【感想】ウンム・アーザルのキッチン(たくさんのふしぎ2024年6月号)

菅瀬晶子, 平澤朋子 / 福音館書店
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  • NORIS

    NORIS

    イスラエルに住むアラブ人キリスト教徒について調査研究をしている著者(文化人類学者)が、長年交流してきた一人の女性(ウンム・アザール)を主人公に、彼女の一週間の暮らしのなかで家族や周囲の人とのやりとり、作る料理、来し方の思い出話などを描き出した作品。
    イスラエルと言えば目下ガザの情勢がたいへんなことになっているが、彼女が住むのはユダヤ人とアラブ人が奇跡的に共存できているハイファという町で、(この本のエピソードは2000年代から2010年代前半の話なのでパレスチナ自治区も今ほどの緊張はなかったかもしれないが)少数派として味わってきたさまざまな苦労をにじませつつ、遠くに絶えぬ紛争を案じつつも、その日常はおだやかなものだと伝わってくる。ユダヤ人が多数派の国、少数派のアラブ人の中でもイスラム教徒よりもずっと少数派のキリスト教徒だが、暮らしの中にはユダヤ教由来の安息日があり、宗教に関係なくみんなが好きなイスラエル料理の定番がある。国際的に注目されているユダヤとイスラムのきびしい対立と分断だけがこの国のすべてというわけじゃない、と知ることは大事だろう。
    料理の腕一本で4人の子を育て上げ、今も自分のペースで働き、身の丈に合わせた暮らしを営み、孫たちが訪れたら手料理を振る舞うのをなにより楽しみにしているウンム・アザールはたのもしくすてきな人だと思った。平澤朋子さんの絵も、いつものようにていねいで色の使い方がすばらしくて、とりわけ食べ物や料理の魅力をひきたてている。
    巻末の「作者の言葉」の中に、現在のウンム・アザールと彼女の子どもや孫たちの近況もあってちょっとほっとする。著者とウンム・アザールにはやく再会の日がおとずれますように…
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    投稿日:2024.05.04

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