【感想】臨界 潜入捜査 〈新装版〉

今野敏 / 実業之日本社文庫
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • touxia

    touxia

     元マル暴刑事・佐伯涼の潜入捜査シリーズ第5弾で、原発の被害や利権の問題をテーマとした本が1994年に発行されている。福島のメルトダウン以前に書かれていて、先見性がある。今野敏は、1989年の第15回参議院議員通常選挙で、政党「原発いらない人びと」の候補者として立候補、落選。1986年にチェルノブイリ事故が起こって、脱原発の動きが加速した時だった。今野敏が、そのような政治活動をしたことさえ知らなかった。今野敏はいう「本当に、原発が安全だというのなら、東京湾に作ってみればいいのだ。電力会社にも、国にもどんな度胸はないだろう。そこに、原発の本質がある」。
     三重県の原子力発電所で事故が発生し、外国人不法就労者が死亡したという情報が届いた。佐伯涼は、厚生省の環境犯罪研究所に出向している。所長は内村尚之である。内村は「日本で現在稼働中の原発43基のうち20基が、事故を起こした原発と同じ加水型で、毎年のように蒸気発生器の細管損傷が見つかっている」「静岡県の浜岡原子力発電所でも、保守・点検を行う関連会社の作業員が、同じく、慢性骨髄性白血病で91年に死亡しました。この件が労災認定申請されています。これまで、兵庫県で2名、同様の労災認定申請が出されています」「炭坑では、落盤事故や塵肺。原子力発電所では、放射能障害。同じ歴史が繰り返されているのかもしれません。しかし、そうした非合法の手段を組み込まなければ機能しない」「核燃料による発電など、本来必要ないのです。原発を作ろうというのは純粋に政治的問題です。つまり、利権の構造でしかありません。政府が作るといったものは、国民を殺してでも、国土を破壊してでも作るものです」「政治家は、役人のいうことを鵜呑みにする。そして、商社、ゼネコン、地域政治家そろっての原子力発電推進の政策が出来上がる」という。
     原発推進派は、権力とお金を持っていて、暴力団に雇用者を斡旋させたり、反対運動に暴力的な行為をする。
     佐伯涼は、先祖伝来の武術を使い、暴力団を徹底的に叩きのめしていた。暴力団にも実質的に武術を学んだものがあり、佐伯と戦うシーンが繰り返される。反対運動の中にも、原子力発電推進派のスパイが紛れ込んでいる。実に、リアルな原発推進の利権構造を暴く。
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    投稿日:2023.05.18

  • bera5227

    bera5227

    安定の一冊。タイトルが潜入捜査なのに自分からさっさとバラしてしまうなんていけない奴だなと思ってしまったがこれもご愛嬌ということにしておこう。
    内容は原発と市民運動を絡めたものだが、市民運動家と自ら名乗っている者に対する見解が面白く個人的にも同意できる。続きを読む

    投稿日:2022.04.18

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