【感想】トナリの怪談

シークエンスはやとも, 樹島千草 / 集英社文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    幽霊の類いや人のオーラが見える僕。幼い頃から見えていたので、今に至るまでにうんと恐ろしい目にあったり、不思議な体験をしたりと本当に様々な体験をしてきた。今日はそんな数々のエピソードの仲から面白いものをご紹介したい。

    ***

    オーラを見てその人の現状を言い当てるということで有名な芸人さんらしい。(失礼ながら、私は初見です……)幼い頃から幽霊の類が見えていたはやともさんが実際に体験したり、人から聞いた話の中から、これぞというエピソードをいくつか抜粋して書き綴られている本書。怪談話ということなので、幽霊の類の話が当然中心になるだろうと思って読んでいたが、幽霊の話とオカルトやスピリチュアル的な要素が絡んだ人怖話が半々といったところ。
    幽霊話も何となく男女の情念だったり、人間臭さが絡んでいてなんとも生々しい展開を見せる怪談話が多かった。読んでていろんな意味で鳥肌がった。ゾワッとするっていう表現が正しいかもしれない。
    非常にライトで読みやすい語り口なのに、淀のような印象をもたらす。
    読みやすいので、先に先にとページをめくり続けたが、読んでいて何度もうん……。っとなった。

    とはいえ、非常に面白い一冊だったので、その中からお気に入りの話をいくつか。

    「毎日見る夢」

    はやともさんが大学生時代に体験した話。ある日突然、自分がどことも知れない夕焼けの街を歩いている夢を見る。自分以外に人影はなく、生き物といえば空を飛ぶカラスだけ。無機質な印象を受け、違和感を覚えるが夢の中の自分は慣れた様子で道をどんどん進んでいく。やがて、二階建てのアパートにたどり着き、その一室に入る。そして自分はその部屋で同い年ぐらいの女の子に迎え入れられた。そこで初日は目が覚めた。不思議な夢ではあるが、荒唐無稽ではない。特に気にも留めるほどの内容ではないので、すぐに忘れてしまったが、その翌日も同じような夢を見てしまう。それから、毎日のように同じ夢を見続けた。もはや悪夢に変貌したといっても過言でないそれは、現実と夢との境界線を曖昧にし精神的にも肉体的にも追い詰められていく。

    同じ夢を毎日見続けるという奇妙な体験をしてしまった、はやともさん。何年かに一回という頻度で見るのはあるかもしれないが、毎日同じ夢を見るというとどうにも気持ちが悪い。それが日々先に進んでいるというのだからもはや怪奇現象だ。
    毎日見続け、はやともさんの日常を侵食していく夢は一人の人物の手によってもたらされているものなのだが、どういう手段を用いているのだろう。まじないのような事をしているのだろうと思うが、完全に相手の夢を掌握しているので、まじない事というよりは呪いの様だ。
    以前もこのような被害にあった人がいるということなので、ただひたすらにこの人物に嫌悪を覚える。自らの欲望のみを最優先している。夢を見ているはやともさんが事実に気づくようなセリフを言ったりして本当に気味が悪い。悪意があるのかないのかは別として、こんな心根の人間が本当にいるのか?と思わず疑ってしまうぐらいだった。
    その後紹介をしてきた友人に訳を話し、友人がやめさせるように事を運んでくれた様で追撃はなかったのは一安心。
    やってきた相手はかなり人に依存していそうな人物だが、そんな手法を用いて相手を疲弊させて洗脳状態にするんだろうか?なんにしてもお近づきになりたくない人物であるのは間違いない。

    「カーナビ」

    伊庭の友人である阿内が仕入れてきたオカルト話。車に備え付けられているカーナビに関する怖い話である。行き先を入力するだけで迷わないように案内をしてくれる便利なカーナビは直進や左右への方向転換など様々な指示を出す。しかし、特定の条件を満たすと普段は絶対に出さない「バックしてください」という指示を出してくるのだという。しかし、何となくありそうな指示だけににわかには信じがたい。いつも阿内が仕入れてくる話はもっと恐ろしい話が多いので何となく物足りなさを感じたが、阿内が興味津々なのと、その場所が十分車で行ける範囲にあるというので、同グループでつるんでいる人見を巻き込んで、その場所へ行ってみることに。いつもこういう場所に行っても何も起こらないので、気軽な小旅行の気分で車を走らせていた3人であったが、のちにこの選択を後悔するほどの恐ろしい体験に見舞われる。

    こちらは、はやともさんの知人が通っていた大学で起った出来事とのこと。なかなか話ができている感じで、ホラー小説の一部を読んでいるような錯覚を覚えるほどの話だった。たくさんの人がこの話を噂しており、実際に、恐怖体験をしたうちの二人が通学不能になっているので信憑性はありそう。ということはこの体験は本当にあったことということになるのだが、そうだとしたら怖すぎる。
    この三人を襲った恐怖体験は実際に読んだ方が楽しめそうなので少し雰囲気だけご紹介して、あとは割愛したい。
    真綿で首を絞められるような怖い話が好きな人は非常に楽しめると思う。最初はノリノリだった三人が、忍び寄ってくる異変に少しずつ気づき、じわじわと恐怖に包囲されていく様が非常に怖かった。最後のシーンは秀逸で、医師に榎村に関する怖い話が好きな人も好みの話だと思う。

    事実は小説より奇なりとはよく言ったものだが、この日本のどこかでこんな恐ろしいことが実際に起こったのだとしたら、カーナビがバックしろといったら素直に指示に従った方がよさそうだ。

    さて、二つご紹介させてもらったわけであるが、一番恐怖を感じたのは「いい人」これは幽霊が怖いという話ではなく、ヒトコワ系の話。更に胸糞系の話なので、人間がかかわる胸糞系の話が嫌いな人は読むのを避けてほしい。特に女性にはお勧めできない内容なので、読むときは自己責任でお願いします。
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    投稿日:2022.04.04

  • まっしべ

    まっしべ

    知人がシークエンスはやとも氏の動画を絶賛していたため興味が湧き購入。
    動画作成と小説執筆の能力は全く別物という事でしょうね。

    とにかく全話に共通しているのはチープさ。
    セリフがどれもこれも嘘臭くてかなわん。

    短編10話収録。

    〈不動産屋の内見〉まず、事故で実家が全焼した人がこんなのんきに家探しするだろうか。また、全てを見通している風のお父さんがあまりに世離れし過ぎです。

    〈毎日見る夢〉言わんとすることはわかるけど、大学生の話にしてはしょうもない。

    〈仕組まれた好意〉呪い方面の話として悪くはないけど、結局、陣内はノリエさんと性行為したから子供ができたんだよね。だったらつべこべ言わず育てなさい。

    〈いわれの無い心霊スポット〉ダラダラした文章。’事故現場に野次馬が集まり過ぎて困ったから政府がウソ情報を流す’っていくら何でもそれはない。申し訳ないけどハヤトモさんが’祓える’キャラになってガッカリ。ここまでの設定何だったのさ。ぶれないでよ。

    〈いつ死ぬの?〉まとめから何からしょうもない。

    〈いい人〉何もない文章。’霊視’と’オーラを視る’って厳密には違う能力なのかな?そこは気になった。

    〈違和感〉いちばん実話っぽい。

    〈病の理由〉これもひどい。夜に心霊番組見てる患者くらいいるだろう。視えるって言ったり視えないと言ったりキャラが定まらない。

    〈今の誰?〉女の恨み嫉みオチ。「春のみ、そして女性限定」(p205)の怪現象なんてそんなうまい話あるかい。ホルモンバランスの話かな。

    〈カーナビ〉チャラさを全然文章で書けていない。心霊スポットでも強気なアホキャラっていがちだけど、伊庭も阿内もただのアホだ。そしてこれが本書のトリの話とは。落胆。


    率直にがっかり。



    1刷
    2021.11.22

    2021.11.23 修正
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    投稿日:2021.11.22

  • 志村蓉子

    志村蓉子

    読みやすく、じんわり怖くて、読後さわやかな怪談本という印象です。おどろおどろしく無く、こういうこともあるんだなぁ…と世の中の不思議を味わった感じです。『いつ死ぬの?』はタイトルからして怖い。本書にあるとおり、「命をかける」という言葉を簡単に使っちゃいけないなあと思いました。いちばんモヤるのが『カーナビ』。真相はどういうことなんでしょうか。知りたいような知りたくないような…いや、やっぱり知らないほうがいいのかもしれません。続きを読む

    投稿日:2021.09.25

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