【感想】渋沢栄一 社会企業家の先駆者

島田昌和 / 岩波新書
(16件のレビュー)

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  • torepan07

    torepan07

    渋沢栄一 社会企業家の先駆者
    著:島田 昌和

    渋沢栄一は、驚くべき学習能力の高さを示して、農民の子から武士身分を獲得し、明治新政府にあっても経済官僚として高い能力を発揮する。しかし、権力闘争の渦巻く中、政官界よりも、「官尊民卑」の打破を掲げて「民」にあって自立できる民間経済社会の建設を我が仕事として選択していった。

    日本の近代化に必要不可欠な多様な会社を立ち上げ、必要とされる局面では誰よりも責任を背負って会社の立ち上げ、運営を主導した。

    本書の構成は以下の5章から成る。
    ①農民の子から幕臣へ
    ②明治実業界のリーダー
    ③渋沢栄一をめぐる人的ネットワーク
    ④「民」のための政治を目指して
    ⑤社会・公共事業を通じた国づくり

    日本のインフラ基盤となった多くの企業を立ち上げ、運営すると共に、社会・公共事業に600件以上に関与してきた渋沢氏。

    私欲ではなく、日本の国益・日本の将来の国益をしっかりと見据えた形で手掛けられ、亡き今でも築かれた企業や事業は我々の日常生活になくてはならない存在として役立ち続けてくれている。

    木ではなく森という全体観や今だけではなく将来にわたって延びる時間軸をしっかりと意識し、富を我がものだけにせず、繁栄を持って利害関係者と共有する仕組みを信念を持ってつくっている。

    その時代だから出来たことではなく、渋沢氏だからこそできた偉業である。

    渋沢氏の言葉として紹介されていた「世の中のことはすべて心の持ちよう一つでどうにでもなる」という一節。本書からその真髄を感じ取ることができた。

    渋沢氏のような大きなことまで叶えることは難しくとも、少しでも世のため、人のため、仲間のためと自分の幅を広げながら世に貢献していきたいと思わせていただく大義を学んだ一冊であった。
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    投稿日:2022.04.13

  • nakaizawa

    nakaizawa

    「渋沢栄一 社会企業家の先駆者」島田昌和著、岩波新書、2011.07.20
    238p¥840C0223(2021.08.31読了)(2021.08.22借入)
    渋沢栄一の活動の全貌が知りたくてこの本を手に取りました。
    どのような考えでどのような事業にかかわったのかは書いてあります。
    新書なので、詳細にわたって書いてあるわけではありませんがとりあえず知りたいことは書いてあります。
    興味を惹かれた活動は、「帰一協会」です。「儒教、仏教、耶蘇教等あらゆる宗教の長所を折衷総合したる、統一的の一大宗教」を求めた。「その道理は一つであるから、これらを統一した宗教は出来ぬということもあるまい」と一般宗教の統一を求めた面もあるようですが、「ビジネスなどの実社会での統一的な道徳規範を求め」ていた。

    【目次】
    はじめに
    第一章 農民の子から幕臣へ―才覚を活かせる場を求めて
    養蚕・製藍農家の長男として
    一橋家の家臣になる
    パリ万国博覧会への参加
    静岡藩・新政府への出仕
    どのようにキャリアを形成したか
    第二章 明治実業界のリーダー―開かれた経済の仕組みづくり
    第一国立銀行を創設
    近代産業創出のシステムづくり
    関わったビジネスの全体像
    多くの会社設立への尽力
    株主総会で力を発揮
    資金面から見た経営術
    第三章 渋沢栄一をめぐる人的ネットワーク
    コンパクトなビジネス空間の創出
    多様な人材による経営サポート
    会社運営チームの派遣
    竜門社による次世代経営者の育成
    地縁・血縁者たち
    新しい渋沢家の創出
    第四章 「民」のための政治をめざして―自立のための政策を提言
    日清戦後の経済政策と経済動向
    清国賠償金問題
    金本位制問題をめぐって
    外資導入問題の是非
    鉄道国有化問題での葛藤
    鉄道抵当法問題への積極的な関わり
    保護主義の是認へ
    強い「民」への期待と挫折
    第五章 社会・公共事業を通じた国づくり
    実業教育への強い関心
    私立商業学校の支援
    社会事業への献身
    思想統合の試みと挫折
    協調会と修養団
    新たな労使関係の模索
    おわりにかえて―渋沢の構想した近代社会
    あとがき
    年譜
    参考文献
    索引

    ☆関連図書(既読)
    「青天を衝け(一)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.01.30
    「青天を衝け(二)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.04.30
    「雄気堂々(上)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
    「雄気堂々(下)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
    「論語とソロバン」童門冬二著、祥伝社、2000.02.20
    「渋沢栄一『論語と算盤』」守屋淳著、NHK出版、2021.04.01
    「論語と算盤」渋沢栄一著、角川ソフィア文庫、2008.10.25
    「明治天皇の生涯(上)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
    「明治天皇の生涯(下)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
    「正妻 慶喜と美賀子(上)」林真理子著、講談社、2013.08.02
    「正妻 慶喜と美賀子(下)」林真理子著、講談社、2013.08.02
    「維新前夜」鈴木明著、小学館ライブラリー、1992.02.20
    「伊藤博文 知の政治家」瀧井一博著、中公新書、2010.04.25
    (「BOOK」データベースより)amazon
    長年にわたって近代日本の実業界のリーダーとして活躍した渋沢栄一(一八四〇‐一九三一)。経済政策に関する積極的な提言を行う一方で、関わったおびただしい数の会社経営をどのように切り盛りしたのか。民間ビジネスの自立モデルを作り上げ、さらに社会全体の発展のために自ら行動しつづけた社会企業家の先駆者の足跡を明らかにする。
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    投稿日:2021.09.05

  • nakahisashi

    nakahisashi

    個人的には、渋沢の伝記的な部分はおおよそ押えているので、第1・2章は飛ばし読みをしていました。渋沢が500の会社、600の社会事業に関わったなら、一人で全部できるわけがないので、周囲の人との関係の中で進めていったのは容易に想像がつきます。その意味で、第3章が僕はいちばん興味深かったです。知っている名前も多いですが、知ってはいても渋沢と関係していたことを知らない人もいたり、関係があるのは知っていたけどそこまで深い関係とは知らなかった、という人もいて、明治時代の財界人物相関図を整理しないとわけがわからなるな、と思いました。
    第4・5章は、渋沢の思想を渋沢の行動から読み解く部分があり、興味を持てる部分も多かったです。
    『-社会企業家の先駆者』というサブタイトルからすると、もっと絶賛しているのかと思っていましたが、批判するところはしていますしたし、挫折したこと、考えがブレていたことなどにも言及していて、新しい視点のヒントにはなりました。

    <目次>
    はじめに
    第1章  農民の子から幕臣へ~才覚を活かせる場を求めて
    第2章  明治実業界のリーダー~開かれた経済の仕組みづくり
    第3章  渋沢栄一をめぐる人的ネットワーク
    第4章  「民」のための政治をめざして~自立のための政策を提言
    第5章  社会・公共事業を通じた国づくり
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    投稿日:2021.06.04

  • bqdqp016

    bqdqp016

    近代経営学の専門家による渋沢栄一が行った施策について書かれた本。渋沢を取り巻く人的ネットワークや教育・社会事業など、取り上げられている項目については、詳細な調査に基づいており内容が濃い。ただし、渋沢の全体像は捉えにくく、枝葉は詳しいが幹が見えない感がある。
    また、近代の欧米を中心とした国際関係論や安全保障政策についての知識が欠如しているように思え、記述に違和感がある箇所があった。印象的な記述を記す。
    「渋沢は、「物質的な喪失はいくらでも再建できる、いま大切なのは、物的な豊かさに目を奪われて、失いかけていた公共心や利他心を今ここで再度呼び戻すことができるかだ」と人々に訴え続けた」p217
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    投稿日:2018.11.13

  • tagutti

    tagutti

    <目次>
    はじめに
    第1章  農民の子から幕臣へ~才覚を活かせる場を求めて
    第2章  明治実業界のリーダー~開かれた経済の仕組みづくり
    第3章  渋沢栄一をめぐる人的ネットワーク
    第4章  「民」のための政治をめざして~自立のための政策を提言
    第5章  社会・公共事業を通じた国づくり

    <内容>
    明治期の実業界の大物、渋沢栄一の評伝。後半の「社会事業」の中に、もっと療育院や老人福祉などの項目が盛り込まれているかと思った。

    逗子市立図書館
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    投稿日:2017.02.11

  • トリコ

    トリコ

    日本の資本主義経済の開祖、農民から政府高官を経て経済界の第一人者となった渋沢栄一の本。

    幕末、徳川慶喜に仕え、渡欧しヨーロッパを視察
    新政府では井上馨のもとで大蔵省の役人として日本の経済界の基盤をつくり、野に下っては日本銀行設立、またあらゆる企業を育成した。

    なかなか一言では語れないほど、多くの事業を発展させてきた御仁です。経済文化あらゆる分野に着手しておられる。。。。純粋に、寝る暇とかあったのかな?本当に精力的に働いてらっしゃいます。普通の人間ではないのはその経歴を鑑みれば一目瞭然。
    ただ、ほかの政府高官と異なるのは、出世欲や権力への執着がまるで無く、ただ国に対する親切心があるのみ。なんて純粋な人なんだろう…
    こんな人だけど井上馨の手足になって働いてたんですね(ww)まあ馨も出世欲はほぼ皆無だけど。。

    おもしろかったのは、元勲に対する人物評。
    木戸孝允への評価が、やたらめったら高い。渋沢さん、木戸さんのこと大大だ~い好き(はーとv)だったんだねww
    対する大久保利通への評価の、低いこと低いこと・・・wwでもさらに下を行くのは、江藤さんww

    なんてーか渋沢さんの性格がちょっとわかったわ。
    平和論者で、漸進主義で、純朴で、「性格イイ人」なんだな=
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    投稿日:2016.04.20

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