【感想】第三帝国 ある独裁の歴史

ウルリヒ・ヘルベルト, 小野寺拓也 / 角川新書
(9件のレビュー)

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  • 本を読むたぬ。

    本を読むたぬ。

    ようやく、基本の4冊をすべて読み終えることができた。
    https://twitter.com/takuya1975/status/1276444630070902784?s=20
    本当は、昨年4月からの小野寺先生の授業の前に読み終えたかったけれど、結局1年近く遅れてしまった。続きを読む

    投稿日:2022.01.26

  • たけ坊

    たけ坊

    第一次大戦後、ナチが政権をとり、敗戦するまでを、権力掌握やユダヤ人迫害の過程、経済や社会の状況から戦争まで、コンパクトに幅広く網羅している。

    投稿日:2022.01.09

  • ikawa.arise

    ikawa.arise

    ナチス支配体制ドイツに関するコンパクトな概説。
    第一部:第一次世界大戦以前の流れから1932年のナチ党の躍進まで
    第二部:1933年のナチ党を含む連立政権発足から第二次世界大戦直前まで
    第三部:1939年のポーランド侵攻から終戦まで

    訳者まえがきにもある、主にポーランドにおける「東欧支配を植民地支配の変種として見る」捉え方を目新しく感じた。第三部で何度か述べられている、西欧と東欧の占領の内実が大きく異なっている点や、東欧の人びとが労働力としてドイツ本国に強制的に連行された事実や、占領地での振る舞いによって実感できる。

    第二部の冒頭でヒトラーが連立政権の首相に就任した後、わずかの期間で独裁者として権力掌握過程には驚かされた。連立政権が誕生した時点では56.1%はナチ党を選んでいなかったにもかかわらず、「一年半のうちに、ナチ体制は革命のあらゆる要素を内包するような、政治体制の完全な変革に成功した」という事実には、問題は含みながらも安定していると感じさせる国家社会が、これほどの短期間で変貌してしまう可能性があるということに恐怖を感じる。それにつづく終戦にいたるまでの、ユダヤ人迫害をはじめとした暴力支配の過程はまさに悪夢としか言いようがない。

    本書では、当初はナチに批判的な国民も少なくはなかったにもかかわらず、ナチ指導部と一般のドイツ人が徐々に「共謀関係」にいたった経緯も描かれている。ドイツ国民がヴァイマル共和国を拒絶し、ナチの独裁を生んでしまった原因を単純に説明はできないのだろうが、本書から受ける個人的な印象としては、世界恐慌による不況と、そして何より、ヴェルサイユ条約での戦勝国による過酷な賠償請求が人びとの不満の源泉として深刻な影響を与えていたように感じられた。
    続きを読む

    投稿日:2021.12.14

  • 中尾

    中尾

    ナチ体制の最新の研究がコンパクトにまとまっている。細かく章で区切りがなされていてテンポ良く読める。

    個人的にはポーランド人の「ドイツ化」はあまり目を向けてこなかったので、10章「暴力の爆発」はかなり勉強になった。ナチスによる迫害はユダヤ人のみならず、ポーランド人に対しても残虐な行為をしており、対ポーランド戦は悲惨な結果となった(開戦〜1945年までに3500万人中の6分の1が命を失っている)続きを読む

    投稿日:2021.08.04

  • 探耽(たんたん)

    探耽(たんたん)

    ナチズム研究者による、第三帝国についてを改めて考察し編纂された一冊。
    “第三帝国の歴史をこれほどコンパクトな紙幅でまとめるというのは、大それた企てである。”と冒頭から著者は悩みを打ち明けていますが、様々な角度から既に研究された時代であるが故に、二番煎じや重複は良くても見解の相違がどうしても生じてしまうことを気にしていたのかもしれません。
    淡々と事実から得られた情報を纏めたもので、難いですが信頼性の高い内容となっています。
    読了して印象に残った点は、国民啓蒙・宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスが戦況悪化時での演説で発したこの一言です。

    「君たちは総力戦を望むか?」

    この発言を読んだ時に日本における“国家総動員法”や“一億総玉砕”という言葉が頭に浮かびました。
    枢軸国であり同盟国であったからなのか国民性なのか理由はわかりませんが、言葉の響きが似ているように思います。
    合意、休戦、講和というプロセスを戦時中に話すタイミングは非常に難しいですが、その道を廃して総力戦や玉砕の言葉が出た時点で指導者や指導層は戦争に失敗していますよね。
    続きを読む

    投稿日:2021.04.30

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    【はじめに】
    冒頭、「第三帝国の歴史をこれほどコンパクトな紙幅でまとめるというのは、大それた企てである」とある。本書の原書は、ドイツのC.H.ベック社が刊行する「ヴィッセン(知識)」叢書の一冊として企画されたものである。同叢書では、歴史・文学・言語・哲学など広い領域からテーマを選び、その道の専門家がその知見を凝縮して解説している。このため、本書も1916年の第一次大戦の敗戦後の状況から、ナチスによる政権掌握、第二次世界大戦、ホロコースト政策、そして敗戦までを非常にコンパクトにまとめたものになっている。

    おそらくは、このドイツにとって重荷となる期間の経緯をこの字数に完全に収めることは無理な話で、多くのことが省略されていることだろう。しかしながら、だからこそこうして文章に残されたものはまさに伝えられるべきものだけに濃縮されたものとなっているのではないだろうか。日本においても、当然ながら欧州においてもあの戦争から75年経ち、直接の記憶を持つ人がどんどんいなくなっている状況において、こういった類の本で人類としての記憶をリフレッシュすることは必要なことだ。

    【概要】
    1933年の国会議事堂放火事件から、国政選挙でのナチス党の勝利、そしてかの「全権委任法」の成立に至るヒトラー・ナチス党による権力掌握への道程は事実を選んで簡潔に説明される。一方で、それを可能としたであろうナショナリズムの形成には比較的丁寧に説明されている。

    「こうしてナショナリズムは、さまざまな苦難、不安、社会的分断の苦しみ、近代世界の複雑さにたいする諦念への、ある種の解毒剤として機能したのだ。と同時にナショナリズムは、大規模集会がもたらす陶酔という新たな経験、もしくは偉大な国民国家が対外的な影響力を強めていくのではないかという、新たに呼び覚まされた願望をもたらした」

    「ここで問題となっているのは、近代をめぐるもう一つのコンセプトであり、そこではナショナリズムと社会主義は融合し、個人の自由によって制限を受ける。つまり彼らによれば、近代の挑戦にたいする正しい回答は民主主義と自由主義ではなく、軍隊と組織にこそあるのだ」

    「ドイツにおけるナショナリズムの沸騰を敗戦ほど強めた出来事はない。その点こそが、勝利した協商国との違いであった。この未曾有の戦争で敗れたことは、ドイツにおけるナショナリズムと報復思考を急激に強めた」

    ある意味で特殊な事態であったドイツの状況を可能にした、一種の普遍性を持つものは何だったのかと考えた場合には、排他的ナショナリズムが正当性を持ったということだと言えるのかもしれない。もしかしたら、あえて「排他的」と使う必要はないのかもしれない。ナショナリズムは排他的であることが前提になっている。そこからユダヤ人やポーランド人を含む東ヨーロッパ人の排除と搾取が必然のものとして生まれてきたのだ。

    ユダヤ人への迫害が可能となった背景についても、「優生学的」イメージが支持を得た過程に沿ったものである。ナチスの権力掌握とともに批判者の口が封じられるとともに、法的なレベルで実行に移された。精神病患者、アル中、売春婦、同性愛者、犯罪常習者、ジプシーなども対象とされていった。そして戦争初期に最初に行われた精神病患者の殺害を行ったT4作戦が、ユダヤ人の絶滅収容所の基盤となったのである。

    また、経済的な要請から、ナチス党の最終的な目標が「東部における新たな生存圏」の暴力的な「征服と、その容赦なきゲルマン化」とされた。そのために異常な軍備拡張への財政支出が行われた。それは失業率低減にもつながったが、最終的には戦争によってのみ正当化されうる類のものであった。
    そしてまずポーランドがその標的となり、独ソ不可侵条約の締結とともに1939年にポーランドへの進軍を許すこととなった。開戦前にポーランドに住んでいた3,500万人のうち、1945年までにその1/6にあたる人が命を失ったという。特にポーランド人の政治的、知的指導者層は殺害の運命を免れなかった。本書で特に強調されていることだが、ポーランドはドイツにとっての「植民地」となったのだ。その土地は収奪され、人員は労働力として搾取する対象となった。そして、ソ連に対する侵攻はドイツにとって、イギリスにとってのインド、アメリカにとっての西部開拓に比すべき、まさに植民地開拓の戦争であった。「絶滅戦争」とも宣言されたこの戦争はそうであるがゆえに苛烈を極めることになった。ナチス側の理屈では、彼らを生かすために食糧などのリソースを使う理由など全くなく、容赦なく奪い、徹底して与えないということが論理的行動となったのである。

    そして、ドイツ国民のヒトラー・ナチス党への支持が絶頂に達したのはフランスに対する劇的勝利の時点である。そして同じくヒトラーを含むドイツ指導部も自らを著しく過大評価していた。
    「フランスへの勝利後、ヒトラーと国防軍は自分たちが無敵であると、錯覚していた。どんな計画でも大きすぎることはなく、どんな目標でも空想に過ぎることはなく、どんな敵でも強すぎることはないように思われたのだ」

    なおこのとき、ドイツ国民の貯蓄が全て戦時の資金調達に回されていた。最終的に通貨改革で新通貨は1/10の交換比率に設定されたことから貯蓄の90%がその価値を失うとともに戦時負債が精算された。

    いずれにせよ、ドイツの人々が、その程度に差はあるにせよユダヤ人への迫害や東部ヨーロッパでの現地住民への仕打ちについて知らなかったと主張することはできなかったということだ。
    戦争中に奪われた民間人の命は、ユダヤ人の570万人を始め、シンティ・ロマ、ポーランド人民間人、ソ連民間人、など1,200万人から1,400万人にも上る。ソ連軍によるドイツ人への復讐も苛烈であった。ドイツ軍の戦死者は320万人に上ったが、その半分は最後の10カ月に亡くなったものだ。戦争最後の数週間にはいたるところで外国人強制労働者の殺戮が行われた。

    「植民地主義的な特徴をもつ、純粋に暴力的なポーランドにおける占領支配、ソ連における絶滅戦争、そしてヨーロッパ・ユダヤ人へのジェノサイドの開始が示している恐怖支配の諸段階は、それまでに知られていたあらゆる次元を超越するものであった。そのさい、ナチ指導部とドイツ人の一部のあいだで一種の共謀関係が生まれ、人びとはそうした関係から終戦まで抜け出すことができなかった」

    著者はこのように書いたが、「ドイツ人の一部」という表現によって、どの程度が「共謀関係」にあったと考えるのかには興味がある。おそらくは子供やパルチザン活動者などを除いた大半の人が多かれ少なかれ共謀者であったと言うべきではないのだろうか。

    本書は次の言葉によって締められる。
    「ドイツ人によって始められたこの戦争が終わったとき、そこにあったのは、近代の歴史において、いまだかつてなかったような軍事的、政治的、そして道徳的な敗北であった」

    その敗北は、ドイツだけのものではなく、欧州、そして近代理性にとっての敗北でもあったに違いない。

    【所感】
    この本を手に取った理由のひとつが、帯に書かれていた「ヒトラーは東欧をいかに改造したか?」だった。ベルリンの壁が崩壊して数年後、米ソ冷戦構造が急速に形を変えつつあった1993年に東欧をバックパッカーとして旅をした。おそらくはその時期でしか見ることができないであろう東欧を見ることに興味があったことと、抑圧された国々が圧力を解かれたならば、そこから急速な成長を遂げる国々になるのではないかと考え、そういった国に行ったことがあることでその後の人生でもしかしたら役に立つかもしれないと思ったからでもある。そのときに、もう少し第二次世界大戦の歴史を学んでから行ければよかったと思っている。残念ながら東欧諸国は多様な要因で、それぞれその後もおおいに苦しむこととなった。

    大木毅『独ソ戦』でも詳解されていたが、ソ連を含む東欧での戦禍は相当のものであった。そこにはドイツによる「植民地化」に相応するものがあったというのは論理的に整合する。ドイツ人は多かれ少なかれ彼らの生活が、東欧やユダヤ人の搾取によって支えられ、さらには将来もその関係が続くことによって豊かさを享受できることを期待していたと言ってもよいのではないだろうか。また、それは人種的優越感によって正当化されていたのではないか。

    そして、同じことは同じ時期の日本にも言えることだと認識するべきなのかもしれない。

    とても新しいことがたくさんわかったという本ではないが、その道の専門家のまとめとして、あの時期のドイツに対してこういう考え方をしているのだということがわかるというのが一番の収穫であると思う。

    ----
    『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4004317851
    続きを読む

    投稿日:2021.04.18

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