【感想】稲盛和夫、かく語りき

稲盛和夫 / 日経BP
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • syamada

    syamada

    経営者、リーダーとしての心構えのあり方を知ることができる本です。
    京セラを立ち上げ、アメーバ経営を提唱し、JALを再建させたことで有名な筆者がこれまでに語ってきたことがまとめられています。
    一貫して説かれているのは、私利私欲に走ってはならないという、経営者としての「心」構えです。
    従業員のため、そして社会のために何ができるかを考え続けてきたからこそ、困難なことを成し遂げることができたのだろうということがわかります。
    経営者だけでなく、多くのビジネスパーソンにとって、ビジネスで重要な「心」のあり方を学ぶことができる1冊だと思います。

    【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
    「誰もが経営者として成功する可能性を持っているのではなく、宿命を背負った者しか経営者になれないのではないか。順風満帆の人生は誰にも存在せず、不運や逆風にどう向き合うか。前に進み続け、その蓄積が一定に達したとき、経営者として覚醒する。」
    →一見、経営者に誰でもなれるわけではないということを説いているようにも見えますが、言いたいことは、逆境に負けず前に進み続けることができることが、経営者に求められることだということを教えてくれていると理解しました。
    「共感してもらうには、きれい事、建前が必要。そうしたことを社員に説けば説くほど、実は自分に降りかかってくる。経営者が自分を厳しく律した生き方をすることが鍵になる。」
    「経営者はみんな頑張るが、結果は異なる。自然の摂理に逆らってはうまくいかない。人間として正しい生き方、社会的ルールにのっとれば、社会が容認し、企業は存続していける。目先の利益のためだけなら、社会から容認されない。弱肉強食だけでなく、『適者生存』というルールもある。滅びる企業は競争に負けたのではなく、日々変わる環境に適応できなかっただけ。」
    →当然、世の中、きれい事、建前だけではないですが、それでも、それがないとどうなのかと、以前から思っていました。共感のために必要という言葉がとても腑に落ちました。社会から共感され、生存を容認されることも意識しておかないといけないと感じています。

    【もう少し詳しい内容の覚え書き】

    ・経営者個人のストイックな人間性を経営の核に据え、計数管理と理念共有を調和させる。経営者はビジネスモデルを構築したら終わりではなく、組織に深くコミットしないと社員は付いてこない。経営者が着火点となり社員の心に火をつける。会社が良くなるのも悪くなるのも、すべて経営者に帰結する。
    ・誰もが経営者として成功する可能性を持っているのではなく、宿命を背負った者しか経営者になれないのではないか。順風満帆の人生は誰にも存在せず、不運や逆風にどう向き合うか。前に進み続け、その蓄積が一定に達したとき、経営者として覚醒する。

    ○素人こそ技術開発の担い手
    ・専門家でない素人の方が、純粋に願望を持ちうる。純粋に深く願望を持ち、行動も思考もそれにより律せられれば、開発できないものはない。意志はもちろん大事だが、人柄が純粋で素直でないと、純粋で深い願望にまで高まらない。

    ○魂の声に従い、価値観の大転換を
    ・共感してもらうには、きれい事、建前が必要。そうしたことを社員に説けば説くほど、実は自分に降りかかってくる。経営者が自分を厳しく律した生き方をすることが鍵になる。

    ○トップの意志と人格が社員を動かす
    ・意思決定するときに私利私欲に満ちていては、良い結果は出ない。ビジネスは権謀術数の渦巻く世界に見えるが、実際に成功する事業というのは、もっとすっきりしたもの。後は努力する。

    ○良きことから利潤が生まれる
    ・資本主義、自由経済の中にも、「利他」という必要なベーシックな倫理観がある。自然界は自由競争だが、相手を潰そうとしているのではなく、みんなが必死に生きているだけ。その結果、努力が足りず潰れるものもあるが、それは仕方ない。それまで助けようとするから、社会的におかしくなる。その中でも、善意という優しい心を持った上で厳しい社会を生きようとすると、社会の様相はがらっと変わる。

    ○理念と闘争心を持て
    ・経営者はみんな頑張るが、結果は異なる。自然の摂理に逆らってはうまくいかない。人間として正しい生き方、社会的ルールにのっとれば、社会が容認し、企業は存続していける。目先の利益のためだけなら、社会から容認されない。弱肉強食だけでなく、「適者生存」というルールもある。滅びる企業は競争に負けたのではなく、日々変わる環境に適応できなかっただけ。
    ・企業の発展には一般には選択と集中を進めるべきと言われるが、多角化が必須条件。力が分散し、経営は難しくなり、リスクも大きくなるが、難しいところで成功しないと成長もない。

    ○大将自ら馬に乗って、「我に続け」と進んでいけ
    ・中堅・中小の企業も、これからの時代は、元請けや公共事業に頼らず、自分の道は自分で切り開かないといけない。その源泉はやはり勤勉さ。取り戻すためには、経営トップは公明正大な経営理念を持ち、強いリーダーシップで引っ張りながら、みんなの意見を聞いてまとめていく人間性も持つべき。リーダーとしての能力も、自己啓発を繰り返すことで備わる。

    ○貪欲社会からの脱却には、心のブレーキを踏む
    ・人類、社会の進歩、企業の発展には人間の欲が必要だが、それが過剰になると、破滅へのエンジンにもなり得る。欲望が渦巻く社会だからこそ、人は足ることを知るべき、成功も、多くの人の助けがあってこそ。それに心から感謝すると、行き過ぎていないかと顧みる、日本人特有の「もったいない」という気持ちが生まれ、少しブレーキを踏める。そうした謙虚さを持つことが、成功を持続させる条件。

    ○自分の分身を育てる
    ・利害を反する人をうまくまとめて、どう収益を上げていくかが経営者の力量。細分化して経営を見てもらい、経営のトレーニングをしてもらうと、その人の意識がオーナー経営者に近づく。オーナー、リーダーとして取り仕切っていくと、ゲームのような面白みがありながら、経営者、オーナーのマインドが育つ。
    ・そのためには、すべての計数、会計的な数字が非常に透明でクリアで正確でなければいけない。まず、経営者自身に非常に高い透明性が求められる。その上で、組織を機能別にきれいに分け、そこをさらに細分化し、そこに任に耐えうるリーダーを任命し、教育していく。リーダーには、感情に動かされない人格、哲学を持っているかが重要。

    ○エゴに走った経営者が会社をつぶし晩節を汚す
    ・素晴らしい才能を持ち、努力家で、立派な会社を作り上げ、立派な業績を上げ続けてきたにもかかわらず挫折する人は多い。そういう人には勝ち気、アグレッシブで、欲も人一倍強い人が多い。そういう人がエゴに目覚めてしまうと、それが際限なく自分をそそのかす。
    ・我々が生きている人類社会は壮大なドラマ、劇場。今日は主役でも、明日の劇では別の人が主役を演じてもよい。自分の才能、能力を私物化せず、世のため人のため、社会のために使うため、その存在を与えられたと考えてみる。

    ○不況に耐え、次の一手を
    ・優れた経営者は皆、不況を次の成長のチャンスと考える。不況を1つの糧にして、困難を乗り越えるために全社員が一丸となって努力する。肝心なのは「備え」。会社に現金の蓄えがどれだけあるか。どんな不況にも耐えることができ、新しい手を打てるかがどうかが重要。
    ・日本の古い言葉で「言霊」というように、信念を持って、言葉に魂を込めなければならない。そうしなければ心に響かないし、人は動かない。

    ○弱音を吐かない
    ・企業経営はプロペラが付いた自転車のようなもので、常にこいでいないと、途端に引力で地面に落ちてしまう。まず、社長が頑張ってこぎ、1人では足りないから、社員に社長と同じ気持ちになってもらって、全員でこぐ。こぎながら、どうすればもっとうまくこげるか考える。その知恵は誰かに教わるものではなく、仕事の中でありとあらゆる可能性を探る中で見つかるもの。社員も一緒になって考え、創意工夫を伴った必死さがあれば、必ず上に向かう。

    ○岩をも通す信念を持つ
    ・経営者になったら、もう個人ではない。従業員が1人でもいるなら、立派な経営をして、従業員が安心して働ける状態にしなければならないという使命感が重要。自分を駆動していく上で非常に大きな役割を果たす。使命感を持てば、経営者は変わる。そして、それを信念まで高める。
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    投稿日:2021.10.22

  • pinkfish

    pinkfish

    アメーバ経営をオープンにしたところに、懐の広さを感じます。日本の大企業の役員らによんで欲しいですね。

    投稿日:2021.10.12

  • こうき

    こうき

    京セラ創業者である稲盛和夫氏の50年間に渡るインタビュー集。50年間、発言にブレがないのが時系列で分かる。信念とはかくあるべし、と痛感する。
    示唆に富む記述が満載だが、敢えて一つに絞るなら「社員が幸せでなければ、社会の公器としての役目を果たせるわけがない。どんな目標も、社員が幸せでなければ達成できません」という一節だろうか。万人にお勧めできる良書。続きを読む

    投稿日:2021.08.20

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