【感想】クオリアはどこからくるのか? 統合情報理論のその先へ

土谷尚嗣 / 岩波科学ライブラリー
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • モチヒロ

    モチヒロ

    意識はどこにあるのか

    ■6章 意識の統合情報理論

    ○統合情報理論が提案する意識の公理
    70

    1 存在性 意識はそれを持つ者にとって存在する
    2 組成性 意識はさまざまなコンポーネントから構成されている
    3 情報性 意識には情報がある
    4 統合性 意識は統合されている
    5 排他性 意識は排他的であり、経験されるそれ以上でもそれ以下でもない


    ○数学的な手続き
    1 (脳などの)あるシステムが持っている意識レベルに相当するのは、そのシステム統合情報量(システムレベルのビッグΦ)と呼ばれる量である

    2 ビッグ・ファイが局所的に最大になるサブシステム、それを「コンプレックス」と呼び、そのコンプレックスに意識が宿る(今のところ、コンプレックスとはネットワークの一番重要な中心と考えて良い)

    3 コンプレックス内に含まれる(ニューロンやニューロンの集団などの)「メカニズム」が生み出す統合情報量(メカニズムレベルのスモール・ファイ)、そしてそのスモール・ファイφ同士がどういう関係性を持っているかによって、意識の中身・クオリアが決まる
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    投稿日:2022.10.31

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    著者は大学生の頃にラマチャンドランの『脳の中の幽霊』を読んで衝撃を受けて、意識についての研究に進むことに決めたという。クリストフ・コッホにも師事し、著作の翻訳も行っている。その著者が注目する「統合情報理論」について解説したのがこの本。細かいところまで知りたい向きは提唱者のジュリオ・トノーニの『意識はいつ生まれるのか』に当たるべきだと思うが、この本ではそのエッセンスと最新の状況がコンパクトにまとまっている。

    情報統合理論は、著者によると「意識に関する普遍的な特徴や根本的な原理から出発し、それらがどのように私たちが知っている意識を持つシステムによって支えられているのかと考える」ものであり、「意識の境界・量・質を数学的に説明することを目指した理論」だという。本書に沿って簡単に記載すると、五つの公理、存在性、組成性、情報性、統合性、排他性、から出発し、システム統合情報量Φを定義し、局所的にΦが最大化になるサブシステムを「コンプレックス」と呼び、その統合情報量をφ(スモール・ファイ)とし、そのφ同士の関係性によって意識の中身・クオリアが決まるというのだ。
    『意識はいつ生まれるのか』には、コンプレックスやφ(スモール・ファイ)の言及は確かなかったように記憶する。統合情報理論はv1.0から始まり、現在はv3.0ということなので、コンセプトも追加されて進化しているのかもしれない。最新の状況を解説するチュートリアル(https://www.youtube.com/watch?v=IflW_oaOJqg)が紹介されているので、その動画を見るのが英語だけれど正確で早いかもしれない。
    本書の中でも紹介された、分離脳の意識や、頭蓋骨が癒着して脳がつながっている双生児の意識の研究からも統合情報理論を含めた意識研究の有効性や正当性が議論されていくのかもしれない。

    最後に著者は、自身の研究にも深くかかわる「クオリア構造」と統合情報理論における「情報構造」の関係について説明する。まだ進行中の分野で、やはりなぜ脳や身体から「クオリア」と呼ばれるものが出てくるのかは理解できない。同様に、情報統合理論がどこまでの射程を持っていて、意識の問題に関してどこまで説明可能であるのかもまだわからない。しかしながら、こうした研究者の間における熱量からも一定の正当性をもった理論であることは改めて理解できた。少なくともハードプロブレムといって探求をあきらめるよりはずっとよい。

    このシリーズ(岩波科学ライブラリー)の方針なのかもしれないが、この話であればもっと話を拡げることができたのでは、と感じた。

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    『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』 (ジュリオ・トノーニ)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4750514500
    『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』(スタニスラス・ドゥアンヌ)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4314011319
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    投稿日:2022.05.22

  • redwing66

    redwing66

    最先端の意識研究を一般向けに解説した本だが、やはり相当に難しい。

    特に、最近、話題となっている統合情報理論について詳しく解説しているが、高度な数学理論を活用していることまでは分かるものの、理解するのはなかなか難しい。
    このような抽象的な統合情報理論が意識レベルの計測まで可能にしていることには驚く。

    また、統合情報量同士がどういう関係を持っているかによって意識の中身であるクオリアが決まることから、クオリア構造と情報構造との間の関係を明らかにすることが作者の目標のようだ。
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    投稿日:2022.03.28

  • 瑠璃色

    瑠璃色

    意識研究の最前線を紹介している。仮説である「統合情報理論」の紹介。
    その前に前提となる意識の研究の仕方を紹介して、後半で理論を紹介している。

    最先端の研究の紹介ということで基礎的な内容を学ぶものではなかったため難解な部分もあったが刺激的で面白かった。全てを理解することは当然不可能なので、自分の体験と比較して面白いなと感じた部分は「注意向けることで対象の情報量が増加してより理解が可能だ」ということ。続きを読む

    投稿日:2022.03.24

  • yoshio2018

    yoshio2018

    茂木健一郎さんのクオリアに関する本を読んだ時には、意識が立ち上がる仕組みを探求するなんて無理なんではと思ったが、ジュリオ・トノーニの統合情報理論の解説本を読んだ時には、これは面白いと思った。それでもいったいいつ進展があるのかと思っていたが、研究している人は色々といるのだな。この本の解説で以前よりは少し分かり易くなり、展望も開いてきたように思う。続きを読む

    投稿日:2022.02.01

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