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木原音瀬 / 集英社文庫 (15件のレビュー)
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総合評価:
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yukimisake
最近はブクログでお世話になっている皆さんのオススメを読ませて頂く事にハマっております私、今回もみんみんさんのお勧め作家さんの木原さんです。 木原さんは人を選ぶと仰っていましたが、まだ木原さんは始まった…ばかりなのに、そうかも、と思いました。 みんみんさん、ご想像通り私は大好物…と言って良い内容か分かりませんが好みでした! 大好物と言い淀む理由。テーマが小児性愛だからなのです。わざわざ言い訳せずとも良いとは思うのですが念の為。大好物なのは小さい子に、あっちの林の奥に行こうねえ…という行為ではなく、木原さんの文体とこれこそ芥川賞に入っていてもおかしくないと思う内容に対してです。 あれ、内容と書くとまた林の奥へ…になる?!難しい! 図書館で借りたのですが表紙に初めて見た注意書きが。「この本は自動貸し出し機が利用できませんので、カウンターでお借りください」 え…検閲が必要な内容?!とビビりつつカウンターへ。 無事通過。何のための検閲?!教えて下さい司書様!!(まあ年齢制限だと思うのですが) 今までペドフィリアを扱った作品は何作も読んでますし、子供に酷い事をするな!!と怒りを覚えた事もありましたが、こんな気持ちになったのは初めてです。 子供しか愛せなかったら、確かに辛いよね…。 『ラブセメタリー』というタイトルが秀逸です。世間からしたら犯罪者としか思われないこんな気持ちは墓場に持っていくしかないし、報われないし、結婚して結ばれる事も出来ない。だって大人になった相手には興味が持てないから。 朝井リョウさんの『正欲』も安易に人にお勧めは出来ない頭を抱える内容でしたが、あちらが可愛く思えてしまいました。 先ずは百貨店の外商の管理職をしている美男子で好感度の高い久瀨から始まり、ホームレスの伸さんへと話が繋がって行きますが、共通するのは2人とも子供しか愛せないと言う事。 違うのはそれぞれの愛し方。 久瀨は自分の性癖が世間では犯罪と見なされる事を理解しており、でも初恋の男の子(当時12歳)の事を引きずって苦悩しています。眠れなくなって精神科にやってくる程に重症。 一方、故あってホームレスになってしまった伸さんはこちらも好きになった女の子(当時11歳位?)とお互い愛し合っていましたが(女の子が好きになる気持ちも分からないでもない状況でした)、一悶着あって別れて以来、欲望を別の形で発散させてしまっています。 2人とも世間的には人当たりが良く人望もある人物です。 作中のほとんどが、この伸さんの謎を追っていく形となっているのですが話の流れが非常に良く出来ていて、かなり重たい内容なのにスルスル読めてしまいます。最後に明かされる伸さんの真実が、いつもならば、なんつう変態!逮捕!逮捕!となる所を、気持ちは分からないながらも妙にこちらまで何が正しいのか分からなくなって来ます。 こんな読書体験は初めてです。 「同性愛者は十年、二十年後には世間の偏見も無くなる日が来るだろうが、ペドフィリアはいつまで経っても犯罪者扱いされる」という久瀬の言葉が重たく響きます。確かにその通りかも知れない…。 私には何故、子供をそういう意味で愛する大人がいるのか全く理解出来ないし嫌悪感も確かにあります。一方同性愛者に対しては嫌悪感は一切有りませんし、なんなら疑問も持たずに、あー、そうなの、と思うタイプです。 ですが、久瀬達のように真剣に子供しか愛せずその事に対して本気で悩んでいる人達もいるのでは、と言う事には気付きもしませんでした。 だからと言ってこれに対しては、あー、そうなの、とは思えないわけで…。 悪いけどこっそりセメタリーまで持って行って貰うしかないなこれは…。 本作の凄さはエピローグにあります。 子供を愛する顔を隠した美男子、高級時計を腕に巻いた久瀬は傍から見れば家族を養う事に必死で老け込んでしまった親戚からも嫉妬をされる程に完璧な人生。 けれど久瀬は精神科医にしか話せない葛藤を抱え続けて生きていかねばなりません。 非常に余韻の残るラストでした。 木原さん一発目でガツンとやられました。この内容をこんな風に書き上げる勇気と筆力、他の作品も期待大です! 私信になりますがみんみんさん、ナイトガーデン完全版到着待ちです( ̄^ ̄)ゞ続きを読む
投稿日:2024.04.15
夜霧
個人的な見解としては、ライターの大輝に一番近いかなぁと思った。他者のセクシャリティにはほぼ興味がないし、性犯罪者のみに殊更の嫌悪感を抱くわけでもないから。 とはいえ、森下のように自身の罪を正当化して…、終いには自由と解放を感じるようでは擁護のしようもなく、断罪されて然るべき、孤独に逝っても当然だろうとは思ってしまう。 一方で、自身の性的嗜好に苦悩し続け、過ちを犯さぬよう努め続ける久瀬の姿は非常に生々しく、このように苦しんでいる方々が少なくはないだろうことに気付かされ、ハッとした。 他者のセクシャリティに興味がないことは、自らにおける差別意識が極端に薄いことでもあると自負していたが…。殊、小児性愛については無意識的な嫌悪と差別意識があったことに気付かされ、その性的嗜好に苦しみながら社会生活を営んでいる人々を無視し、場合によっては抹殺されるべきと考えていた自分の愚かさに辟易してしまった。 小児性愛に限らず、世間一般ではマイノリティとされる性的嗜好や障がい、ホームレスや生活保護受給者、あるいは社会に馴染めない人々。こうした人々に対して理解があるつもりだったが、やはりたかが凡人の身としては、このような読書体験で気付かされなければ無意識的な差別意識を持ったままだっただろう。 もちろん、自分の中の有害な意識が無くなるとは露ほども思わないが、知らないよりは少しでも知っていた方がよいと思う。 そういう意味で、本書は多くの人に読んでほしい、考えてほしい一冊。 エピローグの、宏一から久瀬への羨望と嫉妬。思うは自由だが、仮に久瀬が「いいよなぁ」と面と向かって言われたら、どれほどの苦しみになるだろう。 無知、余裕のなさから来る安易な決めつけは、相手をいとも簡単に傷つけ、壊す恐れがあると、全ての人間は把握しておかなければならないと思う。 読者に対する"とどめ"のようなエピローグ、この存在意義は非常に大きいものだろう。 最後に、本書はとても重い題材でありながら、流れるような文体で読みやすい。読書初心者の方でも比較的取っ付きやすいと思うので、ぜひ多くの方に読んでほしい。 僕は、この本に出会えて良かったと心から感じている。続きを読む
投稿日:2024.02.13
blue
面白かった‥というのは憚られるけど、小児性愛という性癖に葛藤する苦悩が生々しくて引き込まれた。 文章もスッと入ってきて読みやすい。 誰にも救いがないし報われない。 明確な答えもなくて読後感は重いけど、…こういう作品好きです。続きを読む
投稿日:2023.08.21
mido
胃のあたりがギュン…と重くなりっぱなしだった。自分を正当化して堕ちていくのと、ただただ苦しく自分を律していくのと。二者択一それしかないということなんだろうか…。(絶望) 読み終わっても色々な感情が入り…混じり、ちょっと吐きそう。続きを読む
投稿日:2023.08.18
おびのり
Cemetery 墓場ですか。 ★は、どうしようか、まだ悩んでる。 小児性愛者の鎮痛な心情を 抉ってくるんです。 「子供に欲情する人間になりたいと願ったことはない。」と、神さえ怨みながら、自分の性嗜…好を隠して、正しい社会人として生活する美しい男。 彼は、自分の欲情を抑えながらも、本能は変えられない。 そして、自分の性嗜好に気が付かないまま、小学校教師になり、勤め認められながら、過ちを犯しホームレスとなった元教師。一度犯した過ちは、抑制がなくなり、罪を重ねた。 神のイタズラか遺伝子の錯誤か、自らは望まない抑えられない欲望は、絶望感があります。 木原さん異端児すぎる。ハッピーエンドは何処へ。 あまりに解決策がなくて、痛みがあるけど、★4で。続きを読む
投稿日:2023.07.14
ほんもち
初めて★の数から悩んだ。★4にしたが果たして4なのか。気持ち的には5をつけたいが、5で良いのか。 面白かったと簡単な感想では片付けられないしんどさがあった。おすすめも簡単にはできない。はっきり言ってど…こにも救いがない。でも、少しでも興味をもって、しんどさに耐えられる人。あるいは、自己コントロールができている人。読んでみてもらいたい。 解説や帯にもあった、読書というのは危険な行為だということを今の時代に思い出させてくれる数少ない作家でー。とある。 本当にその通り。心の準備ができてからじっくり読む必要のある作品だった。 ちなみにエピローグが良い。あのエピローグがあるのと無いのでは、読み終わった時の気持ちが全く変わってくると思う。続きを読む
投稿日:2023.01.10
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