【感想】AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争

庭田杏珠, 渡邊英徳 / 光文社新書
(44件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • aoi-sora

    aoi-sora

    先日読んだ「モノクロの夏に帰る」─額賀澪著─
    に出てくる写真集のモデルが本書と知り、手に取った。

    著者の庭田さん(広島市出身)と東大教授の渡邉さんによる「記憶の解凍プロジェクト」の成果をまとめたものだそう。

    まず、AI技術でモノクロ写真を「自動色付け」する。
    次に、戦争体験者との対話・SNSで寄せられたコメント・資料などをもとに、手作業で色を補正していく。
    とても地道で時間のかかる作業だろう。
    しかしこの「人との対話」がとても大切だ。
    白黒の世界で凍りついていた過去に色がつくことで、記憶も生き生きと動き出す。
    一枚の写真から当時を思い出し、次々と語り出す当事者たち。
    戦後79年となる現在、体験者の話を生で聞く機会はもうほとんどない。
    本書に収録されている約350枚のカラー化写真とその記録は、本当に大切で興味深いものだ。

    いくつか紹介すると

    ※1932年頃
    皆でスイカを食べて家族と親戚の夏の団らん
    ──どんな時代でも笑顔のひとときは良いな

    ※1944年
    フィリピンでくつろぐ「勤皇隊」隊員たち
    その後フィリピン・オルモック湾で特攻を敢行
    ──六人の笑顔に胸が詰まる

    ※1945年8月6日 8時15分
    広島市への原子爆弾投下
    呉市より撮影
    オレンジ色に色付け
    ──SF映画のようだ

    ※1945年8月8日
    翌日の長崎への投下に備えて組み立てられた原爆ファットマンにサインする、開発者のノーマン・ラムゼー博士
    ──サインするの?驚いた


    350枚の中には教科書などで見たことのある写真もあるが、やっぱりカラーだと印象が全く違うんだなぁと驚く。
    今、私が、振り返った先に戦争がはっきりと見えるんだ。
    私の祖父母は戦争を体験しているはずだが、話は聞かずじまいだった。
    (とっくに亡くなっている)
    今度実家に帰ったら、祖父母のことを両親に聞いてみよう。
    (両親も老齢だ 急がねば)

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    投稿日:2024.04.13

  • すず

    すず

    カラー写真になったことで一気に戦争をリアルに感じられる。この写真に写っている人たちは、これを撮ってしばらくしたら亡くなったのかと思うと不思議な気持ちになった。原爆関連の写真はどうしても涙が溢れてしまう。何となく、個人的に原爆というと広島のイメージが強いのだが、長崎市の推定人口の約三分の一が亡くなったのだと知って遣り切れない悲しさが残った。東南アジアに出兵した人たちが骨が浮き出てガリガリになっている写真を見て、東南アジアの死者の多くが餓死だったことを思い出した。戦局を楽観視し、兵士を使い捨てにしたかつての日本に現代人は何を学んだんだろうと、今のニュースを見てると呆れてしまう。続きを読む

    投稿日:2023.09.15

  • 東京工芸大学 図書館

    東京工芸大学 図書館

    この幸せそうな家族はそうもうこの世にはいない。
    戦争の犠牲になった人々や風景が今、先端技術によって甦る。 パラパラとめくってみるだけで、その迫力が伝わってくる。色が付くだけで、こんなにも身近に感じられることが恐ろしくも悲しい。
    誰かが誰かを大切にしていた、ただそれだけなのだ。

    建築コース 3年
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    投稿日:2023.09.12

  • エル

    エル

    白黒写真に色が着くだけで歴史が地続きになるようだ。遠いどこかの世界の過去の出来事ではなく、リアルにあった出来事だと認識出来る。戦前は人々も笑顔に溢れ夜には光もあった。それが時が進むにつれガスマスクを被り、笑顔が無くなっていく。衣装は地味になり、戦争を意識させる言葉が溢れ、子どもたちが軍服を着る。空襲や特攻の生々しさ、極めつけは広島の原爆写真。戦争がじわじわと日常を侵していく不気味さ。カラー写真ってすごいな。続きを読む

    投稿日:2022.12.13

  • ももん

    ももん

    歴史の事柄として知ってはいた戦前、戦争の時代だったが、カラーの写真で見ることで、その時代、その人達にも生活があり、生きてきて、私達と繋がっているんだ。

    ということを強烈に感じた良書だった。

    言葉ではうまく表せないが、祖父母が小さい頃の時代を知れ、懐かしく、切なく悲しいが嬉しい気持ちになった。

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    投稿日:2022.10.03

  • mtsrs

    mtsrs

    白黒の写真がカラーになると途端に現実として感じられるのはどういう心の動きなのかうまく説明できない。でも確かにその変化が映し出された人々が自分と同じ感情を持った人なのだということがより直接的に心の中に届く。それは人だけでなく景色や日差しの空気感もそう。戦前の沖縄の晴れた空の空気がとてもきれいで印象深い。同じ青空は戦中戦後の写真にも、原爆のキノコ雲が立ち上る写真にも写っているけど。
    テクノロジーが人の心を動かす好例。
    続きを読む

    投稿日:2022.08.27

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