【感想】森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―(新潮新書)

白井裕子 / 新潮新書
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • まるすけ

    まるすけ

    日本林業の問題点が良く分かりました。
    例えば、古き良き日本家屋に住みたいと思う方は多いと思いますが、どうしてそれが増えないかから、日本林業ならではの価値を発掘し私たち読者に伝えてくれています。学者の書いた本ですが、私たち一般人にも優しく読み取れる1冊でした!続きを読む

    投稿日:2023.11.08

  • 晴山文庫

    晴山文庫

    法や助成金など制度と現場の矛盾に切り込む。
    伝統家屋をたてるのも大変な日本。
    バイオマス=正義というざっくりとした考えではいけない。

    投稿日:2023.07.02

  • 五十嵐管領

    五十嵐管領

    このレビューはネタバレを含みます

    林業を守る筈の補助金が、却って木材の価格を下げてしまっている事を知れた。


    日経新聞の広告より、題名に興味を持ったことがキッカケで読了。

    バイオマス発電の燃料に使われる木材は、粉々にして燃やされるだけなので、低質なものや残りカス部分で十分。

    当然そこまでの価格もつかないために、良質な木材をバイオマス燃料に使うと赤字となる。

    しかし、現在の日本では、木を伐採すると貰える補助金や、バイオマス燃料用木材の買取価格が法律で高めに規定されている事もあって、良質な木材がバイオマス燃料にされてしまうという本来起こり得ない事態が発生。(この補助金や木材価格は、税金や電気代の一部(再エネ賦課金)として、国民が負担)

    良質な木材が、値がつく建築用材ではなく、低価格なバイオマス燃料として消費され、木材の価格が低下してしまったのだ。

    現在の林業は、再生可能エネルギーという免罪符とお役所仕事の補助金によって、かなり損なわれているといえる。

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    投稿日:2023.06.30

  • a0019447

    a0019447

    このレビューはネタバレを含みます

    森を取り巻く環境について知るべく読書

    メモ
    ・日本の伝統木造の構法や技能の可能性
    ・自国の伝統文化は国益に直結する
    ・本来A材として売るべき丸太もB材として売らざるを得ない状況が発生している。A材は高く売るべきだが、バイオマスのエネルギープラントに流れ出す状況も。
    ・日本の木材は含水率が高い。バイオマス燃料化には一苦労。特に針葉樹の杉が今は増えている。
    ・我々はバイオマスというと再生エネルギーを想像するが、欧州では熱を想像する。
    ・ドイツでは熱も利用しないと買取対象にならない
    ・FIT制度やバイオマスプラントの存在がA在まで燃料化する、熱利用法を無理やり探す必要まで生じている
    ・買い手が一方的に値段を決める。ひたすら量を出す林業に。地方公共団体単独でも補助金あり、木を切って出す作業にお金がもらえるような状態、生産サイクル改善インセンティブが消失
    ・中欧では農業の延長で行う農林家が多い

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    投稿日:2023.06.17

  • japapizza

    japapizza

     丸太は品質によってA、B、C、D材に分けられる。A材は製材に、B材は集成材やCLT、合板の材料に、C材はチップ用などである(CLTなどの用語の説明は後述する)。D材は林地残材などで、これまではそのまま山に置いてきた資源で、今なら再生可能エネルギーの燃料用である。価格は当然、A材が一番高く、順に値段が下がる。

     さらに懸念されるのは、本来A材として売るべき丸太も、B材として売らざるを得ない状況が発生していることだ。同様にB材をC材で、C材をD材で、という具合に値段が下がり、用材になるはずの丸太が、そのままバイオマスのエネルギープラントに流れ出している。バイオマスのプラントでは、残ったD材を消費するのが本来の姿である。バイオマスの再生可能エネルギー利用は、これまで売れなかった木の残りを使うことに意味がある。しかしもっと高く売るべき丸太まで消費しはじめ、丸太全体の価格が下がってきた地域もある。ある県庁の担当者は「まずいことになった」ともらしていた。

     日本に今、増え続けているのは針葉樹、とくに杉である。現代の製材業においても、杉の乾燥に苦戦している。エネルギーを取るためには、水分たっぷりの杉を乾燥させなければならない。
     葉枯らし乾燥と言って、木を切ってから山に寝かせて、木から水分を蒸散させる手法もある(ちなみに、檜は色が変わることがあり、葉枯らし乾燥はしない)。
     林業従事者は、いい材を作るために手間をかけ、長らく寝かせもする。しかし今日的こなビジネスは、とにかく早く安く大量に回さなければならない。バイオマス発電では、そんな悠長なことはしていられない。
    「杉でやっている所は、木を乾燥させるところから苦戦しているようだ。しかもそのために必要なエネルギーも、バイオマスでとっている」
     ある林業関係の技術者は、話す先から苦笑いしていた。日本の杉を乾かす難しさを知っているからである。その彼がプラントで使っているのは、杉ではなく、落葉松である。施設も落葉松の生えるところにある。松は含水率もそこそこ(落葉松は心材で40~50% 第4章 誰のための たいまつ 辺材で120~150%程度)で、昔から松明にも使われてきた。


     木曾五木に話を戻そう。翌檜の別名は、檜葉である。檜葉と言えば、建築の世界では、まず「青森ヒバ」が思い浮かぶ。檜葉も水に強いため、檜と同様、木造建築で地面に近い部位に使われる。岩手県平泉にある「中尊寺金色堂」の、金箔の中は、ほほ総檜葉造りである。1124年の建立で、今なお当時の姿を留める。中尊寺の檜葉といい、法隆寺の檜といい、その耐久性の高さはお墨付きである。
     森林浴で有名なヒノキチオールは、実は日本の檜からはほとんど出ず、檜葉から出る。ヒノキチオールは、森林浴の効果をなすフィトンチッドの一種である。ヒノキチオールには殺菌、抗菌、消炎などの働きがある。最近で言えば、アロマテラピーに使われるエッセンシャルオイル(精油)の成分になる。こういった効能のある木の香溢れる「赤沢自然休養林」の中を歩くと、心身ともに一新される。


     野菜の値段と変わらなくなった木を大量に出すより、山から伐り倒した後も数十年、数百年、建築として、生き永らえる木を育てたい。そう考える林業家もまだいる。我が国の歴史的建造物の修復を考え樹齢数百年の木を育てる、と言い切る方もいる。その木が必要とされる日が来た時、自分はこの世にはいない。しかし、今、自分が手塩にかけた材が必要とされる時が来るからである。このような木を育てられる方、育てて下さる方は少なくなった。
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    投稿日:2023.05.20

  • zukkynya

    zukkynya

    ■どんな本か
    工学博士かつ一級建築士でもあり大学教授でもある著者が、会議で発言したことや国内外の高官や現場と話して林業とそれを支える制度について、問題点をまとめた本。前著があり2作目らしい。

    ■主張
    本の帯にある、【このままでは『宝』の持ち腐れだ。】の一文が主張をよく表している。林業を取り巻く制度の問題点が、これでもかこれでもかと笑えるくらいに上げつらねられている。

    ・日本の建築基準法は伝統的な構法を無視
    ・そもそも国益として景観を守る理念欠如
    ・小さな製材所が戦いにくい現状
    ・バイオマスを推すあまり、A材まで回される
    ・日本の森林多様性に富み様々な使い道あった
    ・畑の延長でイケてる林業機械を活かせる欧州と、険しく危険な日本の山林。林業機械を補助金で買ってからどう使おうかと考えるのは思想が逆。
    ・木材生産額2000億に対し、林道造林だけで3000億の補助金が使われている
    ・とにかく日本の林業は補助金でズブズブの世界
    ・おかしな制度設計のツケは森林環境譲与税というかたちて国民が払う

    ■感想
    私の完全な偏見だが、こういう本は男性が書くケースが多い印象があり、著者が女性であることがまず好印象。そして製材や林業家、伝統的手法で家を建てる大工らへの敬意・森林への熱意が感じられる。

    きっと補助金等の制度を作った人たちの中にも、著者の主張に頷く人がいるのではないだろうか。でもきっと、その都度ルールを作るがあまり、なかなか解けない絡まったネックレスのように、単純化出来なくなってしまっているのだろう。

    解については現場の声を聞き、おかしな制度を丁寧に解きほぐせとのこと。

    2021年発行とのことで、ウッドショック後は書かれていない。こういう外材が入ってこない時こそ国産材の価値が見直されるタイミングだが、増産に対応できず業界が被害を受けてしまったのは残念だ。ここにもきっと林業界の問題があるんだと思う。

    多くの人は木や森に思いを馳せることは少ないように思う。でも例えばアウトドアやトレッキングは老若男女問わず人気なわけで、日常の生活の延長にこれらの大事な課題が想起されるとよいなと思った。わかりやすい伝え方で。

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    投稿日:2023.05.02

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