【感想】亜鉛の少年たち アフガン帰還兵の証言 増補版

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 奈倉有里 / 岩波書店
(23件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
8
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ブクログレビュー

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  • 充実大豆

    充実大豆

    アフガン戦争に行ったソ連兵士や、夫や息子を亡くした母親の語りがまとめられている。

    「チェルノブイリの祈り」の時も思ったけど、この作者の書く本は本当に生々しい声であふれている。
    戦争から帰ってきた人たちのPTSDのような側面に加えて、ソビエトの隠蔽体質によって生まれた悲劇がかなり強く描写されていたと思う。

    本編の後にこの本の内容について作者が訴えられたことの描写があり、それまでに描写された戦争やソビエト社会という遠く感じる事象から、現代においてもその体質が変わっていないことを再確認するようになっていた。

    作者は自分の身を削って本を書く人なんだと思った
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    投稿日:2024.04.13

  • えんじぇる

    えんじぇる

    図書館に予約したことをとっくに忘れた頃に手元に届いた。『戦争は女の顔をしていない』を読み終えた後予約をしたことを思い出した。

    分厚い434頁の中、327頁は、戦争体験当事者とその家族のインタビュー記事。重く連なる文章が延々と続き、読むのが辛くなりなかなか読み進めることができない。
    多くの関係者に会い、淡々と録音しつつ言葉を記録として集めた著者を思うと、心が重くなる。

    335頁からは訴えられた著者の裁判記録。
    どちらの気持ちも理解できる。これも冷静に記録されており中立的に読んだ。

    『戦争は女の顔をしていない』1978年頃のインタビュー。『亜鉛の少年たち』1986年頃のインタビュー。
    2022年からウクライナ派遣されるロシアの少年兵士たち。

    進歩はないのだろうか?
    【教育】大事ですね。


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    投稿日:2024.03.10

  • soy_cappuccino

    soy_cappuccino

    社会人になってから、近くに置いておきたい本の1つ。

    アフガンってこんなに悲惨やったんやというのと、よくもこれを出版したなというのが率直な感想。重い内容なのは間違いないのに、どんどんと引き込まれる。情景が鮮やかに浮かび情が湧きながらも、どこかでそれを冷静に落とし込みながら、アフガン帰還兵の証言と裁判に触れることができた。「戦争は女の顔をしていない」とはまた別の衝撃で、これは、本当に今のロシアがやっていることと見事に重なる。アレクシェーヴィチのようなインタビュアー・伝え手になりたい。自分の原点を思い出したような気持ちにもなって。さて、がんばるか。続きを読む

    投稿日:2023.11.30

  • spica2015

    spica2015

    あまりに重く辛く、読み始めたのを後悔しつつ、一気に読まないと読めないと思い、ほぼ一日で読んだ。裁判記録の途中で1日が終わり、もう少しで終わると言うのに、次がなかなか手に取れなかった。手を離すと辛くて重くて手に取れなくなる。でも間違いなく一気に読む本ではなく、誰かと語り合いながら少しずつ読みたい本であるのは「戦争は女の顔をしていない」と同様だ。
    裁判記録まであるので、二重に考えさせられる。

    今もウクライナやガザ等世界のあちこちで殺されたり殺したりの戦いが続いている。どうして人間は学ばないのか。「この本読めよ」と思う。
    戦争で殺されたり殺したりする人は、みんな普通の庶民で、戦争を起こすことを決めた人たちではない。死んだり、手足をなくしたり、心を病んだり、息子を亡くしたりするのはみんな庶民だ。何ができるのか、下々の者たちは。
    たまたま「今の日本は2年前のウクライナと同じ状況だ」と言う記事を読んだばかりで、恐ろしくなった。戦争の手前で、ずっと手前で止めなければいけない。そちらに進ませようとする政治を止めなければならない。戦争は始まる手前で止めるしかない。始まってしまえば、終わらせられないし、核兵器は絶対に使わせられない。泥沼に陥り、戦場に駆り出される庶民も、残された家族もみんな苦しむ。死ぬ。手足を失う。飢える。
    大国の犠牲になどなりたくない。戦争を起こして喜ぶ人たちの犠牲にはなりたくない。平和な国で生まれて平和な国で死んでいきたい。ウクライナやロシアやイスラエルやパレスチナの人たちも本当はそのはずなのに、そうはなれない、そうも思えない状況に置かれているようで辛い。
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    投稿日:2023.10.21

  • hatayan8

    hatayan8

    衝撃的なプロローグ、これから読もうとする全貌を示唆してくれる、著者の丹念な取材から得られた証言の数々、読めば読むほど絶望感しかない、可哀想な派遣され犠牲となった二十歳そこそこの少年たち、そして現実を受け入れきれない母たち、悲しすぎる。当時のソ連今のロシア何も基本変わってないのかもしれない。
    この作品を語る言葉「透徹」に納得する。
    以下に印象的な文を書き残す。
    ・九年もの間にソ連の製品はまったく進歩しなかった。包帯も然り、副木も然りだ。ソ連の兵士ってのは、いちばん安上がりなんだよ、なんにしても我慢を強いられ、文句も言えない。備品も与えられず、守られもしない、まさに消耗品さ。千九四一年もそうだったし、五十年度たっても変わらない。どうしてなんだ。(曹長)
    ・人間は戦地で変わるんじゃない、戦争から帰ってきてから変わる。現地で起きたことを見つめていたのと同じ目でここの物事を見つめた時に変わるんだ。現地であの生活を経験すると、伝えようのない感覚が残る。ひとつには死に対する軽視だ、死よりも重要な何かがあって、、、(狙撃兵)
    ・戦場では感情を殺す、冷静な頭脳、計算、銃こそが生命線だ、銃は体と一体化する、もう一本の腕みたいに(小隊長)
    ・これは俺たちが来るつもりだった戦争とは別物だと(大尉)
    ・すべては無駄だった(少佐)
    ・政治的過失だった、あの戦争は「ブレジネフの愚策」であり「犯罪」だった。この世界にうまく戻ってこれない、生きる事が、ただ生活を続ける事がここでは息苦しい(少佐)
    ・イスラム教は文明を前にして揺るぎなく強固だった。、、でも俺たちは祖国に対して潔白だ(歩兵)
    ・私たちは騙されたのだと気づき始めたのはまだ現地にいたところでした。悔しいのは、、まるで私たちが存在しなかったかのように消し去られてしまったことです、臼で碾かれたみたいに。もっとも不幸なことは、過去を差し押さえられてしまった(補助員)
    ・おふくろ、アフガニスタンってのはさ、俺たちがどうこうできるような場所じゃないんだ、あんなところは嫌だ行きたくない!俺は血にまみれてる、この手で人を殺したんだ、戦場から抜け出せない、俺は血まみれだ、なぁ戦死するのと生き残るのとどっちがいいんだろう、わからなくなっちまった、、(士官)
    ・今や世間は闇取引やマフィアに溢れ、みんなが無関心で、俺たちはまともな仕事には就かせてもらえない(軍曹)
    ・私たちは子供を亡くしたのに、彼女(著者)は名声を手にしているんです、、
    ・誰もソ連に来てほしいなんて思っていなかった、アフガンの人々にソ連の支援なんていらなかった、私たちは占領者だった。
    ・ベラルーシ共和国は共産主義国家の崩壊した後の世界においても共産主義の特別保護区であり続けるという悪評をもたらす、、、
    ・あの本にはアフガン戦争を企んだ大馬鹿どもによって犠牲なさせられた少年たちに対する愛がほとんど感じられない事だ。
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    投稿日:2023.07.11

  • はかいし

    はかいし

    内容は貴重なもので、ここまでのリサーチは大変だったろうと思う。ただ、当然のことながら原書を読まずに言うのだが、すこし翻訳が読みづらかった。三点リーダの多用は、もうすこし控えられたのでは…。

    そのせいというわけではないが、内容も相まって読んでて息苦しさを覚える。時折、著者はインタビュー相手から責められるのだが、その程度の混乱や攻撃性が芽生える程度なら充分ましに思える。

    現在進行形のウクライナ侵攻と結びつくかどうかはわからないが、戦争について、ニュースで見るだけでは伝わらない部分も多いと思う。だからといって文字でなら伝わるというわけでもないだろうが、まだましだろう。
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    投稿日:2023.07.07

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