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去年はいい年になるだろう
去年はいい年になるだろう
山本弘/PHP研究所
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総合評価

45件)
3.6
7
18
15
3
1
  • 一部の文字の表記がおかしい

    小説そのものは⭐四つ。でも、仕様は⭐一つである(ゼロでもいいくらい)。所謂「おま環」なのかもしれないが、縦書き表示であるにもかかわらず三点リーダー(「…」←こういうやつね)が横向きに表示されるのだ。なぜか試し読みができないので、事前に知ることができなかったけど。 読んでて違和感ありまくりなので返金してほしいくらい。

    0
    投稿日: 2024.03.16
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    24世紀から人類の不幸を取り除くため ロボットがやって来た。 主人公は山本弘本人。実在の人物や事件を踏まえて展開する歴史改変SF。 大きな災害を防ぐため、結果として多くの人が幸せになるなら、多少の犠牲は仕方ない? 合理的ではない人間の幸せとは。

    0
    投稿日: 2024.02.24
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    99:9・11テロを防ぐべく、24世紀からタイムスリップしてきた「ガーディアン」と名乗る美男美女のロボットたち。彼らはロボット工学の三原則の下に、テロや自然災害から人類を守るべく歴史の改変を行うが……というパラレルワールドもの。実在の作家さんたちが実名で登場するなどニヤリとする演出も交えながら、「多くを救うために少数を犠牲にする」ガーディアンのやり方に不気味さを感じたり、家族とカイラとの間で揺れる心、そしてさらなる歴史改変、とどんどん読み進めてしまいます。大きくくくればSFになるのでしょうが、タイトルの意味がわかった瞬間の「ああ!」というスカッとした感じがたまりません。内容はやや重いのですが、最後に希望が描かれてよかったと一安心。

    0
    投稿日: 2018.10.08
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    山本老师真是自己人!宅出境界的宅…有时候看他推特上发的各种宅向东西 都怀疑他还有时间写小说嘛…而且这书还全用的是实名…借钱那貌似也是实事…对人类的痛心疾首的失望在他推特timeline中也可见一斑。宅向和sf领域干货太多…或许并不能受万人喜欢…老师的网站做的很有意思 没事可去逛逛

    0
    投稿日: 2017.08.30
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    山本弘、すごい! BISBB部の3巻目が今年最高のミステリーとしたら、これは今年最高のSF。タイムトラベラーパラレルワールド。大好き。

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    投稿日: 2017.07.22
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     図書館より。  2001年、未来からガーディアンと名のるアンドロイド集団が襲来。人類のために尽くすことを本能づけられた彼らは、世界中の戦力をあっという間に無力化すると、貧困地域の支援や人命救助、テロリストの確保、独立国家の解体などを次々と行う。そしてSF作家”山本弘”にもガーディアンが接触してきて…  この本の著者である山本弘さんが主人公の一種の時空改変、タイムパラドックスもののSFです。そんなわけで2001年時点の山本さん自身のお話もたくさん作中では触れられています。山本さんがこれから(2001年以降に)書く小説の話であったり、自身が運営している同好会の話であったり、仕事の話や家族の話など。  そんなわけである程度山本弘という作家の作品や彼のSFのスタンスをある程度知っていないと、なかなか入り込みにくいかもしれないです。(特に『アイの物語』は先に読んでおくのを推奨します)  ただそうした部分をあますことなく語ることによって、アンドロイドの襲来が世界的に見れば確かにいいことかもしれないですが、それが個人単位の話になるとどうなのだろうか、という問いに対し非常に具体的な回答が小説として書かれていると思います。私小説的な面白さに思考実験としての面白さがプラスされたような印象です。  日常描写が多めで、話の動きはあまり多くない印象でしたが、その分ラストの衝撃はなかなかのものでした。  個人的にこの話は山本さんが『アイの物語』でなぜそうした世界を作ったのか、という問いをより深く、そして尖らせて行きついた物語のように思います。 第42回星雲賞(日本長編部門)

    0
    投稿日: 2015.10.19
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    図書館で。この方の本はMM9とか言う本を読んだことがありますがその時もイマイチ、ピンと来なかった記憶が。この本もナンダカナって感じで終わってしまいました。取りあえずものすごい内輪受けって感じの本だなあと思いました。(まあ主人公が過去の自分にあてて書いてる本なので仕方ないのでしょうけれども) 取りあえずガーディアンが彼の元を訪れたのは良いとして何で彼は家族と一緒に会わなかったのでしょうか?お友達になったらその人としか話してはいけないとか言う規則があるわけでもないのに。娘だって奥さんだって一度か二度ガーディアンに会っていれば話は違ったんじゃないかな?そういう辺り男性の女性に対する気の利かなさが表れていてすごく不快。これ、女性がお友達に選ばれたらきっと家族に紹介すると思うんですよね。主人公が無意識に対外的な所から家族を離して考えているのが男性本位な考え方だなあって思いました。もともとSF好きで通じた奥さんならガーディアンに会せたら喜びこそすれ嫌がることもないと思うのにな。多分主人公は奥さんが娘連れて出て行った理由、自分が悪いとは言いつつ何が悪いのかわかってない気がする(笑) そしてSFオタク会みたいなのも個人的にあまり良い思い出が無いのでちょっと引き気味になりました。大分前にコミケにSF枠で出た時隣のスペにこういうマニアみたいな人たちが居たなあという事を思い出して…。この作品には関係ないのですが。その時は結構なお客さんではない人数が屯して、総勢10名ぐらいが入れ替わり立ち代わりスペ内、通路にウロウロして非常に邪魔だったのです。内輪で盛り上がってこちらにはみ出していることも通行の邪魔になっていることにも気づかないし挨拶も無し。当時学生だったのですが社会人の癖に子供っぽい人たちだなあと思った事を思い出しました。そして彼らは彼らだけのコミュニティを楽しんでいて知り合い以外の人間とは対話したりしない感じが物凄い閉鎖的でイヤだったなあとそんなことも思い出しました。なんかこう、好きが高じて集う仲間内って物凄い楽しいのはわかるんですが周囲は少し見た方が良いよねっていうか。まあその辺りは反面教師でもあるのですが。 そんな感じであまり楽しめなかったです。多分この作家さんとはあまり合わないんだろうなあ…きっと。

    0
    投稿日: 2015.03.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    山本さんはSFという仮定の世界設定の中での人の心理や行動を推察するのがすごく上手で、納得させられる。 今回は未来からタイムマシンでアンドロイドがやってきた。 その目的は人を不幸から守ること さて、人類はどうする?っていうお話し。 人は決して論理や倫理だけの生き物ではない。 意地や信念、楽観や誤解それに過剰な利己心や理由のない悪意などによってどうしようもない間違いをする。 ここら辺はトンデモと戦い続けている山本さんの考察はホントに感嘆の域。 どうしてこんなバカなことをするの?それでもしてしまうのが人間なんだよ的な... アンドロイド側も強引すぎ アイの物語でもでてた、「自分がして欲しくないことは隣人にしてはならい。他の全ての法律はこれの注釈である」って言葉が凄くすき。アンドロイドの行動はこれに反しているよね 必要なことは、情報は開示すること。どうするからは自分たちで決めさせること。当事者とは求められて範囲で交流すること。 最終的なアンドロイドの結論もそれだったし、それが一番だよねと改めて実感。 タイムパラドックスについて、何とも言えないなあ その世界軸にタイムマシンで2度以上戻れるならなんで今まで誰も現れなかったの?ってなる。一度しか戻れないなら納得。 時間軸と空間軸が入れ替わるというのは面白い発想。 最後にロボットが地球を侵略する話について。 生存本能を持つ人工知能が開発されたとして、それはバーチャル空間で活動するんじゃないかということ。ロボットはあくまで人類の道具としての機能に留まるじゃないだろうか。ポスト人類のロボットではなく、電子世界に息づくことになるだろう。

    0
    投稿日: 2014.08.16
  • 現実に限りなく近くちょっとだけ違う世界

    SFの1つの手法ではあるものの、山本弘と言う作家を良く知っている人はちょっと違和感を感じるかもしれません。 山本弘たる人が、そこに思い当たらないのはおかしいと思えるところが何箇所かあるんです。 特に、過去の作品である「まだ見ぬ冬の悲しみも」を読んでいる人だと、その違和感が読み進む上での引っかかりになってしまうと思います。 個人的には、「山本弘」を取り巻く物語にする必要があったのだろうか、と言う点が一番の疑問。 それを除くとSF作品としても出来がよく、タイトルに書いたとおり「現実に限りなく近くちょっとだけ違う世界」を堪能することが出来ます。多重世界論を含む歴史改変ものとしてはちょっと異質ですが、山本弘らしい解釈がここに登場します。こういう考え方もあると言う感じで読んでいくと、新たなSF像が見て取れるかと。

    2
    投稿日: 2013.11.11
  • 「過去を変える」という重いテーマを含みつつの私小説。

    SF小説家・山本弘の私小説的SF小説です。 なにしろ、主人公・語り手が「山本弘」です。妻・娘をはじめ、実在の人物も多く登場します。 「SF小説で私小説なんて成立するのか」と思いますが、これは間違いなくそれです。 家族に対する彼の思いが痛いほど伝わってきます(…てか、ただののろけ?) そういう点で、特殊な作品ではありますが、彼の軽妙な文章やクライマックスへのスピード感など、作品としての魅力も充分です。 特に、「と学会」の面々が、(作中での)荒唐無稽な未来について「未来の唐沢さん、面白い嘘つくなぁ」と笑い飛ばすシーンなどは彼の面目躍如でしょう。 おもしろいだけではなく、真剣なテーマも含んでいます。それは、終盤で明らかになってきます。 なお、この作品、星雲賞を受賞していますが、作中、主人公・山本弘が「星雲賞を獲りたい」と発言しています。 …作中でおねだりして賞を取った珍しい作品かも。もちろん、それだけの名作なんですが。

    2
    投稿日: 2013.11.08
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    第42回 星雲賞日本長編部門受賞作。 著者による宣伝ページがある。 http://homepage3.nifty.com/hirorin/kyonenhaiitoshi.htm それによると「善意に基づく行動が良い結果を生むという保証はあるのか?」というのがテーマらしい。 タイムトラベル+AI+パラレルワールドを組みあわせた感じ。「時砂の王」みたいな。 でも本書は要するに、ラブレターなんじゃないかと思わなくもない。 「アイの物語」は読んだけれど、あまり覚えていないので、再読してから読んだ方が楽しめたかもしれない。 反重力は等価原理により、たぶん、存在しないだろうというのは、本書で得た気づき。等価原理から導き出せるんですね。 ちなみに http://hirorin.otaden.jp/e253405.html によると 「作中で僕が安田さんに借金を頼みに行くくだりがありまいすが、これは実際の体験が元になっています。『神は沈黙せず』を出版する直前、経済的に困窮し、安田さんに借金したことがあるのです。 」 とあります。 山本氏でさえ経済的に大変になるのであれば、作家業は本当に大変なんだなと。まぁ、ハードカバーは売れないだろうな。かさばるし。私も本書を図書館で借りているくらいだから。

    1
    投稿日: 2013.08.25
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    時間遡行とアンドロイドが中心だが、だんだんと、壮大なホラ話の様相を呈して行くSF作品。 SFとして楽しむよりも、実名の作家や作品もたくさん出てくるので、業界のパロディとして楽しむのが一番いいのだろう。私はそこが一番楽しかった。 そもそものこの無茶な展開自体がパロディとして設定されているような気もする。 業界を知っていれば楽しめる作品、作者の山本弘の作品やと学会などについて、あまり知らないひとは、あまりお勧めではありません。正直。 でも、私は最高に楽しめました。

    0
    投稿日: 2013.05.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    アンドロイドが改編した時点でパラレルワールドになるとしても、過去の人類の生活を改善しようとタイムトラベルしに来るというお話。うーん、そういう思考をするようになるかな。。 AIの思考は、人類と接触するのであれば、チューリングマシーン的にある程度相互理解が可能なやり取りを出来るようでなければならないとは思うのだけど。どうもその思考にリアリティを感じない。 超越者が神様にしろ、宇宙人にしろ、未来人にしろ、アンドロイドにしろ、物語にするために、顕現させるとこういう発想になりました、ということかな。 2300年で概ね人類の幸せのためにやれる事はやり尽くして、後は過去を改編して幸せに感じる人間の総量を増やす。そう、多分、SFを読むときに先鋭や未来を見たいのだけれど、2300年の先は特にありませんと言われるように感じるんだよね。アンドロイド目線では先が過去なんだろうけど。やっぱり違和感あるな。

    1
    投稿日: 2013.04.30
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    面白いねん。 山本さんの本はどれも(大体)面白くて好きなんだけど、どれも物凄く痛い。 同人仲間の本を読んでるみたいな。 読者のことを考えてないわけではないし読みやすいのだけど、とことん作者の頭の中から出て来てない感じがするのかもしれない。 どこまでも現実感が無いからか、どこまでも「作者」を見せられるからか。あー、原作者が自分の映画に、それもせりふ付で出てるのを見るような感じか。 この本は、まさに本人やその周辺の人たちが出てくるのだが、出て来なくても同じ。 条件設定した上で、その条件から派生するものをストーリー展開しているだけの作品。 だけど面白いよ。

    0
    投稿日: 2013.01.16
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    2012.11.4読了。 荒唐無稽とも言えるSF設定(まぁだからSFなんだけど)に、かなりリアリスティックな日常の描写。面白かったです。

    0
    投稿日: 2012.11.04
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    このレビューはネタバレを含みます。

    最初の数ページを読んで、あれっっておもった。 おいおい、これって著者自身がモチーフかよ。ってツッコミを心の中で入れたが、認識が甘かった。主人公が山本弘だと名乗ってしまった。 自分自身が主人公のある意味自伝で、著書の解説書だ。 それほど本を読んでいないため、この手法がどれほど一般的なのかわからないが、びっくりした。自分を自分のままSFの主人公にするなんてね。 ただ、これを読む前に山本弘の作品を概ね読んでおいた方がいい。 読んでいるから感じるのかもしれないが、ネタバレも含まれている。神は沈黙せずなんかは、特に、結構大きなネタバレだとおもう。

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    投稿日: 2012.10.22
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    読み始めは「ああ、こういうタイムパトロール的なやつね」って思いながらガーディアン到着まで進んだけど、某SF作家個人にストーリーの焦点があたり、タイムパトロールの個人との関わり合いという要素が組み合わさることで、物語は深みを増してゆく。誰もが自分の家族が大切で、自分の身が大切。「自分」の側がどんな規模なのかの考え方は人によって違うけど、規模が違うだけで結局は身勝手なんだよなと。終わり方が山本弘らしいともらしくないとも言えて印象的。

    0
    投稿日: 2012.08.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    読ませることは、読ませる作品。 ブログやホームページなどの文章に近い、 ネット的な文章。 いかに読ませるか、に主眼が置かれている (作者自身も、作中で、そんなようなことを 書いている)。 普通、小説は電子版になると一気に読みにくくなるが (青空文庫でもわかるように)、 この小説は、電子版になってもわりと普通に「読ませる」 のではないかと思う。 出だし100ページくらいは、 主人公(作者の山本)が未来から来たアンドロイドと 延々と話をしているだけで、何の展開もないが (ウルトラセブンの例えが出てくる) それでも読ませるし、引き込まれる。 設定もしっかりしていて、ワープやタイムトラベルは、 人間では不可能だが、ロボットだったら可能、とか こういう話の場合、ロボは数体しか来ないが、 500万体も来て、事態の収拾にあたったり (そのくらい来ないと、無理でしょう) ターミネーター型の歴史改編でなく、パラレル分岐型なので、 タイムパラドックスを発生しないとか 宝くじや競馬の結果は当てられないとか (ただし、カオス理論の前提として、天気の予測もできないので、 天気や、地震が予定通りに起こるのは、たぶん間違い。 人間や動物が息を吸ったり吐いたりしているだけで、 天気なんて、予定とは変わってくるはず) 宝くじの予測はできないが、 普遍的なものとして、科学技術は有効なので、 それにより、金儲けをしたり、などなど (未来から金を持ってくると、同一ナンバーで、偽札の疑いを かけられるとか、芸が細かい) ただ、欠点として、コンセプトに一貫性がない。 作者のHPをみると、あらかじめ言い訳めいたことが書いてあるが ・微妙な読後感になることを覚悟してほしいこと ・アンドロイドが理想的な人格であるという結論は、  すでに前作で出たので、今回はそれをさらに進めて、  そこに疑問符をつけるということ の、2点がかかれている。 そして、「善意からの行動が本当に人のためになるか」 ということを、テーマにあげている。 しかし、そもそも、このテーマの上げ方自体がおかしくて、 「善意」が人のためにならないなら、一体、なにが 人のためになるのか? はっきり言って、問うまでもない、バカげた質問だと思う (ちゃんとした善意なら、人のためになるに決まっています。 作者だって、安田均に金を借りに行って、あっさり貸してくれたことに 感謝しているではないか) そして、実際は、これは「問われる」訳ではなく、 作者が「答えありき」で進めている。 すなわち、この作品のテーマとしては、 必ずしも、善意が、いい結果を生むとは限らない、という 「答えありき」で進めているので、なんだか不自然なことになっている。 たとえば、未来が改変されたことにより、フィギュアスケートの 選手になれなかったとか、より不幸になった人たちが出てくる。 作者自身も、妻と娘を失う。しかし、これはアンフェアであろう。 なぜなら、911テロで犠牲になるはずだったが、命をすくわれた人とか 虐殺から救われた人、拷問から救われた人などが、 (つまりそちら側の視点が)まったく出てこないのだ。 だから、アンドロイドが「悪いことだけ」をしているように見えるが、 実際は感謝している人だってたくさんいるはずである。 作者の最後に言う、外国で人が何人死のうが、 家族が無事ならそれでいい (ハリウッド映画などで、さんざん繰り返される、エゴイスティックな 視点だが。赤の他人がどれだけ死のうが、主人公の家族さえ助かれば、 ハッピーエンドで、ちゃんちゃん式の) とにかく、その主張にしても、仮に作者の家族が911テロにより 死んでおり、アンドロイドの改変により助けられたとすれば、 まったく逆になり、赤の他人はどれだけ死んでもいいから、 家族を助けてくれて、ありがとう、ということになる。 つまり、立場次第で、どちらにでもなる、なんの正統性もない 主張である。 ここら辺に、最初から、テーマの結論ありきで進めている 作者の「作為」が透け見えるので、いかがなもんかと思う (改変=悪、という、一種、保守的な)。 あと、作中で、「確かにすばらしい文章だが」とかいって、 自分の文章を褒めさせるのも、やめた方がいい。さぶいので。 あと、現実がSFになったので、SF小説が売れなくなるとか(なぜ? SFなんて、だれも「本当のこと」だと思って、読んではいないが?) 未来の作品を使うのにやたら抵抗を持っている姿勢もよく分からない (潔癖な僕、を演出したいみたいで気持ち悪い)。 パラレル構想が広がりすぎて、収拾がつかなくなるラストも、 「やりがち」なのだが、結論がないなら、書かなければいいのに、 とも思う。 コンセプトの一貫性の無さとしては、やはりタイトルで 「去年はいい年になるだろう」というのは、ブラッドベリばりの 抒情的ないいタイトルで、ラストは、たとえば 「幸せな未来」を予感させつつ、宇宙船が飛んでいって、終わり、という いかにも「去年はいい年になるだろう!」という 山本視点で一貫させるべきだと思うのだが、 全然、そういう結論にならない(し、視点もおかしい)。 作者自身が、作中でも言っているが、なにか絶望的な終わり方になっている。 ほとんど「奇妙な味」みたいな、ホラーに近い終わり方である。 書いているうちに、初期コンセプトとずれていったのかもしれないが、 だったら、タイトルの方を変えるべきだったと思う。 視点については、「去年は~」というタイトルは、 タイムトラベルをしない、山本の視点のはずなのだが、 話のメイン・視点は、どう考えても未来人の方であり、 内容も、どちらかと言うと 「2001年分岐における未来人たちの失敗例~次はうまくやります~」 という感じだと思う(つまり、視点が逆である。主人公、 フェイドアウトするし。だれが「去年は~」って言ってんだ?)。 なぜこういうことになったのかについて、作者はHPで、 大局を動かすような大物でなく、小市民の視点から、 書きたかった、といっているが、 これが裏目に出ていて、主人公が、全然主人公っぽくない。 作中で、作者は、リセットをかけているのは未来人の方で、 我々は、1度きりの人生を、うんぬんかんぬん、といっているのだが、 これをTRPGやゲームでたとえるなら、実は未来人(ロボットだが)が プレイヤーであり、 作者を含めた現地の人々は、その他のNPCと言っているようなもんである (話に全然、関わらない訳である)。 しかもNPC(市井の人)の視点で一貫されているかと言うとそうでもなく、作者の好みとして、SF設定の根幹部分を書きたい、という姿勢があるために より、「メインから外されている」感、「関わっていない」感がある。 で、結局、タイトルだのなんだのは、置いておいても、 グループSNEで、未来から来たトラベラーを見守るくだりまでは おもしろかったので、あの攻防まででいいので、 そのあとの、とってつけたような悲劇的な展開とか、 カオス的説明とか、 25歳くらいの山本のエピローグとかは、 いらなかったのではないかな、と思う。 そして、とにかく原理主義だの陰謀論だのを信じるバカが、 平和を無茶苦茶にして、「人類は永遠にバカ」という絶望的な テーマが見え隠れするのだが (未来からやってくるやつらも、バカ。ただし、作者自身まで 発病してしまっている、くだりは面白かったが) 作者の絶望的な世界観を、娯楽が読みたい「読者」に向けて、 強要する姿勢も、いかがなものかと思う。 作者に言わせれば「世界ってそういうもんだ」ということなのだろうが、 「世界がそうだからといって、フィクションの世界まで、 そう書かねばいけないという、法は無い」と、 誰かが言っていた気がする(吉村夜か?) 読者を気持ちよくさせる為だけに、妄想・ハーレム・ラブコメを書けとは 言わないが、せめてもうちょっと「明るさ」とか「勧善懲悪」とか、 あってもいいだろう、とは思う。 結局この話は、人類の革新などは(冨野が好きなテーマだが)存在しないし、 現状維持以外の解決策もなし、という、 ぐるっと回ってスタート地点に戻るだけの、なんのこっちゃ、な 話のなので(あえていえば、「今の現実が一番いい」という 現状肯定妄想?) 読んだ人も、なんだかなあ、と思うのではないだろうか。 せめてコンセプトが一貫して、きれいに落ちていれば、 話として楽しめたから、それでオッケー、となっていたのだが。

    0
    投稿日: 2012.07.29
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    2001年9月11日、突如上空に現れた球体は、瞬く間に全世界の軍事力を無力化した。 ガーディアンと自称する彼らは未来からやってきたアンドロイドであった。 彼らの目的は、世界征服ではなく、人を不幸から守ることらしい。 彼らのおかげであの米国同時多発テロは起こらなかった! 彼らのもたらした情報によって、本来の歴史で起こった自然災害、テロ、戦争、大事故などが防げるようになった一方で、未来の自分からのメッセージに翻弄され、人生が大きく変わってしまう人も多くいた。 主人公のSF小説家山本弘も突然の非現実的な出来事と未来の自分からのメッセージに翻弄されていく・・・ 私小説というだけあって自伝的要素も多く含んだ小説となっています。 過去の自分自身を主人公にしてそこから歴史改変ものの物語を作るっていう発想が面白いですね。 こういう自伝もありですね!! 自己オマージュ作品とういう単語が思い浮かびましたw 純粋にSF小説として読むよりも、山本弘の自伝として読んだ方が面白いように思います。 SF小説としても十二分に面白ですけど。 是非とも『アイの物語』を読んでから読んでもらいたい!! 『アイの物語』とはまた違ったアンドロイド像が見られて面白いですよ。 「作家にとって最高の作品は自分の作品だ。だってそれは、自分好みの題材を、自分好みの手法で調理し、自分好みに味つけしたものだからだ。まさに僕のためのオーダーメイド料理だ。美味しくないわけがない。」 しかし、山本作品のアンドロイドの微妙に人間と異なる描写は巧みですね。 わずかな違いでしかないんだけど、そこに違和感を感じ、それが逆に怖い。 結局人間とアンドロイドは互いに理解しあえない、そしてそれが当てはまるのは何も人間とアンドロイドだけではない・・・

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    投稿日: 2012.05.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

     タイトルだけで胸がときめく。  いいよね「去年はいい年になるだろう」。  しかしながら読もうと思っている本の(これより以前に書かれている本の)ネタバレがあり……あー……という気持ちになる。  あと、うーん……うーん……。  身内ネタというか、ええそれファンじゃないとついていけないよ、という箇所も多々あり、時事ネタの取り扱いも…………なんというか個人的には「ああ、そう」な気持ち。  しかしながら、もしかしたらフィクションかもしれないし、実際の本を読んでみれば違うのかもなぁとも思う。よーく考えてみると、ここまで自分を突き詰められるのってすごいよね。  地に足の着いた力強い作品だと思った。  男のロマンだと思いますがw

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    投稿日: 2012.05.11
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    タイムトラベルSF。ある日、未来からアンドロイドがやって来る。目的は「人間を守る事」。テロリストや犯罪者、独裁者を逮捕し、現代の医学では治せない病を治療する。本当に善意なのだろうか? アンドロイドを神様と置き換えれば、宗教になる。それ位、何でも出来る事に違和感があるけど、非常に面白く引き込まれた。ただ、未来の人類が戦争せずに共存しているとは思えない。その前に滅んでる気がする。それと過去の自分宛のメッセージなんてナンセンス。その時点で歴史は変わっちゃうし、ほっといて欲しい。 オチは作中で登場人物が言うとおり「SFにハッピーエンドはない。ただ物語は続く。」

    0
    投稿日: 2012.03.20
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    2001/09/11、24世紀の未来から「ガーディアン」と名乗るロボット集団がやってきて圧倒的な技術力の元、本来の歴史では起こっていたはずテロや犯罪を防ぎ始めます。この顛末を著者自らが主人公となって語るという形式が取られており、と学会のメンバーなど実在の人物が実名で登場、「禁則事項です」といったくすぐりをあちこちにちりばめながらも万人に楽しめるエンタテインメント作品になっています。

    0
    投稿日: 2012.02.03
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    このレビューはネタバレを含みます。

    未来から大量のロボットがやってきて、人類を良き方向に導こうとするが、個人や社会に様々な問題も発生するという話。 タイムパラドックスものは思考実験のようなものになりがちだが、この話の個性的なところは、作者が自分に降り掛かったらどうだろうかという思考実験を公開しているところと言えるかもしれない。 未来から数百万のロボットが人類を助けるためにやってきて、人類を良き方向に導いていく。山本さんのところには特に親しくやってきて、未来の自分からのメッセージを置いていく。 しかも、連中は自分のいた時代から1年ごと遡って、10年間滞在するということをもう300年もやっているというのだ。 のだから、山本さんに関わるのももう10回目とかで、どんどん枝分かれする影響時間軸や、どんどん増えていく平行世界の山本さんが、思考実験をどんどん複雑なものにして行って、発散した挙句論理よりも感情の世界に突入してしまう。 思考実験について、 私はSFの醍醐味は付加要素(もしくは欠落要素)が発生したときに人間はどう動くかということだと思ってるのですが、この話だと、自分にこういう事件が降りかかったらどうなるだろう、そしてどう思うだろう、というのを、かなり山本さん視点で書いていて、作者に親しみを感じると共に、自分であればどう感じるだろうということを想起させてくれて面白かったです。 その上で、登場人物に現実の人が大量に出てきて、こんな事まで書いてしまって良いのか?と思ったり、最後にこのメインの山本さんがひどい目にあうくだりでは、これ見てご家族怒らないのかなあ、とか、余計な心配もしてしまいましたよ。 結局、ロボット君たちがやっている人類救済というのが、おせっかいなのですよね。 現実のおせっかいというのも、良かれと思って手を出して、あんまり良い結果にならないことがままある。余計な手出しをして、かえって悪い結果になることもあるのであれば、本人に任せたほうが良いだろう、となってしまうのに、 ロボットの最大の快楽は人助けで、悪いこともあることはわかっていても、やめられないという展開には、じゃあしょうがない、となってしまいました。 このあたり、人間だとどうしても「お前たちのためにやってやっているんだ」から逃げ切れないところ、ロボットの本能に根ざした行為にすることで、それまで人間と似せても異なる存在であることを示していたこともあり、欲望からは逃げられないという点で、別の視点の「人間味」を感じさせられました。 人間同士でも私が感じる「話せば分かる」は、理解を深める事で同じでないことを認識する、ことを示してくれたような。 それでやはり山本さんの作品世界は好きだと思うのだけど、それだけにメインの山本さんの不幸が残念でした。 別の時代の山本さんが救われてても、やはり残念で、私の中で星をひとつ落とした感じです。 教訓:自分を見つめることをためらっているとろくなことにならない。

    1
    投稿日: 2011.12.30
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    アイの物語が面白かったので、借りてみた。 2001年の9月11日に、24世紀からロボットが来て、混乱もありつつ、平和になるという話。 アイの物語の延長上にありそうな話である。 著者の一人称で語られていて、実際の出来事と、実在する人物が入り混じるドキュメンタリー風。 全然似てないのに、村上春樹の1Q84を連想してしまった。 あるはずのないパラレルワールドといった感じ。 もしも、歴史が変わるとしたら? 過去の時分にメッセージを伝えられるとしたら? なにを伝えたいと思うだろう?未来なんて知らないほうがいい、と思ってしまった。 後編までくれば、一気に読めるけど、読み進めるのに、時間がかかってしまった。 アイの物語のほうが好みかな…

    0
    投稿日: 2011.12.02
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    山本弘さんの著作は二冊目ですが、長編を読むのは初めてでした。 SFを読んでいると、作者がドラマを書きたいのではなく、思いついたアイディアを書くために小説の形式をとっているのだろうなと思うことが多いのです。そのため、途中で理論の説明などを挟まれると辟易して、読む気がそがれてしまうのですが、そこは流石に山本弘。トンデモ本の世界でともすれば気分を害するようなとんでも話を楽しく読ませてくれるリーダビリティに長けています。自分が小説の世界に入り込んでしまったように錯覚するくらい、一気に読ませます。 というか、これを夫に書いてもらった奥さんは幸せだろうなあ

    0
    投稿日: 2011.11.24
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     新規開拓の日本SF。いやぁ、面白かった。日本のSFというと堀晃氏しか知らなかった私だが、今回は素直に感激。  クラーク、フォワード、イーガン、瀬名氏が好き(もちろん私も大好き)だという主人公は、吹田市在住だ。  ラスト50pの山場では、太陽の塔は言うに及ばず津雲台、千里南公園などわが家の生活圏がどしどし登場する。  ガーディアンという人間型ロボットとエクスキューショナーという脳髄だけになった人類との戦いがひとつの山場なんだが、この2者の対比は、瀬名氏に近い。  ちなみに、作者は P・K・ディックには興味はないんだろうか? その色は出てこなかったようだなぁ。  歴史を改変して人類を救おうとするガーディアン。でも、それってありがた迷惑ではないのか? ヒトは確率や多数決で生きているのではないのだってなテーマが、アシモフのロボット原則のうえで流れ、(少し安直だが)感動的なハッピーなフィナーレを迎える。 満足!  カバーの裏に使われている写真(中ノ島だ)も気に入った。ほかの作品も読みたいな。SFの好みが同じで自宅生活圏・吹田や職場生活圏・中ノ島が出てくるから親近感がより出たのかな。

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    投稿日: 2011.09.03
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    またも小説を読むのが久々になってしまいましたが、好きな作家が新作を上梓したと聞いて。 で、本作。氏のSF作品にしては、抑えめのSF描写で、むしろ私小説的な日常風景や心理描写が丁寧にされていて、まぁそれはこの物語のスタイルからしても真っ当なんでしょうけど、ちょっと、違和感は感じていたんですよね。あれ、らしくないな、と。 そうはいっても、導入の巧さはさすがだし、物語の構成は飽きもこない展開で、むしろ難しいSF描写がない分、読みやすいものになっているな、とも感じます。いうなれば、SF的要素を散りばめたヒューマンドラマとでも言いますか(物語は基本全てヒューマンドラマですけどね)。 まぁ、食い足りない感はあったんです。ワシは筆者の作品を読むときに(勝手に)求めている「らしさ」がやはり足りない。面白いんだけど、うーん……という感覚。 でもね、そんなものはエピローグを読んで吹っ飛んでしまいました。 ロリコンや、この人ほんまもんのロリコンや!(誉めてます) 結果論かプロット通りかは分かりませんが(そりゃ後者でしょうが)、この小説を通じて筆者が書きたかったのはエピローグなんだと思います。エピローグのようなことをしたかった筆者、エピローグのメッセージを(ある一人ないしは二人のために)伝えたかった筆者が、妄想の末に辿り着いた手法が「この物語を書くこと」だったんじゃないかな。ワシはそう妄想しました。 ぶっちゃけ、エピローグを読むまでは★3つにしようと思ってたんですが、エピローグを読んで★4つにしようと決めました。とはいえ、これは誰かに勧める的意味での増★ではなく、ワシの中での満足度です! (2010年読了)

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    投稿日: 2011.08.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    著者のアイの物語はだいぶ昔に読んだ。SNEあたりのことも、と学会あたりのことも、昨今の出版事情も、SFまわりのことも深くは知らないが、ぼんやりとは分かる。なので、今ある時間軸と、この物語の中で語られる時間軸の内容の差異やあるいは同じ部分とか、そういう叙述部分の仕掛けは楽しめた。詳しい方は、出てくる登場人物や作品名に「あー、あれ」のような、共感というか、共犯めいた感情を抱くことができると思う。 読み始めた当初、幼年期の終わりみたいな設定だな、と思った。と同時に、いい終わり方はしないだろうな、とも。 物語のすすみが、日記を小説に起こしている、という設定のためか、非常に淡々としたもので、起伏に乏しい。実在の人物と同じ姓名であるため、主人公への感情移入もしづらいものがある。そのため、私には少し読みづらいタイプの小説だった。 星雲賞受賞作と聞いて手にとってみたのだが、読んだ後、星雲賞受賞と聞くと、読者側の毒みたいなものを感じてしまうのは……うがちすぎなのかもしれない。

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    投稿日: 2011.08.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    未来からアンドロイドが人間を救うためにやってきて現在に介入する。 というSF読みにはおなじみの設定だが、身内ネタ・事件ネタ・トンデモネタ・ SFネタを薄くとりこみ、最後までは一応飽きずに読めた。 *******以下本当にネタバレ*********************************** タイムトラベル物だと、未来を知ってどのように行動するか。 ということが主体に書かれることが多いが、本作品でも未来の自分に 託された、既に書かれた本のデータをアンドロイドから渡されるが、今の 自分が書いた作品ではないので、それをそのまま使うことに違和感・ ためらい・後悔を覚えるシーンが何度も出てくる。 唐沢俊一も出てくるので、このような形式をとって、他人の作品を 自分のものととして発表することについての突っ込んだ話になるのかと 一瞬思った。 SF作家が書いた私小説と理解すればすんなり受け入れられるし、 飽きずに最後まで一気に読めたが、主人公が最後にアンドロイドに 「なぜ黙っていた!」と詰め寄る件については、なんでそこ?最初から わかるだろ普通、と正直脱力した。 エピローグで明かされる嫁が「オレ女」設定だったことが、本作品で 一番びっくりしたところ。

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    投稿日: 2011.08.08
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    「それが私たちにとって大きな謎なの。なぜ人間は、誰の得にもならない選択、時には自分にとって不利になるような選択をしたがるのか。なぜ幸福になることを拒否するのか。そうした行動は私たちの理解を絶している」 今回も面白かったー。 山本氏の作品は全部読みたい〜〜と思っているのだけれど、 この本は比較的新しい本だったからなおさらなのだー。 今回もSF! 滅多にSFなんて読まないんだけれど、この人のは読みやすくて、次々と読みたくなるー。 そして、SFって面白いなぁ、と改めて思わされてしまうのでした。 今回は、未来人(しかもロボット)が現在(?)に来て、歴史を変えようとするのだけれど、それはただ幸福になるばっかりじゃなくって、、 という物語で、いったいどんな着地点になるのだろー。 と、最後まで突っ走ってしまった。 なかなか、一概に何が幸せだとは言えない。 そういうのを上手く投げかけて、考えさせてくれる1冊だなぁ、って思うんだー。 面白かった。 【8/3読了・初読・市立図書館】

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    投稿日: 2011.08.06
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    ついに受賞!山本弘氏の星雲賞受賞作!! ブログで受賞のニュースを知り、さっそく読み進めました。というか、ファンという割に購入が遅いのですが...(^^;)ハハハ。 2001年9月11日。WTCを襲った同時多発テロは起きなかった...? ある日突然500万体ものアンドロイドがタイムスリップしてきて、全地球規模的にこれから起こる事件事故、戦争、飢餓等々、人類が被る不幸を予め防いでくれる、そんな時代になったとしたら。 善意に基づくこのアンドロイドの行為は「人間」にとって幸せなことなのだろうか??? まるで、以前話題になった「アイの物語」のアンチテーゼのような著者の思いに、「アイの物語」が好きなボクはオイオイと思いながらもあ゛っ!?という間に読了しました。 アンドロイドと人間の関係も「理解出来ないこと」を理解しなければいけない。そこから始めることが大切であると同様に、男女もそこを理解できるかどうかが、大切なんだろうな

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    投稿日: 2011.07.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    メタフィクション。ってこういうことでしたよね? 小説家が本人で登場して ほぼ現実に沿った世界で暮らしている。 そこへ途轍もなくSFな要素が到来する。 SF的な要素が大盛なのだが、 作者以外の人物も 現実を律儀に踏まえて登場し物語を展開していく。 入れ子細工のような、合わせ鏡のようなくらくらする感覚。 苦く切ない読後感。

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    投稿日: 2011.04.25
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    このレビューはネタバレを含みます。

    作者自らが「私小説SF」という本作。 普段通りの小説家としての日常を送る作者の世界がある日を境に一変する。突如やってきた、9.11テロを未然に防いだ、という未来からのアンドロイド。 彼らは「歴史上起こった災害や事故」を未然に回避させるためにやってきたのだという。 そして作家山本弘は美少女アンドロイドの訪問を受け、未来の自分からのメッセージとこれから書くであろう作品を受け取る。 実名とかもバンバン登場する一風変わったつくりの小説。なるほど。私小説SFか。 SFというと結構ややこしい理論だとか複雑な設定を読み込むまでにちょっと骨みたいな印象が強くてあんまり手を出さずにいたところが大きいんですが、こういう感じだと自分のような人間にも読みやすくていいです。非常に間口が広いというか。 それでいて内容もなかなかに面白いし。後半の暗い展開はそれまでが(それなりに)ほのぼのとした日常めいていたせいか幾分鬱になりましたが・・・

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    投稿日: 2011.02.01
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    歴史改変 SF、パラレルワールドもの。 主人公は著者山本弘氏自身。 その分私小説的な著者の熱い想いが伝わってくる。 実在の人物も多数登場。 途中、読者そっちのけのおふざけもあるが、 なかなか楽しめる、素敵な作品だ。 読了後に、タイトル「去年はいい年になるだろう」はちょっとグッと来る。 2011 年 第 42 回星雲賞日本長編部門受賞作品。

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    投稿日: 2011.01.29
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    2001年9月11日、ワールドトレードセンターが崩壊する映像の直後に 画面の中に現れたのはガーディアンと名乗る美女だった。 彼らはこれから起こる事故や自然災害、戦争を防ぎ 人間を保護するために24世紀からやって来たと言うのだ。 歴史を1年ごとに遡ってはその時代に10年滞在し、また次の年へ向かう彼らは その経験から我々の反発を見事に抑え込んだかのように見えた。 さらにSF作家の私の元には広報活動のため カイラという名のアンドロイドが訪ねてきた。 未来の私のメッセージや小説を持って。 未来の私が書いた物を自分の作品として発表してもよいものか、 悩んだ結果編集者に相談してみるが 考えることは誰も似ているようですでに未来の作品で 出版計画は満杯になってしまい仕事がなくなってしまった。 ただでさえガーディアンの出現でSFのアイディアが限られてしまったというのに。 家計は苦しくなり、カイラと私の仲を疑って夫婦仲も険悪に。 彼らは人間を保護するためにやって来たと言うが、 犠牲となる個人が未来とは変更されただけではないのか。 装丁:多田和博 カバーイラスト:西口司郎 カバー写真:アフロ 著者を主人公としたノンフィクション風SFです。 人間を救うことを生きがいとして未来からやってきたアンドロイドに対して 2001年の人々はどのように行動するのか。 実在の人物や出来事も多く登場するので、 「「そのまんま東が宮崎県知事になる」というのはどうだろう。  ギャグっぽいが微妙にリアルで、判断に困る。」のような 未来の自分が教える出来事を信じられない私、という ユーモアのあるシーンも多いです。 山本さんのプロフィールや作品を知っていればより楽しめそう。 しかし実際の奥さんと不仲になってしまった場面や 精神を病んだ未来の自分など厳しい描写も多く よく自分を主人公として客観的に書けたな、と感じます。 パラレルワールドの不毛さと人間の愚かさが浮き彫りになった作品。

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    投稿日: 2010.12.26
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    山本弘「去年はいい年になるだろう」読書中。AIである「ガーディアン」が登場するため、「アイの物語」と重なる部分が多々ある。ただ、メインアイデアは時間遡行だろうし、それを踏まえてタイトルをみると少し不穏な印象も...。後半に期待。 それにしても、長編作品ではよくも悪くも山本節が炸裂するのだよね。もちろんそれが好きなわけだけれど、たまには純粋に「物語」として楽しめる山本弘の短編も読みたくなる。短編集、そろそろ出ないかなー。彼は本当に短編がうまい作家さんだと思うのだよ。 山本弘「去年はいい年になるだろう」読了。未来からロボットがやってきた、という設定で、私小説スタイルで山本弘本人(この分岐とは異なる山本弘)周辺に起こった様々な歴史改編の爪跡を描いて行く形式。前半から中盤は、仕掛けの割に話が地味に見えるかも。 後半になって話が大きく動く。パラレルワールドものとしては短編的なネタなんだろうけれど、一人の人生を改編することの重みは、私小説形式によって伝わってきた。エピローグがよかったです。 山本弘は歴史改変によって生じる複雑なパラレルワールドについて、図を使って説明してくれるから親切で嬉しい。複雑な話がでてくる小説は、もっと図を使ったほうがいいと思うんだ。小川一水「第六大陸」なんて、ロケットの形状に詳しくない私にはちんぷんかんぷんな説明が多すぎた。 と、disっておきながら、同じく歴史改変パラレルワールドものの小川一水「時砂の王」はいい作品ですよ。「去年はいい年になるだろう」を読むと、また読み返したくなるな。「時砂...」はかなり派手な出来事が起こる作品です。

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    投稿日: 2010.09.08
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    ブクログのシステムが許せば星6個ですね。いつもながら……と言うほど毎回じゃないですが、山本弘のSFは、なんというか、肌に合います。 今回は時間テーマ、というか未来からの訪問者ですね。 山本弘の固定ファンをニヤリとさせるモノをちりばめながらも、じわじわとナニカが襲ってくる感じは、読んでいる間じゅう、ゾクゾクさせられました。 ただ、一方で「山本弘?誰それ」という人なら星4つ、という所かもしれません。

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    投稿日: 2010.08.31
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     京都在住の自分には関西弁で綴られる文体に親しみがあり、細かいニュアンスも理解できるが、SFを読んでいる時に感じる特有の「本」との距離というか間合いになれなかった。  美少女ゲームにありがちな「美女アンドロイドが押し掛け女房状態」という設定から始まるが・・・。

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    投稿日: 2010.08.10
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    SFなんだろうと思うけど、頭が固いのか今ひとつ楽しく読み進められませんでした。 おもしろくないわけではなく、難しい感じ。

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    投稿日: 2010.07.06
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    人間の善意や賢明さに期待するシステムは必ず破綻する 大切なのは許容することだ。生身の女性を脳内の理想像に当てはめてはいけない。「これを喜んでくれるはず」とか「これくらい許してくれるはず」とか、勝手な思い込みで決めつけてはいけない。 彼女には彼女の意思があり、好みがある。君の方が彼女に合わせなくてはならない。 結婚生活は理想通りにはいかない。疲れることも多い。しかし、理想と違うところも含めて素晴らしいのだ。

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    投稿日: 2010.06.27
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    20100614読了。実在人物が結構出て来て、自伝的、ではあるけども、パラレルというべきか。いかにも、でした。

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    投稿日: 2010.06.15
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    ふんぎゃあ。 なるべく読み終わった直後に感想を書くことにしている。その興奮なんかを冷まさずに書く為に。 ふんぎゃあ。 ああもう。 本当は五つ星なんて連発したくない。 これも読んでる途中まで、「よくできている。物凄く良くできている。でも、これじゃ四つだな」と思っていた。 いやもう。 ラストの章。 間違いなく五つな訳で。もっと星ないの。 神様ありがとう。 全然いると思ってないけど、ありがとう。 『アイの物語』を手に取らせてくれたことと、新刊のこの本に気づかせてくれたこと。 作中、『アイ〜』にて、人と云う存在に絶望している的な気持ちが込められているって云う下りがある訳ですが、でもね、やっぱり作者は人が、人を、信じたいんですよ。 人は、そりゃもうビックリしちゃうくらい愚かで、非論理的で、間抜けで、残酷なんだけど、でもさ、人が人を愛してやらなければ、誰がこの孤独な存在を認めてあげられるの?と。 云っているようにしか思えない。 あなたとわたし。 決して同一にはなれない。 でも、なれないからこそ意味が、意義があるんだよね、って云う。 生涯ベストに間違いなくランクインしました。

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    投稿日: 2010.05.19
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    多彩な活動で知られるSF作家の山本弘自身が、自らをモデルに私小説として描き上げたパラレルワールドを扱ったSF小説だ。タイムトラベル物をよく読みこなしているSFファンにはかなり面白い作品かもしれない。トンデモ本を楽しむ集まり、「と学会(とがっかい)」会長でもある著者が、それを逆手にとってパロディ精神とSF実証主義を駆使して書いた作品だ。2001年9月11日のニューヨークでのテロ事件が、300年後の未来からやってきたアンドロイド達により未然に阻止されたという書き出しで、「2001年の自分」がどうなっていったかを描いている。いわば、もしもの世界の実証的な再構築だ。自虐的なところも多々あるのだけれど、しっかり自分好みの美人アンドロイドも登場させて、苦しみながらも楽しんで書いた様子がありあり。

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    投稿日: 2010.05.14
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    「神は沈黙せず」、「アイの物語」の山本弘氏の新作。主人公は作者自身がモデル(?)のため、作中上記代表作のネタバレが多発し、未読の方は注意が必要。 作者が代表を務める「と学会」の話や主人公の家族の話等、どこまでがフィクションなのか興味深いが、純粋な小説としては及第点レベルといった印象であり、上記代表作には残念ながら遠く及ばない感じ。

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    投稿日: 2010.05.05
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    03年の作品「神は沈黙せず」を読んだ記憶が 蘇ってきた。相当面白く読んだ記憶が。 それ以降作者の他の作品を一切読んでなかったですが 自分の好きな作家さんなのかもしれません。 一般的に分かりにくくて敬遠されがちなSFですが 凄く丁寧に、伝えるんだという熱と意思がヒシヒシと 感じられる凄く人間味のある文章と、このSFド直球な 内容のギャップが堪らなく面白いです。 もう今年も4月になっていてビックリですが、個人的な 2010年のベスト3当確でしょうねー。 作家さんの人柄、そしてアィデア、ストーリー展開、 台詞まわし...とても自分の好みです。 丁寧に書かれてるのでSF苦手〜って方でも充分 楽しめます。何よりストーリーが秀逸でSF的な部分も 分からなかったら、勝手に頭が分かろうと働く筈...? 相変わらず仕事に殺されるような糞のような日々ですが こういった作品に少しでも浸れる時間が、まだあるのは 壊れずに済む...救いです。 いやー。面白かったぁ。

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    投稿日: 2010.04.07