【感想】マルセロ・イン・ザ・リアルワールド

フランシスコ・X. ストーク, 千葉茂樹 / STAMP BOOKS
(19件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
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ブクログレビュー

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  • かっこ

    かっこ

    よくある障害者の目線で世界を見ると、というものではなく、ミステリーの要素もあって、約400ページを一気読み。

    投稿日:2023.01.06

  • kazha

    kazha

    SL 2022.2.24-2022.2.27
    発達障害を持つ主人公の視点から語られる、ひと夏の大きな成長の話。

    父親はマルセロに「わたしを信頼できなかったのか」と聞いたが、父親がマルセロを信じていなかった。マルセロがまさかこんなことを見つけて、正確に状況を把握するとは思っていなかったんだと思う。その後のマルセロの行動の前に、マルセロが起こっていることを理解するとは思いもしなかったのではないだろうか。
    この作品を親の視点で読んでしまうことに気がついて、ひそかに愕然とする。

    マルセロが、自分のことをアスペルガーだというと本当にその症状を持つ人たちに迷惑をかけると感じているというくだり。素晴らしいと思った。
    昨今、何でもかんでも発達障害で片付けて、本当にその症状で苦しんでいる人のことをもっと真剣に考えたら、とよく思っていたから。
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    投稿日:2022.02.24

  • masamzo

    masamzo

    自閉症スペクトラムのマルセロが、守られた養護学校を出て、父親が経営する法律事務所で夏のバイトに。様々な人々と触れ合いながら、健常者の社会で力強く生きてゆく。

    投稿日:2021.03.21

  • mario3

    mario3

    二つ目のスタンプブックス。質がよくて素晴らしい。
    かつての福武のベストチョイスに思春期感を足したようなシリーズだ。

    こちらは発達凹凸の高校生(微妙な年齢です)の成長譚。
    マルセロは音楽と宗教が好きで真面目な発達凹凸青年。
    教科書通り、くらいの発達さんで、adhd色は弱め。
    普段は支援学校というか養護学校に通っていた。ここがもう素晴らしい学校なので、まずはそれが羨ましくてたまらない。日本にもここまでの学校があれば。。。

    作中でマルセロの父親が彼を認知障害だというけど、本人はそれは違うと思う、と。
    たしかにマルセロの言う通り、彼は周囲の人の表情や動きからかなりの情報を読み取れている。
    反応はうまくできないのかもしれないけど、ここまで相手を読めているのはかなり高度なことだ。
    マルセロは、他人からはパッと見て、変わった喋りかたをする子、くらいの印象だと思う。自己分析も非常に優秀だ。

    裸一貫からサクセスストーリーになった弁護士の父が、リアルな世界を見せようと、自分の事務所での雑用を夏休みの間だけやれ、という。
    ジャスミンという女性のもと、少しずつ仕事をして信頼関係を作っていく。
    ウェンデルというクズ野郎のために、ジャスミンとの関係が悪くなるんでは、と心配したけど、マルセロは頑張りました。偉い。
    相談できる大人が彼にはたくさんいる。なおかつ、母親との関係が付かず離れずでいいのも、マルセロがキッパリとウェンデルを断ることができた一因にも見える。

    マルセロは事務所である少女の写真を見てしまったことから、父の仕事の裏を見てしまうし、大きな迷いを抱える。
    ジャスミンはそれに真摯に応えて、自分の故郷でストレートな感情のまま第一次産業で生きる世界を見せる。
    この旅行がこの作品の大きな転換点。夜の湖のシーンはとても素敵だった。マルセロにも読者にも、ジャスミンは大きなものを見せてくれる。

    写真の少女に会いに行くシーンが中心にならないところが、この小説のすごいところ。

    人間みんなに醜い部分があるんだ、というメッセージにも愛と力強さを感じる。

    マルセロと父親の和解までには、写真の少女の問題以上にジャスミンとの関係ですごくビックリさせられたのだけど、、、日本の小説では残念ながらここまでの描写はまず無さそう。
    ジャスミンとマルセロの母親のあいだの空気まで、ちらっと言及されているのが凄い。
    でもさあ、ジャスミンからしたら、あんな雇用者が自分の息子を職場でバイトで自分の下に持ってきたら、嫌だよねー。
    ベリンダじゃなくて、という点ではなく、あの人の子供なんて、それを自分に頼んでくるなんて、すごく嫌だろうね。ジャスミンは偉いなあ。
    当初、ジャスミンの様子から、優秀だったというベリンダになにか事情があったのか、と深読みしていたけど、普通に最後に登場していて驚いた。


    後半は読みながらずっと涙目になってしまった。
    構成には一分の隙もなく、日本のYA小説はまだまだ甘いな、と思わされた。こんな良作に会えて嬉しい。
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    投稿日:2021.01.31

  • kuritanu

    kuritanu

    アスペルガー症候群(に近い)17歳のマルセロのひと夏の成長を描いた小説。
    生き馬の目を抜くアメリカの弁護士の世界で、メキシコ系ながら高い能力でのし上がって来たマルセロの父は、マルセロには「お前は障害者ではない」、もっと勉強し、社会で成功出来るようになれと言っているが、職場では「息子には認知障害がある」と言っており、職場の人はそれを「知恵おくれ」だと受け取っている。この辺をマルセロ自身が気づくところが、読んでいて辛い。
    昔知能検査というのがあった。一定時間内に次々と問題(計算、図形、記憶力を試すものなど)を解いていくものだった。たくさん解けて、正解ばかりなら知能が高く、そうでなければ低いという結果が出るのだが、つくづく、人の能力を測るのに不適切な検査だったと思う。例えばこのマルセロのような少年なら、やれと言われたことをさっさと、次々とやる、ということはできないだろう。だから昔は自閉症(スペクトラム、という言葉も認識もなかった)は、「知恵おくれ」と判断された。しかし、マルセロは認知障害と言われてこう返す。
    「『認知障害』は、マルセロの頭のなかで起こっている現象を、正確にはとらえていません。『認知の際の過度な反応』というほうが近いです」
    こう返せる人が、知恵おくれ?
    さらに「それって病気なの?」と訊かれて、「それによって、正常な人間が社会のなかではたすべきと考えられる役割をこなせないとき、社会はそれを病気と呼びます」(P68~69)と答えている。ここまで自己と社会を客観視できる人を知恵おくれと呼ぶなら、呼んでる人はどれだけ知恵があるのか?
    また、マルセロは、仕事を猛スピードでこなすことはできないが、「自分の最適スピードで」なら集中してこなし、間違わない。最初猛スピードでこなしてだんだん処理が遅くなり、ミスが発生する所謂普通の人より、ずっと良くないか?
    これを読んでると、自分を普通、あるいは健常と認識している人間の愚かさと奢りが、痛々しいとすら思える。
    自分がマルセロの気持ちになって、「健常者」の理不尽に付き合わされる苦悩を感じた。そんなふうに書ける作者の力に脱帽。
    ハーバード大学生で、(親が)金持ちで、エリートコース間違いなしで、かつ人間としてクズ中のクズであるウェンデルのような人間が世の中を牛耳っていることが、この本で言えばフロントガラスの事故で顔の半分を奪われた少女のような人たちを苦しめているようなことは、日本でもある。
    マルセロがウェンデルに利用されていることに気づかず、利用されるシーンではムカムカした。
    マルセロを一人の人間として対等に扱うジャスミンも、弁護士事務所では、単純作業しか任せられない、ルックス以外は取るに足りない女の子だと思われている。
    本当はウェンデルになりそうな若者に読んで欲しい本。自分は間違ってる、と気づいて欲しい。

    キース・ジャレットもグレン・グールドも好きなので、ジャスミンとマルセロのことをますます応援したくなった。インプロビゼーションに重きを置くジャスミンと、バッハの対位法の旋律をきちんと表現するグールドが好きなマルセロ、というのも、二人の性格を表しているようで面白い。
    爽やかで、前を向く気持ちになれる、いい青春小説だった。
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    投稿日:2020.09.06

  • フラニー

    フラニー

    マルセロの言葉が素晴らしかった。
    いつもきちんと考えて言葉にしている。
    そして正直である。

    この物語の中の特別な事件や嫌な奴らよりも、マルセロのIMに身を委ねるのがいいと思った。

    イステルに「あなたにもあるの?醜いところが」と聞かれ、
    「自分に醜い部分が見つからないこと、他人の醜い部分を許したくないことがぼくの醜い部分なんじゃないかな」と、自己分析するマルセロが大好きだ。

    「正しい音は正しくきこえるし、まちがった音はまちがってきこえる」
    これはジャスミンの言葉。

    美しいバーモントの丘や湖の描写も素敵だった。
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    投稿日:2019.02.17

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