【感想】大いなる遺産 下

ディケンズ, 石塚裕子 / 岩波文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • itsuji

    itsuji

    予想していた通りの人物が、金の出どころだった。
    プロヴィスに対するピップの心境の変化と、プロヴィスの心が満たされていく様子が、美しかった。
    プロヴィスが、ピップを本当の意味での紳士と成長させたのだ。
    登場人物に多くの偶然的つながりが多い気はするけれど、少しずつほころんだエンディングだったので、良かったと思う。
    しっかりしたハッピーエンドなのだけれど、ディケンズは、もっと綺麗すぎるエンディングを書くのではないか、予想していたので。
    これくらいのラストで、よかった。

    第二部 13~20章 (~P141)
    第三部 全20章
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    投稿日:2021.03.22

  • aikow

    aikow

    このレビューはネタバレを含みます

    マグウィッチのピップに再会した時の感極まる様子。階段を上がってきた時の気味悪さ。そして恩人である少年へのピュアな感謝の気持ちはなかなかのもの。当の本人はあまり有り難がってないが。その後は予想を覆すイッツアスモールワールドな展開。なかなかの話だ。弁護士が女中の手首をみんなに見せた意味不明のセクハラ行為が今さら伏線だったとわかると、まどろっこしい文章はこういう部分が不自然に目立たないようわざとグダグダ書いてたのかとさえ思う。後半まさかの切ない展開。ボート作戦は失敗し、ピップは借金を抱え、ハヴィシャムさんはいつの間にか亡くなり、ジョーとビディさんが結婚する。ジョーの鍛冶屋を手伝いながらビディさんと一緒になるつもりだったピップはハーバートの職場で事務員となりやがて共同経営者になる。ハヴィシャムさんの屋敷の跡地でエステラに再会するが、別れの言葉を交わして終わる。てっきり、お金は失ったけど幸せ、と言う展開かと思ってたから唖然。両親のこともエステラには話さないで終わるなんて。マグウィッチだけはエステラのことを聞いて亡くなっていったのが救い。この小説でなんの教訓を得れば良いのかはさっぱりわからない。とても幸せな人がいて(ジョー、ビディ、ハーバート、クレアラ、マグウィッチ...)、寂しく不幸な人がいる(ピップ、エステラ、ハヴィシャムさん)

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    投稿日:2021.02.18

  • ka

    ka

    この物語は誰の視点に立って考えるかによって捉え方も多岐にわたるが、基本的には一人称視点なのでここではピップの目線に立って考えてみたことを記しておく。
    上下巻を通して、ピップの物の考え方は一貫して優柔不断で周囲の環境に丸め込まれていることがわかる。AよりもBの方が多くの利益を得られそうだ、といった具合にピップは合理的にことを運んでいる。しかし、この考え方は現実的といえど未来志向的ではないと言わざるをえない。そして、それは結局のところ現実的ではないという矛盾をきたすことになるのである。なぜなら、ピップの行動は(ことに金のことに関しては)なんの証拠もない話に飛びついてほいほいと流されるといった感じで、そこには一切の脈略もなければ意思もないからである。それだけならまだしも青少年特有の未熟なところと言えるのであるが、唯一ピップの感情の噴火口となっていたエステラの存在ですらも大いなる遺産とともにピップの中で行方をくらますことになるのだから始末が悪い。自己矛盾が社会的矛盾によって包括されるといった次第で、これを上手く説明するのは難しい。難しいながらもディケンズ はこれを成し遂げている。小説とはきっとこういうことなのだと思った。続きを読む

    投稿日:2019.02.28

  • feelingroovy

    feelingroovy

    ヒロイン、エステラさん。ハヴィシャムさんの英才教育により男を誑かす最強悪女となった彼女ですが。そういう彼女ですから、結局自分が何を望んでいるのか彼女自身も分かってないんじゃないか。で、勝手に想像するのが彼女は自傷願望が芽生えたのではないか、と。あえて自分を汚す方を選んでしまう生き方を望んだんじゃないかなー。続きを読む

    投稿日:2017.04.25

  • 青海

    青海

    事象だけで言えば結局彼の手に残るものは何もなく、尚且つそれは読者の予想できうる範囲だったろうけども、主人公の生々しい心理の変遷、割り切れない感情が素晴らしくて一息に読んでしまった。
    神の見えざる手という表現を聞いたことがあって、それは作者という神がストーリーに意味合いを与えるべく素晴らしい偶然や奇跡を主人公に落としていくことを表すのだけれど、仮にその手があったとしても主人公はついぞ神をちらと仰ぎ見ることもなくただ自分の人生を生きていた。
    歩んでも歩んでも先行きの知れない人生を人生として生きている、その歩みは作者や読者の期待とに乱されることなく、彼だけのものだった。
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    投稿日:2015.03.02

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