【感想】幕府軍艦「回天」始末

吉村昭 / 文春文庫
(7件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • まいつき

    まいつき

    戊辰戦争において、北海道で新政府軍と戦いを続けた榎本武揚の旧幕府軍。彼らの主力というか強みは海軍にあり、その中の一隻が表題にある「回天」。始末とあるのは、榎本海軍の始末ですね回天一隻の話ではなく。その回天の一世一代の見せ場が「宮古湾海戦」。

    海軍主力だったはずの「開陽」が箱館攻略中に座礁沈没してしまったのが、ケチのつきはじめという気がします。そして、戦争している以上仕方がないとはいえ、無謀な出航が多かったようにも感じました。榎本海軍の作戦行動において、十全とは言わないまでも、全うしたのは回天だけなような気もしてしまう。天地人のうち、天を味方につけられなかった。これでしょうか。
    「甲鉄」が新政府軍にある、ということもあり、北海道に引きこもっているだけでは勝利することはできない、という戦略的理由もあっての奇襲作戦「宮古湾海戦」。
    これが成功していたら戊辰戦争はどうなっていたのか、を考えてみるも、ただずるずると内戦が長引いていただけで、何もなさなかったのではないかと思うのだけど、どうでしょうね。外国からの応援もなかっただろうしなぁ。フランス武官が帯同していとはいうものの、勝手に乗り込んでいるだけで、命令違反のようなものだったらしいですし。
    エンタメの点で見ると、魅力的ではありますが。覆面奇襲、接舷のち抜刀突撃、というのはね。

    エンタメとして、戦争に参加した武士、軍人の記録を描くのでなく、地元の人々との関わりを記録しているのが、読んでいて新鮮です。
    妓楼での金払いゆえの人気の有無や、戦後の影響など取材あっての描写。まだ、記録出なくて記憶が残っているから、できたことでしょう。「和宮様御留」でも感じましたが、歴史上の出来事が、記憶として触れることができるのは幸福だと思います。後世に残してゆくための資料として。

    表題と「牛」の2編が収録されている本作。
    「牛」は薩摩藩領・宝島において外国船との接触を描いた短編。異国船打払令のきっかけになったという事件だそうです。おそらく、このような長崎の事件や各地の事件が重なってのことなんでしょう。
    まあ、いきなり訪れて攻撃略奪となれば、撃退すべし、となるのはわからないでもない。言葉のわからない中、なんとか交渉しようとする様は臨場感と必死さがありました。
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    投稿日:2023.12.06

  • MS-05B S49AB

    MS-05B S49AB

    明治初期の宮古湾海戦、「事実主義」の作品。
    さすがの吉村昭。なんでだろう‥臨場感が半端なくて一気読みでした。

    投稿日:2023.02.14

  • Norio Sasada

    Norio Sasada

     いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本。吉村昭さんは私の好きな作家のひとりです。
     本書は、幕末から明治維新期が舞台、函館に渡った旧幕府軍と新政府軍との一連の戦いにおけるエピソードのひとつを取り上げたものです。
     精緻な取材に基づくノンフィクションですが、「表現者」としての吉村さんの非凡な筆力をそこここに認めることができます。
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    投稿日:2022.07.22

  • ゴンチャロフ

    ゴンチャロフ

    江戸は開城し徳川慶喜は謹慎。新政府は旧幕府艦隊も接収しようとしたが、海軍副総裁榎本武揚は艦隊主力を率い箱館に向けて脱走する。旗艦は最新鋭艦「開陽」(オランダ製)、二番艦は「回天」(プロイセン製)であった。しかし、蝦夷地平定中に猛吹雪に見舞われた「開陽」は座礁沈没、老朽艦の「回天」が旗艦の任に就く。一方新政府軍は装鉄軍艦「甲鉄」(アメリカ製)を得て、榎本艦隊に対して圧倒的優位に立った。劣勢となった榎本艦隊は宮古湾に停泊する「甲鉄」を奪取する大胆な奇襲作戦を決行するが、荒天のため艦隊連携がとれず「回天」のみが突入し孤軍奮闘するも敗退。箱館湾に辿り着いた「回天」は、最終的に「蟠龍」(イギリス製)とともに2艦のみで強力な新政府軍艦隊を迎え撃つ。著者が訪れた岩手県田野畑村が偶然榎本艦隊の一艦「高尾」が座礁した場所であったことから、戊辰戦争の海での戦い(宮古湾海戦、箱館湾海戦)を描くことになったという。陸戦中心の作品が多い中では海戦を克明に描いた貴重な作品と言えよう。他に、牛をめぐって薩摩藩宝島で発生したイギリス船員と薩摩藩士との小競り合いを描く「牛」を併録。続きを読む

    投稿日:2022.05.15

  • 夏生723

    夏生723

    吉村昭らしい細かい資料収集に基づく軍艦回天の最後。土方歳三とかも居るのにその最期にすら触れないとは流石としか言えません。新撰組には期待せず、幕末~明治の海戦や青森・岩手沿岸に興味のある方にオススメです続きを読む

    投稿日:2022.04.11

  • dysm3636

    dysm3636

    旧幕府軍 VS 新政府軍。宮古湾海戦の秘話を描いた吉村昭の隠れた傑作が此処に。巻末には短編「牛」が。この作品は江戸時代末期での異国船出没がしきりで、外国の捕鯨船員と警備の日本人侍等の時代と心の機微が描かれる。続きを読む

    投稿日:2022.03.16

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