【感想】人形たちの白昼夢

千早茜 / 集英社文庫
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
9
7
6
1
0

ブクログレビュー

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  • かのん

    かのん

    【2024年92冊目】
    嘘のつけない腹話術師、赤を纏った最下層の気高き女、記憶を食べる私、理の中で生きる少女、破滅を愛する男の子など、ここではないどこかを描いた12の物語。そっと寄り添うような青いリボンが宝石のような世界にあなたを導くことでしょう。

    千早茜さんが紡ぐ美しい物語と言葉の数々を余すことなく味わいたいならこの本では、と思うほどの満足度でした。異なる世界で描かれる12の物語は、ページをめくる度にため息の出るような美しさや儚さをもたらしてくれました。

    大好きな作家さんなので贔屓めで見てしまうところはあると思うのですが、やはり一文一文が本当に煌めいていて、これぞ千早茜ワールドと唸りました。

    挿絵がまたおどろおどろしかったり、残酷な美しさがあったりして、良かったです。
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    投稿日:2024.04.20

  • ふうか

    ふうか

     美しさを究極にまで言語化すると、この小説みたいな感じになるんだろうなと思う。美しさと絶望は、少し似ている。
     また作中には、美しいものを愛する者たちが多く登場する。「美しさを愛する」と言えば聞こえは良いけれど、それは、そうではない世界が受け入れられない潔癖さをも意味する。決して生き物として強いとはいえない。生きづらいだろうな、と思う。
     けれど、確固とした世界観や美意識を持つ者は、図太さはなくとも、したたかだ。したたかで、どうしようもなく魅力的だ。
     
     
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    投稿日:2024.01.06

  • basil

    basil


    千早茜さんがインタビューで言っていた。
    エッセイでは本当の自分を全て書けない
    小説の方が(もちろん、全て本当の自分ばかりではないけど)本音の部分を描き入れる事ができる、と言うようなお話しでした。

    千早茜さんの作り出す、透明感のある世界は
    幻想的であり 清々しい。
    深い心の奥底の方に溜まっているものの中からひとつずつ取り出して、一編にしてみたような短編集でした。

    一冊200ページ超くらい本に、12編の短編

    たとえば「スヴニール」と言う20ページ位の一編
    出だしの2行で、季節感、時間帯、天気、温度感、
    すべてを美しく表現してしまう。
    すごいなぁ!
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    投稿日:2023.12.10

  • kakane

    kakane

    美しい短編集。得も言われぬ世界観の短い話たち。
    記憶の奥底に大切にしていた美しい情景が、それぞれの世界を形作っている。
    安部公房や村田沙耶香、小山田浩子、多和田葉子など、ディストピア小説は、特に海外で高い評価を得ることが多いが、この作家も今後注目されるんじゃないか。続きを読む

    投稿日:2023.11.05

  • Lyy's bookshelf

    Lyy's bookshelf

    美しいものはなぜ哀しいのか
    全ての話が美しく刹那的でほんのりと哀しい顔を持っていた。
    静かで優しい夜のようなお話。寝る前に優しい灯りの中で読むのがぴったり

    投稿日:2023.10.30

  • かすごみ

    かすごみ

    もう10年ほどの仲になる、わたしの根幹を開けっぴろげにしてみせているほど、文芸的な意味で信用している友人から、どっさりと荷物が届いた。その殆どは文具であったが、ひときわ異様な妖しさを放っていたのはこの本だった。
    わたしは他人から本を贈られたことがない。本が好きだと公言してはいるが、「もう持っているかもしれない」と思えてしまって、プレゼントの候補から外されるのだと違う友人から聞かされた。……そんなことあるわけがない。わたしの蔵書などほんの僅かで、わたしはまだまだ無知で浅学なのだ。
    彼女は、わたしの書くオートドールの短編集が好きだと言ってくれていた。本の題名を見て、そのことを思い出した。彼女なりの続きの催促だろうと思う。
    十二の短編を通して感じたのは、無機質で上品な、ひやりとした手触りの、海外製人形の肌の感触だった。大理石の床を歩く足音を聴くような、とも表現できる。丁寧に薄紙で包まれた、美しさの結晶を掌に載せるような感じもする。それは、硬質な美しさの背景に、暗澹たる闇が描かれているために、不安になるほど輝いている。
    やられた、と思った。彼女は、わたしのことをわたしが思っているより理解しているようだ。ぐうの音も出ないほど叩きのめされた。こんなに美に凌駕されたのは久々だ。
    この美しい人形たちは、わたしという陰鬱ながらんどうの中で、永久に生き続けるだろう。
    続きを読む

    投稿日:2023.10.14

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