【感想】マイケル・ジェンセンとアメリカ中産階級の解体

ニコラス・レマン(Nicholas Lemann), 藪下 史郎, 川島 睦保 / 日経BP
(2件のレビュー)

総合評価:

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  • hisamo99

    hisamo99

    大恐慌後から1960年代までの「組織の時代」,1970年代から2000年代後半(大不況)までの「取引の時代」,それ以降の「ネットワークの時代」。それぞれの時代を代表する人物として,アドルフ・バーリ,マイケル・ジェンセン,リード・ホフマンが取り上げられ,彼らの経歴や考えとともに,それぞれの時代が説明された。

    それぞれの時代の概要は次のような感じ。力を持った大企業を大きな政府がいかにコントロールするかが重視された「組織の時代」。企業の所有者である株主の力を取り戻し,株主の意向が最も良く反映されるのは市場であるという認識の「取引の時代」。インターネットのつながりにより新興企業がイノベーションを起こし大企業を中心とした資本主義を壊していく「ネットワークの時代」。

    本書の最後では,上記のように変遷してきたアメリカが取りうる(取りえた)別の選択肢が提示される。それが多元主義。アーサー・ベントリーという社会学者が取り上げられた。人間は必ずグループを形成するという原理から,複数の利益者集団が権利を分散する形が理想型という主張。しかし,ベントリーの主張は1960年代には忘れ去られた。

    現在,「ネットワークの時代」と位置付けられており,GAFAやマイクロソフトといった巨大IT企業が市場で力を持っている。そうした中で,著者が期待を寄せる多元主義,複数の利益団体による権力の分散が実現できるかどうか,そのあたりが気になる。

    「組織」「取引」「ネットワーク」でアメリカ経済史を振り返る著者の発想がすごいと思った。また,サイドストーリーとして,時代の変化に振り回されたシカゴのシカゴローン地区の住民たち(中間層)の生活の話が所々に入れられていた。個人的にはそういう話をもっと読みたかった。
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    投稿日:2021.09.12

  • kaz190cm

    kaz190cm

    副題の「エージェンシー理論の光と影」に惹かれて購入したものの、良い意味でも悪い意味でも裏切られた。

    【本書の概要】
    本書は、アメリカ経済の「組織化」の変遷を、主に3人の思想家(学者・事業家)の人生とともに読み解くノンフィクション。
    1人目は、「所有と経営の分離」のバーリ。この時代は、大企業が力を持ち、雇用の安定など社会基盤の供給者として期待された「組織の時代」。
    2人目は、「エージェンシー理論」の提唱者ジェンセン。金融界が力を持ち、金融市場が流動化が進み、株主をはじめとした市場が力を持つ取引の時代へと移る。
    3人目が、リンクトインの共同創業者でもあるホフマン。リーマン・ショックで、金融界に対する不信感が高まると同時に、インターネットの流行により、シリコンバレーから誕生したビック・テックが力を持つネットワークの時代。

    【面白かった点】
    こういった時代区分は、アメリカ経済の変遷を捉えるうえで、とても有用だと思う。
    終章では、再び権力が集中する巨大IT企業に対抗するには、市民が利益集団を作り、組織化していくことが「唯一の現実的な防衛策」であると主張する。また、それまでの章で語られていたストーリーは、多元主義という基本思想から捉え直すこともできることが述べられていて、興味深い指摘だった。

    【イマイチだった点】
    ただ、全体として、主題が分かりにくく、焦点がぼやけていて、少し読み進めるが退屈になってしまった。
    また、日本語のタイトルでは、「中産階級」をキーワードとして焦点を当てているが(原題では副題の一部)、本文の内容とのズレを若干感じた。

    いずれにせよ、いろいろな論点が詰め込まれているので、多様な問題意識から読み解ける本であることは間違いないと思う。
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    投稿日:2021.09.08

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