【感想】はじめから国宝、なんてないのだ。~感性をひらいて日本美術を鑑賞する~

小林泰三 / 光文社
(3件のレビュー)

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  • ahddams

    ahddams

    「自分の頭の中の『この国宝見たリスト』にチェックを入れる快感、たまりません」

    著者が国宝を「スター」と呼んでいたのも無理はない。
    自分も人越しに国宝を拝見しただけで、そのまま満足して帰りがちだ。「スター」とお近づきになるなんて畏れ多い。一目見られただけで充分。退色やほころびすら風情があってむしろ美しい!(劣化しても見応えがあるのは、作者の腕がよほど優れているという証でもある)
    そう、「国宝」の箔がつくだけで大抵の日本人は異常なほどにありがたがり、持ち上げまくるのだ。

    人やガラス越しに見るのではなく、「もっと近距離で『国宝』と呼ばれる作品に親しんで欲しい」という願いが本書には込められている。過去の叡智は国を上げて守らなきゃだけど、敬遠してばかりではいつまで経っても作品の放つメッセージをキャッチできない。
    著者の主観が目につくかもしれないが、そんな時は彼もまた作品に向き合っている内の1人だと思うと良い。彼曰く、少なくとも日本美術には見方に決まりがないから。

    皆様は「賞道」という言葉をご存知だろうか。
    著者の肩書はデジタル復元師・鑑賞学者で、前者はデジタル画像処理によって美術作品の色彩を復元する。一方後者は、ただ眺めるだけではない日本美術の鑑賞法を探ったり講演したり…という内容。「賞道」はその新しい鑑賞法として、著者が命名したものである。
    何か凄いけどとっつきにくい国宝を制作当時の色に復元し、時にはそのレプリカを直に触ってもらう。自由にコメントしてみるのも良い。そして参加した人は大体決まって本物を見に行きたくなるという…。賞道によって衝動に駆られるというわけか。(ごめんなさい)

    賞道の取り組みは4章に渡って紹介されており、各章の入口では新月ゆき氏の漫画が鑑賞のお供として控えている。「私は作品を見に来たのか?解説を読みに来たのか?」とつぶやく彼女に早速意識を叩き起こされ、そのままタイムトラベル(※)へ。
    (※)制作当時の色彩・環境を再現することで、「国宝」と呼ばれるずっと前の鑑賞法を実現できる。

    俵屋宗達の「風神雷神図屏風」をトレースしまくった尾形光琳。まるでアニメの絵コンテみたいな平安時代の「年中行事絵巻」や「平治物語絵巻」。「高松塚古墳壁画」に描かれた飛鳥美人の視線の先…。新たな知識や視点を得ることで、いかに自分が「眺めるだけ」の鑑賞をしてきたかを思い知らされる章ばかりだった。

    淀殿の打掛を再現するというプロジェクトも「こんなこともできるのか!」と感動した一例だ 。屏風に描かれた淀殿と思われる人物が着た打掛の模様を反物にプリントし、なんと京都の刺繍工房の協力を経て仕上げたという。
    桃山時代と現代の刺繍方法の違いやその理由まで明らかになっていて、その収穫に思わず「あっぱれ!」を送った。

    展覧会に来るたび感じていたむず痒さに手が届いた感覚。その爽快さたるや…!(人越しの鑑賞で満足したと、無理矢理言い聞かせていたのだ泣)
    特別講演だけでなく、美術館のワークショップに来てくれるだけでも賞道普及や意識改革につながると思うんだけどな〜。
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    投稿日:2024.03.19

  • Go Extreme

    Go Extreme

    制作された当時の色・同じ方法/環境で観賞 国宝をべたべたさわろう:昔は触っていた証拠 精神的にもべたた触る環境 国宝指定・明治以降 デジタル復元 賞道 美術品と対話→タイムトラベル 畏れずに触る これはもうアニメでしょ:平安のエレクトリカルパレード 栄枯盛衰・盛者必衰・諸行無常 常なるものは無い 秀吉時代のおたがいさま事:秀吉時代の空気 いにしえの人々と心を通させる体験 見立ての活用 超有名なお墓のお話:万葉人の時間感覚 簡単に時空を超える万葉人 よくぞ風雪に耐え奇跡的に私たちの目の前にお出ましになった続きを読む

    投稿日:2024.02.07

  • tagutti

    tagutti

    このレビューはネタバレを含みます

    <目次>
    第1章  国宝をべたべたさわろう
    第2章  これはもうアニメでしょ
    第3章  秀吉時代の”おたがいさま”事情
    第4章  やっぱり怖い?超有名なお墓のお話

    <内容>
    国宝など美術品のデジタル復元などを手がける”デジタル復元師”を名乗る小林さん。すでに2冊の著書を読んでいるが、視点が面白い。今回は、「風神雷神図屏風」(俵屋宗達や尾形光琳、酒井抱一)・「平治物語絵巻」「年中行事絵巻」・「花下遊楽図屏風」(とそこからの”淀君の打掛”)・「高松塚古墳」の4本立て。触ったり、動かしたり、色づけしたり、入ってみたり…。そこから「国宝」とありがたがる前に、作者や依頼者の視点や鑑賞の気持ちを読み取って、作品と対峙しましょう!という著者の考え(ある意味当たり前だと思う)に賛成。

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    投稿日:2024.01.31

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