【感想】色の物語 ピンク

ヘイリー・エドワーズ=デュジャルダン, 丸山有美 / 翔泳社
(1件のレビュー)

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  • ahddams

    ahddams

    BLEU「青」に続き、今回はROSE「ピンク」の系譜を辿っていく。
    著者曰く、ピンクのフランス語は”rose”「薔薇色」で、薔薇の花が持つ豊かな色合いを意味する。(あくまで個人の感覚だが)ブルーと違ってピンクは濃淡の幅が広く、場合によっては電灯の色に溶け込んでしまう。
    本書では≪ヴィーナスの誕生≫(P.18)etc...といったアート作品に、幅広いピンクのイメージが散りばめられている。そのためなるべく外が明るいうちに、自然光が降り注ぐ場所で読んでいただくことをお勧めしたい。

    最近は疑問視する声もあるが、少し前までは「ブルー=男性」「ピンク=女性」の色と(いつの間にか)定められていた。
    しかし女性の色であると決めつける以前に、ピンクは古来より様々な場面で重宝されている。何ならフランス革命以前は男性王族・貴族の衣服にも用いられており、豊かさの象徴であった。(著者がフランス人でその基準なのは仕方がないにしても、世界的にはどうなのだろう)

    ≪軍神マルスに扮したアンリ4世≫(P.22)は初めて見たけど衝撃的!ピンクの鎧を纏うアンリ4世。
    現代人目線だと、誇らしげであろう笑みがチャーミングに映ると同時に、猛々しい印象のマルスがある意味塗り替えられたような感触を覚えてしまう…。

    他に驚かされたのが肌の色。
    ピンクは肌の色に抑揚を与えるといい、 本書でも≪アヴィニョンの娘たち≫(P.46)や≪6人の踊り子≫(P.90)等、ピンク肌を強調した絵が多数取り上げられている。肌に注目しながら鑑賞していくと、ピンクの採用率が高いことに驚くだろう。「ローズ・ドゥ・ナンフ」(妖精の肌を思わせる色)なんて種類もあるほど、ピンクと肌は切り離せないようだ。
    ふと、昔通っていた英会話クラスの教材を思い出す。塗り絵を通して色を学んでいく章で、白人男女の肌から矢印が引っ張られた先には”pink”と書いてあった。ピンク色の肌を持つ人がいるとは信じられずにいたが(イギリス人教師は”pink”と言って聞かなかった)、これでようやく合点がいった。

    時代や文化によってピンクの持つ意味が変わってくるのも興味深い。
    前述のフランスでは豊かさの象徴であった傍ら、イギリスでは「堕落」を意味する。古代ローマ皇帝が大量の薔薇で招待客を窒息死させるという事件を描いた≪ヘリオガバルスの薔薇≫(P.40)は、植民地で栄華を誇っていたヴィクトリア朝を皮肉っているという。

    同ヴィクトリア朝時代の作品≪ポプリ≫(P.86)にも大量の薔薇が描かれているが、かたやこちらは堕落というよりも憂いが浮き彫りになっている。ポプリ作りをする女性の儚げな後ろ姿。赤髪も相まって、映画「タイタニック」のヒロイン ローズ(奇しくも!)を彷彿とさせた。
    どちらの作品も、「薔薇色」が決して喜び一色を表すものではないことを教えてくれる。「絵」は口ほどにものを言うってか。


    陽気で余裕があって、時に浮いてしまうピンク。
    その種類同様、幅広い層から受け入れてもらえると良いな。
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    投稿日:2024.07.11

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