【感想】性からよむ江戸時代 生活の現場から

沢山美果子 / 岩波新書
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • ghostrider

    ghostrider

    性は人間と人間社会にとって避けられない営みであり,時代や場所で性をどのように扱っていたかは興味深い。生物的な営みは大きく変わらない(変えられない)が,どのような意味を持たせるかは時代背景やその価値観によって変わるため,江戸時代と現代とは異なる。交わる,孕む,産む,堕ろす,間引く,買う,売る,といった動詞をキーワードに江戸時代の性の捉え方を解説する。江戸時代あるいは日本の性がおおらかという表現がよくあるが,明治時代に入って急速な西洋化による大転換の影響が大きそうだ。性は命に対する見方にも影響を受けるのだろう。続きを読む

    投稿日:2022.12.30

  • 千

    性の言葉の語源、心をまっすぐにして生きることにある。

    江戸時代前期は、交合について、割と奔放。後期は、打って変わって、家計の存続ということで、性交渉と家族が一体化して、前期ほど頻繁な交渉は避けるようにと養生訓で言われるようになる。いわゆる武士道というやつになる


    今まで江戸時代全体で、筆者も語る「性についておおらかな江戸時代」という印象が強かったが、後期になると、全く反対とはビックリ。

    現代武士道は売れていて、今に伝わる本であるが、見方が変わったかも。至上な生き方的な感じで見るのもどうかと思った。遊女と妻の差別化、セックスレスとか、恋人とセフレのいざこざとか、

    性についてわだかまりがたくさん語られる現代だけど、ここにもしかして真髄ある?のかな
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    投稿日:2022.06.09

  • 中村宗悦

    中村宗悦

    史料をもとに論じる歷史研究において、「からだ」と「こころ」がテーマになったのは1990年代、「性」がテーマになったのはそれよりさらに遅く、2000年以降のことである、と著者はいう(iiiページ)。そんなに遅かったかしらんという感じがしなくもないが、比較的最近であることには間違いなかろう。ことに江戸時代となると史料的制約もあってそうした側面が強いことはわかる。

    本書はそんな研究状況のなかにあっても見いだされてきたレアな史料に基づいた「性からよむ江戸時代」である。

    第一章は小林一茶と妻・菊の性の営みを、一茶の『七番日記』から読み解いていく。なぜ一茶は執拗に「交合」を記録したのか。第二章は「不義の子」をめぐる善次郎ときやのもめ事に関する裁判記録が取り上げられる。第三章は、産む、堕ろす、間引くという観点から医者・千葉理安の診療記録から。お産の現場が文字史料として残っていることは非常に珍しい。第四章は、「太助の日記」から性売買の大衆化について考察される。そして、第五章で江戸時代の性について総括されている。

    他人のセックスの記録などあまり興味がないので、たとえそれが江戸時代の有名人のものだとしても、生々しすぎてちょっと引いてしまったのが第一章。しかし、第二章からは興味深い史料の紹介とそれに基づく江戸時代の日常生活についての鋭い考察が展開されて面白かった。性の問題は、妊娠・出産管理政策=人口管理政策や労働問題にも繋がってくる。そこに家とか藩とかという問題も絡んでくるわけで、時代の全体像を考える上で性の視点は欠かせないのである。
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    投稿日:2021.08.26

  • Akiko

    Akiko

    歴史を、細かいところは置いといて、ざっくりと大きな視点で捉え、おもしろくしよう!という、「絶対に挫折しない日本史」(けっこう話題になっていた)を読んで、私は全然面白くなかったので、逆にものすごぉおおく細かいところに着目した「性からよむ江戸時代」を読んでみました。で、断然こっちの方が面白かったです!
    もう、中学高校の歴史の教科書には絶対載っていない、江戸時代の庶民の夫婦の、離縁するだのなんだの揉めたり、それを領主がどのように裁定したかという記録まで書かれています。そんな記録が残ってるんだ!というのも驚き。
    近代以前、記録が残っている江戸時代に、性はそのまま妊娠・出産に結びつく。庶民の家庭ではそれは「子どもを産み育て、イエの労働力となる」ことにつながるが、子どもの数が多すぎると養っていくことはできず、口減らしをしなければならない。産まれた子を殺したり、里子に出したり、遊女として売られたり…。しかし体を売る女性は、妊娠することはNGだから、現代の医学では考えられないような民間療法で妊娠を避けようとしたり、堕胎しようとしたりした。
    領地を治める武士からすると、農民はしっかり働き、子どもを産み育ててイエを維持させるべしと考え、子育て支援策も行っていた。子育て支援って、今に始まったことじゃないんだー!と、これも非常に興味深いと思いました。
    中学生に歴史・公民(少子高齢化)を教えるときのネタとしても面白いです。
    近代以前は、出産が本当に命懸けだったということも、どれくらいの母親が難産で亡くなったか、今のような帝王切開がない時代に、難産のとき人々がどう対処したかという記録をもとに明らかにしており、これもとても興味深かったです。
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    投稿日:2021.05.17

  • tramiche_fox

    tramiche_fox

    この本では男女間の出来事の記述は全て「男と女の・・」ではなく「女と男の・・」と書かれていて、その視点から読まなければならないと気づかされた。

    投稿日:2021.04.12

  • tagutti

    tagutti

    このレビューはネタバレを含みます

    <目次>
    第1章  交わる、孕む~小林一茶『七番日記』
    第2章  「不義の子」をめぐって~善次郎ときやのもめごと
    第3章  産む、堕ろす、間引く~千葉理安の診療記録
    第4章  買う男、身を売る女~太助の日記
    第5章  江戸時代の性
    おわりに

    <内容>
    江戸時代の後期の庶民の性と家族をさまざまな文献から考えていく本。子供の死が身近だった江戸時代。幕府も藩も結婚と出産を奨励した(一方で、「恋愛結婚」は否定的だったのは面白い)。一方で性が売り物にもなっていた。遊郭などの話も出てくるが、話のメインは庶民の生活である。出産や結婚にスポットを当てつつ、江戸時代の庶民のぎりぎりの生活が見て取れた。

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    投稿日:2021.03.24

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