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J.マルトゥレイ, M.J.ダ・ガルバ, 田澤耕 / 岩波文庫 (3件のレビュー)
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taroi
ギリシャ帝国を舞台に展開するティランと愉快な仲間たちの恋愛模様。これ、軍記 物じゃなくて宮廷文学だと思うと納得ができる。意馬心猿の情が止まらないティランと、好きだけど最後の一線は守りたい皇女。恋愛脳の…友人として両者をたきつける皇女の侍女と、ティランに横恋慕する年増の乳母。挙句の果てにティランの家来がギリシャ帝国の皇后と不倫。お前らギリシャ帝国の危機はどこに行った。挙句の果てにトラブルで出陣もままならない事態に。怒涛の三巻であった。続きを読む
投稿日:2024.02.27
淳水堂
2巻はこちら。 https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4003273826 ティランの一族の身元が明かされた。イングランド王の縁者であり、アーサー…王の父を祖とする「ロカ・サラダ」の家系なんだそうだ。これは初めて言及されたので「後付設定」な気がする ^^; このロカ・サラダ一族からギリシャに来ているのは、ティランと、従弟で従者のディアフェブス、甥のイポリト、従弟のブランシュ子爵。 ティランと従弟たちは20歳くらいかな。ギリシャ宮廷ではアスタファニアちゃんが14歳なのでカルマジーナ皇女とプラエールちゃんも同じくらいだろう。 こんな若者たちの間で恋愛事情がごちゃごちゃぐちゃぐちゃと絡み合う。そしてティランの活躍の舞台はギリシャ帝国から北アフリカへと移る。 ❐恋愛事情 ●ティランとカルマジーナ皇女 ティランは2巻に引き続きカルマジーナ皇女に「こんなに愛してるんだから答えてよ、寝台に入れてよ。この愛に答えてくれないんなら一層のこと殺してよ。」と押しまくっている。 それに対してカルマジーナ皇女は「ティランがいないとギリシャ帝国は負けてしまうし、ティランのことは愛しているけれど貞節は守りたいから急かさないでほしい。」という態度だったが、ティランの押したり引いたりがついに功を奏した! カルマジーナ皇女は「ティランを自分の夫にすること、自分の権利のすべてを譲渡する」と告げる。密かな婚約の印として同じ寝台に入ることに。ただしこの時点では抱き合ったり触り合ったりするだけで、最後までは至らなかった。 そしてこの、一見叶ったかのような恋愛は、この後むしろややこしくなってしまうのだった。 ●ディアフェブス(ティランの従弟)とアスタファニア(宮廷侍女でマケドニア女侯爵) 2巻で、ティランとカルマジーナを立会にして寝台での行為を行い極秘結婚しているこの二人、3巻では正式に結婚しました。これによりディアフェブスは「マケドニア公爵」となり、ギリシャ帝国皇帝の親族になった。 ●イポリト(ティランの甥)とプラエール・ダ・マ・ビダ(宮廷侍女) プラエールちゃんはなかなか明るくあけすけで行動派で現代っ子。イポリトのことを「好き好き好き!関係持ちたいって言われたらいつでも応えちゃう!」と公言している。ティランとカルマジーナ皇女の関係が進まないのを「さっさとヤッちゃいなさいよ!!」 (#`皿´) と積極的に橋渡しもする 笑 ●イポリトとギリシャ帝国の皇后(カルマジーナ皇女の母) しかしイポリトは、実は密かに皇后を熱愛していたのだ!ナンダッテー読者も皇后ご本人も初めて聞いたぞ!そして皇后は「孫の年にも近い」イポリトを部屋に入れて愛人としての行為を楽しみまくるのでした。 ●ティランとピウダ・ラプザダ(カルマジーナ皇女の乳母) ピウダ・ラプザダもティランを熱愛していた。そこで自分が育てた女主人であるカルマジーナ皇女とティランを別れさせて自分が愛人になろうと策を弄する。あの手この手でティランとカルマジーナ皇女に相手の悪口を吹き込み、ついにはティランに「カルマジーナ皇女が黒人のモーロ人奴隷と関係を持って堕胎までした」ということを信じさせる。 物語ではピウダ・ラプサダは余計なことばっかり言う年増未亡人みたいな扱いだが、本来は美女らしいし皇女乳母なら相当身分教養高いはず。物語の恋愛の中でもピウダ・ラプザダの場合は財産とか関係なく純粋にティランの愛人(あわよくば妻)になりたかったんだろう。それにしたってこれほど育て子を陥れようとする乳母って初めて読んだし、応援もしないけど。 そしてこの物語では全体的に他人から吹き込まれたことを信じすぎなんですよね。物語だから笑って読めるが、真実の証明のしようがなくて悪意の噂だけで人を貶められる、場合によったら殺せるって怖いよなあ。 ❐騎士が死ぬとき ディアフェブスたちの軍勢がトルコ軍に大敗して捕虜になったという知らせも入る。ギリシャ帝国は「自分たちは殺されるか奴隷にされるかだ」と大混乱。 こんなときに頼れるのはティランのはずなんだが、ピウダ・ラプザダから吹き込まれたカルマジーナ皇女の姦淫行為を本気にしてしまってショック死寸前だった。瀕死の床で告解まで済ませたティランを起き上がらせたのは、ユダヤ人老婆だった。 老婆は勇敢な騎士というものを「名誉だけを目指して戦い恥をかくくらいならば死を選ぶもの。だからティランに聞こえるように兵士たちに大声を挙げさせて敵軍が攻めてきたように見せかければ、ティランの勇気が戻ってくるでしょう。(P340抜粋)」ということ。 つまりティランはカルマジーナ皇女に裏切られたという「恥」で死ねるんである。だが敵を前にして一人でぶっ倒れているような「恥」をかくことを思えば生きる活力になるのだ。 騎士がぶっ倒れたり死んだりやたらに好戦的だったりする理屈がわかった気がする。 ❐プラエールちゃん、ティランくんに大喝!! ピウダ・ラプザダの言葉を信じたティランはカルマジーナ皇女から離れようとする。そこへプラエールちゃんが訪ねてきてティランの誤解を解くことに成功!しかし時と処が悪かった。ここはティランがトルコ軍との戦争に向かうための船の上、そして嵐が来て他の船は沈み、ティランとプラエールちゃんの乗った船も転覆しそうになる。ティランはカルマジーナ皇女に誤解したことを詫びられないこと、プラエールちゃんを巻き込んでしまった不運を嘆きプラエールちゃんに詫びる。 すると荒れ狂う船の上でプラエールちゃんからの大喝!! <運命を責めてはいけません。責められるべきはあなたさまご自身なのです。なぜなら、愛するも嫌うも、運命が定めたことではないのですから。(中略)人間の自由意志で変えられることには運命の力は及ばないのです。では、何が原因でこんなことになったのかお知りになりたいですか?それはあなたさまに分別が足りなかったからなのです。あなたさまが当然の理を捨てて悪巧みにまんまとひっかかったのがいけないのです。富や権力や地位などは確かに運命が与えてくれるものです。しかし誰を愛し、誰を嫌うかということや、善行をなすか悪事を働くかということ、何を望み何を望まないかということ、それは皆、個々の自由意志に委ねられているのです。P366> プラエールちゃんも推定14歳くらい。彼女の言葉には喝采をあげてしまう。この時代、生活や命を保証するものはない。貴族王族だって戦争に負ければ奴隷になる。そんななか女性は女性として強い意思を持ってい生きているのだという声を聞いた気がする。 ❐北アフリカのティランくん ティランやプラエールちゃんの乗った船は北アフリカの、現チュニジアのあたりに漂着した。 北アフリカは国や首長たちによる戦争が行われていた。ティランは<首長のなかの首長>とよばれるモーロ人騎士に捕らえられた。だがティランの騎士としての才能を見出した首長はティランを捕虜ではなく頼れる戦士として遇する。 軍を任されたティランの活躍により、首長側は勝利する。 ❐プラエールちゃんも無事だよ! 北アフリカに文字通り身一つで漂着したプラエールちゃんだが、親切なモーロ人を見分けて匿ってもらうことに成功する。 民族同士や国同士では激しい戦争をするけれど、住民レベルでは「昔キリスト教の女性に助けてもらったから、そのご恩をこのキリスト教の娘さん(プラエールちゃん)を助けることで返したい」という交流が行われているんですよね。 ❐王位継承 ある事件のときにディアフェブスは妻のアスタファニアに向かって「ギリシャ皇帝を殴りころそうかと思ったよ。帝位にはティランか自分が即けばいいし」と告げた。 援軍にきたばっかりのフランス貴族がギリシャ皇帝殴り殺して代わりに即位できるもんなのか。この時代のヨーロッパ王位継承って不安定だし、血筋も問われない、強くて他の人たちを説得させるディベートができればよいんだろうか。 しかし北アフリカでの戦争では敵の王を裏切った兵士が「あなたの財産は父や親族から受け継いだのではなくて他の王の領土から略奪、強姦、惨殺して奪い取ったもの。そんな行為は神が怒る。私は神からあなたの罪に報いを与える使命を得たのに、あなたはまだわからないのか。」というようなことを言っている。 そうだとするとやっぱり殺して奪うのは悪いという認識も合ったんだと思うんだが。 ❐女性の貞操 男女ははっきりと恋愛感情を告げし、既婚未婚に関わらず関係を持つことも悪いことではない。騎士は想い姫と寝台をともにすることを熱望するし、既婚女性が愛人を持つこともある。 既婚女性の恋愛も語られる。ピウダ・ラプサダは「貞操を守らなければならない。姦淫するにしてもキリスト教相手でなければならない、神に対して申し訳が立たないし、恥ずかしい行為だ。」といい、ギリシャ皇后はイポリトからの初々しい告白に「告白とは良いものだ。」と伝える。 女性が正式な結婚以外の関係を結んで社会的に非難されることと、愛人として問題ない扱いの線引がよく分からん、公然の秘密であっても暴かれたり正式に訴えられたらダメなんだろうか?続きを読む
投稿日:2023.09.16
カサンドラ
このレビューはネタバレを含みます
敵(イスラム民族)との緊張感を保ちつつ、直接戦闘がない間は、騎士はやることがない。とすれば、恋物語となる。 皇女に一目惚れしたティランは、待女たちに唆されて夜這いをかけるが、未遂に終わる。結果、逃げ出しに失敗し足を複雑骨折する。そして、次々におこる、恋愛騒動。これが非戦闘時の騎士の姿なのでしょうか。 皇后も息子のようなイポリト(ティランの甥)と不倫をする。このとき、彼にその覚悟を迫る。「気持ちを強く持ちなさい。決心が弱いと、いろいろな危険が見えてくる」と。そして、ここで決意したことが、最終的に彼がギリシャを治める時の礎になっていくような気がする。 一介の騎士(騎士にもなっていないのか?)から、皇后の相手としての将来の立場に向けて。 皇帝が息子を戦闘で亡くすシーンがある。「帝冠を被り直し、皇子を失った悲しみと辛さよりも、騎士道に則った立派な死に様であったということを聞いた喜びの方が大きい」と語る。武士道もそうですが、悲しい立場ですね。
投稿日:2022.04.22
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