【感想】NHK「100分de名著」ブックス カント 純粋理性批判 答えの出ない問いはどのように問われるべきか?

西研 / NHK出版
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
1
0
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • nirota0703

    nirota0703

    ■評価
    ★★★✬☆

    ■完走
    ◯哲学でカント以前・カント後と言われるほどの絶大な影響をもたらしたカント。難解と言われるが、本書では非常にわかりやすく説明されている。
    ◯感性・悟性・理性のフィルターで、認識をしていることと、物自体は、知ることができないというのはなるほどと思った。
    ◯物自体は理解できないとしながらも、これらのフィルターの解像度やを上げていくことや、複数のレンズをもつことは重要かと感じた。
    ◯厳格なほど規則正しい生活を送っていたカント。しかしルソーのエミールを読んでいた頃、あまりに夢中になり寝坊。近所の引立はカント先生がいつもの散歩コースに姿を表さないと言って心配したエピソードある。理想的な教育の姿を語っているエミールの、退廃した都会(パリ)で育つことに警鐘を鳴らしていることの、面白さも際立っている。

    ■印象に残った部分
    ◯感性で捉えて悟性で統合し、理性で判断する2階、3階建て構造。理性の暴走を批判するためにこのような形にしたとしている。
    ●あらゆる認識の際に主語たる私が常に働いています。だからこそ、スケジュールを立てたり、物事を継続して深く考えたりすることが可能なのです。私たちが人生を振り返ることができるのも純粋統覚によってさまざまな体験を私のものとして時系列にまとめているからです。
    ◯感性と悟性の部分が結びついた体験が、時系列に沿っている事による。

    ●このように、理性は推論に推論を重ねていく。直感される世界(現象界)から逸脱し、究極の真理まで行こうとする本性を持っているとカント述べます。答えが出ないことを求めて暴走しかねないのが理性なのです。
    ◯これが主張したいこと。

    ●なぜ本当の私が欲しくなるのでしょうか?私が存在している理由、つまり使命が与えられれば、何を目指して生きればいいかが分かると思えるからでしょう。そして哲学書の中にその答えがあるのではないかと西研は思っていました。これについて私の結論はこうです。どこかに「本当の私」を求めるとなく、「どんなことに私は喜びを覚えるか」を自分に問い、そこから生きる方向を見つけていくしかないと。このことを教えてくれたのは、カントより1世紀後の哲学者フリードリヒニーチェでした。
    ◯哲学はヒントにはなるけど、答えを出すのは自分次第なんだろうな。それが自由であり、そして自由の刑に処されているとも言えるんだろう。

    ●アンチノミーは二律背反と訳され。対立する命題のどちらにも答え出てしまい、どちらか一方に決着がつかない状態となるものをいいます。
    ◯小学生が使ったらバリアー だなー。トロッコ問題当ててきたら、それはアンチノミーなので立場や状況が変われば異なるといえばいいかな。神がいるかいないかの証明と近いものがあるよと。

    ◯神話が生まれるのは、飽くなき理性の暴走をストップすることができるからという考え方は面白い。

    ●カントの自由意志は、勝手気ままや、欲望の解放ではないということです。自由とは何が善いことなのか、何が私の素質・能力を進歩させるか、何が他者の幸福に貢献するか?と自らに問いかけながら生きているところにあります。主体的な道徳判断が大切であるということです。
    ◯よくあれ、よく生きろ と言っているのだな。まともである。チョット息苦しくもあるが。

    ●カント哲学の功績は、哲学の領域を「答えが出る領域」と「答えが出ない領域」とに明確に区分し、答えが出る領域に狙いを定めて議論すべきとし点です。そこには様々な疑問や問について、「これは本当に答えが出る問なのか?」「答えが出せないとすれば、どのように共有できる答えにたどり着けるような問い方になるか?」というふうにそれ自体を吟味するという発想があります。あらかじめ絶対の正解を想定する(これは独断論になります)のものでもなく、人それぞれの答えしかないと決めつける(これは相対主義になります)のでなく、人々が納得できる合理的な共通理解はどうやったら可能かと考えていくという姿勢をカントは示しています。
    ◯トロッコ問題への正しい対処ではないだろうか。問を吟味することが大事って、今いちばん大事な能力な気がする。

    ●どこかに真理があると信じ、それを入手したい、あるいは入手したと信じる姿勢(真理発見モデル)は、真理同士の対立を招きました。
    これに対してこの認識を本当に普遍性があるのか、より正確にいえば、さまざまな状況と価値観の中を生きる人たちも賛同するはずだといえるか?そもそもこの認識は不変のものという条件を欠いているか?このような認識についての姿勢を問いています。
    ◯短絡的で正しい答えがあるという幻想が、現代では溢れているんだろうな。決断ではなく中断であるというのが、大事なのかもしれない。当事者だけだと難しいから、ストッパーとしての人が必要なのかも。外部取締役みたいな。それは社外であるのが経営者だけど、社内でも利害関係が薄い部門、たとえば評価部門を年ごとに入れ替えをしたりすると、ストッパーとして成立しやすいのかもしれない。

    ●個々人の主観は、他者や社会から切り離されて完全に独立したものではないとヘーゲルは考えます。あらゆる動物や植物や昆虫、つまり個々の生命体はすべて大きな生命から分かれたものであって、だからこそ絶えず影響しあっていると考えることができますが、これと同じように個人の主観は時代の精神から分かれたものであるとヘーゲルはみなすのです。
    ◯チ。で言っている等しく15世紀の人間というのが思い浮かんだ。そしてわたしたちは、等しく21世紀の人間なんだろう。同じ時代を生きている共同体の中の仲間という認識が持てるのかな。すごいメタ視点。

    ●普遍性(共有性)を持ち得ない考えと普遍性を持つ考えがあること。これを区別することが必要です。また、共有するために、共有しなくてはならないルールや仕組みもあること、より一般的な言い方をすれば、「ある認識や価値観について、それが普遍性を持つための条件を備えているかどうか」を吟味することが認識批判でした。この「普遍性の条件」を考えてみるならば、普遍性をもちえない種類の考え(問や答え)については、異なる信念を認め合って平和共存するしかないということがはっきりします。
    ◯コロナワクチンを例にとっていた。あれを何だったのかで終わらせるのではなく、21世紀の人々は集団ヒステリーを簡単に起こす。それはニュースやSNSでいとも簡単に拡散される。そして田舎ほど閉鎖的な状況であることが、浮き彫りになった。
    続きを読む

    投稿日:2024.05.20

  • コロヴィエフ

    コロヴィエフ

    岩波文庫で読んだことはあったが、ぼんやりとしか理解できなかった。
    本書はとにかく分かりやすく書かれているので、理解しやすかった。
    本書を入門として、その後色々と読んでいくのが良いと思う。

    投稿日:2023.12.29

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。