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小手鞠るい / 平凡社 (17件のレビュー)
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ryokutya87
心優しく正義感の強い青年はなぜ空港乱射事件を起こすに至ったのか。著者は主人公をライターに設定し、物語は綴られる。なんというか、体裁は整っているけれどもまったく深みを感じない。千尋という人間に興味はある…のだろうが、読んでいる限り、そこに共感があるのかどうか疑わしい。事件に至る千尋の変遷も今一つ得心することができなかった。 「革命ちゃん」に恋した青年が熱情のままに駆け落ちしたけれど日々の生活という現実に打ちのめされてそれでもそれを認めたくなくてまだかろうじて残っていた美しいままの「革命ちゃん」の写真を胸にビルから飛び降りた、みたいな話だったな。 いや、そこに正義は皆無だろ。 立松和平の「光の雨」とは天と地ほどの志の差を感じた。続きを読む
投稿日:2023.10.19
pokke
1972年にイスラエルのテルアビブ空港でテロ事件を起こした日本人3人、そのうちのひとり千尋に焦点を当てたノンフィクションのような小説。何とも言い難い複雑な気持ちで読了。自虐史観に囚われたような事実に反…する歴史的事象が語られたり、千尋を優しく素晴らしい人物であるという一種のあこがれのようなものを持つ語り手の文章に強い違和感を感じた。題材はとても興味を持てるもので、彼らの事をもっと知りたいと思ったけど、美化させてはいけない。どんな理由があろうと罪もない人々を死に至らしめたことは決して許されることではないから。続きを読む
投稿日:2023.07.17
Nanamam73
高校生だった著者が、ある朝の特別な朝礼で校長から聞かされた訓辞。同校出身の奥平さんが起こした事件から、この人のことを書きたいとふと芽生え、50年後に書き上げたというあとがきがある。 物語の主人公である…不遇な女性ジャーナリストとともに奥平さんをモデルにした千尋とその人が手元におくヴェーユの思想をなぞっていく。駆け回り悩む主人公とともに世界の動きやこの人の思いをわかりたい、とは思えども、私には根本的な千尋の活動の転換点やヴェーユの記述が理解しがたかった。セツルや弱者への活動が闘争や正義のためと称する攻撃に向かう狂気、あたかも真面目に考え考え続けた若者が向かった先のようで、時代が違えば大学生としての自分の隣にあった思想なのか、というように物語られるけれど、やはりわからない。主人公の元恋人のようにすごい人というふうな気持ちに、全く共感できない。 それでいいのか、と感じながら本を閉じる。 少なくとも、書かねばならないという著者の気持ちが伝わり、この事件を知らねばならない忘れてはならないということを、自分の中に刻み込めたことに、読んだ価値があった。続きを読む
投稿日:2023.03.21
aozora_SR
この本を読んで感じることが2つあります。 ・「事実」をなるべく正しく伝えるべきだったのではないか? 脚色を加えたフィクションではなく、「あの時起きた真実」が必要なのではないか? もうひとつ、 ・「…事実を忘れない」ためにも「物語化」して後世に伝えるべきなのか? 現代においてなお続く悲惨なテロリズムや対立の連鎖は我々日本人にとって他人事ではなく、まさに当事者であったことを忘れないために、私たちが知るべきことは非常に重いと感じました。 本書を出版する決定をした出版社、著者の勇気に敬意を感じます。 大切に受け止める必要がある一冊だと思います。続きを読む
投稿日:2023.02.02
ちばにあん
事件をリアルタイムで知らない世代からすると、混沌としすぎて正確に捉えることが難しい時代を、小説という方法で表現した作品なのだと思えた。 この時代に自分が同じ世代で生きていたら、この政治的思想にの…めり込んでいたかもしれない。そう思うほど千尋の一途さに感銘を受ける書かれ方だった。 YA世代の極端な奉仕的思考。何かを成し遂げたいと大それた野望を抱く一方で、自分の存在価値を小さなものとして粗末に扱いがちな心理。すっかり忘れていたけど自分にそんな時代があったと思い出した。 世の中を良くするために活動をはじめた人物が、次第に極端になり、手段を選ばなくなり、危険思想と見なされ、実際に危険人物となり果てる惨劇。 他人事のようだが、その知能を活かせば、別の方法で社会貢献できていたはずだと残念でならない。そんな悲劇を繰り返さないために歴史をもっと深く学ばなければならないと思う。 続きを読む
投稿日:2023.01.23
xiyue
3寄りの4。奥平剛士をモデルにしているのは分かるのだけれど、ここまで書き込むのにフィクションにする必要があったのか、そして作家が作品を書く件は要るのか...フィクションにしてもいいけどもっとシンプルに…奥平剛士の心の動きを見えるような書き方をした方が強い思いが伝わったのでは..というちょっと勿体無い気がする作品。続きを読む
投稿日:2023.01.10
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