【感想】あたしたち、海へ(新潮文庫)

井上荒野 / 新潮文庫
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • Limei

    Limei

    女子中学校の親友同士の3人組。
    ひとりがあることをきっかけにいじめられ、ふたりはいじめられないために加担させられ‥
    2人の女の子を中心に、周りの家族やいじめる生徒側の視点から物語は進みます。

    うう、苦しい。
    理不尽の一言に尽きる‥でもいじめをなくすのは本当に難しいと改めて思う。

    相談してくれたらと大人は思うけど、学校の世界は子供達にとってはきっと全てで、絶対になってしまう。
    学校以外の居場所もあって、もっと柔軟に自分に合った場所で学べる選択肢が当たり前にある社会になるといいのに。
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    投稿日:2024.03.18

  • 四木

    四木

    読み終えて、『あたしたち、ペルーへ』じゃないのかぁ……と思いました。それほど、「ペルー」が何度も出てきました。
    ……まぁ、「ペルーへ」ってタイトルだったら、手に取らなかったかもしれません。

    いじめの傍観者あるいは加担者からの目線だけかと思っていたら、親側、先生側、いじめている側、いろんな人の目線でえがかれていました。
    それがとても面白く、同時に、一部の登場人物への嫌悪感が強まりました。特に大人たち。こんな大人が子どものそばにいてはいけないです……。

    いじめをおこなう人間はたいていご家庭に問題があり、彼らも何かしらの犠牲者であることが多い……とどなたかおっしゃっていたことを思い出しました。「可哀想」だから何をしてもいいとはならないのですけれど。
    結局彼女もまだ「家」から逃れられない子どもなのだなぁ……とは感じました。
    中学生って設定が絶妙です、まだ力の弱い、けれどいろいろなことを感じる時期の少女たち。

    きれいな髪色のおばあさまが、すてきでした。彼女は美しかったです。


    2024/01/06 p.5-26

    p.5
    “リンド・リンディは鸚鵡(おうむ)に囲まれて笑っている。”
    (中略)
    “「ペルー」は、リンド・リンディの最新アルバムだ。”
    アルバムのカバーの描写から始まるのは珍しい気がします。

    リンド・リンディなる人物について調べたら、いつの時代の物語かわかるかと思ったのですけれど……まさかの架空の人物でした。あらー。

    p.8
    “去年の暮れから空き家になっている海の家は、”
    え……。引っ越してしまったのですか。

    p.8
    “ピンク色のバラが雑草みたいに咲きくるっている。”
    バラはよくよく手入れしないと咲かないと聞きます。元住人はマメな方だったのですね。

    p.11
    “少し離れたところに木製のテーブルとベンチがあって、おじいさんふたりが将棋を指している。”
    (中略)
    “あのひとたちになりたい。有夢と瑤子はそれぞれ口には出さずに、熱烈にそう思う。”
    わたしも、そう思います。年を重ねてもそばにいられる友人関係に憧れます。
    もしかしたら、年を重ねてからの友人かもしれないですけれど。どちらにせよ、憧れます。

    p.14
    “メッセージが連なる。瑤子は「食べたい〜」と送った。少し間を空けて有夢も、よだれを垂らしている子豚のスタンプを。クラス内のグループラインなのだ。”
    反応しないと仲間外れにされる……ってやつでしょうか? 思ってもいない意味のないメッセージなんて、虚しくなりそうです。

    p.20
    “それから海が破顔して、手を振った。”
    咄嗟に笑ってくれるって、いい子だなぁ……と感じました。

    p.20
    “背が高くてひょろりと痩せていて、色白で、細くて赤い縁の眼鏡をかけている。肘くらいまである長い髪を、今日は後ろでひとつにまとめていた。”
    ロングヘアの痩躯メガネの女の子……! すき。

    p.22
    “お菓子はいつものように手作りで、ガラスのカップにスポンジケーキと缶詰のフルーツと生クリームが詰めてある。”
    理想の生活を詰め込んでいる……みたいなご家庭。庭にはきれいな花。
    お母さまおひとりのはずなのに、結構余裕があるのですね。

    p.25
    “病気の苦しみから解放されて、リンド・リンディは今は幸せだと思うことにしたのだ。”
    このように考えられるということは、死を考えたことがある人かもしれないと感じました。
    死はマイナスだと感じる人が多いようですけれど、生きている状態がマイナスの人間にとってはゼロになるからむしろプラスの出来事。それに気づけるのですね。


    2024/01/09 p.26-282

    p.27
    “「マジで? ムカつく」”
    何に対して? どうせそこまで関心がないくせに。
    生きていたらムカつくのですか?

    p.43
    “同じ学園内にいても、教師と生徒はべつの惑星にいる。”
    同じ空間にいても、心は共有できない……。それは生徒同士でも。

    p.46
    “ボイコットしたのだ。”
    リタイアしたのかと思っていました。そもそも、参加しなかったのですね。

    p.47
    “あの頃、学校にいる間じゅう自分が自分の体積よりも小さな箱に閉じ込められているみたいな感じがあって、”
    当時、ここまで言語化できていなかったですけれど、感覚としてはわかります。苦しかったです。

    p.64

    「ペルーに行きたいんだ、あたし」
     それで、瑤子はそう言った。

    わたしには、「遠くに行きたい」と聞こえました。現実に疲れてしまうと、そう感じることがありますよね……。

    それで、の後には何が続いたのでしょう……? 何を話そうとしていたのでしょうか?
    この人になら話せる、と思ったのでしょうね。一瞬。

    p.79
    “親に紹介してもらえるような関係ではないから。だからこそ、こういうときには行ってやるべきだろう。”
    ……ん? 不倫とかですか?
    “行ってやるべき”って上から目線が気になります。この前には、“来ないでくれと言われていたが、”とあります。では、行くべきではないでしょう。ご自分のルールで勝手に動くのは良くないです。

    p.79
    “妻も娘も家にいたが、バイトの上司が亡くなったのだと説明して孝は出てきた。”
    やっぱり不倫……?
    そしてアルバイトの身なのですか?
    別に働いているならそれでいいとは思いつつ、独り身ではないなら不安があります。自分のことしか考えてなさそうな雰囲気が強いです。

    p.80
    “見下されている、という事実において。”
    うわぁ……プライド高い人だぁ……。なおさら面倒くさいです。
    さっさと別れましょう、奥さん。

    p.80
    “朝子もそうしたいのではないか。”
    えぇ……こわいです。不謹慎です。そんな気分なわけないでしょう。

    p.81
    “その年、彼女が出した本が予想以上に売れて、”
    あ、あれ、もしかして、お父さん……?
    こんなことを考えている人だったのですか……。娘からは無口で無抵抗で何も考えてなさそうに見えていましたけれど。

    p.83
    “だがどちらも俺のせいじゃない、と孝は思う。”
    うわぁ……どんどん嫌いになっていきます……。

    p.89
    “だからといって妻との離婚を望んでいるわけではないのだから。”
    本当に嫌い……。大嫌い……。

    p.91
    “世間一般のそういう関係とは違う、互いにもっと特別な、美しい存在であったはずなのに。”
    黙ってください……。意味がわからないです。ご自分を正当化するためなら、現実を歪めるのも苦ではないのですね。

    p.92
    “孝のような男に引っかかった自分への悔しさからであるようだった。”
    泣きたくなりますよね……。失った時間は取り戻せないですから。
    けれどいま、この男が屑だとわかって、きちんと縁を切れるのなら、あなたは大丈夫。もっとしあわせに過ごすことができます。

    p.98
    “何のために話すべきだと思うのか、話せばどうなるのか、どうなってほしいのかも、わからない。”
    また自分勝手な考えですね……。ゆるしてほしいのでしょう、弱い自分を受け止めてほしいのでしょう、重たい荷物を持っているのがつらいのでしょう。さっさと手放してスッキリしたいのですよね。けれどそれは、あなたが楽になるだけ。ご家族は苦しくなります。
    せめて、墓場まで持っていく覚悟を決めてください。むしろその覚悟がないのに動いたのはどうかと思います。そこまで考えていなかったからこそ、動けたのでしょうけれど。

    p.99
    “「帰りに無糖のヨーグルト買ってきて」”
    うわぁ……これ、忘れそうです。そこから別の疑惑をかけられそうな予感……。

    p.103
    “教師になってから音楽を聴く機会はほとんどなくなり、”
    嗚呼、今度は先生側の視点なのですか。

    p.125
    “従ってくれていればよかったのよ。”
    うわぁ……この本、大人たちのことがどんどん嫌いになっていきます……。
    あなたは教師を辞めるべきですね。子を守れない、寄り添えない大人は、子どものそばにいるべきじゃないです。かわいそうです。

    p.132
    “ルーちゃん、”
    ご家族にはこう呼ばれているのですね。ルー……って、別の人が脳内で出てきちゃいます。

    p.135
    “どのスタンプなら私の怒りに触れないか、一生懸命考えて選んだのだろう。”
    わかっているなら、なおさら無意味なやり取り……。彼女たちは青春を浪費してまで、何がしたいのでしょう?

    p.136
    “これは大事な武器だ。これをちゃんと正しく使うつもりだ。”
    若さを、美しさを、武器だとわかっているのは強いです。高校生になったらパパ活しそうな勢い……。

    p.200
    “ボスはどこにでもいる。集団があれば、ボスがあらわれる。”
    高齢になってまで、いじめをしている人は情けないです……。つまらない人生。

    p.209
    “娘が生まれて間もなく、金髪碧眼(へきがん)の女と恋仲になって家族を捨て、地球の反対側へ行ってしまった男なのに。”
    この物語には屑男しか出てこないのですか……?
    親子2人きりなのにやけに余裕のある暮らしだなぁと思っていたら、金銭的援助の存在がいたのですねえ。納得。親御さん(お子さんから見て祖父母)が裕福なのかと思っていました。
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    投稿日:2024.01.09

  • nekommi

    nekommi

    このレビューはネタバレを含みます

    ああはなりたくないと言う不安からしている。
    波多野さんかっこいいと思った。
    子供への関わり方は同じではなくてそれぞれ違うのだと感じた。

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    投稿日:2023.09.12

  • 椋とんびの2

    椋とんびの2

    女子中学生の間に起こる執拗ないじめ。その構造を微細に描く。
    この世に人間の形をした悪魔のようなものは存在する。それを受け入れなければ、いじめはなくならないだろうな。

    優しい人は、話せばわかるはずだとか、そもそも性善説を信じているので、悪魔には対抗できない。悪魔は人の弱みを握ることに天才的な才能を持っているから。人がうろたえる様が栄養みたいな奴なんだ。

    そいつから離れろ。それは決して逃げではない。そして一人になってはいけない。根っこのところで繋がっている人を幼いうちにしっかりと獲得することが大事だと思う。

    悪いのは悪魔のようなあいつなんだ。あなたではない。


    と、過去の経験からいろんなことを考えさせられました。

    悪魔って、どうやって造られるんだろうね。それを解明することが大人の役割だよな。
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    投稿日:2023.05.21

  • トモヒロ

    トモヒロ

    このレビューはネタバレを含みます

    いじめの描写がとてもリアルです。
    カースト上位の子がそれとなくみんなから孤立させようとするところとか
    結局、何も問題は解決していないし、誰も助けてはくれないという結末…

    逃げることも一つの正解だし、波多野さんのように無視を決め込む、というのも一つの正解だと思う
    ただ、確かなことは誰かに助けてもらうことや、周りを変えることを期待してはいけないということだった。

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    投稿日:2023.01.19

  • 1796167番目の読書家

    1796167番目の読書家

    過去と今の自分に繰り返し向き合わされた一冊

    物語に出てくるルエカとその取り巻き、そしてターゲットにされる子達。読みながら幼い頃の記憶がまざまざと蘇った。同じシチュエーションが自分にもあったと。ルエカのようにリーダーではないが、あるときは取り巻き側、ある時はターゲットとされる側だったと。今の自分の環境が全てでどこにも希望がなく募る無力感。この物語に出てくる有夢、瑶子の一つひとつの描写は昔の自分を見ている様だった。

    ルエカのいじめの理由が暗喩される描写箇所を読んだ後では、序盤、得体の知れない不気味な存在だったのだが、打って変わり、まるで怖くて怯えながら吠え続ける犬の様に思えた。
    いじめる側の背景に目を向けると自身が過去に深く傷ついた際のトラウマが発端になっていることも多い。
    その無意識の闇が新たな被害者を生みだす。

    孝の「俺はどうせ安全な、簡単にできることしかしない男なのだから」は、のちに登場する奈緒や施設長、そしてルエカの言いなりになり動く有夢、瑤子の内面描写にも通じるものがあった。

    多かれ少なかれ誰にでも潜む、ことなかれ主義な思想、波風たたせず穏便に済ませたい気持ちをさまざまな登場人物の描写を通して示すことで、静かに問いかけられている様に感じた。

    波多野さんのメニューCはラストの彼女達の新展開にもつながり、人生を終わらせずに続けていくため自ら新たな選択肢を選びとろうとする展開に救いを感じたと同時に勇気をもらった。

    いつだって、誰だってメニューCやメニューDを選んでいい。多様性の受容やその後押しが容易な社会からはまだまだ程遠いと感じるが、せめて自分だけは、物語でペルー行きを後押しする海の母のように決断、行動をしていこうと思わずにはいられなかった。

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    投稿日:2023.01.08

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