【感想】ある女

アニー・エルノー, 堀茂樹 / 早川書房
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • coco

    coco

    母親が亡くなった後、記憶を頼りに書かれた母親の姿、回顧。ノルマンディの小さな村に生まれ育ち、貧しい中で常に上を目指して精力的に生きて来た母親と、大学に行き、いわゆる”社会的階級”の壁を乗り越えた娘。
    認知症になって施設に入った母親を、複雑な思いで見守る娘の気持ちが率直に書かれている。ボーヴォワールの「老い」と同時並行で読んでいるからか、なおさら「老いる」ことの”自然”と、哀しさを感じた。続きを読む

    投稿日:2023.02.13

  • cookingresearch

    cookingresearch

    このレビューはネタバレを含みます

    2022ノーベル文学賞受賞のアニーエルノーの作品。
    母親の死を契機に、母の人生を咀嚼するように、振り返るために書かれたかのような本。
     文を書くことで、母の人生を、母の価値観を、母の生活苦をそして母の心配を母の希望を母の喜びを追いかける。そうやって母の人生を文章で綴ることが唯一の追悼でああるかのようだ。これは場所で父親を追悼した時と同じ手法である。ただ母の場合は性についてより赤裸々に描写している。
    日本では私小説という分野が盛んで、小説家の家族は結構なんでも赤裸々にバラされてあらあらということがあるが、これはネタ探しというよりもう少し内省的である。フランスの民衆も歴史に翻弄され、貧しいながらも懸命に生きていたことがよくわかる。日本の手練れの小説家ならこのエルノーの母親を題材に面白い小説を書けるのに、面白くかかないところにこの本の面白さがある。

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    投稿日:2022.12.28

  • けい

    けい

    母親のことが書かれている。私自身も、母親と四六時中一緒にいると息が詰まるため、一定の距離を置いている。大学に入って実家を出たときにはホッとした。ある時、実家、母親のやり方に、ふと疑問を感じ、否定する気持ちが出てきたのだ。
    晩年の母親のシーンで、自分自身と母親、また、子ども達と母親としての自分を思って怖くなった。
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    投稿日:2022.12.28

  • ゆん

    ゆん

    エルノー二冊目。母の記憶をつづった一冊。『シンプルな情熱』の時同様、淡々とした語り口が好きなので、作品も好きだった。
    印象的な(視覚的に)冒頭のシーンも、母を冷静に見て、彼女が苦労したこと、階級を超えるために努力したこと、超えられなかったことも、淡々とつづられている。
    フランスは(?)こんなにも階級がかっつりしているんだなあと思いつつ、このような小説は果たして今の世代に当てはまるのだろうか、将来もこういった”階級”の小説、階級を超えようとする営みはあるのだろうか、なんてふと思った。この本で描かれているような、工場勤めの労働者階級と、大学を出て知識人と、という形はもう少し違う形で、存在するのだろうなあ…そういうものを可視化する小説(狭間にいるからこそ書けるもの)を、どこかで目にするんだろうか。もう少し透明な色な気もするんだけど、そうでもないのだろうか。

    というのは話の本筋の一つだけれど、『ある女』を読むと、父親の方の『場所』も読んでみたいと思う。

    「この本は伝記ではないし、もちろん小説でもない。おそらく文学と社会学と歴史の間に位置する何かだと思う」

    これは彼女の母の物語であり、アニー・エルノーの物語であり、そして娘の物語だった。私も自分の母の物語をいつか紡ぐことになるのだろうか。
    そういったことをつらつら読みながら、静謐なフランスの雰囲気に囲まれる本だった。良かった。
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    投稿日:2022.12.03

  • ざぼん

    ざぼん

    「シモーヌ・ド・ボーヴォワールに一週間先だって死んだ」著者自身の母親の生涯を描いたもの。貧しい家庭に育ち、勤勉に働いて、一人娘を立派に教育し、出身階層よりも上昇させたこの母親がたくましく仕事(食料品店とカフェの経営)をこなし、老いては娘夫婦と同居して中流階級にも適応していく。そんな才気あふれる母親が次第に老い、重度の痴呆症状になる様子は切ない。
    80年代当時のフランスの介護事情や、葬儀までの段取りがリアルに描かれていることも興味深かった。
    続きを読む

    投稿日:2012.07.20

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