【感想】刺青・少年・秘密

谷崎潤一郎 / 角川文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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ブクログレビュー

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  • Kanon

    Kanon

    このレビューはネタバレを含みます

    ◾︎刺青
    耽美派と言われてイメージする作風そのもので,知識人のいう「純文学の味わい」とはかくなるかという印象を受けた.
    あるファッションモデルが服を着ることで魂をインストールするといった旨のことをどこかで書いていた気がするが,そういった描写をこんなにも艶かしく描けるものかと.

    ◾︎少年
    個人的に最も谷崎らしいといった感想.
    各々の描写は汚く,眉を顰めざるを得ないところが多々あるものの,流麗な文体ゆえに何故か美しさも感じる.生々しいのに,一枚薄布が張ってあるような感覚.
    秀逸だと思うのは,最後に少年の姉が関係内に置いて覇権をとり,宛ら女王の振る舞いになり,少年らを蹂躙するシーンがあるのだが,直接的な性描写は用いられていないにも関わらず,艶かしく極めて性的.
    「フェティシズム」とは耽美派を語る上で外せないキーワードだが,この独特な趣向こそフェティシズムそのものだと実感する.

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    投稿日:2024.01.23

  • y-tegetege

    y-tegetege

    8編の短編集が収録されてます。 全編通して似たような話はなく、どれも全然毛色が違う話で、さすがと納得しました。 人によってだいぶ好みが別れそう作品ばかりでしたが、個人的には刺青が一番綺麗で好き。 神童と異端者の悲しみ、はなんと捉えて良いのやら悩みます。たぶん、思春期に読むと良かったんだろうなと思えました。続きを読む

    投稿日:2022.10.19

  • kouhei1985

    kouhei1985

    このレビューはネタバレを含みます

    新潮文庫には未収録の「悪魔」「続悪魔」「神童」を読む。

    「悪魔」は陰鬱とした作品。
    神経衰弱の佐伯は汽車や地震を極度に恐れ、そのために死ぬのではないかと怯えている。上京して叔母の家で下宿を始めるが、そこには鈴木という陰気な書生がいて、佐伯の従姉妹の照子と婚約をしていると主張する。しかし照子と佐伯は次第に親しくなっていき、鈴木に恨まれるようになる。最後は照子の鼻水がついたハンカチを佐伯がこっそり舐めるシーンで終わる。

    「続悪魔」は、佐伯と照子の関係がさらに進み、最後は鈴木に刺されてしまう。
    谷崎は「続悪魔」を執筆するにあたって、「悪魔」の結末部分(ハンカチの場面)をないものと思って読んでもらいたいとしている。

    「神童」は、驚異的に勉強のできる瀬川春之助が純粋さを失って驕り高ぶり、自分の堕落を悔い芸術を志すまでを描く。最後に芸術に目覚めるというのは「異端者の悲しみ」と同じ。

    「人間の歓楽世界の裏側に、こんな秘密な、奇妙な楽園が潜んでいるんだ。 (中略) 一種掻き挘(むし)られるような快楽が、煙草の酔の如く脳味噌の浸潤して、ハッと気狂いの谷底へ、突き落とされるような恐怖に追い立てられつつ、夢中になって、ただ一生懸命ぺろぺろと舐める。」
    (「悪魔」p.148)

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    投稿日:2022.09.11

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