【感想】グレゴワールと老書店主

マルク・ロジェ, 藤田真利子 / 海外文学セレクション
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
2
7
3
2
1

ブクログレビュー

"powered by"

  • jerico

    jerico

    本を介して老人心を通わせていく、落ちこぼれの青年の成長を描いた一冊。
    映画を観るように読み進めました。

    投稿日:2023.09.22

  • 彗

    題名からしてそそられる。
    楽しみにしていた一冊である。

    バカロレアにも落ちてしまったグレゴワールが、老人施設の仕事でピキエ老人に知り合い関わり合いを深めていくにつれ、眠っていた知性が呼び覚まされ、ピキエ老人のみならず周りの人々を巻き込みながら人としての成長をしていく。

    いわゆる『学校のお勉強』は良く出来るが、社会に出ると全く役に立たない人や、『学校のお勉強』が合わず個性が埋もれてしまう人は一定数存在する。

    グレゴワールはお勉強は全くダメで、本など手に取るのも嫌。社会人として多少の忍耐強さを持ち、釈然としないものを抱えながらも見て見ないふりが出来る鈍感さを身につけている。

    それが、自室に3,000冊の本を持ち込んでいる元書店主のピキエ老人と出会い、本とは読書とは何かということを通じて人として成長していく。

    作者は朗読家で、そのような職業があることを初めて知った。朗読がいかに真心とテクニックを必要とするか、ということも。

    このところ海外文学が続いている。特有の詩的な表現においては、文字や言葉が上滑りしてしまい、何度も何度も読み返したりした。
    それでも自分の中に落とし込めず、言葉がツルーっと流れ出てしまう。

    これはもう文化の違いで致し方ないのかも知れないと諦めた。

    例えば、北村薫さんの小説に編み込まれている膨大な知識は、まるでわたしがそれを語っているかのように一体となる。

    けれどこの物語は舞台も生まれ育った文化も違う。違うどころか、想像も出来ない。想像したとしても、ネットなどで断片的に拾ったものだけだ。
    それに、物語に出てくるのは作者も内容も知らない本ばかり。

    だからきっと、滑って滑って滑ったまま終わってしまったのだ。

    つまらないわけではない。面白い物語だった。
    老人ホームの老人たちが、実は心の中には熱い想いを隠している描写とか。
    グレゴワールの人生が意外な方向へ進んでいくのも楽しかった。彼が旅する様子は映画を観ているように感じた。
    ただ登場する作家や物語に、馴染みがなさ過ぎた。

    わたしが知らな過ぎて、プロの朗読者である作者の熱量が遠かった。
    降参。

    ひとつ、心に留まったのが、「プレザン(出席)」の手をちゃんと挙げ意思表示をすること。
    人生は切り拓け、自ら参加していくんだ!と鼓舞されている気がした。
    続きを読む

    投稿日:2023.01.22

  •  ぶどう

     ぶどう

    面白かった。好きなものは好きでいい。生きていれば、それなりの苦しさや物悲しさはあるけれど、それでも人は生きていくし、好きなものが支えになる。人と人とのつながり、然り。まだまだ読んでいない本、知らない世界がたくさんあることを改めて知らされる。とても良い作品に出会えたなぁと思う。読んで良かった!続きを読む

    投稿日:2023.01.19

  • ゆまち

    ゆまち

    主人公グレゴワールは高校卒業後、バカロレア(高卒認定のようなものらしい)に落ち、進学も就職もままならず母のコネで老人ホームで働くことになった。
    そして、入居者の一人で元書店主のムッシュー・ピキエに出会う。それは同時に本との出会いであり、朗読との出会いであり、彼の人生の指針との出会いであった。

    学生時代落ちこぼれだったグレゴワールは最初朗読なんて、と思っていたが、ムッシュー・ピキエに習い朗読を続けることで、どんどん成長していく。
    いろいろなことについて考えるようになり、様々な経験をする。
    老人ホームでは死に向き合わなければならないこともある。グレゴワールは死の床にある入居者に最期まで朗読をするなど、彼なりに死について考えることもある。

    このようにグレゴワールが成長する描写や、グレゴワールとムッシュー・ピキエが楽しそうに本や朗読について話している場面や、トイレの配管(他の入居者の部屋に繋がっている)を通じて「ラジオ」と称しエロ本を朗読するエピソードなど、面白いシーンはたくさんある。
    (逆に少し私には難しくてよくわからない場面もいくつかあった。)

    しかし、中でも好きなのは、やはりムッシュー・ピキエのためにグレゴワールが老人ホームから二百キロ離れたフォントヴロー修道院まで徒歩で(!)旅する道中のエピソードである。もちろんその後のエピソードからラストまで…名シーンの連続だと思う。
    なぜそんな旅をグレゴワールがすることになったのかは、本書を読んで確かめてほしい。

    老人と青年の友情物語でもあり、愛の物語でもあり。


    最後の数行が好きなのだ。

    「まだあなたを説得しなければいけませんか、ムッシュー・ピキエ?ぼくのヒーロー、それは木だって。」

    グレゴワールのムッシュー・ピキエへの思いと、彼の成長と意志を感じるから。

    ちなみに著者はこれが処女作で、朗読家であるとのこと。朗読への愛も感じるおはなしだった。
    本書は図書館で借りたのだが、ティーンズ向けに分類されている。読みながら、たしかに、ティーンズや20代など若い層が読むと、よりグレゴワールの物語に沁みるなと思った。
    続きを読む

    投稿日:2022.07.18

  • けんさん

    けんさん

    『人を惹きつける朗読力・本のソムリエと共に…』

    元書店主で老人ホームに入居中のムッシュー・ピキエと、ホームに勤める若者グレゴワールは、本と朗読を通じて交流を深めていく。老人の読書案内、チャレンジしてみようかな…


    ・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
    ・モーパッサン『装い』『トワーヌ』『ベロム師の獣』『売りもの』『メゾン・テリエ』『脂肪の塊』
    ・ナジャ『青い犬』
    ・ユゴー『徒刑場を訪ねて』
    ・アレッサンドロ・バリッコ『海の上のピアニスト』
    ・ルイ・アラゴン『イレーヌのコン』
    ・ギョーム・アポリネール『一万一千本の鞭』
    ・ベルナール・ノエル『聖餐城』
    ・モーリス・ジュヌヴォワ『十四年の人々』
    ・ジャン・ジュネ『薔薇の奇跡』
    ・ジョージ・R・R・マーティン『七王国の玉座』
    続きを読む

    投稿日:2021.11.09

  • koringo

    koringo

    本とは縁のなかったグレゴワールが、老人施設でムッシュー・ピキエと出会い、本とも出会っていく。
    ムッシュー・ピキエのための朗読会は、広がりたくさんの人々に喜びを与え、何よりもグレゴワールが変わっていく。
    人生を重ねた人がそれまでの得たものを若い人に手渡していく、そんな繋がりが好きだ。
    ムッシュー・ピキエが聖人君子ではないのがまたいい。一人の人間のありのままの姿を見せるからこそ、グレゴワールと友情が芽生えたのだろう。

    ムッシュー・ピキエの最後の願いを叶えるためグレゴワールは、フォントヴロー修道院までの旅をする。
    そこには、王妃アリエノールが両手に開いた本を持った永眠の姿勢が刻まれている。
    それは、本を愛する者であれば願う永遠の姿だ。

    本から得るもの、本を通して繋がること、本と共に成長すること、本好きに喜びを与えてくれる良い話だった。
    そんな好きな本もいつか読めなくなるのだろう。その時、グレゴワールのような人が身近にいたら、朗読会が身近にあったらいいな。

    ラストがなんとも素敵!
    続きを読む

    投稿日:2021.08.11

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。