【感想】未来職安

柞刈湯葉 / 双葉文庫
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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ブクログレビュー

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  • koba-book2011

    koba-book2011

    ▼近未来の「職安」を舞台にしたSF連作短編。「働く」ということの意味合いが「エリートであること」になってしまっているなど、格差社会が突き抜けた設定で、一方で生活保護的セーフティーネットは「一応行き届いている」という設定なので、それほど胃液が逆流せずに読めます。

    ▼目黒さん、というのが「普通の常識」を持っている女性で語り部で、言ってみればワトソンさん。副所長の大塚さんというのが奇妙奇天烈な変人、中年男性キャラクターで、言ってみればホームズ役。

    ▼読み終わってしばらくすると、細部はともかくこのふたりのやりとりがとにかくほのぼのと面白かった、という後味だけがはっきり残っています。とっても好印象で、面白かったんです。設定のSF的な苦みを追求しすぎない「ゆるさ」が持ち味だと思います。続編あったら読んでもいいかな、という好ましさ。

    ▼妻のすすめで気楽に読んだんですが、なかなか自分だけの守備範囲だとこういうのは読まないから、ありがたいですね。
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    投稿日:2024.04.14

  • 枝乃

    枝乃

    このレビューはネタバレを含みます

    所長は猫(スコ)。実質は副所長が経営している職安。働いている人は「生産者」、そうでない人は「消費者」と呼ばれる近未来で、ほとんどの仕事はAIが担い、人間は何の仕事をするかといえば妙なところに需要がある。ブルシットジョブとも言い切れない。ベーシックインカムのような制度が完全普及した社会は、主人公が働く理由を考えると、自立する権利という面で大いなる不安を覚えるが、小説としては楽しく読めた。

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    投稿日:2023.07.09

  • アツ

    アツ

    まずまず楽しめた
    原稿の締め切りに追われながら書いたというだけに、なんともさっぱりした職安だ
    人はおもしろい
    職安の所長は猫だけど
    経営者はアセクシャリティの男だ
    ここでも性的マイノリティのひとつにアセクシャリティが使われている
    性的な対象者がいない人達は、まだ少ないと思うから特殊性を強調するつもりで使われているんだろうなとは思うけど、こうあちこちで使われると目立ってくるんじゃないかな

    ここではインターネットがなかったら電化製品使えないじゃないか と言う感覚の未來感
    仕事はしなくても生活基本金を全国民がもらえる社会

    このくらいは実現しろ ! と思う

    人間はとことん仕事には向かない生き物だからと、仕事をする職安の経営者は気楽に対応する

    変な人ばかり職安に来る
    変な仕事ばかり案内する
    はい、めでたしめでたし
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    投稿日:2022.11.08

  • vivahorn

    vivahorn

    「まず牛」の所でも述べたが、今後の柞刈作品の読書計画で迷っていた。が、迷いは即刻無くなっていた。いや、無くなったと言うよりも、加速している。このままでいくと、柞刈ロスが生まれる可能性があるので、ここは心を鬼にして現在読んでいるハヤカワ文庫JA「人間たちの話」で一区切りしたいと思っている。でもそれじゃだめだ。ここでハッキリと中断宣言する。それくらいの強い意志を持たないといけない。

    さて、本書は前職の県庁交通事故責任担当で責任を取らされて失職した後の話で、職安を使わずに職安で働くのも面白い設定。しかし、働かない人が99%の世界ってパラダイス。しかし「働く」という言葉の定義をどの様に設定するかによって、この働かない人=99%の世界に意外と近づいている。単に「働く」というものが労働に対して対価を得るのであればちょっと定義が広すぎる。「働く」という質を考えた数値で再評価する必要もある。ホワイトvsブルー、労働時間、管理vs被管理、生産性vs非生産性等の構成を考えただけでも、等価なのか非等価で労働強度といった数字の重みづけも違ってくる。

    人間が人間になる前の世界では働かない人=0%とすると、今世紀は働かない人が急増するのは間違いないだろう。しかし、働かない人の死亡率が高くなり、いくらAIが発達したとしても、働かない人=99%の世界にはなかなか到達できないのではないかと思う。人間は働く、というか生物は働くのだ。寄生虫だって寄生の対価が栄養とすると、仕事をしないと死んでしまう。生まれる前から一生分の栄養を所有しているのなら、寄生しなくても生きていける。でも、それって本当に寄生虫なの?つまり、働かない人間って本当に人間なの?働くという楽しみを失った人間って本当に人間なの?と、率直な感想が頭の中をよぎった。

    作者はさすが生物学研究者だけのことはあるな、と感心した作品でした。
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    投稿日:2022.11.06

  • jube

    jube

    面白かった!渡し鳥の想像図をついつい落書きしてしまう。
    装丁も星新一本っぽいが、内容もあの系統の読み応えというか、ええ感じでした。
    99%の「消費者」と1%の「生産者」、国民には厚生福祉省から生活基本金が支給されていて、労働する必要が全くない(人間の代わりにロボットやAIが働いている)、平成よりちょっと先の未来という時間設定のSF。基本生活費は支給されるとはいえ、一人暮らしは無理な金額で、世帯人数が多いほうが生活が楽になるというシステム。そんな世界で家族と離れて暮らしたい女性が、独りで暮らすために、卒後に就職し、辞職し(ここらへんの話もとても面白い)再就職した職安で起きる出来事のストーリーなんだが、結構あちこちに出てくる文章がぶっささる。
    P90
    ”厚福省の生活基本金は、ひとりで生きるには少し厳しい金額に設定されている。一方で家族をつくってまとまって住めば、いくらかの節約になる。
     だからみんな結婚して、子どもをつくって、人数分の生活基本金をもらう。
     そうやってこの国の人口は維持されている。
     ずっと昔から、まだ科学技術なんてものが生まれる前からこの国はそういう風に運営されていたらしい。普通の生き方をしていれば国からきちんと面倒をみてもらえるけど、そこからちょっとでも外れるとひどく面倒な事になる。だからみんな、寒い土地で身を寄せ合うように「普通」へ「普通」へと向かっていく。”
    p127
    ”「事務員?という事は、そちらも社会人の方ですか」
    「社会人?」
    と私が聞き返すと、
    「生産者の昔の言い方だよ」
    と大塚さんが小声で補足する。なんだそりゃ。まるで消費者は社会の構成員じゃないみたいじゃないか・ひどい言葉もあったものだ。”
    とても短くて読みやすいので、
    ランチタイムに1冊イケる系
    あ、そうそう、
    SNSは、EsEnEsという名前に置き換えられているんだが、
    SNSって日本語で書くとエスエヌエス、全部エでスタートするやん!
    という、ことに気づかされて、妙に興奮してしまった(なんやねん、それ)
    ローマ字表記すると、Eが3つ!(興奮)
    そんな感じで、久々に小学生か中学生ぐらいのころに
    戻った気がしました。こんな感じの作品めちゃ好きでした。
    (今も好きだと再確認した)
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    投稿日:2022.02.08

  • mui-mui

    mui-mui

    人の仕事の多くがAIなどによって機械化され、ベーシックインカムによって働かないことが普通になった世界のお話。SFらしく皮肉を込めたギャグみたいなものもあるけど、実感としてはあり得る世界かなと思いました
    主人公たちの仕事は仕事の斡旋ですが、職安という名称が残っているのも皮肉ですね。
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    投稿日:2021.08.09

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