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鮎川哲也 / 光文社文庫 (1件のレビュー)
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fuku ※たまにレビューします
時々無性に読みたくなる昭和ミステリー。 久しぶりに再読してみた。 埼玉県秩父山中にある大学の寮(短期滞在型)<りら荘>で起こる連続殺人事件。いわゆるクローズドサークルものなのだが、特徴としてはトラン…プカードで連続殺人であることを指し示しているということと、殺害方法が毒殺あり刺殺あり絞殺ありとバラエティに富んでいる(これは作中である登場人物が指摘している)ことだろうか。 七人の男女の学生たちが集まった最初の晩に一組の男女の婚約が発表されるのだが、その目出度い発表とは裏腹に、主役の男女に思いを寄せていた別の男女やそうした華やかな空気をきらう皮肉屋などがいて、雰囲気は不穏な感じ。 そしてその翌日から次々と殺人が起こる。 中には必要?と思われるような殺人もある。 途中で登場した素人探偵・二条に至っては一体何のために登場したのかというくらい出てきたかと思ったらアッサリと殺されている。 そして最終盤に登場したこれまた気障な探偵・星影龍三が自信満々に謎を解き明かすのだが、どうにもキャラクターが好きになれない。 『大体あの男はうぬぼれが強すぎる。自分たちがさんざん首をひねってわからなかった真相を、中途からひょっこりでてきて解けるはずがない』 と、この事件に最初から関わってきた原田警視にこき下ろされている。なのでこういうキャラクターは作家さんの狙いなのだろう。 犯人のパターンとしてはちょっと捻りが入っていてなかなか面白かった。だがそれ以上に驚いたのは毒殺に使われた亜砒酸について。『お茶だとか珈琲のようなタンニン質に逢うと溶けにくい』という性質も初めて知ったが、別の使用方法があるというのも初めて知った。そんな恐ろしいものをこんなことに…と驚いたが、薬も使い方を間違えれば毒になるのと同じことなのだろう。 この作品が雑誌連載されたのは1956年から1957年なので、身長や体重が尺貫法になっている。 ある女性登場人物が身長五尺四寸(約163.6cm)で体重十七貫五百(約65.6kg)なのだが、度々肥えている、太っていると表現されている。 現代ならせいぜいポッチャリ程度でそこまで指摘されるほどの体格ではないと思うが、終戦から十年ほどの時代だとまだ痩せている方が多かったのだろうかと興味深く感じた。 また登場する女性たちが紗絽女(サロメ)だの尼リリスだのと尖った名前を付けられていたり、男性たちを顎で使ったりしている一方で、殺人事件が起きた直後に食事を作らせられるのを当たり前としていそいそ作っているところなんて、時代だなぁと思ったりする。 本作にはもう一遍、この「りら荘事件」の基となった「呪縛再現」も収録されている。「りら荘事件」をぎゅっと凝縮したような中編だが、個人的にはこちらの方が好きだった。何しろ探偵役が鬼貫(おにつら)警部なのだ。 鬼貫警部シリーズとくれば鉄道アリバイトリック。こちらも途中からアリバイ崩しの方向にシフトしていて、この時代ならではのアリバイトリックが面白かった。 デビュー以前に同人誌に書いたものらしいが、プロになる作家さんはすでに独自の世界観や文章があって、出来上がっているなぁという印象。続きを読む
投稿日:2022.02.06
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