【感想】屍者の凱旋~異形コレクションLVII~

井上雅彦 / 光文社文庫
(1件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 史織

    史織

    このレビューはネタバレを含みます

    「ゾンビ」がテーマの短編集。織守さん、斜線堂さんなど好きな作家さんが参加している+ゾンビパニックもの映画が好きなので購入。読んでから知りましたがこの異形シリーズというアンソロはとても長く続いているものなのですね

    全体的にゾンビパニック系というよりは、愛しい人が蘇ってそこからのいびつな同居…的な作品が多かったかな
    癖のある作品もあり全部を楽しめたわけではないのですが特に面白かったものは

    ・ゾンビはなぜ笑う 上田早夕里
     ゾンビパニック映画好きが求める正統派なゾンビ小説。ゾンビのいる世界でも経済活動が続いていて、宅配業者が最初の配達からゾンビに気づく導入部分がもう完璧。
     ゾンビになったピアニストの噂の真偽を確かめにいくために、「もう1人せめてサブマシンガンが使えるやつを」と連れて行き、「思ったより弾薬の消費ペースが早い!」となった時点でこれ死ぬ用につれてこられたキャラだわ!と映画的感覚で予想していたらしっかり生き残る仕事人でした。笑

    ・猫に卵を抱かせるな 黒木あるじ
    アンソロじゃないと出会えなかったな、自分じゃ普段読まないな、というタイプでドハマリした小説。百合アンソロの「彼女。」の恋澤姉妹を彷彿とさせるような、唐突に出てくる海外のアングラな世界観。
    死者を蘇らせる力を持つ妹の「まお」
    ただし蘇らせた死者は自分を殺した相手に復讐に行く
    ギャングが一人娘を失い復活を迫る中で、見張りである側近のそなりとの会話もいいし、彼が最後に虐待される少女を見かねて殺していたとわかるシーンも、妹ではなく「呪われた母親」だと判明するシーンも、まるで1本の映画をみたような世界観だった。

    ・ハネムーン 織守きょうや
    ゾンビが発生した世界、打ち捨てられた街の中で恋する彼女のゾンビの上半身と生活するハートフルな小説。なんか他にもこういうものが多い中で「腐っていく相手」の描写に重きがおかれているものが多い中これはミユちゃんとの人間関係の描き方が充填でなんだかほんとにハートフル。
    斜線堂さんが今回グロ路線タイプだったのでちょっと残念。切実な人間関係を描いているときの小説の方が好きなんですけどね、グロいときほんっとうにグロいものとことん描くんですもの…

    ・ゾンビと間違えても 澤村いち
    この作家さんはじめてで、有名な方なので気になっていたんですけど、面白かった!! ゾンビがそこそこ発生する世界で、「ゾンビと間違えたら=返事がなくて、生きている人間っぽくなければ」殺してもいいという暗黙のルールがある世界
    ホームレス、認知症の高齢者、引きこもりなどを「ゾンビと間違えた」ていで殺していたらほんとにゾンビに襲われるというオチもきれいで面白かった。何度も書いているように「愛しい人が蘇って腐っていく中でごまかしながら同居する」話ばかりの中でこの着眼点が面白い!!

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    投稿日:2024.06.16

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