 「長州行」   元治元年八月。西郷吉之助が参謀。長州征伐に出発。   噂はあっという間だ。   大隊の中での口喧嘩は万次郎の引き取った綾の事。   叱りつけて再出発。   大阪にて万次郎の下で兵隊やってるのが不満の奴らもいる。   そんな時、西郷と酒を酌み交わす万次郎。   西郷は万次郎に薩摩に来いという。欲しいと。   断る万次郎。その時銃声がした。   酔っ払った兵隊が発砲したのは坂本竜馬。   竜馬の妙案で兵隊三人を叩きのめす万次郎。   飲み代を持つという事で新町へ。   そこで竜馬の ニッポン国という国を作る という話を聞く事になる。   天皇の下に元首をおき議政局を置く。有能な人物も加えて、法律大典も新たに作る。   実はこれ、勝海舟の骨子たるもの。   切り込みに行ったが、弟子になった竜馬。今は海軍操練所にて勉強中の身。   翌日、部下の不始末、坂本龍馬との隠密などにより江戸に戻って謹慎せよと言い渡される。  「鬼」   母は綾を餓死させようとしていた。   良仙がやって来て、医学所へ入院手続きを取る。   九月八日、大暴風雨に江戸は見舞われた。   洪水警報の鐘が鳴り逃げる人々の中に母が居た。   綾を助けるために一旦家に戻る。そして、一緒ににげる。   万次郎は馬で川を渡ろうとして、馬を手放してしまい、本人も波に飲まれる。   次の日、救出された万次郎。助けたのは清水港の長五郎。   ヤクザな家業をしているが、万次郎の恩人だ。   九月十一日。瓦版にて海軍操練所の閉鎖と勝が任を解かれた事を知る。   今の御時世正しく世を見る人が居ないと嘆く万次郎。   ある日。長次郎は果し合いに行くという。   肋骨を折った万次郎が回復して江戸に戻る。   鉄さんに話そうと思いながら家につく。   万次郎は幕府に巣食う者を斬ろうと思い立つ。   鉄は参加しないと言う。勝手に倒れるからと。   そんなある日、綾は蝋燭の火を目で追う事が出来るようになる。   「ええじゃないか」   長州征伐に勝った西郷。二年後に再度長州征伐に。   今回は長州軍も政府に負けていない。   良仙、やる気を無くし岡場所へ出かける。   慶応二年の打ち壊し、相変わらず良仙夫婦の喧嘩。   二人の男児をもうけながらもおつねは変わらない。   ええじゃないかを踊る人々にお足を投げる人の中にお紺が居た。      「大政奉還」   慶応三年十月、江戸幕府大政奉還。   西郷は益満に江戸をかき回してこいという。   慶喜の出方を見ているのだ。   十二月二十五日幕府は薩摩へ宣戦布告。   薩長軍と幕府は大阪と京の間でやり合う。鳥羽・伏見の戦いである。   万次郎はじっと堪えていた。   徹底して幕府は負け戦。鳥羽・伏見の戦いで、民衆はハッキリと幕府の世が終わったことを知った。   慶喜は誰一人信用せず、自分を助けてくれないことを知っていた。   慶喜、陣頭に明日立つと言いながら、その夜、僅かな側近を連れて大阪城を出る。   向かったのは江戸。   慶応四年二月三日、天皇は徳川を朝敵と決めつけた。   有栖川宮熾仁親王を東征大総監に参謀は西郷ほか二人。   江戸城に踏み止まれという小栗上野介はクビ。   二月十二日、ひっそりと慶喜と側近は落ち延びる。   万次郎も江戸の人も信じようとはしなかった。   万次郎は十二名の人を集め、勝を筆頭に慶喜を迎えるつもりだ。時は三月三日。   そんな話の最中に母が帰ってくる。   三々五々散らばっていく人々。   その日が来て、鉄さんに会う。   上野の輪王寺にいると聞く。江戸城を捨てたと。   西郷と勝を話し合わせたいと鉄さんは言う。   そこに万次郎がいるとスムーズだとも。   万次郎は出直しだと言って、その場を去る。 「官軍江戸入り」   山岡鉄太郎、西郷吉之助に会いに行く。   良仙と万次郎は飲みながら愚痴。世界の動きが早すぎると。   梅が咲き、鶯が鳴く。綾は聞こえているはず。   良仙が来て、瞬きで答えてくれという。   万次郎の嫁になるか?と。yesの瞬き。   夜、鉄さんが来て西郷の言伝。もう一度酒を酌み交わしたいと。   勝の手紙一本で、西郷は一人で来た。   話し合い、江戸開城は決まった。   江戸城引き渡しは四月十一日、めぼしき物は何もない状態だった。   久々の伝吉、影義隊を持ち出す。ビクリとする万次郎。   見張りは付けられている万次郎。   綾は全てを聞いている。   手は動かせないが、口で筆を咥えて文字を書く。   万次郎は上野へ行くと。 「万次郎婚礼」   おせきに会いに行き別れを告げる万次郎。   そして、綾と祝言を上げる。   その夜、永沢村の兵隊がお祝いに駆けつけるが、薩長が上野へ影義隊とやり合う羽目になる。   大村益次郎が影義隊殲滅のために命令を下す。   万次郎は上野へ行くつもりで綾に離縁状を出す。   声が出る綾、ずっと待っていると。   上野へ向かう万次郎を待っていたのは平助。   慶応四年五月十五日未明は雨が降っていた。 「上野輪王寺」   影義隊に加勢したいと万次郎は告げると門を開けてもらう。   結局は戦になり、銃での殺し合いになり小休止。   しかし、あまりの静けさを不審に思った矢先、アームストロング砲が黒門に届く。   福沢諭吉は慶應義塾を開いて塾生に教えている。   戦争を見物するなとも言う。   そして、西郷は万次郎の家へ。   線香を上げている所へ良仙乗り込む。   去る西郷を見届けて中庭に平助が現れる。   万次郎の言いつけどおり、 生きている と伝えに来た。   平助は侍をやめて、猟師に戻るという。   綾も無事なのを聞いて涙する。   親子揃って待っている…と。   「終章」   万次郎は帰らなかった。   榎本武揚と共に蝦夷地に向かっとも・・・   函館は五稜郭で戦いそれが最後だと…   時代は明治になる。   良仙はおつねに見送られて九州に旅立つ。   薩摩は明治政府に牙をむく。所謂西南の役。   良仙は軍医として付いていってる。   品川でお紺に会う。   今度は病院を作ろうと提案する。   良仙、九州で赤痢にかかり大阪の病院で亡くなる。   享年51歳。    西郷の誘いを断らなかったら。 勝の言い分を聞いていたら。万次郎の世界は変わったろう。 勝海舟はどこを見て、西郷は何を知って、竜馬は何を感じたのだろうか? ようやく東湖の言った白蟻の巣食った老木を悟る万次郎。 確かに世の動きが早すぎたのか。 堅物万次郎は、必要だった人間だった。 良仙、手塚治虫の曽祖父。 いや、マジ、読んでよかった。 そして、勉強になりました。

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    投稿日: 2021.10.10
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    図 あまりに実直過ぎて読む人によっては愚直ともとれる万次郎は手塚治虫的なキャラクターだったな。 自らの先祖である良庵はもまた手塚的であって、二人は神(作者)を二つに分裂させた存在だったのだと考えると勝手に納得出来る。 物悲しさと興奮が同時に味わえるラスト。

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    投稿日: 2012.11.08
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    <全11巻通してのレビュー> 面白く一気に読める。 無骨で真面目な下級藩士である万二郎と遊び人の蘭方医である良庵の二人が主人公。幕末という時代で、開国、徳川崩壊という変局に直面した武士と、漢方医が主流の中で西洋医学の有意性を説く医師、という性格も置かれた立場も異なる二人がこの時代ならではの、己の生き方に葛藤し成長して行くストーリー。 西郷隆盛や勝海舟の様な強運でドラマチックな展開もなく、盛り上がりに欠ける為、手塚治虫作品にしてはメジャーにならなかったのも理解できる。 しかし、実在の人物を題材にしているだけあって、都合良く思い通りに進まないのが返って良い。想い人とは添え遂げられす、望まぬ結婚をしたり、気の進まない軍医になったりと、ちっとも上手くいかず散々だ。だからこそ、とても現実的で、志を幾ら高く持っても英雄になれなかったこの時代の多くの志士達の人生が伺える。それだけに余計に奥深く心に残る。

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    投稿日: 2012.05.11
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    1981年から5年半に渡って連載された歴史長編。幕末好きの僕にとってはそれだけでも愛すべき作品なのですが、見事すぎる物語の巧みな構成と登場人物それぞれの魅力(義理に生きる伊武谷万次郎と人情に生きる手塚良庵の対比をはじめとして)を通して、最も好きな手塚治虫作品のひとつです。 終盤、おせきさんに最期の別れを告げに行ったあとの万次郎の無言の2ページがいかに雄弁に万次郎の心境を物語っているか。これからも、この作品を読み返すたびに手塚治虫の偉大さを思うことでしょう。

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    投稿日: 2008.04.28