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石井妙子 / 文春e-book (12件のレビュー)
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smiyatake
尾道の図書館で読む。 ジョニー・デップ主演映画「MINAMATA」鑑賞時、ネットで背景を確認して入浴図が遺族の意向により公開が停止されていることを知った。本書では遺族の言葉を引用して詳しく書かれている…のだが、映画にはなぜ使われたのか、そのあたりははっきりしない。 土門拳の被爆者を撮影した写真の被写体となったひとたちも、土門が数年後に再撮影を求めたときには拒否したときく。土門はそうした被害者たちの姿勢に怒ったらしい。 本書によると撮影した写真家に著作権があり、被写体にはなんの権利もないと書かれている。続きを読む
投稿日:2022.09.15
澤田拓也
本書は、戦争ジャーナリストとして有名な写真家ユージン・スミスとその妻アイリーンの物語である。彼らは、1971年から三年間に渡って日本で水俣病の報道写真を撮り続けた。狂気を孕むほど写真にのめり込んだユー…ジンはもちろんのこと、もう一人の主人公アイリーンの出自もとても興味深い。水俣は三十歳以上も歳が離れた二人を結びつけ、水俣プロジェクトの終了とともにその関係は終了した。そこで残された写真は『ライフ』に掲載され、水俣の悲惨な状況を世界に知らしめるとともに、環境問題の注目の高まりを後押ししたことだろう。 ユージンはジャーナリズムに関して次のように語っていたという。ジャーナリズムだけではなく、広くプロフェッショナルにも通じる精神ではないかと感じた。 「ユージンはジャーナリストには二つの責任がある、と、よく語っていたという。一つは写真を見る人たちへの責任、もう一つは被写体への責任である、と。この二つの責任を果たせば、自ずと出版社や編集者への責任は果たされる、とも。だから、編集者の言うことに惑わされてはいけない。そのために、出版社と闘い、自分の理想を貫かなくてはいけない。目指すものを撮る。自分の思う、いい作品を。それをすれば、結局は編集者や出版社への責任も果たせることになる、というのがユージンの考え方だった」 「客観なんてない。人間は主観でしか物を見られない。だからジャーナリストが目指すべきことは、客観的であろうとするのではなく、自分に責任を持つことだ」 著者は『女帝 小池百合子』を書いた石井妙子。よく取材されていて、とても読みやすく過去のドラマに没入できた。ユージンを決して善人ではなく、問題を抱えた人物として描いている。水俣における住民の葛藤や、高度成長に水を差す決定をできなかった通産省やチッソの行動もよく説明されている。お薦め。 ---- この本を読んですぐに昨年度公開されていた『MINAMATA』を観た。ジョニー・デップ主演で、真田広之や浅野忠信もキャスティングされた作品だが、あまり話題にはならなかったのかもしれない。遺族の意志を尊重したアイリーンがその使用を封印した「入浴する智子と母」を事前に遺族に相談することなく使用を許諾したことがどこかで取り上げられていたことを思い出した。 映画は悪くはないが、それだけでは住民の苦悩や葛藤、ユージンとアイリーンの背景などが伝わりきらないと感じた。それは枝葉ではなく、このプロジェクトの核でもあったであろうからだ。 映画を観た人にこそ読んでもらいたい本。そして、ぜひとも『苦海浄土』を読んでほしい。いつかまた『苦海浄土』を読まなくてはと感じた。 ---- 『苦海浄土』(石牟礼道子)のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4062748150 『女帝 小池百合子』(石井妙子)のレビュー https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B0873YLSWN続きを読む
投稿日:2022.07.18
aaaamino
熊本県水俣市 チッソの工場排水により水俣病が起きた チッソが責任を認めずそれと闘う患者達 患者達をカメラで撮影したアメリカ人夫婦の話 歴史的事実程度の認識しかない自分を恥じた。この人達がいるから今安…全に暮らしているのだと思う。アメリカ人夫婦の数奇な巡り合せも加わり、一気に読んでしまった。 ユージン スミス 入浴する智子と母 JNCの水俣病関連支出額 4000億円 水俣病被害者 7万人 続きを読む
投稿日:2022.05.13
kaze229
読み終えたあと しばし放心してしまう 優れたノンフィクションに出逢ったときに 経験する そんな一冊です 単なる固有名詞としてしか知らなかった ユージン・スミスさん アイリーンさん ミナマタ チッソ …有機水銀中毒 水俣闘争 それらの単語が 次から次へと 有機的につながっていく それも密接な関連性を持ってつながっていく 石牟礼道子さん 渡辺京二さんの 著書の時とは また違った感動を 持つことができた ユージン・スミスさんの一枚 アイリーン・スミスさんの一枚 石牟礼道子さんの著書に 出逢うたびに 思い起こす一冊になりそうです続きを読む
投稿日:2022.04.15
tokosan
映画『MINAMATA』関連の記事で知り気になって読み始めたら…さすが『女帝』の著者石井妙子さん、序章からぐいぐい一気読み。 時系列を遡って見えてくる偶然や必然の出会いには人間の愚かさと同時に底力も感…じるが、水俣に対する仕打ちには(特定の信仰は持たないが)巡り合せた神仏を怨みたくなる。私自身は裁判を報じるニュースや同時期のビッグニュースを微かに記憶している世代。伝えていかなければ。続きを読む
投稿日:2022.02.13
utakohagiwara
映画『MINAMATA』をきっかけに読んだ。映画より本のほうがあとに書かれているが、取材は14年以上前まで遡る。アイリーンとユージン、それぞれの個人史や水俣病前史まで、映画の時間軸よりずっと長く書かれ…ている。アイリーンの家族の歴史もかなり遡って掘り下げられていて、それだけで一遍の映画ができそうだ。 映画がどこを脚色しているかも、ある程度わかる。アイリーンとユージンの結婚までのいきさつはほぼフィクション。暗室の火事もたぶんフィクション。一方で、ユージンがチッソで受けた暴行は、映像より実際のほうが過酷だ。少しショックだったのは“水俣のピエタ”と呼ばれた有名な写真は、被写体家族の意思に反して使われたということ。アイリーンは長く封印していた使用許可を、この映画には出した。俳優による映像の再現度もかなり高かったから、実物を使わない選択もあったと思う。 水俣病の発見から認定、保障の闘争も、詳しく、しかし手際よくまとめられていて、改めてその苦闘を思い知らされる。これを読むと、水俣市が映画上映を後援しなかった事情、一方でつなぎ美術館は上映した事情もおぼろげに見えてくる。 読みやすく心をつかまれるノンフィクションで、映画を観て水俣に改めて関心を持った人には一読を勧めたい。そしてもう一本の映画『水俣曼荼羅』も観たくなった。続きを読む
投稿日:2022.02.02
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