【感想】欲望の資本主義4 スティグリッツ×ファーガソン 不確実性への挑戦―コロナ危機の本質

丸山俊一, NHK「欲望の資本主義」制作班 / 東洋経済新報社
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • rafmon

    rafmon

    シリーズ四作目。今回は、ファーガソンとスティグリッツとの対談(別々)だが、どちらも面白いし独自の視点により視界が広がる。ちなみに、欲望の資本主義シリーズはどこから読んでも楽しめる。

    ファーガソンは、19世紀後半以前にはネットワークと言う用語が滅多に使われてなかったと述べる。例えば、シェイクスピアの戯曲には出てこない。ネットワークが今日の意味として使われ始めるのは、鉄道が登場してから。一方で、階層制という言葉は、原始キリスト教時代から使われている言葉。私たちは長い間、社会についてはネットワークではなく「階層構造」として理解していた。

    分散型ソーシャルネットワークでは、中央による集中管理がない。従来型のネットワークのように、中心がハブになり、外に向かって放射状に路線図が広がっているわけではなく、また、階層構造でもない。こうしたネットワークが生むのは、陰謀論者。一方に階層性や中央による権威的にしか歴史を記述できない古い歴史学者がいて、他方に陰謀論者がいる。

    スティグリッツの対談。ベン・バーナンキは金融緩和は理論上よりもうまくいく場合が多いと言っている。金融緩和政策で中央銀行が市場の国債を買い上げたり、預金準備率を引き下げて銀行の超過準備を増やしたりすると、金利が下がり通貨供給量が増えると言う効果がありそうだ。けれども、金融緩和が利下げに影響を与えたのか、それとも金融緩和がなくても金利は下がっていたのか、確実のところは実は誰にもわからない。わかっているのは、アメリカやヨーロッパ、日本で金融緩和が行われた際に、同じタイミングで経済が上向いたということだけ。金融緩和が景気回復の主な理由だったのか否かは明確にはわからない。

    ケインズは恐慌での決定的な変数は限界消費性向であると記している。恐慌においては、限界消費性向を高める刺激を与える政策が必要だと言うもので、限界消費性向とは所得の増加分を消費に費やす割合のこと。しかしこれは簡単ではなく人々は経済的に不安な状態で貯蓄率を上げる。

    現代貨幣理論MMTが注目されたのはリーマンショック後の大不況を受けて、FRBがマネタリーベースを8000億ドルから4兆ドルに増やしたことがきっかけ。通貨の供給量を増やした。欧州中央銀行と日本銀行も同じことをしたが、どこにもインフレが起こらなかった。しかし、インフレが起きなかったのは効果がなかったからとも言える。物の需要も増えなかった。効果的な政策は、通貨供給量を増やすことではなく、労働人口を増やすこと。

    暗号資産が暗号のままだとすれば、重要な通貨にはなり得ない。マネーロンダリングや脱税、麻薬の取引など不正行為を透明化させる必要がある。透明性の確保と暗号化は両立しない。

    産業革命が最初にイギリスで起こったのは、当時のイギリスの平均賃金が他国に比べて非常に高かったからだとする仮説がある。工賃の労働者を維持するには、新たな技術を投入しなければならないと言う動機が当時のイギリスの企業にあった。賃金を高くする事は、新たな技術やイノベーションの誕生を誘発することにもなる。

    スティグリッツは宇沢弘文を尊敬していると。宇沢弘文の社会的共通資本の概念は、サスティナブルといった概念に似ている。この発言は、同じ宇沢弘文を尊敬するものとしては、嬉しかった。
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    投稿日:2024.07.07

  • おおつか

    おおつか

    このレビューはネタバレを含みます

    新自由主義や市場経済の持つ問題点を正しく理解することができた。
    サッチャーらが提唱した「小さな政府」が不測の事態に弱いこと、また個人の利益を追求する企業が全体の利益を考えないせいで格差が拡大すること…を踏まえた時に、現状の新自由主義に疑問符が付されるのは当然のことのように思える。

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    投稿日:2024.06.29

  • katsuya

    katsuya

    資本主義を考える月間5冊目。ジャーナリストのファーガソン。日本は「定常状態」。成長は止まり、高齢化がすすみ、変化を求めない人が多くなる。サッカーの日本代表になることも、ウィンブルドンで優勝することもない、絶頂期は過去のものという諦念に満ちている。これを政策等で変化させるのは困難。歴史上、定常状態を脱するきっかけとなったのは、戦争や大災害、疫病の流行など。これで考えると、東日本大震災とコロナ禍は日本が変わるチャンスかもしれない。なお、経済成長は栄養状態の改善、衛生面の向上、住環境の充実などをもたらした。定常状態で生き延びた社会はないということも覚えておかなければならない。一方、スティグリッツは、市場、国家、市民による新たな「社会契約」が必要と主張。新自由主義が最優先する市場を、国家や市民とバランスの取れた位置に戻す必要があると。現在のような過酷な状況下にも関わらず、日本でもバブル期以来の株高になっている。これは、支出が減少したことで増えた貯蓄の一部を株式投資に振り向けていること、低賃金の労働者が増えていることで企業業績が伸びていることなどが要因。つまり、ますます格差が拡大することになるということ。最後に紹介されたウリケ・ヘルマンの言葉「市場経済など存在しない。あるのは資本主義のみ」というのはまさに本質をついていると思う。「健全な競争」「努力と成長」「イノベーションの誘発と促進」などという耳触りのいいキーワードに、易々と誤魔化されているではないかという批判的な視点を持って考えたい。続きを読む

    投稿日:2021.02.13

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