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真実の10メートル手前
真実の10メートル手前
米澤穂信/東京創元社
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総合評価

150件)
3.9
32
67
29
4
2
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    主人公に対して視点を変えた短いセクションいくつかでストーリーが展開される。最終的に何か回収されるのかと思って読み進めたが、それぞれ独立してストーリーが完結してしまう感じで、読み終わった時は少し物足りなかった。ただ、個別の小作品は変な捻りはなく、純粋に読みやすかった。(他の作品とリンクしている?) 後半につれて、記者の仕事の本質が何回も言い換えられることで表現されるのには痺れた。

    0
    投稿日: 2025.09.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    シリーズ3作目! 今回は短編集で、主人公はそれぞれ変わりますが、各章必ず万智がパートナーとして登場します。 第三者から見た万智は、やっぱり表情が読みにくい。その万智の状態を言葉の微妙なニュアンスや書き方で上手く表現されていて、米澤先生〜!!ってなりました。いつも圧倒されています。 時系列的には『王とサーカス』の後かな?と思いますが、万智がまた一段階大人になっているような気がしました。子供の頃から大人びていたので、逆に大人になったら若く見られるようですが… この短編集で語られていたお話しは、おそらく万智の報道人生のごく一部で、ここに書かれていない辛くてきつい仕事もいくつもこなしてきたんだろうなと想像できます。 久しぶりに、センドーのあだ名が出てきたのもよかったですし、マーヤのお兄さんが出てきたのもワクワクしました! 「名を刻む死」と「ナイフを失われた思い出の中に」が特に印象に残っています。報道することによって、世論をその情報が正しいか間違っているか?に考えをシフトさせる、とかあんまりそんなこと考えてこなかった人生だったので、米澤さんはこのシリーズを書くのに、どれほどの取材をしたのだろう?と思いました。熱量がすごいです! あと、根拠となる文を自然に置いておくのがとても上手いですよね。いつも物語終盤になると、「あ!確かに書いてた!」て毎回驚かされます。

    25
    投稿日: 2025.09.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    太刀洗万智再び登場。さよなら妖精では風変わりな高校生ぐらいの立ち位置だったのが、本作では記者に。 さよなら妖精を懐かしむことができたのが嬉しい。 短編ミスステリの粋を集めたかのよう。 全作とも二人一組、太刀洗を評する人間が傍にいる。従って、必然的に太刀洗万智とはどのような人物かということが問われ、その度に人物像が浮かび上がる。 順序は逆かもしれないが「王とサーカス」も読みたい。

    1
    投稿日: 2025.08.26
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    米澤先生の本を初めて読みました。短編として話がよくまとまってるし腑に落ちる最後で良かった。ただやるせない話が多かった。

    0
    投稿日: 2025.08.23
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    米澤穂信の得意とする短編集形式のミステリーです。 太刀洗を中心としたミステリー集は、太刀洗視点のものもあれば、他者視点のものもあり、太刀洗がどんな人物かの理解を深めることができた。 またミステリーとしても短編ながら、伏線が巧みに貼られており読み応えがありました。

    0
    投稿日: 2025.07.31
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    『真実の10メートル手前』 『正義漢』 『恋累心中』 『名を刻む死』 『ナイフを失われた思い出の中に』 『綱渡りの成功例』 短編6作品。 米澤穂信の短編はやはり良い。 そして太刀洗万智というキャラクターが表情も感情も読めず、凛としていて追いたくなってしまう魅力がある。 真実とは人によって違うものであり、それが人を救うとは限らないのだな。 それを知っている太刀洗の記事が読んでみたいものだ 『名を刻む死』の最後の台詞で彼女のファンになってしまったのです。 太刀洗万智シリーズはまだ3冊だそうで、肝心の1作目である『さよなら妖精』も読まねば。

    2
    投稿日: 2025.07.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    タイトルに太刀洗万智シリーズと入っているように、本作の主人公は『さよなら妖精』『王とサーカス』に登場した太刀洗万智。シリーズとしては「ベルーフ」シリーズと名付けられているようで、今のところは本作を含めて3冊が刊行されている。 シリーズとしては、前作にあたる『王とサーカス』が長編であったのに対し、本作は著者の得意とする短編集という形になっている。さらに『さよなら妖精』のように全体として1つの流れがあるタイプの短編集ではなく、時系列もバラバラな作品が収められているということで、形としては『満願』に近い作品と言えるだろう。シリーズの過去2冊は社会的な問題と日常の謎を掛け合わせた中で物語が展開していくスタイルであったが、本作は記者という立場にある太刀洗万智が、報道することの意味を読者に問うスタイルに変わっている。内容としては、かなり重いものが多いが、ちょっとした出来事から物事の裏側にある真実を探り出していく著者の腕前はいつも通りの切れ味だ。 時系列もテーマもバラバラな短編集ということで、各作品の簡単な紹介をしておこう。 真実の一〇メートル手前:この中では、唯一新聞記者時代の太刀洗万智が登場する作品。新興ベンチャー企業の経営破綻を受けて行方不明になった社長とその妹を探す万智を描く。いつもの通り、ちょっとした会話からヒントを得て、なんとか行方不明になった妹を探そうとする万智だったが、彼女の努力も虚しく、事態は最悪の結末を迎えるのだった。 正義漢:夕方のラッシュを迎えた吉祥寺駅で、ホームから人が転落し、人身事故が発生してしまう。「私(語り手)」はその事故を取材する1人の女性を見て、激しい不快感に襲われる。彼女は事故という悲惨な場面に立ち会いながらも、なぜか口元には笑みを浮かべ、携帯電話で写真を撮っていたのだった。思わず近づこうとした私に振り返った彼女は、自分は記者の大刀洗万智と名乗るのだった。 彼女のことを「センドー」と呼ぶ古い友人が登場することから、『さよなら妖精』との続きが意識される作品。なんとなく文体からはその友人は『さよなら妖精』の主人公である守屋のように思われるのだが、明確な描写は残念ながら無い。 恋累心中:三重県で発生した高校生カップルによる心中事件は、地名が恋累という地名だったこともあり、マスコミの注目を浴びることになる。語り手の記者・都留(つる)は、週刊深層の出入りの記者である大刀洗と一緒に現場での取材を行うことになる。通常は難しい教師への取材を簡単に設定してしまったことから、都留は大刀洗がただ者ではないと考えるようになるのだが、大刀洗は実は別の事件を追ってこの現場にいたのだった。 ミステリーとしては、短編集の中で最も切れ味が良いと思われるのが本作。心中事件のはずなのに、一方の遺体が発見されなかったという事実から、伏線と絡めて鮮やかに真相が明らかにされる。 名を刻む死:中学3年生の少年は、学校に行く途中に近所に住む62歳男性・田上が中で死んでいるのを発見する。発見された田上は死後3日ほど経過しており、衰弱死が死因と見られていた。死体を発見した少年は、ここ数日で田上を気にしていたということと、異臭を感じたからだというのを発見した理由として答えた。また、発見された田上は、近所の人間からはちょっとしたことで難癖をつける人間として認識されていた。 その喧騒が去った頃、警察やマスコミとの話もひと段落したと考えていた少年の前に大刀洗が現れ、取材を申し込む。彼女が気にしていたのは、田上の日記に残されていた「願わくは、名を刻む死を遂げたい」という一文だった。 ほとんど救いのない本作に収められた短編集の中で、数少ない前向きな読後感を感じさせる作品。大刀洗が真実を追い求める理由の一端を垣間見ることができる。 ナイフを失われた思い出の中に:妹がかつて日本にいたヨヴァノビッチは、来日の合間の時間で、妹の友人であった大刀洗と会うために地方都市を訪れていた。出会った大刀洗は自分の仕事が記者であることを告げると、ヨヴァノビッチは取材に同行すると申し出る。今回の取材は、16歳の少年が3歳の姪を死傷した事件であり、すでに警察の発表では事件は解決したと思われていた。 この単純な事件を取材することを不思議に思ったヨヴァノビッチは、自らの経験から、記者に対する不信感を語る。その話に対して大刀洗は明確な答えは返さず、取材を続けることで、自らの信念をヨヴァノビッチに伝えようとするのだった。 記述では明確には語られないが、『さよなら妖精』で登場したマーヤの兄であると思われるヨヴァノビッチが登場する本編は、前作からのファンにとっては嬉しい一編となる。大刀洗が記者という仕事を選んだ理由の1つが、マーヤとの出会いであったことが改めて確認できる作品だ。 綱渡りの成功例:長野県を襲った瑞穂の豪雨により、大沢地区では民家3件を巻き込む大規模な土砂崩れが発生する。無傷の家に残った戸波夫妻は三日間なんとか耐え抜き、消防団員が救助に成功する。夫妻は、ほとんど食べるものも飲み物もない状態で、家の中にあったコーンフレークを口にして飢えをしのいだとのことだった。 消防団員の語り手は、そのニュースの取材のために村を訪れた大刀洗と出会い、一緒に夫妻の取材に向かうことになる。そして夫妻と向かい合った大刀洗は「コーンフレークには何をかけたのか?」と問いかけるのだった。 日常の謎解きを得意とする著者の真骨頂のような作品。陰惨なストーリーが多い本作の中では、殺人が絡んでこないこともあり、比較的心穏やかに読むことができるだろう。 全体を通して読むと、『王とサーカス』でも取り上げられていた、記者は何のために世界を取材し報道するのかといったことが、より深く掘り下げられている作品になっている。前作から時間が経ったであろう彼女は、単にセンセーショナルな内容を伝えることだけに執念をかける記者とは異なり、常に自分が報道することの意味を問いかけながら仕事をしているようだ。彼女の覚悟が垣間見える作品であるだけに、今後も何かしらの思い、テーマを取り上げて、このシリーズは続いていくのかもしれない。

    0
    投稿日: 2025.05.06
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    ▶単行本版の方が図書館にあり。 ●2025年4月25日、グラビティの読書の星で紹介してる男性がいた。表紙の階段にすごく惹かれたのでチェックした。どこだろう?なんか健康だった頃のことを思い出す。 「#読了 「さよなら妖精」で高校生だった太刀洗万智が15年後、フリージャーナリストとして様々な事件の謎を解き明かしていく作品です。太刀洗万智の立居振舞がクールで格好良いです。 米澤さんの他の作品同様、アニメ化やシリーズ化して欲しい作品です。」

    0
    投稿日: 2025.04.25
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    米澤穂信さん著「真実の10メートル手前」 前回読んだ名作中の名作「王とサーカス」に続き大刀洗シリーズの第二弾。 今回の作品は6篇からなる短編集となっている。 ジャーナリストである大刀洗万智が全ての篇に絡む短編集。全ての篇において別々の主人公が存在しており、そこに大刀洗が絡んでくるという設定。どれも物語は面白かった。 ただ前作「王とサーカス」が自分の中で名作すぎた為、今回の作品にはそれと同様それ以上のものを期待してしまった。 そういう意味では前作のような唸らされる感覚はなかった。 タイトルからも想起させられるように今作品も「真実」というテーマがあるにはあるが、その「真実」の正体や言葉の意味やその目的や成り立ちについて考えさせられるような事はなかった。逆をいえばそういう続編を読みたかったし望んでいた。 前作が凄すぎたからこその感想になってしまった。 「王とサーカス」越え、次作に期待したい。

    112
    投稿日: 2025.03.26
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    『さよなら妖精』『王とサーカス』に続く太刀洗万智シリーズ短編集。(『さよなら妖精』がシリーズ1作目と知らずに飛ばして読んでた) やっぱ米澤穂信は短編集が上手い。短い尺の中で論理的な推理と驚く真相がちゃんと用意されている。 探偵とジャーナリストっていう食い合わせが良さそうで意外と難しいこの設定。ジャーナリストという職業は色んな場所・事件に絡むことができる必然性をもたらすけど、ただの探偵役と違って真実を暴いた先には「記事にする・しない」という選択がまとわりつく。探偵役として真実を暴くだけなら善でいられるけど、事件を記事にすることは悪になり得てしまう。真実を暴いて終わりの話にいくらでもできるところを毎回ジャーナリストの功罪に逃げずに向き合ってるのが偉い。 『王とサーカス』もそんな話だったような気がするけどあまり覚えてない……。

    1
    投稿日: 2025.02.23
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    太刀洗万智は私の好きなキャラの一人。今回も更に惚れ込んだ。 短編集で、いずれもハッピーエンドではないが、其々何かを考えさせられる。太刀洗の冷静に相手を慮っているスタンスが心地良い。

    8
    投稿日: 2025.02.05
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    米澤穂信はこのシリーズが1番好きかも。 太刀洗さん今回もキレッキレだった。 各短編、タイトルの付け方がうますぎて唸る。 「真実の10メートル手前」なんて、オチと一緒にタイトルの意味を理解して、天才か?となるレベル。

    7
    投稿日: 2025.01.29
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    普通に面白かったです。 短編集だからというのも大きいと思いますが、テンポよく楽しんで読めました。 「王とサーカス」は「さよなら妖精」を読んでから読むと面白さが増すと思いますが、この作品も一部の話は「さよなら妖精」を読んでから読んだ方がより楽しんで読めそうです。 「王とサーカス」やこの短編集のように大刀洗万智が主人公の話は〈ベルーフ〉シリーズと呼ばれているそうですね。 〈ベルーフ〉シリーズの続編が楽しみです。

    2
    投稿日: 2024.12.12
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     本書の単行本版は既に読み終えていて、文庫版だけの新作が入っているわけでもなく、米澤穂信さんのあとがきも単行本版のままということで、それでは何故再読したのかというと『さよなら妖精』を読み終えたからであり、つくづく私は「太刀洗万智」という、架空のキャラクターに魅せられてしまったのだなということを思い知るが、これはどうしても今年中に私がやりたかったことである。  そして、当たり前なことかもしれないが、『さよなら妖精』を読んだ後に読んだ方が、太刀洗の人間性がより鮮明に映し出されるのがありありと分かることで、あの出来事の後、太刀洗はどんな心境で生きてきて現在に至っているのかということを推測しながらも、今の彼女がこのような立ち位置でいてくれることに対して安堵や喜びを覚えたのが、私にとっては何よりの励みとなり、それは私が小説を読む一番の理由でもある、『辛い現実を生きる力が湧いてくる』ことにも繋がっていることから、太刀洗の物語を新たに紡いでくれた米澤さんには感謝の言葉しかない。  改めて本書の内容を簡単に書くと、フリーの記者である太刀洗が様々な事件に遭遇しては、その特性を活かした独自の視点で事件の新たな素顔を掘り返していく、リアル志向の社会派ミステリで、そこにはミステリ自体の謎解きの楽しさをしっかりと入れながらも、記者が他人の人生を都合の良いようにアレンジしたり、他人の不幸を面白可笑しく書いている人ばかりでは無いということを実感させてくれて、まさにそれこそが太刀洗が太刀洗たる所以なのだと思う。  それから、文庫版ならではの良さとして、宇田川拓也さんの解説は本書の素晴らしさを的確に分かりやすく、愛情込めて書いていらっしゃるので、そこは単行本版を読んだ方にも是非おすすめしたい。  それでは本書に収録された6つの短編から、太刀洗万智という、その人物像に改めて迫りたいと思う。 「真実の10メートル手前」  本書では唯一の太刀洗視点でありながら、時間軸としては『さよなら妖精』から最も近く、記者を続ける上での覚悟を突きつけられた『王とサーカス』の前の、どこか初々しさを伴った新聞記者をしていた頃の太刀洗には、まだ迷いも感じられた分、却って高校生の頃の冷たい印象が彼女の全てでは無かったことを、より証明しているようにも思われた根拠を、太刀洗と新人カメラマン「藤沢」との会話を掲載する形で示したいと思う。 「太刀洗さんが素直に人を褒めるなんて珍しいですね」 「そんなことはないと思うけど」 「ああ。説明してくれる気があったんですか」 「そう言ったと思ったけど」 「でも、太刀洗さんは説明抜きにどんどん仕事を飛躍させる人ですから、今回もそれかと思いましたよ」 「そんなこと言われてるの」 「いやまあ、悪い噂じゃないから、いいじゃないですか」 「必要最小限の情報共有は怠っていないはずなのに」 「最小限って自覚はあったんだ。最大限に共有しましょうよ」  また、彼女主観の文章であることから、藤沢には直接言わずとも、その時の彼女の心の中の思いを読み手は知ることができ、それによって、実はとても繊細な気遣いの人であることに気付く。 『口元が緩むのを自覚した。新人相手だと思って、余計な気をまわしてしまったようだ』 『恥じ入らせるほど、冷たい目を向けたつもりはなかったのに。むしろ、それほど多忙だった日の翌日に出張してもらっていることが、申し訳なかった』  そして、この表題作と『王とサーカス』から先の時間軸では(本書の残りの5編)、太刀洗視点は無くなるものの、それが私には、もう彼女主観でなくても彼女のことは信用できるだろうということを、米澤さん自身が伝えたかったのではないかと解釈している。  ・・・が、正確には表題作が、「綱渡りの成功例」以外の短編よりも後に発表されていることから、記者として堂々と自分の道を歩んでいる(ように見える)彼女には、こういう時期もあったのだということを書きたかったのだと思う。 「正義漢」  初読の時は太刀洗を怖い人だと感じたものの、改めて読むと、その写真を見る様子からは客観的に記者としての自分を見つめ直しているだけで、そこには自らも一人の欲を持った人間なのかもしれず、完璧な記者だとは決して思わないことから、彼女の仕事に対する生真面目さが窺えながら、この作品が2007年当時「ユリイカ」で企画された、米澤さんの特集の為に急遽書かれたことを知ることで、おそらく当時リアルタイムで読まれた方は、こんな形で『さよなら妖精』のその後に巡り会えるなんてと、きっと喜んだことであろう、ある意味サプライズプレゼント的側面を持った作品。 「恋累心中」  ここでは、週刊深層の記者「都留」の視点で見た太刀洗の個性が描かれており、そこでの『癖はあるが切れる』『一言足りない相棒』という言葉が的を射ていながらも、私にはコーディネーターとしてのお膳立てに見られた、彼女の都留への配慮の行き届いた様に、まるでこれだけのことをしないと満足のいく記事は得られないといった、その涼しげな気合いめいたものを感じられたことが、まさに『王とサーカス』で得た教訓を見事に活かしているように思われて、そこが最も印象深かった。 「名を刻む死」  今度は中学3年生「檜原京介」の視点による太刀洗で、その彼の印象である『記者の目は切れ長で鋭い。引き締まった表情は冷たくさえある』というのは、まさに過去の私が抱いていた彼女への印象そのものであったが、その一方で『丁寧ながらも凜とした声だった』といった印象も抱いた彼が終盤に受けた、彼女の熱い檄には、何故一介の記者に過ぎない彼女がそこまでして彼に伝えようとしているのか、その真意はきっと彼が大人になったら痛感するのだろうと思わずにはいられなくて、それは世の中、綺麗事だけでは生きていけないということを、太刀洗が身を以て学んだことの証明でもあった。 「ナイフを失われた思い出の中に」  私にとって一番のハイライトとなった、この作品は宇田川さんの解説にもあるように、その完成度が他の5編よりも頭一つ抜きん出た印象であり、それは『さよなら妖精』に対する米澤さんの思いの強さとも感じられた、ミステリとしても尋常でない完成度を誇る中、ここではアイザック・アシモフの『黒後家蜘蛛の会』の有名な言葉を引用することで、改めて太刀洗に記者としての覚悟を問いただしていることが、まさに『さよなら妖精』以後の太刀洗の思いへと繋がっており、そこには『真実はいずれ自然と明らかになる』ことは、あまりにもロマンティックだと述べることから、決して理想的な夢だけを追いかけたいのではなく至極現実的な視点で挑みたい思いが垣間見え、それが『わたしたちは、人々が見たいと思っているものを見せるために存在する』という太刀洗の言葉に強く表れていた。  ただ、その後に続く『そのために事実を調整し、注意深く加工する』を知ると、まるでショータイムのようではないかと思われた方もいらっしゃるかもしれないが、ここでは、事実そのものの中にこそ、様々に複雑で矛盾だらけの人間らしさが詰まっていることを伝えたかったのであって、事実そのものを鵜呑みにすることは、時にその人本来の人間性を捻じ曲げてしまう危険性があることを、太刀洗はよく理解しているということなのだと思う。  そして、ここでの彼の視点には、ある意味彼女の視点も同居しているような構成であることが、何よりも『さよなら妖精』と密接に繋がった感動を引き起こし、それは彼女が太刀洗の事をどう思っていたのかを知ることで目頭が熱くなった私がいたことで、太刀洗のしていることは単なるショータイムなんかではない、事実の中に泣く泣く込めざるを得なかった人の心を察して、寄り添い、思い遣ることだったのだということを知り、それは太刀洗の『何か言いかけては、言葉を呑み込んでいる』といった、質問に対する答えは返らなかったけれども、それだけ真剣に考えていることだからこそ一生の仕事にしているのだろうと推測できたことが、まさに彼女自身の人間性であり、生き様であり、そして覚悟なのであろう。 「綱渡りの成功例」  ここでは太刀洗の大学時代の後輩である、消防団員の「大庭」の視点で語られており、やはり他の短編でも見られたように、他の人とは違う部分を見ていた太刀洗の優しさや気遣いが印象的で、それは『答える側にしこりが残る質問はしたくない』にも表れていたが、私がより印象に残ったのはその後に続く言葉『できるだけは』であり、彼女の凄いところは、「必ずそうします」と安易に断定するのではなく、人間なので時にはそうできないこともあるということを、非難されるのを覚悟で堂々と告げることにあり、他にも『運がいい』や『わからない』という言葉も平気で使う事には、本来言葉が命の記者にとって致命傷ともなりかねないのだが、それでも太刀洗がそこに拘るのは、彼女が記者以前に一人の不完全な人間であることを強く自覚しているからであって、そこにこそ言葉上手な軽い輩よりも本気で他人の事を気遣う、彼女の人間性が如実に表れているのだと私は思い、そこには彼女自身が大きく変わった部分だけではなく、『さよなら妖精』の頃から変わらない部分も共に存在することによって、この先、どれだけ辛く悲しい思いを彼女が味わおうとも、きっと表向きは普段とあまり変わらない凛々しい表情をしながら、その内面では不器用で優しい気遣いの人で在り続けるのだろうと感じることで、それが私にはこれからも辛い人生を生きることへの大きな励みに取って代わる力となる、それこそが、まさに架空のキャラクターがもたらしてくれた、小説の持つ力でもあるのだろう。 「太刀洗さんは、変わらないですね」 すると彼女は、これは記憶にない柔らかな声で言った。 「困ったことにね」

    56
    投稿日: 2024.12.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    続編とは知らず途中から読んでしまった、、。はやく最初の「さよなら妖精」も買わねば。米澤穂信さんの話は学生の男の子が主人公となって謎を解くものというイメージがあったので、今回はとても新鮮に感じた。シリーズ物の比較としては古典部シリーズや小市民シリーズよりかはとても大人に近く複雑な心境も織り交ぜられていると感じた。恋累事件がとても好きです。

    3
    投稿日: 2024.11.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    米澤さんの作品が読みたくて、手に取った。 ジャーナリスト太刀洗万智が名探偵役として出てくる六つの短編集。 太刀洗がとにかくつかみどころのないキャラクターで、温かいなぁと思いきや急に厭世的な一面を覗かせたりと、一読者として翻弄されました。 とても魅力的なキャラクターです。 六つの短編、バッドエンドなわけではありませんが、それぞれ残酷な現実を孕む話でありました。 「真実の10メートル手前」「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」は、カタルシスをすごく感じました。 「正義漢」はちょっとしてどんでん返しが待ち受ける。 「名を刻む死」は、感じたことのないタイプの苦い読後感が残りました。 「恋累心中」は、黄燐自殺に隠された恐ろしい事実にゾワっとしました。 六作品の中で、報道というものの存在意義を考えさせられました。 王とサーカスや、さよなら妖精にも太刀洗が出てくるようなので、楽しみです。

    11
    投稿日: 2024.09.25
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    記者が事件を記事にしようと現場に赴き、事件の真相を明らかにしていく短編小説集。 個人的に記者というと、あることないことを記事にして人の人生を狂わせていき、いい印象がない。 だが、この小説に出てくる主人公は当事者を尊重していることが感じられるし、真相をみるみる暴いていくのには爽快感があった。 王とサーカスを先に読んでいたが、是非そちらもオススメしたい。

    1
    投稿日: 2024.09.14
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    フリージャーナリスト大刀洗万智を主人公とした短編集。客観性を意識しながらも何処か結論めいたものを内に秘め、怜悧で諦観した行動の大刀洗。彼女の姿勢は「報じるとは何か?」を常に問い、事件の結末にある残酷で利己的な動機と相俟って、骨太な内容となっている。本作品のなかでは「王とサーカス」にも通ずる「ナイフを失われた思い出の中に」が特に秀作。「目」の例えは報道する側と受ける側の姿勢について考えさせられるものがある。ほか人間の純真さと鬼気を内包する「真実の一〇メートル手前」「恋累心中」が興味深い。

    2
    投稿日: 2024.08.29
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    フリージャーナリストの太刀洗万智が、様々な事件を追う。 ただ、太刀洗の事件に対する見方は他の記者と違うというか、一見わかりにくいがそこには深い考えがある。 気になれば、その真実を追い続けて、それを伝えていく。 事件が記事になったそのままが、真実とは限らない。 その中に疑問や不可解なものがあれば、それはどんどんと憶測を呼び悪い方向へ膨らんで行くこともある。 そんな細部に太刀洗は挑んいる。 そういう存在は必要だと思う。 2024.7.21

    4
    投稿日: 2024.07.21
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    大刀洗さんが主人公だから出せるドライさ そこに救いや魅力が詰まった本書 短編だけどみんなオオッて声出てしまうような話が多くて読み応えありました

    0
    投稿日: 2024.07.10
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    東海オンエア虫眼鏡さん推しの米澤先生の作品を読んでみたいと思って、読みやすそうな短編集をチョイスした。作品独特の冷たい空気感なのか、微妙な後味なのか、わからないけれど、今の私にはあまり響かなかったのが正直なところ。

    0
    投稿日: 2024.07.06
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    様々な事件などに対して取材し、人々の話を聞くフリージャーナリスト太刀洗万智の短編集。 謎を解く探偵とは違う記者という立場。重く苦い事実を単に暴くのではなく、露悪的に示すのでもない物語。それは太刀洗の記者としての志に則したものだからだろう。

    0
    投稿日: 2024.06.27
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    もやもやと嫌な余韻を残す短編集。暴かれたくない胸の内まで切り込む大刀洗記者、想像以上の真実、そして後味がさすがでした。「王とサーカス」に続いての読了。

    5
    投稿日: 2024.05.04
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    著者の短編集は、本当に読者を裏切らないな~との思いを強くさせられた1冊でした。 最初の表題作でグイっと心を鷲掴みにされ、そのままラスト一篇までノンストップでした。 六篇とも、どれも素晴らしいミステリーでしたが、私的には「正義漢」が一番インパクトがありました。駅構内である出来事が発生するのですが、冒頭からの描写は圧巻でした。凄すぎます。 また、六篇を通して、それぞれのタイトルが秀逸だと感じました。まさに絶妙なタイトルです。

    0
    投稿日: 2024.01.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『王とサーカス』に続いての読了。読みやすい短編だったが、それでいて心にざらりとしたものが残るような、印象的な話ばかりだった。 太刀洗はなんて不器用な人間なんだと思った。 「ナイフを失われた思い出の中に」が本当に太刀洗の人柄をよく表しているような気がする。 『さよなら妖精』のマーヤの兄がわざわざ自分を訪ねてきたのに、仕事を続け、その意味を断片的に行動でしか伝えようとしない。 頭の良い人でなかったら誤解して関係を断ち切ってもおかしくない。 米澤穂信先生の著書は学園ミステリばかり読んできたので、人の死を題材にした作品は、登場人物たちの苦悩に加えて、その人が死んだ経緯や動機、状況が酷で、少し後味の悪さも感じる。 だけど納得いかないものは一つもなく、それが米澤先生が書く太刀洗の魅力でもあると思った。

    0
    投稿日: 2024.01.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    これの前作があるとは知らずに読み始めたが、特に問題はなかった。 どの短編も面白かったが、特に心に残ったのが 『名を刻む死』 最後の太刀洗氏の主人公へ向けた言葉が印象的だった。 「田上良造は悪い人だから、ろくな死に方をしなかったのよ」 田上さんへの要らぬ罪悪感を持っている主人公へ向けた言葉。本当にその通りだがある意味、名を刻めた死だった。その意味に気付いた時鳥肌がたった。

    0
    投稿日: 2023.12.24
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     『王とサーカス』の主人公、太刀洗万智(たちあらいまち)のシリーズで、6編の短編集。太刀洗が新聞記者だった頃やフリーライターになってからの話です。  記者がみんな太刀洗さんみたいだと良いのになと思ったり、丁寧に取材する太刀洗だって全てを把握出来てるわけではないのだから、読者として鵜呑みにせず自分で考える事が大事だなと思ったり。  高2の時の世界史の先生が大手新聞社の記者だった方でした。先生が私達に教えてくれたのは、「なるべくたくさんの情報に目を通す事。いろいろな立場、視点から書かれた情報に目を通し、自分の頭で判断する事。」 まだ27歳の先生だったけど、大切な事を教えてくれました。  極楽とんぼ加藤浩次さんの『正義の反対は悪ではなくて、相手の正義』って言葉も思い出しました。

    2
    投稿日: 2023.11.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    記者の話。1番初めの新聞社に勤めていた時の話は面白かったが、その後どうしてフリーになったのか知りたかった。 残りの話はあまり人間味がなかった。

    0
    投稿日: 2023.08.20
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    太刀洗万智の魅力にハマって手に取りました。 短編なのでさらりと読めますが内容が充実してました。 先に読んだ王とサーカスでも思ったけど、 記者が出来事を伝える、とはどういうことなのか?正直にありのままを伝えることがすべてではないのかぁ…と。 私にとっては学びの多いシリーズです。

    1
    投稿日: 2023.08.20
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    読みやすくて持ち歩いてて気が楽な短編集。 短編と知らずに読み始めたので1話目の終わりが唐突に来て驚いてしまった。 もう少し大刀洗さんの魅力を引き出せそうな歯がゆさがある。

    0
    投稿日: 2023.07.30
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    太刀洗さんの短編6つ。 いつも通り、読みやすい文章、繊細な仕掛け、人物の心情の変化が面白くて低カロリーで美味しい感じ。 短編の中だと名を刻む死が印象に残った。老人と中学生の意外な関わりと負い目に驚いたからかも。 王とサーカスとセットで読んだ方がいいと思う。

    2
    投稿日: 2023.06.22
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    この本の前に読んだのが「#真相をお話しします」で、短編集でどんでん返しの要素があるという共通した2つの本でしたが、テイストはかなり違っていて、こちらの本の淡々として語り口と重厚のテーマが自分の好みにとても合って楽しめました。

    0
    投稿日: 2023.06.09
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    さよなら妖精と王とサーカスを読んでたのに、タイミング合わず随分遅れての読了。 全二作と違って短編なので割とサクッとした印象。 作者が太刀洗の事を気に入ってるんだなぁと強く感じる作品でもあり、それもあり彼女の色々な側面が垣間見れた。 王とサーカスの前に読めばよかったな。 ファンからすると守屋の再登場が嬉しかったけど、もう少し絡んでもよかったのにとも思ったな。 続編に期待したい。

    6
    投稿日: 2023.06.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    感想 登録前 米澤穂信ってことは後味悪いのかな(偏見) 文章がすごい読みやすくて好きだし作家買いしてら。 推理の過程もわかりやすくて読者に優しい。 ただこれは本当に自分のミスなんだけどこれシリーズ物の3作目だった。 名前とジャケ買いだったからあらすじ読んでなかった。 でも前作の知識なしで充分楽しめた。 強いて言えば個人的に1話目がそりゃそうだよね、って展開に終始しちゃってた気がするのが残念? 兄が見つかってないのが伏線なのかと思ったけどそういうわけでもなく。 全体を通して大団円ともバッドエンドとも言えない終わり方なのが絶妙に後味が悪くて好き。 この微妙なバランスはまさに真実の10メートル手前って感じ。 あくまで刑事でも探偵でもなく記者の領分を超えないスタンスも好き。

    0
    投稿日: 2023.05.16
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    大刀洗を通して、ジャーナリズムとは何かとは問いかける。「真実」をただ伝えればいいのか。 大刀洗を中心に据えつつ、第三者の視点で語られる物語は大刀洗の輪郭、人物像を明確に描き出すように感じる。

    1
    投稿日: 2023.04.03
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    正確に書くと星3.9。 同じ登場人物の短編集。どの話もミステリーとして面白い。クオリティ高くて、さすが米澤さんと思う。 時系列はバラバラなのだが、それゆえに大刀洗さんの成長が感じられていい。

    1
    投稿日: 2023.03.04
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    「さよなら妖精」ですっかり大刀洗万智に魅せられてしまっていたので、この作品を見つけたときはとても嬉しかったです。 その魅力は今作でも相変わらずで、学生の頃から変わらない部分もあり、また大人になり社会に出たことでの変化もまた彼女らしいなと思いとても楽しめました。 そして「さよなら妖精」ファンには嬉しい短編もいくつか登場しまた読者を楽しませてくれる演出も盛り込まれていました。

    1
    投稿日: 2023.02.11
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    記者・太刀洗万智をメインとした短編小説集。 二度目の読了。 鋭い視点で物事を観察し、事件を解決するところにスカッとする。 いつ読んだかわからないけど、内容は完全に忘れてた。

    1
    投稿日: 2022.12.31
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    "[..]悪い人だから、ろくな死に方をしなかったのよ" と書かれているものを読むと、なかなかに厳しいセリフだなと思うものの、裏腹な終わり方でした。面白かった。

    0
    投稿日: 2022.11.23
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    短編になると、人間の負の感情を暴き出すような話が多いですね。しかも特別悪人ではなく、どんな人の心の中にも潜んでいるような感情です。楽しい気持ちにはなれませんが印象深く心に残ります。

    0
    投稿日: 2022.09.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    太刀洗が事件に隠された真実を冷静に追い求めていく。今回の短編では前作と関連する登場人物が出てくる。正義漢で出てきたのは守屋なのかな?

    2
    投稿日: 2022.09.04
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    6つの短編集。謎解き的要素から見ると「ナイフを失われた思い出の中に」が面白かったが、どの作品も太刀洗万智の生き様を見事に描き出したハードボイルドと言えるかな?

    2
    投稿日: 2022.09.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    表題作の題名の付け方がなんともうまい。 切れ味鋭い太刀洗万智が主人公の短編集。 どうやら高校生時代を描いた作品もあるみたいなので読んでみたい。少々クール過ぎて取っ付きにくいキャラだが、時折見せる暖かさや気遣いにハッとさせられる。 表題作も良かったが、結末が切なすぎ。「正義漢」の方が良かった。

    13
    投稿日: 2022.07.09
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    表題作「真実の10メートル手前」は内容そのものよりもタイトルのセンス(や後半でわかるその由来)があ、良いな、とハッとした。内容としてはキャラ立ちがしてるな、くらいしか印象が無い… ★3.5くらい。

    1
    投稿日: 2022.05.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    太刀洗万智シリーズの短編集。 報道が巡る6つの物語が展開されるが、人間の持つ闇や嫌なところが存分に出てくる所がとても面白かったです。 その中でも一番面白かったのは「名を刻む死」で嫌われ者の被害者のことを見捨ててしまった少年を太刀洗万智が一喝する場面である。普通であれば、人の尊厳を否定する言葉が京介自身の罪悪感を少しでも軽くするものになる所がストーリーとしてとても上手いと思いました。 また表題作である「真実の10メートル手前」も、最後の結末が追っている人物が亡くなっているため、自分たちの追っていることがその手前で分からなくなってしまうという意味でタイトルを再び読んでゾッとしました。 他にも面白い話が入っていますので読んでみてください。 この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。 太刀洗万智:茅野愛衣 藤沢吉成:前野智昭 早坂真理:金元寿子 早坂弓美:Lynn フェルナンド・バシリオ:山下大輝 都留正毅:斉藤壮馬 下滝誠人:チョー 春橋真:梅原裕一郎 檜原京介:榎木淳弥 田上宇助:安元洋貴 ヨヴァノヴィチ:三宅健太 大庭:鈴村健一 戸波夫:山路和弘 戸波妻:井上喜久子

    24
    投稿日: 2022.05.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

     連作短編集。ただ各作品の掲載誌・発表時期はバラバラなので特に話は繋がっていない。主人公は太刀洗万智。新聞記者だった時期と、退社してフリージャーナリストになっている作品がある。 あらすじ 「真実の10メートル手前」・・・ 新興企業の若い経営者兄妹が失踪した。配当詐欺を行っていた疑いがある。会社に関わっていなかった妹への留守番電話で居場所を特定した太刀洗。頭の切れてる様子や、ギリギリになるまで真相を言わないところが探偵っぽい。結局兄の方は居場所が分からず、妹は車の中で自殺していた。 「正義感」…駅での転落事故。誰かの一人称で始まっている。女記者太刀洗が居合わせ、記者根性むきだしで取材する様子が描写されている。しかし、その大げさな様子は罠。この一人称の人物こそが、人を突き落とした犯人だった。 「恋累心中」…地方の高校生二人が心中を図った。週刊誌記者の私はフリーの記者を地元コーディネーターとして紹介される。それが太刀洗。彼女はもともと別件でこの地方に取材に来ていた。取材対象は地元市議会への爆破事件。 太刀洗は手際よくセッティングし、担任やクラブの顧問などから話を聞く。そのうち、心中した二人が服毒自殺も図っていたことが分かる。服毒自殺を図っていたが即死できなかったため、ナイフや転落で命を落としたのだ。使われた毒はあまり知られていない黄燐いう薬、それが高校の理科室から使われたということから、太刀洗は 担任教師を疑った。彼は爆破事件のために使用し、薬の調査管理調査をごまかすために、高校生に自殺をそそのかしたのだった。 「名を刻む詩」・・・無職の高齢老人が餓死する。中3の男子が第一発見者。元々こまめに家の様子を覗いていたらしい。老人は地元でも有名なクレーマーだった。新聞の読者欄にも投稿していた様子。太刀洗は老人の息子に会いに行く。中3の男子も同行するが、息子は老人のことを憎むと言っていいほど嫌っていた。太刀洗は老人のテーブルの上に残されていた読者アンケートのハガキから、息子が老人の死の直前に来ていた事なのに助けなかったことを見抜く。また中3生がこれまでこまめに家を覗いていたのは、老人が「無職」という肩書きを恐れ、少年の家の店に働かせてほしいという奇妙な依頼をしていたという理由も見抜く。 「ナイフを失われた思い出の中に」・・・ ヨーロッパからの男性が、事件の取材中の太刀洗に会いに来る。男性の妹が15年前、太刀洗と友達だったのだ。事件は16歳の少年が3歳の姉を殺害したというもの。 少年が刺した場面は向かいの住民も目撃している。しかし太刀洗はさらに調べ、致命傷を負わせたのは別人、おそらく姉弟のろくでもない父親だと見当をつけた。 「綱渡りの成功例」・・・ 長野県南部水害の土砂崩れ。三軒ある住民の、うち一軒の家族だけが助かった。テレビでは感動の救出劇などともてはやさる。残された三日間はコーンフレークを食べてしのいだというエピソードもあった。 そこへ太刀洗がやってくる。たまたま地元の消防隊の一人は彼女の大学の後輩だった。二人は救出された夫妻を訪ね、太刀洗は突然コーンフレークを何で食べたのかと聞き出す。後輩が驚くような質問だったが、なんと夫妻はほっとしたような顔で語りだす。冷蔵庫の牛乳で食べた、家は電気が止まっていた、つまり隣の住人、その時点では土砂で埋まってしまった住人家の電気はついていたため妻は助けることもできず冷蔵庫だけを使わせてもらったという真実。  全体的にあんまり後味が良くない。と言うか私には合わなかった。高校生の心中事件にしても 薬の量を誤魔化すためだけの唆しというのはあまりにもしょうもない動機。綱渡りの真相も、わざわざそんなこと詳らかにしなくてもいいのになぁと思う。それが、太刀洗のジャーナリスト魂で、決まり切った感動劇に意義を唱える姿勢なのかな。冷静に事実を判断するにしても突き放したような感じが私には合わないなと思った。太刀洗が登場するのは他に2作あるみたい。

    2
    投稿日: 2022.05.08
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    ジャーナリスト太刀洗万智が事件を追っていく小説。米澤穂信の小説は何冊も読んでいてハズレがないが最高の感動や驚きもない。何となくの消化不良がまた溜まった。短編推理小説はこんなところだろうという軽さがしっくりこない。太刀洗万智の魅力も今ひとつの感じでこの前に当たるさよなら妖精を読もうとは思わない。作者の代表作である王様とサーカスには行ってもいいかしら。

    1
    投稿日: 2022.03.05
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    綱渡りの成功例だけ他のオムニバスで読んだことあった。太刀洗さん、シリーズものだったのか。しかもこれの前にもあるのか。 真摯なジャーナリストとしての太刀洗さんが出てくるけど、全編太刀洗さん目線ではなく毎度変わるバディ目線での語りだから、太刀洗さんが本当のところどんな葛藤を抱えているのかもっと知りたいと思った。

    0
    投稿日: 2022.02.25
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    記者太刀洗さんが関わった事件をコンパクトにまとめた短編集。表題作で見せた太刀洗さんの心の揺れが印象的。 他のシリーズも読みたくなった。

    0
    投稿日: 2022.01.18
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    女性ジャーナリストが自らの正義を貫く姿が目に焼き付く名作、太刀洗万智シリーズの短編集。 主人公であるジャーナリストが様々な事件事故の取材の中、独自の直観力と推理力で真相を見抜いていく。報道の意義や効果が何たるかを考えさせる傑作です。 全6編からなる短編集ですが、どれも読みごたえのある秀作。自分はタイトル名と同じく真実の10メートル手前が一番好きでした。少しずつ事実が垣間見えてくるとともに、ラスト10メートルの恐怖がリアルに伝わってきます。 ただ「王とサーカス」と比較してしまうと、テーマの1つであるジャーナリズムに対する主張というかイズム的なものがどうしても軽く感じられてしまいました。 また主人公のキャラクターは強烈ですが、他のキャラクターが今一つ生きていません。思想や経験に対するぶつかり合いなどをいれると、もっと血の通った深みのある物語になるかと思いました。 それでもいつもの米澤穂信作品のとおり、ミステリーとしては安心して読められる傑作でした!本シリーズの長編を期待します。

    17
    投稿日: 2022.01.16
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    単純なミステリーではなく、何をどうどういった形で伝えるのが正しい?か問う話で、とても考えさせられました。 特に「真実の10メートル手前」と、「ナイフを失われた思い出の中に」が好きです。

    1
    投稿日: 2021.12.12
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    ベルーフシリーズ、大刀洗万智の事件簿短編集 収録は6編 ・真実の10メートル手前 ・正義漢 ・恋累心中 ・名を刻む死 ・ナイフを失われた思い出の中に ・綱渡りの成功例 新聞社にいた頃から王とサーカスの後ともうちょっと後までと時系列はバラバラ 時代を特定できないのもいくつか 「真実の10メートル手前」だけ万智さん視点で、他は同級生、記者、発見者、同行者、地元民と万智さんを客観的な視点から描写されている 執筆順、出版順でも王とサーカスと前後しているものもあるけれども オススメの順番は、さよなら妖精、王とサーカス、本作でいいんじゃなかろうか 王とサーカスの経験があったからこその変化を感じ取れるのでね 「真実の10メートル手前」だけ、新聞社に勤めていた頃のお話 やはり、事件と取材対象との距離感というか、記者の立ち位置の意識がこれだけ違う まぁ、モデルになった事件はライブドアのあれ 取材対象から信頼してもらえる記者というのは稀有なんでしょうねぇ 「正義漢」は誰視点かは明記されていないけど、万智さんを「センドー」と呼ぶ同級生なんて一人しか知らない 生きていてよかった、守屋くん…… この事件も記者というよりも探偵役として振る舞っているのでちょっと違和感がある しかしまぁ、犯人を特定するための行動というのであれば、そう逸脱していないんだろうか? とは言え、都会の人身事故ってそんなに日常的に多いんですかね? 大いなる田舎の郊外で職住が完結してしまっているので、通勤ラッシュや満員電車には乗らない生活のためなかなか実感がない 「名を刻む死」は僕も前から思っていた違和感に関するもの 既に第一線を退いた人を「無職」と報道するのは果たして実態を表しているんだろうか? 適した言葉は「ご隠居」かな? でもまぁ、そう言い換えたところで最適ではないんでしょうけどね 「ナイフを失われた思い出の中に」は色々な意味で切ない マーヤのお兄さんを出してくるとか、こんなん殊更心に響くに決まってるじゃん そして、事件の真相と更なる推測の二重構造の展開は大好きなんだけど、結局やるせない気持ちには変わらず でも、ちょっとだけ救いがあるのはよい ベルーフシリーズという事になってるけど、続きって出るんだろうか? 予定は未定なのかな?

    0
    投稿日: 2021.10.22
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    どれも面白かったけど、「ナイフを失われた思い出の中に」が、特によかった。あまり愉快なことにはならないと思いますよ、と言う太刀洗。彼女の仕事の対象である悲劇に痛みを覚えない訳がない。それなのに、比喩はすべて、良和の意図を推察させるためだった。あの哀れな少年を僅かなりとも救おうとしている。解説にあるようにいま一度「知ること」と「伝えること」について考え直すきっかけを広く与えてくれるに違いない。

    1
    投稿日: 2021.09.26
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    「さよなら妖精」2004年刊で高校生だった太刀洗万智の仕事集。大人になって太刀洗は物事を射とおす目を見につけたようだ。事件を取材し報道する、ということに対しての米澤氏の考えが太刀洗を通して現わされている。 「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」が秀逸。 「真実の10メートル手前」 まだ東洋新聞に勤めていた頃の話。高齢者向け宅配業を興し、さらに有機栽培農畜産物を頒布する会社を立ち上げた若い兄妹。だがちょっとしたことから経営破たん。兄妹は行方不明に。取材で見知っていた妹から太刀洗に連絡があり、場所を推理し駆けつけてみると・・ 「正義漢」 ホームから男が転落、自殺かと思われたが、そこに太刀洗が不審な記者として現われ・・  「恋累心中」 高校生の男女が心中した。ノートには遺書らしき言葉があったが、最後のページには「たすけて」と。ちょっと若い二人がかわいそうな事件。 「名を刻む死」 62才の1人暮らしの男性が死んだ。近所の中学3年の男子が発見したが、男子はその男性を助けられなかったことを悔やむが・・ 太刀洗の取材で男性の姿が露わになってゆく 「ナイフを失われた思い出の中に」 なんとも悲しい。読後感は悪い。16才の少年が3才の姉の子をナイフで刺した。少年の手記も公表され、少年の異常さがテレビでも拡散されたが、太刀洗は微妙な違和感を覚え取材をすると・・   「さよなら妖精」のマーヤの兄が登場。 「綱渡りの成功例」 着眼点にう~んとうなる。土砂崩れで助かった老夫婦。濁流を渡る救出劇はTV放映され、3日間取り残された命を救ったのは子供が置いていったコーンフレークだと言った。太刀洗は牛乳はどうしたのか?と疑問に思いインタビューすると・・ 「真実の10メートル手前」(ミステリーズ2018.8月) 「正義漢」(「失礼お見苦しいところを」改題 ユリイカ2007.4月) 「恋累心中」(ミステリーズ2007.12月) 「名を刻む死」(ミステリーズ2011.6月) 「ナイフを失われた思い出の中に」(蝦蟇倉市事件2 2010.2月刊) 「綱渡りの成功例」書き下ろし 2015.12.25初版(単行本) 図書館

    3
    投稿日: 2021.09.07
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    「さよなら妖精」の太刀洗万智が社会人になって事件を取材するミステリー。ミステリーと通りいっぺんのカテゴリーで括ったが、登場人物が謎解きのためのピースとして扱われる多くのパッとしない作品とは違い、悩み苦しむ生きている人間たちが登場する。その取材対象を万智がどう向かい合っていくのかがこの本の本質と感じた。

    40
    投稿日: 2021.08.26
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    太刀洗シリーズ六つの物語を描く短編集。どれも無駄の無い表現、洗練された作品だった。特に表題作と「ナイフを失われた思い出の中に」、「綱渡りの成功例」は良かった。真実を求め、知り、発信する者としての残酷さや苦悩が太刀洗を通して伝わった。「ナイフを〜」では、本編にも関わる物語で胸にくるものがあった。「綱渡りの〜」ラストでは、「王とサーカス」を彷彿とさせる比喩表現によるタイトル回収には感嘆のため息が出た。太刀洗シリーズはやく次の作品読みたいなぁ〜。

    3
    投稿日: 2021.08.14
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    「真実の10メートル手前」☆☆☆☆ 情報を人に伝えるとき、スクープと分かった時点で世に出すべきなのか、精査するべきなのか。 立ち止まることのできる能力を持たなければならないが、立ち止まることが正解とも限らない。 ジャーナリストに限らず、何かを人に伝えることがあるすべての人は自分に問い続けなければならない。 「正義漢」☆☆ 「恋累心中」☆☆☆ 「名を刻む死」☆☆ やっぱり人が死ぬだけの読み味が悪いだけの作品は好きじゃないなあ。 「ナイフを失われた思い出の中に」☆☆☆ 『さよなら妖精』に登場したマーヤの姉がジャーナリストとなった大刀洗万智を訪問し、「あなたはどのようにして、ご自分の仕事を正当とされるのですか?」と尋ねる。 『さよなら妖精』と関連性が強い作品だし、評判も悪くないので期待していたのだが、著者が他の作品でもたまに見せる回りくどさが強く出ていて好きになれなかった。 たとえ恥ずかしさみたいなものがあっても、大切な友人の姉にくらい真摯に向き合ってはっきりと自分の考えを伝えた方がいいのではないか。 あと、被害者が死の間際に複雑なダイイングメッセージを残すとか、犯人がわざわざ自分に不利なヒントを残すとか、逃亡しながらクイズを作るとか、そういうのが嫌い。 「綱渡りの成功例」☆☆ 仕方なかった、で済むと思うけどな。緊急避難もあるし。 あと私は牛乳アレルギーなのでコーンフレークには何もかけずに食べます。

    9
    投稿日: 2021.08.03
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    さよなら妖精で太刀洗真知の高校生の頃を知っているからこそ、また太刀洗さんの人となりがわかり読み応えがある。責任を背負いながら真相を追究していく太刀洗さんと、なんともやり切れない事件ばかり。 さよなら妖精の最後では、守屋と縁が切れていてもおかしくないと思っていたけど思わぬ登場はやはり嬉しいもの。

    8
    投稿日: 2021.07.11
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    このレビューはネタバレを含みます。

    太刀洗万智のかっこよさが際立っている。 真実を追い求めるとはこういうことで、ジャーナリズムとはこういうこと、というのを痛感させられる。

    0
    投稿日: 2021.06.26
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    大刀洗さんのクールさと鋭い洞察 に裏打ちされた、数々事件との解会。 その裏にある事件の真相にせまる彼女の 無駄の無い姿勢は、とても知性に溢れ カッコいい。 突然現れて、事件の真相を暴き風の様に 去っていく様もこの小説の真骨頂に感じた。

    1
    投稿日: 2021.06.08
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    『王とサーカス』でも感じたことだが、文章、雰囲気が美しい。 その美しさの中に紛れているからこそ、残酷さが際立つ。 『ナイフを失われた思い出の中に』は手記に隠された告白の"隠し方"が見事だった。 『名を刻む死』は推理要素は少し少ないが、最後で明かされた真実に驚いた。 真実の10メートル手前、というタイトルも好み。

    2
    投稿日: 2021.05.26
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    「王とサーカス」太刀洗万智のその後(表題作は前日譚)を描いた短編集。 どの話も小粒ながら一粒一粒に読み応えがあるため気がつけば即読了。 今回は万智の一人称が表題作のみで毎回語り手が変わるが、万智が登場する度にニヤリとする、米澤先生は本当に良いキャラクターを生み出すのが上手い。 また、「さよなら妖精」読者諸君にとっては嬉しい要素が盛り込まれており、私は不覚にも目頭が熱くなった。 記者目線の切り口から事件の真相に迫るこのシリーズは私に新鮮な感覚をもたらしてくれる。 今後も続編に期待、次回は「王とサーカス」ばりの長編を希望する。

    3
    投稿日: 2021.05.02
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    '21年4月28日、読了。 見事な短編集、でした。記者、大刀洗の、記者としての矜持、覚悟、優しさ等…読んでいて苦しいほど、でした。 以下、ちょいネタバレかも…未読の方、ご注意ください。 みな良かったけど…最後に収録の「綱渡りの成功例」が、一番好きです。災害にあった老夫婦の、重たい「憑物」を、たった一つの問で剥がしてみせる大刀洗さん、そしてその後の判断の、なんという優しさ…。自らは針の筵に座り、血を流しながらも、重たい何かを背負っていく、その覚悟。感動しました! この作家さんの小説は、ハズレが無い。特にこの「大刀洗シリーズ」は、3冊みな素晴らしかったです。もっと、読みたいな、と思いました。

    7
    投稿日: 2021.04.28
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    大刀洗さんの真実を追い求める、いや誰かを救おうとする姿勢や考え方は、私には新しくてとても興味深く読めた。 もちろんストーリーも、面白かった。一見結論が出ている事件を掘り下げていくと新しい真実が出てくる。 見出し(?) タイトル(?)が好きだなあ

    2
    投稿日: 2021.02.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    なんか読んだ気がする物語があったけど、初読なはず。 そんな思いを抱えながら読了。 大刀洗万智シリーズの短編集。 ・真実の10メートル手前:詐欺ビジネス(本当は違うんだけど)と叩かれた若い女性経営者の行方を追う話し。 ・正義感:電車の人身事故、実は事件で犯人をあぶりだす。 ・恋塁心中:高校生の心中事件の裏にあるもの。 ・名を刻む死:無職で死ぬのは嫌だという老人の死。 ・ナイフを失われた思い出の中で:殺人事件と図書館の火事 ・綱渡りの成功例:氾濫して残された老夫婦の救出と亡くなった隣家 正直あまりワクワク出来なかった。 でもこういう物語ほど後々まで心に残る気がする。 思ったのは: ・苦しくても生きてナンボ ・思い込みが強いと余計な苦労するよ ・くよくよすんなよドンマイ そんな感じ。 米澤穂信の割にイマイチ感が有ったかなあ。 Amazonより******** 高校生の心中事件。 二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。 週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。 大刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。 「綱渡りの成功例」など粒揃いの六編、第155回直木賞候補作。

    14
    投稿日: 2020.12.31
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    ミステリとしての技巧だけでは終わらない。事件の真相を追う探偵の、矜持や正義心も同時に描かれ、そして考えさせられる作品です。 『さよなら妖精』に登場した女子高生の太刀洗万智。同作では、主人公のクラスメートとして印象的な姿を見せた彼女が大人になり、新聞記者、その後フリーのライターとして巡り合った六つの事件を描いた短編集が、この『真実の10メートル手前』 ミステリとしての完成度の高さには、どの短編もうならされる。例えば表題作「真実の10メートル手前」は、行方をくらました女性を追う話ですが、一本の電話から女性の行く先や、通話時の状況を絞り込んでいく思考の過程は見事の一言に尽きます。 「名を刻む死」での一枚のアンケートはがきから、孤独死した老人の死の真相を看過する推理も素晴らしい。二年連続で「このミス」をはじめとした年間ミステリランキング三冠に輝いた実力が、こうした短編でも十二分に発揮されていると感じます。 そうした推理もさることながら、人間の心理をえぐりつつ、どこか冷ややかな雰囲気が作品全体に漂っていて、それも印象的。 「真実の10メートル手前」のどこか無情感の残る結末。「名を刻む死」で、太刀洗万智と行動する少年の心理。 「恋累心中」では、高校生の心中事件を調べる彼女と、週刊誌記者の様子が描かれますが、こちらもミステリとしての展開や、二つの事件の絡ませ方など、とにかく素晴らしい。そしてとある真相が分かった時の、なんとも言いようもない、苦い感情がなおのこと忘れがたい印象を残します。あまりにも利己的な動機と、それに利用され裏切られた人の感情と最期を、自然と思ってしまう。 そして、物語は節々で記者である太刀洗の覚悟をつく問いが投げかけられます。なぜ他人の悲劇を探り、そして大衆にさらすのか。それに何か意味があるのか。報道という使命があり、事件に心を悼めていても、一方で記者の性としてどこかで事件を喜んでいるところはないか。 「真実の10メートル手前」「正義感」などで他人から、そして自分自身からも問いかけられる命題。作品集の後半に収録されている「うしなわれたナイフの中で」「綱渡りの成功例」で、その命題は彼女のより身近な人物たちから再び問いかけられます。 「うしなわれたナイフの中で」は姪を殺した17歳の少年の手記。「綱渡りの成功例」では、台風の浸水被害から救われた老夫婦。それぞれの隠された真相を解き明かし、それによって彼女の人間としての惑いと、記者としての使命と矜持。そして彼女の正義が見えてくる。 読んでいて思うのは、消えそうな、か細い小さな声も掬い取ろうとする太刀洗の姿勢。それは単に優しさだけでなく、そうした声も聞いて届けなければならない、という彼女の矜持や正義心もあるように思います。そしてそこには『さよなら妖精』での経験もあるのかもしれない、と少し想像してしまう。 ミステリとしての完成度はもちろんのこと、事件と人に対し惑いを抱えながらも、それでも自身の矜持と正義を信じ、真実に向き合う太刀洗。そんな彼女の姿は、ネットやSNSの発達で安易に聞いた気分に、そして知った気分になる自分には、傷ついていながらも、それでも気高くて凛々しくて、そして何よりも強く思えました。 2017年版このミステリーがすごい! 3位

    6
    投稿日: 2020.12.23
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    フリージャーナリストの太刀洗万智が、事件の裏側に隠された真実を追う6つの物語からなる短編集。 色々なパターンの事件が出てくる。太刀洗の言葉に重みとある種の含みがあるので、どの話も読みごたえがあり、さくさくと読み進められるタイプの本ではない。本の厚さからは想像できない、読後の充実感と疲労感だ。 報道のあり方についてちょっと考えてみた。 話題性があるニュースに関して、世間の人が興味を持つような情報を提供することが、商品としての情報として一番価値が高いということなのか。ということは、ゴシップネタは分かりやすい上に大勢の人が興味を待つから、その情報は値段が高いのか。 スクープ写真を撮るカメラマンは下劣でレベルが低く、傷ついている人たちに容赦なくマイクを向ける無神経そうな記者は、人として最低なのか。 いや、そんなことはないはずだ。 この本の中の話はどれも上質なミステリーであり、それだけにとどまることなく読む人の心に深く訴えかけてくる何かがある。 わたしにとっての良い本とは、静かな湖に小石をポンポンと投げるような本だ。 風も吹かず波も立たない湖面は、普段そのことについて何も考えないわたしの怠けた心だ。そして良い本は、読み終わった後でもしばらくの間わたしの心をざわざわさせる。そういうときは静かに目を閉じて、その音に注意深く耳を澄ます。その音とともに、わたしが既に忘れてしまったものや、考えないようにしていたことや、捨ててしまった何かが湖底から浮かび上がることがある。それらはわたしにとっての真実と呼べるものなのだろうか。 真実という言葉は、なんと潔い強さを持つ曖昧な言葉なんだ。 今わたしはそう感じている。

    1
    投稿日: 2020.12.11
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    恥ずかしがりの太刀洗さんがさらに思慮深くなってしまわれて、思慮深くない私は大変に恥いってしまいますよ。 記者の身を背負う太刀洗さんは、翻って(悪辣な事件を暴き立てる話ばかり書く)ミステリ作家の投影なのかもしれない。怜悧な太刀洗さんが熱いのはそれでなのかもしれない。

    1
    投稿日: 2020.12.11
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    敏腕女性記者の仕事をそれぞれの関係者の視点で成り行きを見届ける短編集。敏腕だけどガツガツしてないところがとてもクール。真実の10メートル手前、というタイトルも納得。

    1
    投稿日: 2020.11.29
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    フリージャーナリストになった太刀洗万智さんが、取材を通して事件の裏にある真実を解明する短編集。 スクープのためでなく、また警察に協力するわけでもなく、ただ真実を知ることのみを目的として精力的に動く姿は孤高の存在感があります。 作品中で太刀洗さんはプライベートの人間関係を全く見せず、また何度か縁がある人物と会った時でさえも殆ど感傷を表さない。これほどの厳しさを身に付けるまでに、いったい彼女に何があったのだろうかと気になります。

    1
    投稿日: 2020.09.22
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    “ジャーナリスト”太刀洗万智の活動記録。短編集。 ○「さよなら妖精」では高校生だった彼女(真実に至るまでの論理構成力は既に高校生離れしていたが)が社会人となり、10数年の間にどんな思考を身につけ、どう”彼女”であり続けてきたのか。 ○表題作と他5篇の間に彼女が「王とサーカス」事件を経験しており、一人称が表題作のみで、以降は第三者視点から彼女が語られるというのも面白い。 ○「さよなら妖精」は単発と思ってたので予想外。 ○全部ミステリだしシリーズ違いとはいえ、青春ミステリで括られる「古典部シリーズ」「小市民シリーズ」との振り幅よ。 ・真実の10メートル手前 ・正義漢(叙述的な面で一番面白い) ・恋累心中 ・名を刻む死(最後。端的な優しさ) ・ナイフを失われた思い出の中に(本作の中で色々な面で頭ひとつ抜けてる) ・綱渡りの成功例

    1
    投稿日: 2020.09.21
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    面白かった。 「真実の10m手前」 「正義感」の二つは好きでしたね。 他の作品もよかったですが、どちらも最後のオチが素晴らしかった。うなるものを感じました。 他の作品も少し入りにくいものもありましたが、 とてもよかったです。王とサーカスも楽しみです。

    0
    投稿日: 2020.09.15
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    短編集↓ ・真実の10メートル手前 ・正義漢 ・恋累心中 ・名を刻む死 ・ナイフを失われた思い出の中に ・綱渡りの成功例 記者:太刀洗がそれぞれの事件の真相を追う。 最初の『真実の〜』だけが太刀洗目線で、後は同行者の目線で勧められる。 初め…太刀洗があまり好きではなかったが、 読んでるうちにだんだんと惹かれてくる。 クールなのに熱い部分があり、鋭い角度からガンガンと行く。 それぞれの物語にジーンとくるものがありました。 解説より〜 どうやら…太刀洗さんの若い頃が『さよなら妖精』の中にいるみたい。 そちらもぜひ読んでみたいです!

    0
    投稿日: 2020.08.23
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    短編集と知らずに買った 基本的に短編集は読まない 長い物語を少しずつ楽しみたいからだ しかし、ひとつひとつの物語が凛としていて 短いながらも読み応えのある内容でした

    0
    投稿日: 2020.08.06
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    大刀洗万智を探偵役とした短編集。 何故か一編読む度に結構体力?を使う。よい意味で。 さよなら妖精、もう一度読まなきゃ。 24/5月に再読。 この短編集の中の一編、「ナイフを失われた思い出の中に」は短編とは思えない凝った作り。大刀洗万智、かっけー!

    0
    投稿日: 2020.08.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「王とサーカス」から読んでみようと思いました。 短編集ということもあって、面白いんだけど、少し物足りない感じがありました。 「名を刻む死」の少年に強く言い聞かせる場面が特に印象的でした。

    0
    投稿日: 2020.06.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    私が読む米澤氏の2作目。 儚い羊~とは全く雰囲気が違って、主人公の太刀洗万智の内面があまりに読めなくて不思議な感じはしたけど視点が違っていてこれはこれでおもしろかった。 端々に優しさや情が見えたからちょっと安心。 派手などんでん返しではないけど、短編だったし私の中で新しいタイプのミステリだった。

    0
    投稿日: 2020.05.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ジャーナリスト太刀洗万智の短編集。様々なストーリーが楽しめる。各話とも、事件の表層に隠れる真実を、太刀洗が鋭い推理力で明らかにしていく。 事件に感じる若干の違和感を、早く払拭したくなり、どんどん読み進めてしまった。 単なる謎解きに収まらず、ジャーナリズムとは何か、真実とは何か、様々なテーマが含まれていて、考えさせられるストーリーだった。

    3
    投稿日: 2020.05.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    苦い!そして時には救いがないっ!! 「さよなら妖精」でそこまで注目してなかったキャラの太刀洗万智が主人公ということで、どんな感じやろ?と思いつつ手に取った本書。どの短編も「さよなら妖精」のテイストに沿った苦味路線で大満足。 一番のお気に入りは「恋累心中」。 物語の流れに委ね、行き着いてしまったところに見事な驚きが待ち受けていてもう最高。そして一番の苦味。 大満足です。 ささ、次は長編へ。

    0
    投稿日: 2020.01.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    太刀洗万智を主人公とした短編集。短編ミステリーなので、アンティパストを楽しむ感じ。こういう小皿ミステリーをサクっと出せる作者の力量。改めて米澤ミステリーを読めるありがたみを感じる。 しかし、ジャーナリストってヤツは本当に因果な商売で、志とそれを忘れない強い意志をもっていないと、たんなる死肉あさりになってしまう。テレビでも雑誌でも、こんな報道や記事になんの需要があるのかと思うような、くだらないうわさ話があふれかえっているのを観るにつけ「こんなことに費やしてる時間はない」と思ってしまう。 太刀洗万智のようなジャーナリストば多く増えてくれれば、日本のマスコミもニュースの質も少しずつ変わってくれるのだろうけど。

    2
    投稿日: 2020.01.07
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    期待通り。短編集なのに読み応えあり、というか、いろいろ考えさせられる。 真実とは、“”そうであってもらわねば困る状態のことなのです”。見たいものしか見ない、消費者という絶対的な需要に対して、何をどのように供給していくのか。情報を商品とする難しさがにじみ出る作品でした。

    0
    投稿日: 2019.12.01
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    さよなら妖精ではサブヒロイン的な立ち位置だった 太刀洗万智が主人公の短編集。 正義漢が1番好きな短編。 万智に謀られた。

    0
    投稿日: 2019.10.26
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    「さよなら妖精」を読み終えた時の 私のレビューの最後に そんな中で 人間的な魅力を感じたのは 大刀洗万智。彼女が探偵になるという 別のシリーズを読むことにしよう。 (実際は探偵ではなくライターなのだが) と書いてある。 その自分との約束を かなり時間は経ったが 果たすことになった。 作者は太刀洗万智について 「一人称で語らせる」という選択肢を ここでは取らなかった。 これから読む「王とサーカス」に その選択がなされているらしい。 少なくともこの短編集では 太刀洗の心の底に流れるものを読み解くことは 私たちに委ねられたようである。 彼女の才気はほとばしるようなそれではなく 書斎の机の上に静かに置かれ その窓から わずかに射し込んでくる日の光に冷たく光る ペーパーナイフのような…持ち主が殺意を 抱かぬ限りは何物も傷つけはしない代わりに おのずと自らの果たす役割を理解し それに専従している質のよい道具のような。 そんな醒めた感じがする。 その才気が私を惹きつけて離さない。

    0
    投稿日: 2019.10.20
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    さよなら妖精から入ったので おおお、大人になってる… でも変わってないセンドー。 むむ?と気になったところがあっても 推理より先に続きが気になって読み進めてしまい ああやっぱりなにかのヒントだったわ、となる率高し。 さよなら妖精の方がヒントを見つけにくかったかも。 見るのは目だけど 決めるのは私たちそれぞれの脳であり、心なのだ。 台風19号が過ぎ去って まだ爪痕がたくさん残る今読む「綱渡りの成功例」はなんともやるせない。 「正義漢」も良かったなー。ゾクゾクした。 記者という業について常に自問自答しているようだったな。

    0
    投稿日: 2019.10.16
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    冷たいようでいて人間味あふれる愛すべき主人公、太刀洗万智がとても魅力的です。 人々の謎に迫り、解き明かしながら、最後には救いが感じられる物語。さすがです。 「正義漢」は秀逸。

    0
    投稿日: 2019.09.28
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    太刀洗万智を主人公とする短編集。「真実の10メートル手前」は本当にその距離感が縮まっていく感を感じられる作品。「正義漢」は視点が主人公とその対象者との入れ替わる感じが良かった。「恋累心中」は真実というのは表面からだけではわからないというのを印象づけられたという作品。「名を刻む死」は不思議でもなんでもない話も様々な小さなことから生まれているのだとあらためて思い知らされる作品。「ナイフを失われた思い出の中に」はちょっと強引さを感じる作品ではあったが、そういう展開なのねと納得できないことはない作品。「綱渡りの成功例」は何気ない疑問が真実に繋がっているのだと考えて推考して取材に臨んでいる太刀洗万智の姿がわかる作品。どれもサクッと読めるので気軽に推理しながら読むにはいい。

    0
    投稿日: 2019.09.22
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    フリージャーナリストが名探偵役の連作短編集。 とても丁寧に伏線が貼られているため、真相に気づくことは難しくありません。中では「恋累心中」「ナイフは失われた思い出の中に」がミステリ度が高い作品ですが、真相とフェイクの真相の差異が恣意的(フェイクの真相を真相としても話が畳めそう)に思えた点がやや不満でした。

    0
    投稿日: 2019.09.16
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    本書主人公が出てくるとの他の作品は未読だが楽しめた。ぜひ今後読んでみたい。 1番印象に残ったのは、名を刻む死のラスト。 一般的には批判されそうな最後のセリフには賭けではあるが優しさを感じた。 ナイフを失われた思い出の中に は物語としてもミステリとしても素晴らしい作品だった。

    0
    投稿日: 2019.07.23
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    各話に登場するジャーナリストの大刀洗は鋭い洞察力で真実を見抜く頭脳を持つ。それぞれの話しに人情味とその人ごとの葛藤が描かれている興味深い短編集。

    0
    投稿日: 2019.07.20
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    満願と2冊を1日で一気読み 今まで沢山のミステリーを読んできたけど 終わり方がわたしはイマイチ好きではない でも文章が読みやすくて、短編集なので、この次の話のオチは好きだと良いなという希望もこめてサクサクと時間を忘れて読みました 心底入り込めなくて、星2つが本音だけど 文章がテンポよく、たまに出てくる知らない単語も調べたりして面白かったのでこの評価

    0
    投稿日: 2019.06.12
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    表題作から自殺でその後は、と思ったらそこで終りで。どの短編も続きがあったら・・・と思わずにはいられない、そんな作品たちでした。これは「さよなら妖精」も読まなければ。

    0
    投稿日: 2019.06.09
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    前作の「王とサーカス」より先に本作品を購入。 短編集だったため、こちらから読みやすいのではと思い、読みましたが、一つ一つの物語がしっかりとしていて、「王とサーカス」も読んでみたいと思わせてくれます。 表題は、主人公の太刀洗の視線ですが、他は、別の登場人物から見た太刀洗を描いています。その分主人公についての描写が、芯がしっかりしていて、クールな人ぐらいの情報しかないので、過去はどんなだったのか気にさせてくれます。なんとなく、読んでいて、女優の菜々緒さんかなと思いながら読んでいました。 物語としては、それぞれの章で起こる事件には、驚きがあったり、様々な登場人物の心情がうかがえ、本格推理ものとは違ったミステリーを味わいました。 短編だけれども読み応えのある話ばかりですが、あまりスカッとする話ではないので、星4つにさせていただきました。

    0
    投稿日: 2019.06.05
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    王とサーカスに続き、本作。一本筋が通ったタチアライマチをもう一度読みたくなって。まさかの短編だったけど、どの話も好き。米澤さんは各話のタイトルを付けるのが本当に上手いなと思う。そして、できあがった記事も読んでみたい。

    0
    投稿日: 2019.06.04
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    短編集。どれも面白かったが、王とサーカスを読んだあとなので短編集ならではのボリュームを感じた。しかしやはり米澤穂信は好きだ。読んだ後に残る少しの不快感かららしさを感じる。2日間で読み終わった。

    0
    投稿日: 2019.05.18
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    秀逸なのは表題。 いくつかの短編からなるオムニバス形式だが、タイトルはその第一編からとっている。 カメラの手前10メートル手前で明かされる真実。そのピントは合いそうでなかなか合わない。 わかりそうでわからない真実。焦点を合わせようとしてもぼやけてしまう。このもどかしさを妙に物語として昇華させている。 本作の共通の主人公はフリージャーナリストの太刀洗。最初の短編は太刀洗視点だが、それ以降は太刀洗に関わる人から太刀洗の人物像が描かれる。 この太刀洗という記者だが、なかなかに曲者。実態が見えないのだ。彼女が筆を執る理由とは一体何なのか。仕事のため。自分のため。それとも世間のためなのか。 続編があるなら是非とも太刀洗の人生観を描いてほしい。

    0
    投稿日: 2019.03.10
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    12 めっっっちゃくちゃ面白かった! わたしはこういう話がだいすきなんだ!! 後味は悪いし、明らかになった真実はそのまま隠しておいたほうがいいんじゃないかっていうくらい強烈なものばかりだし、だけど最高に読ませる小説だった 表題作と、心中する話が特に印象に残ったな~ いやはや面白かった! 前回のラノベチックな主人公の独白じゃなくて、 こういう事実を淡々と伝える米澤穂信をもっと堪能したい!! 2019.02.16

    0
    投稿日: 2019.02.16
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    ミステリーとしての出来栄え、過去作のファンへのサービス、ジャーナリストとしての太刀洗の立ち位置と問題提起など、様々な要素をきちんと納得のいく形で提示してくれる、完成度の高い短編集。冷静で誠実で、かたくなで恥ずかしがりの太刀洗をもっと好きになる。

    0
    投稿日: 2019.02.07
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    このミス2017年版3位。「王とサーカス」探偵役の太刀洗万智が主役の連作短編集。この人の作品、人気があっていっぱいランクインしてるので自分も結構読んでる。雰囲気は好きなんだけど推理のテンポについていけないとこあってよくわからんことも多い。本作は前半は結構理解できてまあ読みやすいかなと思ったので後半はやっぱよくわからん。作中の主役のこだわりがというかスタイルがいまいちピンとこないのです。

    0
    投稿日: 2019.02.06
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    太刀洗万智と出会ったのは「王とサーカス」が最初であるが、改めてこの人物を魅力的だと感じた。名推理から見てとれる聡明さはもちろん、人間としての芯が通っている気がする。なにより記者という職業に対する考え方が面白い。取材をしたり記事を書いたりする事で傷つく人間がいる事を理解しながらも、自らの伝えたいことのために現地に赴き、取材をして、記事を書く。そんな彼女も「情報を取り扱う上で最もやってはいけないのは、当事者の言葉をそのまま伝えること」と言っている。事実は言ってはいけないものだと。情報で溢れた現代社会において、正しい情報(事実とは限らない)を見極める能力が求められていると思った。

    0
    投稿日: 2019.02.03
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    ミステリーの味付けされた短編小説が6編。フリーのジャーナリスト、大刀洗万智が事件の現場周辺を洗い出し、推理してゆくことにより真相を明らかにしていきます。彼女の素っ気ない態度は飽くまで取材に徹底するが故。事実を積み重ね鋭い洞察力で取材者に迫ります。どの話も意外な人間ドラマがあって飽きずに読めましたが、その中でも 「正義漢」というお話は彼女の凄みに身震いがしました。彼女を主人公にした小説が続いてゆくのも頷けます。

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    投稿日: 2019.01.29