【感想】古道具 中野商店(新潮文庫)

川上弘美 / 新潮文庫
(165件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
22
70
45
10
0

ブクログレビュー

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  • めめめの粉

    めめめの粉

    最後の主人公たちの変化が唐突な感じがして、おいてけぼりな感じがあった。
    淡々とした日常とちょっとのトラブル、ちょっとの変化を重ねていった先を
    もっと見たかった。

    投稿日:2024.01.16

  • 安美

    安美

    2023.4.29 読了。
    アンティークショップでもなく骨董店でもない「古道具屋・中野商店」でアルバイトをする主人公のヒトミ。店主の中野さんとゲイジュツカの姉のマサヨさん。同じくアルバイトで無口で掴みどころの難しいタケオを中心にあやしい常連客と中野商店は商いを行っていく。それぞれが様々な恋心や優しさのある愛情を抱きながら日々は進んでいく。

    川上作品は「センセイの鞄」に続いて読むのは2作目。
    「センセイの鞄」はどっぷり好みだったけれど、こちらも不思議な、けれど恋をすると日々抱えてしまうモヤモヤや行き違いが淡々とゆるりとした雰囲気で描かれていた。中野さん、マサヨさん、サキ子さん辺りの大人な恋愛模様とヒトミとタケオのまだ初々しさのある恋の始まりなど色々な恋が描かれ、イライラしたり秘めたる駆け引きがあったりと恋愛作品としてだけでも楽しめた。
    そして中野商店の独特の雰囲気。自分はどんな場所の時間や時代に連れていかれてしまったんだろう?と一瞬思ってしまうような不思議な場所と時間のあるお店だった。
    マサヨさんたちのような小粋な大人たちと共に過ごせる中野商店でちょっと数年ばかり働いてみたい。そんな気持ちになる一冊だった。
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    投稿日:2023.04.29

  • かのん

    かのん

    【2022年63冊目】
    「センセイの鞄」を読んだときにも「あぁ、この作家さん好きだなぁ」と思ったのですが、本作を読んでより理由がわかりました。

    登場人物の感情、間合いを含むテンポ、空気感、性格…その表現がとても豊かで、ずっと主人公を中心に繰り広げられているかつ章ごとに副題は変わるのに飽きさせることがない。

    私と彼の関係性の変化
    中野さんと彼女の関係性の変化
    マサヨさんと彼の関係性の変化

    物語の中で全部少しずつ変わっていく関係性

    とても心地よく読めました。
    続きを読む

    投稿日:2022.10.31

  • 久守 璃玖

    久守 璃玖

    雑多なものが所狭しと詰め込まれた空間って、
    無条件にときめいてしまうたちなので、
    古道具屋という舞台設定にまず惹かれた。

    だからさあ、が口癖の適当店主中野さん、
    中野さんのお姉さんで芸術家のマサヨさん、
    少々ぼんやりしたアルバイトの男の子タケオ、
    中野さんの愛人?らしき“銀行”ことサキ子さん、

    古道具屋関係の人達は
    ちょっと浮世離れしているというか、
    変わっている。
    変わっている、というのが第一印象だ。

    でも、物語を読み進めると、
    彼らの人間くささを知ることになる。
    このリアリティと非現実感のバランスが絶妙だ。

    ヒトミとタケオのじれったい恋愛に、
    もしくはマサヨさんの大人の恋愛観に、
    はたまた中野さん(中年オヤジ)の愛嬌に、
    あるいはサキ子さんの心の変化に、
    きっと誰もがどこかで自分の経験を重ね合わせて、
    はっとすることがあるんじゃないだろうか。

    誰もが強さと弱さを持っていて、
    意思や感情を持っていて、
    生きている一人の人間という感じがして
    すごくよかった。

    主人公であるヒトミの人間らしい感情は、
    主人公であるが故に1番見えづらいんだけど、
    ラストの“悲しかったよ”で全部もっていかれた。

    主人公に自分を投影しながら
    読むケースがあると思うけど、
    ヒトミがひとりの独立した人間だって、
    このシーンで強く感じた。

    川上弘美さんの作品は『某』とか『神様』とかを
    読んだことがあって、
    ちょっとファンタジックな世界観の中で、
    だからこそより克明に現実が見えてくる、
    みたいな印象だったので、
    それと比べると
    舞台設定に現実感が強いなと思ったけど、
    SFもファンタジーもなしに
    この作風は成立するんですね。

    『某』が好きだからこそ敬遠してしまっていた
    『センセイの鞄』も読んでみようと思った。
    続きを読む

    投稿日:2022.09.19

  • 夕芽

    夕芽

    このレビューはネタバレを含みます

    タイトルがいいね。
    宝箱をそっと開けるみたいな気持ちになります。


    『古道具 中野商店』 川上弘美 (新潮文庫)


    その名の通り、古道具屋・中野商店に集う人々の物語である。
    “骨董”ではなく、あくまでも“古道具”。
    こたつとか扇風機とか、ふちの欠けた皿とかビール会社のロゴの入ったグラスとか、亀の文鎮とかどこかのおまけの灰皿とか。
    金持ち仕様のアンティークと違って、人の生活の匂いが染みついた道具たち。

    古き良き昭和の香り漂う店内の様子が目に浮かぶ。
    しかしながら、ここで“三丁目の夕日”的感動の物語が始まらないところが中野商店なのだ。
    登場人物のアクが強くて全然ほのぼのしてないし。
    店は古ぼけていても、ちゃんと携帯とデジカメの時代だしね。

    女好きで風采の上がらない店主の中野さん。五十半ばで独身で“ゲイジュツカ”を名乗る姉のマサヨさん。無口でつかみどころのないアルバイト店員のタケオ。
    語り手であるヒトミは、タケオと同じアルバイト店員で、タケオとは何となく恋人同士のような関係だ。

    中野さんとサキ子さん、マサヨさんと丸山さん、ヒトミちゃんとタケオくん。
    この三つのカップルの恋模様を絡めつつ、物の名前がタイトルについた連作方式で、物語は進行していく。

    川上さんの小説に時折立ち現れる、空気の断層のようなものが私はすごく好きだ。
    作者は時空を自在に操る。
    ヒトミとタケオが一緒にいるときの、あの空気が急に濃くなる感じや、時間が止まったようになる感じ。
    タケオから微弱電流が出ていて、引っ張られるような感覚とか。

    ヒトミがタケオの汗を盗み見る場面なんか何だかドキドキするし、女の呪い(!?)が掛かった、客が持ち込んだ高麗青磁の丼鉢でチンチロリンをする場面とかも、うまいなぁと思う。
    私は個人的に、中野さんからほこりの匂いがする、というところが好きだ。

    中野商店の関係者たちは、性に対しては実にあけっぴろげで、そういう部分を織り交ぜつつのさばさばした人間の営みの描写は爽やかでさえある。

    作者の言葉の使い方もいいな。
    「悠揚せまらざる」とか「剣突く」とか、ちょっと大仰で古風な感じ。
    「いくたり」という数え方も味があって好き。

    さてそんな中野商店ですが。
    物語の終盤、なんと、店主の中野さんがいきなり「解散」を宣言する。
    ヒトミとタケオは、喧嘩をしたまま仲直りすることなく、離ればなれになってしまうのである。
    なんでー!!
    と、読みながら叫んでしまった。
    しかし私の思いなんてどこ吹く風(当たり前)、作者は郷愁の中にうずくまることを良しとせず、ずんずんお話を進めていく。

    そして三年後。
    新装開店した中野さんのアンティークショップで、旧中野商店の四人が再会する。
    ツマミもなしにワインをどんどん飲んで、みんな気持ちよく酔っぱらって。

    「ヒトミさんに、おれ、ひどかった。ごめん。」

    「いや、わたしこそ、子供で」

    三歩進んで四歩下がったままだったヒトミとタケオの時間が動き出す。

    酔っ払いのマサヨさんと、もっと酔っ払いの中野さんが二人を応援して、最後に酔っ払い四人がてんでに喋り出して、何が何やら分からなくなるという何ともハッピーな終わり方!

    私は、川上さんが描く“酔っ払い”がものすごく好きだ。
    カタチのない幸せがそこにはある。

    おいしいお酒と明るい酔っ払い。
    幸せのおすそ分けをもらったようないい気分になりました。

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    投稿日:2022.04.02

  • ハルモヤ

    ハルモヤ

    再読。川上弘美さんの文章が好き。自分と全く違うタイプの登場人物たちの中に自分と同じ部分を感じた瞬間の棘が刺さる感覚がよい。

    投稿日:2021.02.14

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